無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
1 名無しさん@ピンキー age 2007/05/14(月) 10:03:54 ID:AsO87h8P
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。


前スレ
【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
http://yandere.web.fc2.com/mukuchi/index.html

次スレは480KBを超えた時点で有志が立てて下さい。

2 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/14(月) 10:14:39 ID:/OGXSjeW
…………いちおつ

3 名無しさん@ピンキー 2007/05/14(月) 13:01:43 ID:Umx4VZ/7
一おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお大津

4 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/14(月) 13:10:08 ID:WTCzd5A3
よくやった!!
一乙

5 名無しさん@ピンキー 2007/05/14(月) 13:14:41 ID:3DPpPsFT


6 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/14(月) 17:51:15 ID:Ac4AmTG/
------乙

7 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/14(月) 18:26:19 ID:/1wjN/zv
1おつーー
後は死なないといいなぁw


8 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/14(月) 19:47:30 ID:UbrWheJM
死なない…いや!死なせない!

そんなわけで壱乙

9 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/15(火) 01:04:25 ID:sc3b92BG


10 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/15(火) 01:35:20 ID:gB9qDBhQ
スレ立て乙〜

11 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/15(火) 01:39:14 ID:rpA4HHDl
…………………おつ。

12 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/15(火) 15:20:03 ID:tsM0sIn7
・・・
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
おつ・・・・

13 名無しさん@ピンキー 2007/05/15(火) 20:19:26 ID:YrVE8b0c
無口と言えば長門・・・長門で小説核化・・・・

14 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/15(火) 23:05:50 ID:7SlA0+7G
久々のカキコ
ところでこのスレ的に綾波レイはどんな扱い?

15 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/16(水) 01:01:30 ID:ObAd1QcP
…1おつ
ひまつぶしに1スレのを投下



「なぁ、なんでそんなバニーガールの格好をしているんだ?」
「……」
「お祝いって…ああ2スレ目いったからか。なんかずれてる気もするが…
しかしお前恥ずかしくないのか?」
「…//////////」
「おい顔真っ赤だぞ」
「……///」
「指摘されると恥ずかしいってじゃぁ着るなよ」
「…」
「それじゃお祝いにならないって、あのさ、お前がこのことを
 祝う必要はあるのか?」
「…(ピクッ)」
「…ん?もしかして…着たかっただけ、か?」
「…(ギクギクッ)」
「図星か…」


16 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/16(水) 04:11:11 ID:UHB4OlBZ
バニーちゃんが見れないのが残念だね

17 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/16(水) 04:23:37 ID:ymdrJB9Z


18 名無しさん@ピンキー age 2007/05/16(水) 19:14:56 ID:6XdKe1HT
保守

19 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/16(水) 20:27:21 ID:LyMQbtCS
>>15
>>16
まことに勝手ながら脳が沸いたので描いてみた。よろしければどうぞ
http://p.pita.st/?6tmx8wiw

20 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/16(水) 20:37:18 ID:gERe1HwP
〉)19
………ぐっ

21 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/17(木) 01:16:24 ID:48un/f7g
>>19ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
初絵師降臨万歳and 神GJ!
めちゃくちゃ可愛いなおい。

22 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/17(木) 04:50:52 ID:A/dBdt31
>>19
これはイイパネル!

23 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/17(木) 09:27:28 ID:0qsReSBF
>>19
 光速で保存しますた、GJ!!!

24 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/17(木) 12:09:04 ID:QGs8kbl/
>>19
超GJ!!

25 15です sage 2007/05/17(木) 18:43:22 ID:3bJ++Qww
>>19
グググググGj!!
まっまさか絵を描いていただけるとは…
思っていませんでした。ええ全く
やってみたいことを投下してみるものだなぁ



26 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/17(木) 21:36:19 ID:kO3zqngW
>>19
おかず確保

27 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/19(土) 00:48:54 ID:E09P92l7
前スレ654の服装は体操服にブルマとみた!いや、タンクトップにブルマのほうがハァハァ(;´Д`)-3

28 じうご sage 2007/05/20(日) 02:48:55 ID:OZpig0Iw
誰もいませんねー


初エロ投下〜
意見感想をビシバシください





29 じうご sage 2007/05/20(日) 02:49:41 ID:OZpig0Iw
俺は佐藤 悠っていう一般高校生だ
家に帰ってきて自分の部屋に戻るとそこには
「なんでここに美夏がいるんだ?」
美夏、フルネームは大城 美夏
俺の彼女でかなり可愛い
けど極度の無口
さて話を戻して
「…?」
美夏が首をかしげて聞いてくる
その仕草は反則だろう
「まずどっから入ってきた?」
色々聞きたいが自分の一つ目の疑問から消化する
「…まど」
そういって俺の部屋の窓を指す
たしかにそこはかぎ掛けてないが…
「ここは二階だぞ?」
「…屋根」
まぁ彼女の家は屋根伝いでこちらにこれるほど近いが
「泥棒か?お前は」
「…開いてなかった」
…そりゃ出かけてたんだから玄関があいているわけない
「…だから窓」
…そうかい
「じゃもう一つ質問、何しに来た?」
「本読みにきた」
 さいですか
「じゃぁ貸してあげるから一旦帰れ」
お袋がもうそろそろ帰ってくると思うので見られるとまずい
まず見つかれば確実に質問攻めに会いそして近所に言いふらされる
近所のおばちゃんもノリがいいので確実に外に出た瞬間
質問攻めにあう
美夏には悪いがそれを避けたいので帰ってもらう
「…やだ」
「駄目だ」
即答する
美夏は少し悩み


30 じうご sage 2007/05/20(日) 02:50:32 ID:OZpig0Iw
「…少しだけ」
「却下」
もう一度即答する
また美夏は少し悩み
「…本当に少しだけ」
「許可しない」
その言葉に美夏の顔が段々歪み
…歪み?
今までの経験からこの後の展開は…
「…ぐす」
やっぱり泣きですか
これはもう俺が折れるしかないか…
「ああもう、わかったよもう少しいいよ」
「…本当?」
「嘘は言わない」
顔をあげる美夏
その顔を見て
…やっぱり嘘泣きだったか
薄々そんな気がしていたが
それともう一つ思う
…笑うと可愛いなやっぱり
だけどいつお袋が帰ってくるかと思うと怖いな
まぁ三十分ぐらいなら大丈夫だろう
「そうか。で、どの本読むんだ?」
「…これの続き」
そういって本の背表紙を見せてくる
「あれ?その本この部屋に全冊置いてあると思ったんだけど…」
ちなみに本の名前は終○りのクロニクルと言う
「…ないよ?」
美夏は本棚を見回し言う
あぁそっかまだ教えてなかったっけ
そう思いつつ押入れを開けて中から側面に電○文庫と
書いてあるダンボールを引っ張り出す
俺は極度の読書好きで、すでに買った本は
多分千冊を軽く超えてると思う
で当然本棚にしまいきれなくなった本は


31 じうご sage 2007/05/20(日) 02:52:38 ID:OZpig0Iw
今引っ張り出したダンボールなどにまとめて押入れの中にしまいこんでいる
「この中に…ほらあった」
見つけた本を渡す
「…ありがとう」
「どういたしまして。それ読み終わったらすぐ帰れよ?」
「…ん」
そういってすぐに本を読み始める
本を読んでいるときの美香の表情はとてもいい
真剣そのもの
おまけに場面の喜怒哀楽に合わせて
少しずつ表情が変わるのもいい
そんな感じで眺めていたら部屋においてある
電話の子機がなる
彼女の読書を邪魔しないように急いで子機をもち
部屋を出る
「もしもし佐藤です」
『悠?』
なんだお袋か
「そうだけど。用件は何?」
『そっけないねぇあんたは』
「どうでもいいだろう早く用件は?」
『今日帰れないからよろしくねぇ』
…はい?
「詳しく説明しろよ」
『ちょっと昔の親友とあってねぇ久しぶりに話し合いたいから
 今日は近くのホテルとって泊まるから』
「仕事は?」
『大丈夫明日休みだから』
「夕飯代は?」
『あとで請求してねぇ』
そうかい
『それじゃぁまた明日』
切られた
全く家のお袋は…
まぁしかしこれで美夏を帰らせなきゃいけない理由はなくなった
よしとしよう
部屋に戻って美夏に伝える


32 じうご sage 2007/05/20(日) 02:54:14 ID:OZpig0Iw
「今日お袋は帰ってこないそうだからいていいぞ?」
その言葉に美夏は本から顔を上げて嬉しそうにして
そしてしばし悩み
「…しない?」
「…はい?」
今なんかおかしな言葉が聞こえたような気が…
「…しない?」
気のせいじゃなかったか
「…いや?」
いやじゃないけどってかその顔は反則だろう
「嫌ではないけど、なんていうかその、なぁ」
この言葉に
「…」
美夏はそのまま無言で
「うわっ!」
こちらを押し倒し、覆いかぶさって唇を重ねてくる
お前ーーーー!
自分でもよくわからない叫びを心で上げる
その間に美夏はこちらから唇をはなし
「…しよ?」
笑顔でその言葉は反則だろう
とりあえず理性は焼ききれた
跳ね起き、美夏と体勢を逆転させながら
こちらから唇を重ねてそのまま舌を割り込ませる
それを美夏のと絡ませ、こちらに引き寄せたり
歯茎や歯の上に舌を滑らす
そしてなにがなんだかわからなくなってきたところで唇を離す
いつもこれをすると美夏はすごい蕩けた表情になる
「……そ、れだ、め」
そんな潤んだ目で言われても逆効果なんですが
とりあえず服の上から彼女の胸を撫でる
「あれ?お前下着つけてないの?」
「…邪魔だった」
なにが邪魔なのか全くわからない
そう思いつつ行為を続行する


33 じうご sage 2007/05/20(日) 02:57:29 ID:OZpig0Iw
「…もっと」
真っ赤な顔をして頼んでくる
異存はないので服の上からでも自己主張している胸の頂点をつまむ
「…ふぁ…はっ…」
「やっぱりここ弱いなお前」
「…気の…せい…」
そんな顔で体を震わせながら言われても説得力なし
にやけてくる顔を抑えながら
美夏を抱き上げて自分の足の間に座らせる
背面座位っていったけな?
そんなことを思いつつ胸をいじっていた手を片方下に滑らせ彼女の中心に触れる
「…あ、…まっ…」
言い終わる前に下着の上から撫でる
そこは触っただけでわかるほど濡れていた
「やっぱり胸弱いじゃん」
そういいながら
下着の横から指を差し込みそこに直接触れる
「そんなこと…っ…は」
中はびしょびしょだった
とりあえず掌で突起を刺激しながら
入り口をなでる
「〜〜〜〜〜っ」
そこで我慢できなくなったのか体をがくがくっと震わせる
「…そ、れも…だ、め…」
…その通りにするとやることなくなっちゃうんだけどな
そんなことを思いつつ入り口を撫でていた指を中にすべりこませる
それにあわせてまた体がびくっと跳ねて
「…わたし…まだ…イっ」
中をかき回す
「ひぁ!」
そして余った指で器用に突起の皮をむいて直接触れる
「やっ…だめっ…」
「じゃぁやめようか?」
手は止めてそんなことを聞く
美夏はこちらにゆっくりと振り向き
薄く滲んだ惚けた瞳でこちらを見て


34 じうご sage 2007/05/20(日) 02:59:50 ID:OZpig0Iw
「いじ…わる…」
あーもう駄目だ
我慢できなくなったのでくるりと美夏の体を半回転させて
下着を脱がせて
「入れるぞ?」
返答を待たずに入れた
「あ…はっ…ふあぁ…」
そのまま全部埋める
「あっ…ひ…」
奥に進むたびに喘ぎ声をもらす
そして全部入れ終わったところで
こちらにぎゅっと強く抱きついてくる
どうやら達してしまったみたいだ
証拠に自分の物に痙攣が伝わってくるし
また体を震わせている
「大丈夫か?」
「はぁ…は…ぁ」
大丈夫ではなさそうだ
息も絶え絶えにこちらに顔を向けて言葉を伝えてくる
「はぁ…入れぁ…だめ…」
「少し休むか?」
この言葉に美夏は首を左右に振って
「…動い…てい…いよ?」
この言葉に俺の理性が…本格的に飛んだ
「ごめん」
先に謝っておく
「…?」
なんのことだかわからないというように
聞き返してくる
ただその言葉に返事をしている余裕はなかった
いきなり彼女のことを突き上げる
「ふぁぁ…やっ…だめ…」
そして美夏の腰をつかんで激しく上下させる
自分もそれにあわせて上下させる
思いっきり奥深くまで挿し込んで子宮をえぐり
そして思いっきり腰を引いてその勢いのまま再び挿し込む


35 じうご sage 2007/05/20(日) 03:00:55 ID:OZpig0Iw
そしてそのことにより受けた快感で
俺の物への血流が増し大きくなってくる
そしてそれはさらなる快感をもたらし
挿し込むたびに卑猥な水音をたてる
「ひぁ!やっ、はっ、ふぁあん!あぁっ!」
美夏は突然の圧倒的快楽の前になにも考えられずに
ただ喘ぐだけ
やがて両者共に限界が近づいてくる
美夏の腕に入る力が大きくなり
中の締め付けが増してくる
そして美夏に限界が訪れる
「ふああぁぁぁぁあっ!」
体をそらしてがくがくと震える
それにあわせて中も強烈に締まり
「…くっ」
最後に奥深くまで腰を押し付けて悠も限界を迎える
勢いよく昂りが放出され
その大量の熱が美夏の奥を叩き駄目押しには強すぎる快感を与えて
「ひぁぁあっ!はぁっ!あぁぁぁあっ!」
美夏の絶頂からさらに上へと引き上げる
「はぁぁぁぁあっ!」
最後にひときわ大きな悩ましげな声を上げ体を強く痙攣させながら
悠をぎゅっと抱きしめる
悠も同じように美夏を抱きしめ
二人とも心地よい脱力に包まれながら
下へ、下へと落ちていった





36 じうご sage 2007/05/20(日) 03:01:35 ID:OZpig0Iw



「鬼畜」
目が覚めて美夏に言われた最初の言葉がそれだった
「ごめん」
「色男」
「それはちがくないか?」
「万年発情男」
「そんなわけあるかっ!」
そんな言い争いをしながらふと気付く
「あのさ、中に」
「今日危険日」
まじですか?
美夏はどうするの?って言う風にこちらを見上げてくる
「あ〜そのなんだ。まだ…至らないところはあるけど
 その…なんだ……責任…とるよ」
その言葉に美夏はくすっと笑いをこぼしながら
「…嘘」
「頼むからそういう心臓に悪い嘘はやめてくれ」
「…わかった」
そうかよかった
「…」
「?」
なぜか美夏が少し視線をそらし横を向いている
そして微妙に頬が朱にそまっている
「…時間…あるから」
「なんのだ?」
意味がわからない。時間は確かにまだあるけど…
美夏はこちらに上目使いの視線を向けてくる
お前、それも反則だろう。理性切れて悶え死ぬぞ俺

その後に発された言葉は俺の理性を焼ききっておつりをくれた
「………もう、一回…今度は…優しくして」


翌日二人仲良くベッドで寝ているのを
帰ってきたお袋に目撃されてえらい目にあったのは
また別のお話


終わり

37 じうご sage 2007/05/20(日) 03:03:45 ID:OZpig0Iw

なんか…駄目だ…
いけないことをやってしまった気がする
少し以上に反省するために
首吊ってきます

38 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 04:07:44 ID:gaj51F+W
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJイイイイ!!
こ れ は 萌 え た
( ̄口 ̄)いかん!職人が死んでしまう!このスレの住人の総力をもって止めるのだ!

39 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 04:52:05 ID:lh9Ekmxy
無口系…
マグロではないんだよな

40 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 10:00:40 ID:ewUGXy5L
表現が言葉ではできないから行動で示すのだよ。

41 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 12:29:20 ID:PTrnk1DN
激しくgj!!

・・・なんだが、最後のあたりの流れを読んで前スレ180を思い出したの俺だけ?


42 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 14:38:23 ID:zqrkNYZx
GJ!!!!


よし。今から職人が首つらないように説得してくる

43 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 15:45:02 ID:9DZGP5F7
思い出したって言うか最後の方は前スレにあったやつそのままのような

44 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 15:55:39 ID:kHVZwjDi
>>37
いけないことっていうのを具体的に教えて欲しい
でもとりあえずGJ

45 じうご sage 2007/05/20(日) 16:39:07 ID:OZpig0Iw
>>44
43が指摘している通り
終わり方を前スレの作品に、おもいっっきりかぶらせてしまい、
おまけに気づいたのが投下後だった、ということです。
反省しているので
できればあまり触れないでください…
未だに激しく自己嫌悪の最中ですので。

46 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 20:37:05 ID:ysdoB7o5
>>45
とりあえずィ`

47 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/20(日) 21:01:39 ID:qLuBQMAF
話し事態はGJ!
ただ句読点がほしいです。


48 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/21(月) 03:09:00 ID:h7azsM9c
>>45落ち込んでるなら慰めなんて逆効果になるだけかもしれないが。
あんたのSS本当によかった。絶対にまた読みたい。
迷惑とかじゃなかったらまた投下してくれ。

49 エロ無 sage 2007/05/21(月) 08:50:46 ID:AdMP3SPY
エロは無いけど投下してみる

 ふと窓の外に目をやった。今の時刻は7時過ぎ、初夏に差し掛かったとはいえもう随分と暗い。
 二階に位置する俺の部屋から望む光景は、中途半端な田んぼと微妙な繁華街を捏ね合わせた様なものだ。
 変に田舎なここは、夜の7時ともなれば明かりの大半は消える。
 街頭なんて疎らにしか立っておらず、暗いことこの上ない。
 更に全開に開け放たれた窓からは絶え間なく降り注ぐ雨粒が見える。それが街の暗さをより一層引き立たしている。
「冷えてきたな」
 俺は素直な感想を言った。開けっ放しの窓からは夜の冷気と雨の冷気を足したものが流れ込んで来ている。
 つい昨日まで夏日が続いていた俺の恰好は半袖のTシャツにジーパン。ベッドの上で壁に寄り掛かってくつろぐ俺の背中からは壁の冷たい感触、顔と腕には夜と雨の肌寒い感触、首から下の身体は温かい感触に襲われていた。
 ちなみに、俺の部屋にいるのは俺一人だけでは無い。胡坐をかいた俺の脚の上に尻の乗せ、その背中を俺の身体に預ける少女がここにいる。
 こいつは俺を椅子代わりに、薄い文庫本を読んでいる。タイトルはブックカバーに隠れていて良く見えないが、本文から察するに推理ものだろう。
 身長は俺より随分と低く、並んで歩けば頭二つ分違い兄妹に間違えられることもあるくらいで、座った場合、そいつの頭は俺の胸辺りに位置する。
こいつも俺同様、夏向けのサマードレスを着ている。なお、俺は女の服装には詳しく無いので間違っているかもしれない。
 涼しげな服装の俺達にとって、今の室温は少し肌寒かった。少なくとも、窓を閉めるか上着を羽織るか、何か温かいものを食べたいと俺は思った。
「何か、温かいものでも持ってくるか?」
 そして、その旨を俺を椅子代わりにするこいつへ伝える。
 俺から見えるのは黒い髪だけ。艶のある髪で、肩口程度に切り揃えられているそれはシャンプーの良い匂いと、女性独特の甘い匂いを仄かに香している。何で女はこんなに良い匂いがするのか、誰か論文で発表しないだろうか。
 しかし、俺を椅子代わりにするこいつは首を小さく横に振った。否定の合図だ。
「寒くないか?」
 俺は再度聞いてみた。
 こくこく、という擬音が似合いそうな動作。小さく頷く動作で返事をした。肯定の合図だ。


50 エロ無 sage 2007/05/21(月) 08:51:50 ID:AdMP3SPY
 俺は、そうか。と短く応えて再び窓の外へ目をやった。
 実はと言うと、俺はそれほど寒くは無い。何故なら俺を椅子代わりにするこいつの身体から熱を感じるからだ。
 確かに、腕とかは少し寒い気がするが我慢できないレベルではない。
 ぼー、と窓の外を眺める俺。その表情はさぞかし阿呆らしいだろう。それも仕方がない。今の俺は椅子なのだ。椅子は黙っているしかないしこの状況じゃ、ぼーとする以外に手段がない。
 その時、ずっと本を読んでいたそいつが動いた。読んでいた本に栞を挟み、ベッドの小脇に置いたのだ。トイレにでも行くのかと思い、俺はこいつの頭をぼけーと見つめていた。
 すると、音も立てずそいつが首だけ振り向いた。
 ちょっとツリ目がちで、はっきりとした黒い瞳。整った鼻に、桜色の唇が真一文字に占められてる。ちょっと子供っぽい印象を受けるそいつが、俺を見ていた。
 俺もそいつを見る。真っ黒い瞳は一見、何の感情も映し出さない。しかし、俺には解る。そいつの考えている事。そいつが思う事。そいつが望む事。
 だから俺は、あえて小首を傾げて見せた。これがゲームかなんかだったら頭の上に?マークが浮く事だろう。それくらいに見事なとぼけかただと言えた。
 数秒、俺の目を見ていたそいつは無表情で顔を元に戻した。この後は読書を再開するのが凡人の考えだが、俺には解るのだ。
 そいつは前を向いたあと、少し躊躇う様な気配を見せた。
 そして、脚に置いていた両腕をやや後ろに伸ばした。おずおず、という効果音が似合う動作だ。
 程無く、そいつの腕は俺の手首を掴んだ。そいつの手は冷たく、身体が冷えている事を暗に物語っている。
 俺は腕の力を抜く。すると、そいつは俺の腕を自身の腹辺りに持って行く。俺の腕はこいつの細いウエストに添えられた形になる。
 そこで、そいつの手は離された。まるでそこまでが限界、と言わんばかりだ。
 その証拠というか、こいつの耳は茹でダコも真っ青な感じで真っ赤になっている。
 俺のこいつの気合に敬意と愛おしさを感じ、こいつが望んだ事をやってやろうと思った。
 腕に少しだけ力を入れ、こいつの細い胴に手を回す。片手で抱えられそうな細いウエストだ。


51 エロ無 sage 2007/05/21(月) 08:52:54 ID:AdMP3SPY
そこを両腕で抱きしめる。力一杯、いや。心一杯抱きしめる。
柔らかいお腹の感触が心地良い。それと同時に俺にかかる重量が増した気がする。たぶん、それは気のせいでは無いだろう。
俺が抱きかかえるこいつはあからさまに脱力しているのが見て取れる。その顔が見てみたい。
俺の頭がぼー、としてきた。良く分からない思考回路に命じられるまま、俺はそいつの髪の中に顔を埋めた。
その瞬間にこいつはびくり、と小さく身体を震わせたがそれも一瞬だ。
 こいつの髪はきれいだ、肌触りも大変よろしい。絹とかはきっとこんな感触がするんだろうな。
 そんでもって匂いも良い。シャンプーの香りと女の子の甘い香り、そして僅かに香る汗の匂い。心がひどく落ち着く匂いだ。
 こいつを手放したくない。ずっと傍に居て欲しい。
 俺の気持ちに応えるように、こいつは俺の腕にそっと触れた。
 さっきよりは温かい、小さい掌。
 小さい身体が震えた。というより振動した。蚊の声よりも更に小さい声でこいつは喋ったのだ。
 普通の人間ならこいつの声は到底聞き取れないだろう声を、俺は呼吸のように聞く事が出来る。
 身体と身体を密着させれば、こいつの声は振動となって俺に響く。どんなに小さな声だって、俺は聞き逃さない。
 またこいつの身体が震えた。こいつが言わんとしている言葉は「こたえて」。
 それは先ほどの問いに関する返事の催促だという事は明白だ。
 だから俺は答えてやる。俺の本心、俺の魂の雄叫びを。
「大好きだよ」
 普段なら小っ恥ずかしくて言えないようなセリフだ。でも、この状況なら何の抵抗も無く言えてしまうから不思議だ。
 まあ、それはこいつも同じなんだろうと思う。学校では一言も話さず、誰とも関わろうとしないこいつが俺と二人っきりの時だけは甘えてくる。
 要は俺達、似た者同士なのだろう。
 そんな事を考えていたせいか、凄まじい睡魔が襲ってきた。
 どうしものかと思っていたらこいつも眠そうに目を擦っているようだ。あくまで推測だが。


52 エロ無 sage 2007/05/21(月) 08:53:47 ID:AdMP3SPY
 もたれかかっていた壁からベッドに重心を移動させる。
 すると、俺の身体はずりずりと、まるで斜面をずり落ちるスライムの様にベッドにずり滑って行く。
 それに巻き込まれたシーツがしわくちゃになるが、気にしない。どうせ朝にはもっとぐちゃぐちゃになって洗濯する羽目になるのだからな。
 身体全てがベッドの上に滑り降りたのを確認し、俺は身体を横に向きなおす。
 俺の腹の上にいたこいつもベッドの上に到着だ。
 とりあえずこいつから手を放す。名残惜しそうな気配がしたから頭を撫でてやった。足もとの毛布を手繰り寄せて俺とこいつで被った。
 枕と適当なクッションを取って床につく。枕はこいつに、クッションは俺の枕代わりだ。
 レトロな電灯を消すと、部屋は真っ暗とまでは言わないがそれなりの闇に包まれた。
 それでもこいつの顔ははっきりと分かった。
 ほんとに目と鼻の先にこいつの顔がある。子供っぽくてとても愛くるしい顔。
 俺はそいつの頭を撫でてやった。落ち着く。
 こいつはこいつで軽く目を細めてくすぐったそうにしている。一見すると全くの無表情だが。
 そうこうしている間に眠気がどんどん増してくる。そろそろ限界かと思い、そいつの頭から手を放した。
 さっきみたいに名残惜しそうな気配が一瞬。そいつが俺に密着するのも一瞬。そんでもってキスも一瞬。
 唇に残る温かい感触を噛み締めているうちに、こいつは毛布の中に潜って俺の胸に顔をぐりぐり押し当てている。恥ずかしいのだろう。
 愛い奴よのう、と思いつつ。こいつの頭を両腕で軽く抱きしめる。するとぐりぐりが止まった。
 その代わり、そいつも腕を俺の身体に回した。抱き合っている体制だと言えた、温かい。
 そろそろ意識が風前の灯火だ。瞼が鉛で出来ているかのように重い。
「おやすみ」
 薄れゆく意識の中で、俺は何とか一言呟いた。はっきりと発音できているかどうかは怪しいが、こいつはちゃんと聞きとってくれたようだ。
「……おやすみ」
 躊躇いがちな、それでもはっきりとした声でこいつは言った。
 気付けば雨は止んでいた。

エロ無いのは2スレ目記念という事で勘弁してorz

53 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/21(月) 12:14:06 ID:6rCjPDiV
じうご氏GJ!!

54 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/21(月) 22:19:40 ID:Tb41cAXj
>>52
gj

55 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/21(月) 23:13:56 ID:ddwq39aE
>>52
Gj!!
です
エロ無しがなんだ!
うまければいいんだ!!そのままでも十分おもしろいですよ!!!
…正直うらやましいです…
最後にもう一度
Gj!!

56 じうご sage 2007/05/22(火) 04:46:40 ID:qBRowxr/
眠いです、徹夜で書くもんじゃないなぁ
>>52
Gj! です
次はぜひそこにエロをつけて書いてみてください…


んで書けたものを投下
なんか途中で無口じゃなくなってるよorz

57 じうご sage 2007/05/22(火) 04:47:31 ID:qBRowxr/
とりあえず、僕の一日は彼女の声を聞いたところから始まる
「…」
いや、実際は声を聞くんじゃなくて叩き起こされるんだけどね
「…わかった〜、起きるから〜、少し待って〜」
そんな僕の声を無視して、ぼすぼすはたいてくる
しかたがないので、未だに眠りを求める体に鞭打って起きる
「…」
「はい、おはよう」
柔和な感じのする優しい目、すっと通った鼻、腰近くまで伸びた長い髪
朝起きて彼女を見るたびに、僕は彼女がとても可愛いと思う
欠点は無口なところだが
彼女が無言で伝えてくる言葉にも、今では考えるまでもなく理解できるようになっている
まぁさすがに二年も付き合えば…誰でもわかるか…な?
「…?」
「あぁ、少し考え事」
「…くすっ」
なにがおかしいのかそのまま笑い始める
頭が覚醒しきってないのも合わせてすこしイラッとしてくる
「なにがおかしいんだ?」
「…」
彼女は口元に指をあててこちらに微笑んでくる
普通だったら静かに、っていう意味だけど彼女の場合は秘密、の意味だ
…しかし朝っぱらからいいものが見れました、このまま二度寝しよう…
ふらっと、布団に倒れこもうとする僕に彼女から
「…」
無言の威圧と共に神速のデコピンが…
ビシッ
…耳に直撃
「うひゃぁお!」
僕は意味のわからない悲鳴をあげ布団の上を転げ回る
「…」
彼女はまた微笑みながら目が覚めたかどうか問いかけてくる
「完璧に覚めたよ」
僕は苦笑いをしながら答える
そういえば今日は悠たちと遊びに行くんだっけか
「じゃぁ準備しようか」
「…」
「準備できてないのは僕だけか…」
この様子だと朝飯も作ってくれてるんだろうな
…なんか本当にありがたいな
そんなことを思いながら
僕、白木 誠(しらき まこと)は
彼女、木村 千恵(きむら ちえ)
を部屋の外に追い出し、出かける準備を始める



58 じうご sage 2007/05/22(火) 04:49:07 ID:qBRowxr/
「遅かったな、お前ら〜」
待ち合わせ場所で、早速、悠さんに文句を言われる
「…どうしたの?」
美夏さんに聞かれて千恵が
「…」
いつもの無言で答える。なのに、やっぱり、なぜか、悠さんたちには意味が伝わる
「そうか、やっぱり誠が寝坊したか」
「…守ろう?」
…はいすみません。次があれば必ず約束の時間に来れるように寝ます
とりあえず口でもあやまる
「ごめん…」
「全く、俺は昨日、珍しく早く寝て、美夏に叩かれたって言うのに…」
「…っ」
顔が真っ赤だよ、美夏さん?
「ちょっとまっ、痛い、痛い、やめろ〜」
その割には顔が笑ってるよ?悠さん?
「…」
その様子に千恵も笑みをこぼしながら、僕に言葉を伝えてくる
「そうだね、お二人共、早く行こう?喧嘩で時間つぶしたらもったいないよ!」
「はいはーい、今行くからちょっと待ってくれー」
まだ頭を美夏さんに小突かれながら悠さんがこっちに来る
「さっ、行こうか」
「今日はどうする?」
「…」
「…楽しくする」
「意見まとめると、特にやりたいことは無い、か…映画でも見ないか?」
「…私も」
「僕もそれでいいけど、千恵はどう?」
「…」
「賛成みたいだな、じゃぁ行こうか」
一同は映画館へ


59 じうご sage 2007/05/22(火) 04:50:22 ID:qBRowxr/
チョイスした映画は今話題になっているホラー物だったが
「あ〜やだ、もうやだ、あれはもう絶対に見ないぞ」
映画を見終わった悠さんの感想はそれだけだった
「…怖がり」
美夏さんのその言葉に悠さんは目にいじわるな光を宿らせて言う
「ほう、そんなこと言っていいのかな?じゃぁ今夜は俺の布団にもぐりこむなよ?」
「…っ」
そして美夏さんはその言葉を聞いて顔を少し青くする
「美夏さんも怖がりなんだね〜」
「…」
ちなみに僕らは平気である
僕は、映画は映画、現実は現実、と割り切れるので大してそういう風には感じない
幽霊やその類を信じていないわけではないが
千恵はそういうものを怖がらず、楽しく見れるタイプ
――僕としては抱きついてもらうなどのイベントが起きなくて残念だが――
なので全然平気である
「全く、平気なお前らがうらやましいよ」
「…私も」
「そうかな?」
「…?」
まぁ怖がったことがないのだから、いまいちうらやましいことなのかわからない
「まぁいいけどさ、お前らこの後どうする?俺は美夏と一緒に本屋行くけど」
「…」
「…わかった」
「僕もそれでいいよ、千恵」
…しかし行きたいところってどこだろう?
そんなことを思いながら悠さんたちと別れる
「じゃぁまたな!」
「…また」
その言葉に千恵は手を振って返し僕もそれにならう
「…」
「ん、わかった、行くか」
そして悠さんたちとは反対の方向に歩いていく





60 じうご sage 2007/05/22(火) 04:51:34 ID:qBRowxr/



「どこにいくつもりなんだ?千恵」
もう何度目かわからない質問を放つ
しかしその度に千恵はこちらに振り向いて
「…」
口に指を当てる、答えてもらえないのはもうわかっているけど、聞く
まぁ僕も実際、真面目に聞いたのは最初の一、二回だけで、
あとは全部この仕草が見たくて聞いているのだが
そんなことを考えていると、唐突に千恵は、ぽんっ、と手を打ち
「…?」
これまた唐突に僕に質問してくる
「なんで、さんづけで二人のこと呼んでるの?って言われてもなぁ」
初っ端からそう呼んでた、としか言いようが無い
まぁ強いて言えば
「僕の性格かな」
なんか自分では、それも違うような気もするけど
まぁでも千恵はそれで納得したらしい
ふーん、という感じで僕を見る
…ああ、こんな顔もやっぱり可愛いな
このごろようやく、
自分が心のなかで惚気まくりなのに気付いたが、直し方がわからないので放置
「…」
「なに考えてるの?ってそれは言えないな」
むぅっと、ふくれる千恵。やっぱり可愛い
…ああ今日は、なんか、すごく、いい日だ
またまた、そんな風に思っていると
「…」
「着いた?ってことはここが目的地?」
千恵はこくこくと頷く
その場所はなんの変哲も無い場所で
単純にごく普通の街中だった
しかし千恵は、周りを一度ぐるりと見回し、そして今来た道を戻っていく
僕は少し混乱してきた
なんで来たばかりなのにすぐ戻るんだ?
「なぁ、もういいのか?」
「…」
こちらに振り向いて、また千恵はこくこくと頷く
当たり前に疑問がわく
「ここに何しに来たんだ?」
この言葉に千恵は
「…」
口に指を当てた



61 じうご sage 2007/05/22(火) 04:52:43 ID:qBRowxr/
「で、帰って来ちゃった訳だけど」
今いる場所は自宅の僕の部屋
あの後、千恵はどこにも寄らずに、そのまま直接家まで帰って来たのだ
「結局なんだったんだ?」
ぼそっとつぶやく
帰り道の間に聞きだそうとしたが、教えてもらえなかったので、つぶやくだけ
きっと気が向いたら教えてくれるだろう
今の時刻は途中で、事故見学渋滞に乗っていたバスが巻き込まれたことと
途中で外食したことも合わせて
とっくに時刻は八時半をまわっていた
今千恵は、やけに幸せそうな顔(お腹いっぱいで満足しているのかも)で
猫柄のパジャマを着てベッドに寝転がっている
風呂も入ったしこの後なにしてようかな…
そのとき千恵がこちらのことをつついた
「ん?」
千恵の方に振り向く
千恵は座って顔を薄く朱に染めてそっぽを向いている
…この沈黙は…
まぁ早い話、しない?と聞いてきているのである
なんかもの凄く急な展開だなぁ
まぁこういう日もあるだろう
僕も男だし誘われているのに拒否するようなことはしない
ぽふっとベッドに押し倒す
そしていつものように形式だけの意思確認
「いいの?」
「…」
千恵はいつもの通りやけに嬉しそうな顔で、無言で頷く
「わかった」
まずは簡単にお互いの唇を重ねるだけ
それでお互い、自分にスイッチが入ったら
深く重ねる
舌を絡めあい、口内に分け入りそして受け入れる
やがてどちらともなしに、空気を求めて離れる
このときの、千恵の蕩けた表情が、僕はたまらなく好きだ
「服、脱がすよ?」
コクッと頷く
許可も得たので、ちゃっちゃとやる


62 じうご sage 2007/05/22(火) 04:53:54 ID:qBRowxr/
パジャマのボタンを外して脱がして、下着を外し、千恵を生まれたときの姿にする
その姿を見るたびに、僕は毎回、綺麗だと思う
大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいい胸
細くくびれた腰
すらっとのびる足
「…」
顔を真っ赤にして千恵がひとこと言った
「えっちって言われてもなぁ」
僕は苦笑しながら思う
この姿をじっくり眺めるな、っていう方が無茶だ、と
ということ、でじっくりとその姿を堪能する
「〜〜〜っ」
千恵は未だに見られることに慣れていないらしく体を隠してしまう
こうなったら眺めるのをやめて、彼女の手をどかし、行為に走る
一旦軽く唇を重ね
そこからのど、鎖骨、と降りていく
両手で胸を刺激し、降りてきた口で胸の頂点をついばむ
「…っ」
たったそれだけの行為で千恵の体が跳ねる
「やっぱり敏感だね、胸」
その言葉にいつもの通り千恵は
「〜〜〜っ」
顔を真っ赤にする
その様子に心を満たされながら、先ほどより強めに胸を刺激する
「…ひぁ」
「やっと声だしたね」
その言葉に千恵は、指をくわえる。意地でも声を出さないつもりらしい
…まぁこの勝負はいつも僕の勝ちだけど
そう思いつつ、胸を刺激することを続けながら、頂点を片方の手の指で挟んでつぶし
残ったほうを口に含んで甘噛みする
「…んぁっ」
千恵はもう指を離しかけている
「声もれてるよ?」
その言葉に慌てて指をくわえなおす
はっきり言って、一回崩れかけたものを崩すのは、とても容易だ
だから先ほどよりもっと強い、しかし痛みを与えないぎりぎりの強さの刺激を与える
「…んんっ…んんっ!」
いつもはこのまま、千恵が根負けして声を上げるまで続けるのだが…
…たまには、ね
余っていた右手を下にずらし、千恵の中心に触れ、十分指を蜜で濡らしてから
そこにある突起をはさんでつぶし、こする
「んひぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


63 じうご sage 2007/05/22(火) 04:55:07 ID:qBRowxr/
千恵の体が跳ねる
与えられた快感を受容しきれなくなったらしい
…今日はいつもより早く、僕の勝ち〜
一度崩すと、千恵の喘ぎ声が聞ける他にもう一つ特典がある
ものすごく饒舌になるのだ
…どっちかっていうとそっちの方が目当てだしね
そう思いつつ言葉をかける
「今日はいつもより早かったね〜」
もちろん言葉にはいじわるな感情をつける
「はぁ、だって、あんな、の、はんそ、く、だよぉ」
今日もきちんと特典はついてきた
これで僕のやる気は当社比五倍ほど
もちろん嗜虐の心にも火がつく
「あんなのって、これ?」
といい先ほどと同じように突起をはさんで、つぶして、こする
「ひゃぁぁぁあう!だめぇ、それ、しちゃ、だめぇ」
「ふーん、じゃぁ、これは?」
と言葉を放っている間に、顔を足の付け根までずらし入り口に舌を這わせる
もちろん突起にふれてる指は、動きっぱなし
ただし先ほどよりやさしく、ていねいに
「だめぇ、そっ、ひぅ!はぁ、ひゃぁ!」
そんな千恵の喘ぐ様子が可愛くてもっと苛めたくなる
「何を言ってるかわからないなぁ」
「らって、まころあっ、あぁっ!」
だらしなく口元から涎をたらしながらひたすら喘ぐ
千恵の言葉が、だんだんろれつが回らなくなってきている
…そろそろ加減しないと後が怖いなぁ
そう思っても、まぁいいかとも思い、続ける
そして舌を千恵の中にねじ込み、中をなめる
「ひぃぁあ!らめっ!それらめ!」
…ああ、駄目だもう、僕が限界だ
行為を中断して自分のものを取り出し、千恵にあてがい
「いくよ?」
返答を待たずに貫いた
「あぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
中の自分がきゅっと締め付けられる
どうやら、入れたときの衝撃で達してしまったらしい
「大丈夫?」
さすがにすこし心配になりたずねる
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
千恵は放心したまま、荒い息を整えていた
ここでやっと理性がもどってくる
…またやりすぎたー!!
毎回毎回、僕が後悔するのはここまで来てからである
…なんで途中で止められないんだろうか


64 じうご sage 2007/05/22(火) 04:56:09 ID:qBRowxr/
心の中で彼女に謝りながら、そのまま千恵が回復するまで待つ
少し経ってから
千恵はこちらに振り向き自分の願いを伝える
「…動いても…いいよ…」
その言葉を合図にゆっくりと動き出す
先ほどまでとは打って変わって千恵を労わるように
千恵がゆっくり楽しめるように
「ふぁっ、はぁ、んっ!」
千恵は足を絡めてくる、そして言う
「…さっき、みたいに、強くしても、いいよ?」
「いや、でも…」
薄く蕩けた目でこちらを見つめて
「…お願い」
これには戻ってきていた理性が吹っ飛んだ
千恵の体を起こし自分と向き合うように座らせて、彼女の腰をつかみ、突いた
さっきまでと同じような激しさで、だけど気遣いながら
奥深くまで挿し込んで子宮口にあて、一気に引き抜き、また挿し込む
「ひぁっ!ひゃぁっ!ふぁっ!」
何度も何度も、同じことを繰り返す
そして
「千恵、僕、もう」
「ひぅっ!はぁ、いいよ、あぁっ!きて!」
あとはお互いに強く抱きしめあい、そして互いに限界を迎える
「くっ…」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
あとは、心地よい倦怠感に包まれながら、
落ちていく、落ちていく



目覚めた後に
少年が少女にひたすらけなされ、謝るのは…また、次のお話


65 じうご sage 2007/05/22(火) 04:59:30 ID:qBRowxr/
さて、朝っぱらから何をしてるのだろうか?
今日も仕事があるのに…
おまけに妙に…ねぇ←意味不明
細かいところへの突っ込みは―――やめてください
あ、やっぱり突っ込んでください
あと二人なんかいますが気にしないでください

66 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/22(火) 12:11:42 ID:WghAiY8o
GJ!
やっぱり貴方はネ申です!!

67 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/22(火) 18:01:59 ID:VqkKlvDF
じうご様GJ!!
そりゃそうと前スレラストの効果音無口についてだが俺的には超アリだと思う。

68 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/23(水) 02:19:08 ID:s4mkYxbN
急所にクリーンヒット!神GJ!

こうもクオリティ高いと中毒になってくるな。

69 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/23(水) 03:53:44 ID:8c2CjSY6
すいません。
突然ですが、保管庫を以下のサイトに移動しました。

ttp://mukuchi.yukigesho.com/


70 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/23(水) 21:17:29 ID:qCxxRyeV
>69

保管庫初めて覗いたけどデザイン格好よすぎて吹いたwww
保管も早いし見やすいし、何故今まで利用してなかったのか理解に苦しむ程の良サイトだ

71 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/23(水) 21:25:18 ID:kGpH5KOF
お疲れ様です
ヤンデレ保管庫からは独立したのかな

72 じうご sage 2007/05/23(水) 21:51:26 ID:gbxL0WXx
管理人様、お疲れ様です
前よりデザインがよくいいですね


73 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/23(水) 23:50:25 ID:d1Ve1lIy
>>69
乙〜
デザインが格好良いぜ!

>>72
逢えて光栄です

74 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/24(木) 05:54:19 ID:gpRUtdqE
長門

75 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/24(木) 18:39:21 ID:ASkCCPFM
俺も同じこと思ったw
が、それとイラストの素晴らしさとは関係ない。GJ!

76 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/24(木) 21:54:12 ID:Rf8veDgF
初めてこのスレ利用するのだが
お勧めの作品などを教えてくれないか?

77 名無しさん@ピンキー 2007/05/24(木) 23:57:33 ID:wDyaapQH
>>76
投下作品の中で? だったら





つ【全部】

78 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/25(金) 23:26:02 ID:VoA7UwHF
>>69
移転乙です。
一つ気になった事。

・・・・なぜインラインフレーム?

79 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/25(金) 23:31:24 ID:MplDChwS
>>78
かっこいいから無問題だと思うぞ
細かいことは気にしなーい

80 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/25(金) 23:37:07 ID:VoA7UwHF
まぁ、みんながそれで良いのなら良いけど




チラシの裏
俺としては少し広告が気になる
TableやDivタグがオススメ。
まあ、ここはWEBページ評価スレだから関係ないけどね!

81 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/26(土) 11:48:51 ID:0H5C4lJu
そろそろ誰か職人さん
投下してくれないかなぁ
少し贅沢か…
いやしかし…
誰か〜

82 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/26(土) 12:18:26 ID:0fLH2EOa
>>81
まぁ今エロは同じ職人さんのものしかないからな
保管されてる作品でも読んで
と待つんだ 

83 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/27(日) 09:24:10 ID:PGmlVtzD
>>81
気持ちは分かるが催促は良くないよ。
書き手にも生活があるんだし。

84 じうご sage 2007/05/27(日) 13:21:37 ID:P9Orllyw
また私でよければ書きますが
どうでしょうか?

85 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/27(日) 16:00:00 ID:WAtG5P5B
>>84
お願いします。

86 じうご sage 2007/05/27(日) 21:45:16 ID:G3YN9ttB
ID変わっているけどじうごです
以外にSS難航orz
今日中に投下は無理そうです
早くても明後日あたりに…

87 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/28(月) 01:21:59 ID:vCtDlt3H
待ってますよー。
真剣に一年くらいならwktkして待ってられそうなクオリティーですし。

88 名無しさん@ピンキー アグェ 2007/05/29(火) 03:13:38 ID:sMWKPDRW
たたき上げ

89 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/29(火) 05:22:47 ID:YeQNguTl
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1167820448/
>>281あたり

90 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/30(水) 01:46:41 ID:k6nMIJMI
>>89
別にこのサイトは無口二次元キャラスキーな
わけではないと思うぞ

91 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/30(水) 22:42:11 ID:owz02fgr
>>90
だが長門はいい。

92 90 sage 2007/05/30(水) 23:20:42 ID:KRDBfDwp
>>91
それには同意するが気に入ったキャラが陵辱されるのが
受け付けないのだよ
やはり愛がなきゃ
ここでする話じゃないな
スマソ


93 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/31(木) 05:35:22 ID:ArSt87e1
無口な女の子をダッチワイフのように犯したい

94 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/31(木) 11:53:37 ID:sYFCqrkv
それって普通にダッチワイフ買えばいいんじゃね?
てかダッチワイフのように犯すなら無口じゃなくてもいいわけでな
出直してこい

95 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/31(木) 19:48:23 ID:Bqhi/hCz
てかそんな無反応なのを襲ってもつまらないと
思うのだが…
やっぱ反応のある方が萌えると


96 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/31(木) 21:50:52 ID:v1wxe73s
で?

97 名無しさん@ピンキー sage 2007/05/31(木) 23:09:35 ID:Jhy2C5av
まぁそんな話は放っておいて
俺はじうご氏が投下するのを正座で待つぜ


98 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/01(金) 18:23:24 ID:ZuyC7gIv
なら俺は土下座で待つ

99 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/01(金) 18:56:39 ID:z3Y9b7HH
じゃあ俺は倒立で。

100 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/01(金) 19:09:40 ID:j7Q0s6Fd
100げと
俺は全裸で待とう

101 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/01(金) 19:38:33 ID:3FowOcwg
じゃあ、俺は蔵の刀に研磨剤まぶしながら待つぜ。

102 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/02(土) 09:18:53 ID:Dmd4Tvma
じゃあわしは糞、溜めてまつぜ

103 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/02(土) 10:29:25 ID:UymirNfZ
>>102
ちょww投下される前にお前死ぬぞwww

104 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/02(土) 13:11:30 ID:Wvh9UzZb
>>102
変態糞親父オッスオッス!自分、wktkいいすか?

105 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/02(土) 23:12:55 ID:IsPVyC9i
今日は投下されないのかなぁ
寝るか…

106 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/03(日) 06:23:46 ID:VjT0eC0q
騒がしい女の舌を引っこ抜いて無口な女にしてしまう

107 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/03(日) 11:58:45 ID:th2xHZVF
改造スレ池

108 名無しさん@ピンキー age 2007/06/03(日) 16:15:50 ID:rOuwsfeX
投下町。

109 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/03(日) 16:51:45 ID:VnqUR+Ri
>>102
俺は二週間溜めたことがある
お前も頑張れよ

110 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/04(月) 06:03:40 ID:/jPdkXUq
2週間がんばった無口な女の子に浣腸して
どんな顔するか見てみたい

111 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/04(月) 13:24:24 ID:1lnKRGOt
二週間性的な意味で我慢した無口な女の子の顔を見てみたい

112 名無しさん@ピンキー 2007/06/06(水) 00:39:27 ID:CaCg7Ov7
二週間性的な意味で我慢した無口な女の子に(ry

 という訳でただ今合宿から帰って来た次第。
 我が愛しの恋人にして幼馴染み、桜井 命(ミコト)にでも会いに行こうと思い立ち、玄関先に荷物を放り出して着替えようかと自室のドアノブに手をかけた時。
 それは起こった。というよりも真っ最中というべきか。
「…ふっ………んぅ、ぁ……」
 非常に艶の入った、聞き覚えのある声が耳に届いたのだ。
 勿論ここは自分の部屋であり、俺が着替えるために帰って来た場所も自分の部屋であることは間違いない。向かいにあるミコトの家と勘違いしたなんてことも断じてない。
つまりここは正真正銘俺の部屋なのである。
 まさか、と思って生唾を飲み込みつつドアを静かに開k―
 ――いた。
 いやがりました。俺のベッドの上で、掛け布団の向こう側の隅からはみ出た黒髪ロングが動いておりました。
 ついでに言うと合わせて布団ももぞもぞと…声の元栓もそこからのようで、その布団の下を想像するともう考えただけでもう俺鼻血出そう。
 落ち着くんだ、素数を数えて落ち着くんだと言い聞かせるけど最初に「1」が思い浮かんでしまってどうしようもない。
 いやそれよりまず何でここに?そして俺のベッドで自家発電とか何故?などと疑問が次々とうかんでは消え…
 あれ。いや。
 ちょ、ちょい待てミコト、お前そんなに激しく動いたりしたら布団が落ちt




 ( ω ) ゜ ゜




 布団吹っ飛んじゃった。

 いや、なんかもう。

 中身は思った通りだった訳で。や、イレギュラーあったんだけど。
 ミコトは上半身にの真っ白なワイシャツを着こんで、足の間、下着越しに俺の枕を挟んで、その…励んでいた。
 イレギュラーとはつまりここにあったのだ。つまり…
 …そのシャツ俺のじゃね?
「ひゅ…ぅん……ぁっ」
 冷房が効いた部屋で喘ぐその姿は可愛らしいものであったが、それと同時に成熟しつつある女性の艶やかさをも孕んでいた
 ドアが微風を受けてひとりでに開くのも、他人事のような気がして反応できなかった。きいぃ、と蝶つがいの軋む音がして、
それが耳に届いたのだろうミコトの動きが一瞬ストップする。
 すると一瞬の間をおいて、目に涙を溜めて振り返って、
「…お、そい…………馬鹿……ひぅっ………!」
 完熟トマトのように真っ赤っ赤な顔を見せながらそうおっしゃった。
 当然俺の理性が堪えられる訳もなく。
 ベッドに上りもうすっかり硬くなったモノを取り出すと、宣言もせずに一気に貫いた。
「んぁっ………ぁ…!」
 短く控え目に、でも高く響く澄んだ鳴き声。そこでミコトの方も抑制を失ったのか、なんと前後に腰を使いはじめた。
 くぐもった声を必死に殺しながら、それでも恥ずかしい願望をなんとかして満たそうと精一杯動く。ちゅ、ちゅっ、と水音が漏れて、それがきっかけになって俺も、乱暴に動き始めた。
「………ひぁ…ぁ、……あ……」
 腰を押し付けようとするのに合わせて突き出すと、可愛らしい小さな声をミコトはあげた。もうその声で何かが切れた俺は、ミコトがもう達しているのにもかかわらずそのまま思う存分n


 保守。

113 名無しさん@ピンキー 2007/06/06(水) 00:54:04 ID:As4ai+rg
>>112
いいね………GJ……

114 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/06(水) 01:08:15 ID:hON4AHJs
ワッフルワッフル

115 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/06(水) 01:21:45 ID:w69q4N+d
>>112永久に無口にされたくなくば続きを投下しろ!
いえ、してくださいませ

116 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/06(水) 07:18:47 ID:5V2JByte
まさかネタをSSに昇華してくれる猛者がいるとはな・・・…GJ!

117 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/06(水) 09:21:47 ID:j1zJOTaI
>>112

Gj…
続きを書いて下さい



118 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/07(木) 01:28:45 ID:g8geRNWd
>>112
某スレで以前あった豪華な保守ktkr
  、  ∩
( ゚∀゚)彡 保守! 保守!
  ⊂彡

119 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/07(木) 08:30:49 ID:Ov0Y+Hek
GJ!素晴らしい保守だ!

保守

120 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/07(木) 18:02:32 ID:JVcBV0XY
GJ!
これ保守ってレベルじゃねぇぞ!www

121 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/08(金) 00:09:42 ID:VfrXLTCe
>>112
保守ではなく書いてくださいGj!!


しかしそろそろ足がしびれてきたぜ
正座で待つのも限界だ
胡座にして職人様の投下を待つぜ

122 名無しさん@ピンキー 2007/06/08(金) 22:44:56 ID:kSfrjI/D
>>121
というか、土下座しててどんな内容か分らない
でもとりあえずGJ!!!
俺もそろそろ土下座やめようかな・・・

123 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 07:59:38 ID:eS4+UV2D
こんにちは、一ヶ月ぶりです。
ようやく縁シリーズの続編を投下できます。
…が、今回縁はあまり関係ありません。でも続編です。
楽しんでいただければ幸いです。

124 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:00:59 ID:eS4+UV2D
『言霊の力 神守の当主』



秋も深まる十月十日。
遠藤守はアパートの自室で眠っていた。
もう正午過ぎである。しかし青年はベッドの上で、うつ伏せのまま身じろぎ一つしない。
ほとんど死人のような様だが、これには彼なりの理由があった。
学校の課題を幾つか溜め込んでいたため、守は一昨日から昨日にかけて徹夜で片付けていたのだ。
提出したのが昨日の夕方。そのあと友人に無理やり合コンに付き合わされ、帰ってきたのが今朝の六時。守は疲労に満ちた体を柔らかい寝台に預けると、一分で眠りの園へと旅立った。
で、今に至る。
自業自得は世の常。こうして守は、決して望んではいなかったが、貴重な国民の祝日を休息に費やすこととなったのだった。
カーテンの隙間から、南中前の日の光が射し込んでいる。
細い射線を後頭部に浴びながら、守はひたすら熟睡する。
このまま夜まで眠り続け、その日は何事もなく終わるはずだった。


午後になってからしばらくして。
ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。
「……」
守は反応しない。
再びピンポーン、とのんびりした音が響く。
「……」
守は全く反応しない。
無視しているわけではない。睡眠が深すぎて気付かないのである。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
ゆったりしたリズムで鳴り続ける音に、守の頭が微かに動いた。
それをまるで感じ取ったかのように、音のリズムが速さを増す。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピポピポピポピポピポピポピポピポ
「──っ」
しつこく鳴り響く短連打音に、守は遂に目を覚ました。
「……なに?」
億劫に体を起こし、玄関へと顔を向ける。温厚な性格の彼だが、さすがに機嫌はよくない。小さくドアを睨むと、掠れの混じった声を上げた。
「はーいっ、今開けまーす!」
音が止まり、しん、と室内が静まる。
守は眠たい目をこすりながら、ドアへと歩み寄る。従姉妹の依子かもしれない。年下の少女の顔を思い浮かべながら、青年はロックを外し、ドアを押し開けた。
外にいた影の姿に、頭の中に思い描いた少女の姿がぴったり重なりかけた。
「…………え?」
守は呆けたような声を漏らした。重なったイメージが微妙にズレた。
ドアの向こうにいた人物は、依子にとてもよく似た女性だった。
鉱物の結晶のように整った美貌。透明感さえ漂わせる真っ白な肌。長い黒髪はどんな織物よりも柔らかく、針金が通っているかのように真っ直ぐな背筋が凛とした雰囲気を全身に添える。
ただ、依子とは違い、目の前の麗人はまったくの無表情だった。そのせいでどこか硬質な空気を作っている。
守はその空気にやや気圧されて、息を呑んだ。
が、すぐに口を開く。思わず相手の名を呟く。
「依澄さん……」
神守依澄(かみもりいすみ)は少しも表情を変えることなく、美しい会釈を返した。

125 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:03:31 ID:eS4+UV2D
神守家は古くから霊能の力を有する家系である。
世の中が科学という光に照らされていなかった時代、光の一つとなっていたのが彼らだ。霊能の力によって彼らは世の不安を鎮めていた。
皇族や将軍家も神守を重宝したという。
しかし、時代の流れが科学を選び、世界が理路整然と論理立てられていく中で、霊能は廃れ、立場を弱くしていった。
今の神守家は世の流れに逆行する存在だ。
だが、彼らは時代錯誤となっても必要な存在だった。なぜなら、科学が照らすことの出来ない領域は現代においても依然としてあったからである。
世が科学万能時代であることは確かな事実だったが、未だ辿り着けない域がある以上、神守家が滅ぶことはない。少なくとも今はまだ。
神守依澄はその神守家の現当主である。
歳は二十で、守と同い年だ。いわゆる幼馴染みで、幼年以来の縁がある。顔を会わせるのは二年ぶりだったが、その美しい容姿はまるで変わっていなかった。
依澄は六畳間の真ん中で、座布団の上に座っている。柔らかいクリーム色のブラウスに膝下のプリーツスカート。あまり主張をしない服装だ。
「紅茶でいい?」
「……」
依澄は無言で頷く。
守はダージリンのパックをキッチン下の棚から取り出し、来客用のカップに入れてお湯を注いだ。温かい香りが鼻孔をくすぐる。
座台の上に紅茶とクッキーを並べ、守は依澄の対面に座る。
「あ、冷めないうちに」
「……」
小さく頷くと、依澄はカップを口元に近付け、ゆっくりと飲んだ。
ひたすらに口を開かないが、守は慣れていた。昔から、正確には依澄が後継に選ばれた十二歳のときから、彼女は極端に口を開かないでいる。
喋れないわけではない。失語も羞恥もないし、内向的なわけでもない。ただ、『喋らない』。
依澄が以前説明したところでは、自身の霊力をいたずらに周りに発したくないのだそうだ。強い力を持つ彼女の言霊は周囲に霊的な影響をもたらしやすいので、意識して無口を通しているという。
もちろん制御は出来る。しかし依澄は自身の力を過信してはいないようで、言霊の制御よりも言葉の制御によって霊力を抑えている。たまに喋ることはあっても一言二言で済ませてしまう。
また、書いた文字にも力が宿るらしく、筆談という手段もとれない。
必然的に依澄のコミュニケーション手段はかなり制限されてしまうが、近しい者なら彼女の所作や顔色、雰囲気である程度察することが出来る。
守はこういうとき、自分から話を振ることによって会話をリードする。
「それにしてもひさしぶりだね。二年ぶりくらいかな? ぼくしばらく、そっちに帰ってないから」
「……」
依澄の目が少し細まる。怒っているように見えて、守は慌てた。
「……い、いや、色々忙しくて、あ、でも冬には帰るから、」
「……」
目が元に戻る。
守は意味もなく狼狽した。二日酔いのために頭の回りも鈍い。
依澄は鞄から小さな紙を二枚取り出す。
座卓の上に置かれたのは、映画の割引券。
「……これは?」
「……」
「いっしょに行こうってこと?」
依澄は頷く。
「それはいいけど……ここに来た理由ってまさかそれだけ?」
てっきり大事な用があると思っていたのだが。
「……」
依澄は無表情なまま立ち上がる。
そのまま守の目の前に寄ると、隣に静かに腰を下ろした。
「? なにを……」
細く綺麗な手が伸びた。
そのまま守の頬に触れる。温かい感触に守は固まる。
「依澄……さん」
「……疲れてますか?」
初めて依澄の口が開かれた。二年ぶりの清澄な声。
嬉しくなる気持ちを抑えて守は答える。
「あー、うん。昨日ちょっと友達に付き合ってずっと呑んでたからあんまり寝てなくて」
「……」

126 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:07:44 ID:eS4+UV2D
しばらくの沈黙の後、依澄は小さく猫手を作って、守の額をこつんと叩いた。
守はきょとんとなった。まったく痛くなかったが、不意の行為に戸惑う。
「な、なに?」
「……」
依澄はちらりとベッドを見やる。
多分、休めと言っているのだろう。気遣われていることに気付いて、守は首を振った。
「大丈夫だよ。さっきまで寝てたし、もう昼だから」
強がりを見せると逆に首を振られた。
「でもせっかく依澄さんが来てくれたのに、悪いよ」
「……」
依澄の無表情が微かに解けた。どこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
しかしすぐに元の顔に戻る。
虚空を見上げる依澄。何事かを考えているようだが、その思考はいまいち量れない。
そのとき守の腹が小さく鳴った。
依澄に驚いたような顔を向けられて、青年は顔を赤くする。
「……えーと…………」
「……」
依澄は一つ頷くと、小さな声で言った。
「食事……行きましょう」


依澄の提案で二人は駅前のラーメン屋に行った。
休日の昼下がりということもあってか、店内は結構な数の客がいた。十分ほど待って、カウンターの端に並んで座る。
クーラーが効いているので熱気はこもっていない。しかし厨房で忙しく動く従業員はとても暑そうだ。
「依澄さんは何にする?」
「……」
目の前の小さなメニューをしばらく見つめ、その中の一つを示す。チャーシューメンだ。
「すいません。塩ラーメンとチャーシューメンお願いします。あと餃子一人前」
依澄が首を傾げる。それに気付いて守は答えた。
「餃子好きでしょ?」
「……」
「いや、ぼくはいらない。今はあっさりしたものを食べたいから」
頭はだいぶ回ってきたが胃の方は違った。こってりした油ものは少しきつい。依澄は納得したように頷いた。
ラーメン屋に入ったのは依澄のリクエストがあったからである。昔から依澄の好物は麺類なのだ。あまり家で食べることはないので、こうして外食の機会があるとラーメン屋に入ることが多い。
「ラーメン久しぶり?」
依澄は肯定の頷き。
「ぼくも外で食べるのは久しぶりかな。家ではよくインスタント食べてるけど」
「……」
目が細まる。
「い、いや、ちゃんと栄養は考えてるよ?」
咄嗟に抗弁すると、依澄は顔を伏せた。
機嫌を損ねたかと思ったが、そうではないらしい。守はとりあえず話題を変える。
「えっと、こっちに来た理由って、ひょっとして仕事?」
霊能関係の仕事のついでに会いに来たのかもしれない。そんな予想を立てながら改めて尋ねると、依澄は小さく首を傾げた。
「え、違うの?」
今度は肩をすくめる。
その動作の意味を量りかねて、守は困惑した。
「あのー、依澄さん?」
呼び掛けても幼馴染みは答えない。
極端に喋らないことには慣れていたし、もう特性なのだと割り切っていたが、だからといって疎通に苦労するのは変わらない。守は思わずため息をついてしまう。
そのとき依澄が小さな声で囁いた。
「会いたかったから……」
小鳥のさえずりのように綺麗な声音を受けて、守は相手を見つめた。
「……そんな理由では、駄目ですか?」
真っ直ぐな視線を至近距離で受けて、つい息を呑む。

127 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:11:52 ID:eS4+UV2D
昔から知っている彼女の目。夜空のように深い色のそれに見つめられると、何も言えなくなってしまう。
彼女が口を開くとき、その言葉に宿る想いはいつも真剣だから。
今のもきっと本気の言葉だろう。若年ながら当主として忙しい日々を過ごす中、依澄はわざわざ会いに来てくれたのだ。
「ありがとう」
だから守は、短い言葉に想いを込めて返した。
依澄は再び顔を伏せる。頬が微かに赤い。
いい雰囲気だと思った。ラーメン屋では色気に欠けるが。
もっと声が聞きたいと思い、守は更に言葉を重ねようとする。
「依澄さ、」
「塩ラーメン、味噌ラーメン、餃子お待ちどおさまっ!」
カウンター越しの大声に呼び掛けがかき消された。湯気の上る丼が目の前に現れ、守はややのけぞる。
依澄がそそくさと箸を持つ。それを見て守は会話を諦めた。
麺をふー、ふー、と吹く依澄。
その様子が妙に幼く見えて可愛らしい。守はつい口許を緩める。
前に向き直るとおいしそうなラーメンが目に飛び込んできた。改めて空腹を自覚する。多少の二日酔いはあったが、食欲の方が勝った。
いただきます、と小さく呟き、守は細麺を勢いよくすする。あっさりした塩味が口の中に優しく広がった。


食事を終え、二人は街中を歩く。
行き先は映画館だ。駅からは少し離れた場所にある。
並んで歩く依澄の姿勢は変わらず綺麗だった。光沢を持つ長い黒髪が、足を進めるごとに優雅に揺れる。
神守は代々美人の家系だという。男女問わず容姿の美しい者が生まれている。
正確にはその時代の価値に合わせた容姿になるらしい。魂を安定させることで、体の方を魂の形に合わせるという話だが、その辺りの理屈は守にはわからない。
確かに依澄は、まるで作られたように美しかった。やはり神守家というのは普通の家とは違うのだろう。守も神守家とは繋がりのある人間だが、根っこの部分は少しもわかっていない。
わかるのは、その浮世離れした雰囲気は神守にしかないということだ。
だが、
「……?」
依澄が怪訝な目を向けてくる。ずっと黙っているのを見て心配したのかもしれない。
守はなんでもないよ、と首を振った。依澄は小さく首を傾げたが、やがて安心したように頷いた。
「……」
守は思う。だが、関係ないと。神守家が他の者達と一線を画しているのは明らかだったが、それは神守依澄という人間の個性を決定するものではない。
依澄は昔から守にとって大切な存在で、それだけは昔も今も変わらない。縁視(えにし)の力を持つあの幼馴染みと同様に。
そこで守は思い出す。依澄は果たして彼女に会いに行ったのだろうか。
だから訊いた。
「依澄さん、依子ちゃんには会いに行ったの?」
依澄は何の反応も見せなかった。
歩くスピードは変わらず、駅前のメインストリートを南に向かって二人は歩く。
守は立ち止まることも出来ずに、ただ依澄の反応を待つ。
「……会いません」
小さな声が哀しげに発された。
守は歩を止めない。
「……会いたくないの?」
「……」
依澄は首を振る。
「会いたいなら会えばいいよ。神守家と二人の仲は関係ないんだから」
「会えません……」
依澄の足が止まった。
守も合わせて立ち止まる。
「なんで」
「……」
うつ向く依澄。

128 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:14:13 ID:eS4+UV2D
理由がわからない。彼女達は守が二人に出会う前から一緒だったのに。
「あの子は……」
「え?」
「あの子は今……幸せですか?」
その言葉は真摯な響きを伴っていた。まるで体の鼓動に溶け合うような、胸に染み入る言葉だった。
守は答えた。
「うん。幸せだと思うよ。友達もいるし、よく笑うから」
「……」
それを聞いて、依澄は柔らかく微笑んだ。
どきりとする。その美しく優しい微笑は、頭を揺さぶるほどに綺麗だった。
初恋の情が思い起こされた。
呆然と立ち尽くす青年を置き去りにするように、依澄は再び歩き出す。
「え、依澄さん?」
慌てて追いかけ並ぶ守。
「あの、依子ちゃんには……」
依澄が顔を上げ、見つめてきた。
何も言わない。
ただ、母親のような慈愛ある目で、守を見つめる。
その目だけで言わんとしていることがわかってしまった。
依澄と依子の関係。それは比較が常になされる関係だった。神守家の次期当主候補として、競わなくてはならなかったからだ。
結果、依澄は当主の座に着き、依子は神守を出ることになった。決して望んでいたわけではないだろうが、依澄は依子を神守から追い出した形になった。
そのことで心を痛めたのは、ひょっとしたら依子よりも依澄の方だったかもしれない。仕方ないことと割り切るには、彼女は優しすぎた。
しかし今、依子はささやかながら幸せでいる。ならばわざわざ波風を起こす必要はない──そう依澄は考えているのだ。
本音を言えば会いたいに決まっている。しかし依澄が神守の当主である以上、それは出来ない。会うわけにはいかない。
「…………」
守個人としてはそんなしがらみにこだわらず、二人に仲良くしてほしかったが、それを言うのははばかられた。守には二人の間にある想いや溝を正確に測ることは出来ないから。
だから、守に出来ることはほとんどない。
「……!?」
守は無言で依澄の左手を掴んだ。掴んだ手から驚きが伝わってきた。
手を引いて歩く。白く小さな手はやっぱり女の子の手だった。
「デートだから、ね。イヤ……かな?」
「……っ」
依澄は戸惑いの表情を見せる。
守に出来ることなど、今日一日依澄に楽しんでもらえるよう頑張ることくらいだった。
「ほら、あそこだよ」
見えてきた映画館を示す。まばらな数の人々がちらほら入っていく。時期的に人の出入りは少ないようだが、見る側からすればむしろ好ましい。
依澄は握られた手をほどくこともせずに、じっと守を見つめた。やがて前に向き直ると、きゅ、と手を握り返した。
手の平の肌触りは温かく心地よかった。


映画の内容はホラーだった。
幽霊が題材だったが、巧みなカメラワークで作られた雰囲気は確かに怖かった。特殊メイクを施された幽霊達は見た目にもグロテスクで、客の心理を正確に突いてくる。
なかなかの出来映えだと守は思った。ただ、ホラーというよりはスプラッターの要素が強いように感じた。
それでも怖いことに変わりはない。実際館内には悲鳴が響き、製作者の狙い通りの反応が見てとれた。
しかし、
「……」
右に座っている依澄は、まったくの平常だった。無表情は微塵も崩れず、静かにスクリーンを見ている。
左手は守の右手を握ったままだ。外からずっと繋いだままで、守が力を緩めても依澄は離そうとはしなかった。
その手には余計な力が一切入っていない。
体が震えたりすることもなく、依澄は淡々と映画を観ている。
怖くないのだろうか、と考えて、すぐに愚問だと気付く。怖いはずがない。彼女は霊能の力を持った神守の当主なのだ。どんなに傑作品でも、彼女にとってはたいしたものにはならない。
スクリーンの中に映るそれが現実を超えることはありえないのだから。
依澄は人形のような目でストーリーを追う。彼女の目に、それはどう映っているのだろうか。
守も倣うように前方の作品を見つめた。
特に最初ほど恐怖は感じなかった。

129 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:16:44 ID:eS4+UV2D
夕方、二人はショッピングモールをあてもなく歩いていた。
適当に冷やかした店々で守は服やアクセサリーを勧めたが、依澄は首を振った。特に買いたいものはないらしく、試着さえしなかった。
スタイルのいい彼女なら大抵のものなら着こなしてしまうだろうに。守は少しだけ残念に思ったが、時折楽しそうに微笑む姿を見ていると、まあいいかという気がしてくる。
手はまだ繋いでいる。
移動の際にやむをえず離すことはあったが、依澄が繋ぎ直してくるのでそのままにしている。感触が心地よいので守から離す気もない。
こうしていると恋人同士みたいで、守は気恥ずかしくなった。幼馴染みでもなければ話しかけることさえ出来ないだろう美人と、手を繋いで歩いているのだ。意識して当然だった。今更だが。
二人はあらかたモール内を歩き終えると外に出た。西からオレンジの照明が世界を照らしていた。
依澄が前を指差したので顔を向けると、公園の入り口が見えた。入りたいのか尋ねると、大きく頷いた。
中に入ると中央の時計台が五時を示していた。台の前の噴水が夕焼けを寂しく反射している。奥の芝生では子ども達がサッカーボールを蹴っていた。他にも人はいたが、まばらで全体的に静かだ。
守は依澄の手を引き、近くのベンチに座った。
依澄が小さく息をつく。それを見て守は問いかける。
「疲れた?」
依澄はふるふると首を振った。
「ぼくはちょっと疲れたかな。久しぶりだったからね、依澄さんと過ごすのも」
どういう意味? と、依澄の目が険しくなる。
「依澄さんと一緒にいると楽しくて充実するからさ。楽しい疲れ、っていうか」「……」
依澄は何も言わない。
そのとき、秋風が公園を強く吹き抜けた。
肌寒い風の感触に、依澄が体を小さく震わせる。
守も微かに身震いする。上着の前を抑えようとして、
「え?」
急に幼馴染みの体が寄りかかってきた。
手どころか腕全体を絡めてきた。長い黒髪が守の肩から胸にかけてふわりと広がり、甘い匂いが鼻を刺激した。
「い、依澄さん?」
「……」
無言のまま身を寄せる依澄。
彼女が左側でよかったと守は思った。右側だったら心臓の早鐘を気取られていたに違いない。
「……寒くなってきたね」
「……」
「そろそろ帰ろうか」
「……」
口を閉ざしたままの依澄に守は困り果てた。
と、そこで大事なことに思い至る。
「依澄さん、今日は日帰りだよね?」
すっかり失念していたが、思い込んでいたのも確かだ。ただ守に会いに来るためだけに宿泊場所を用意しているとは思えない。
依澄はしばらくなんの反応も見せなかった。
やがて、
「もう少しだけ……付き合って下さい」
消え入りそうなくらいに小さな声が、胸元から聞こえた。
「……え?」
「やっぱり……これだけじゃ足りないみたい……だから」
ぼそぼそと呟く言葉の意味を守は測りかねる。
「えっと……」
何とはなしに漏らした声に答えるように、依澄は言った。
「戻りましょう……部屋に」


部屋のベッドに座る依澄の姿を見て、守は強烈な既視感を覚えた。
ついこの間の夏の夜、別の女の子が同じように座っていたのを思い出す。あの少女も言葉なき者だった。喋らないのと喋れないのとでは決定的な差異があったが、似た状況ではある。
あのときは相手にそれなりの理由があった。しかし今、依澄の意図はまるで謎である。
時刻は午後七時を回っている。
ここに泊まる気だろうか。たまに依子が泊まっていくが、最近はそれもない。あそこまで無防備なのもどうかと思うが、依澄は依子とは違う。そうでなくても依澄は女の子なのに。いや依子もそうだが。
軽く混乱していることに気付き、小さく頭を振る。
「依澄さん、そろそろ準備しないと帰れなくなるよ」
「……」
依澄はなぜか眉根を寄せる。
「……泊まっても、……いいですか?」
「……」
守は右手で頭を抑えた。予想通りすぎて困る。
その頼みだけは聞きたくなかった。いくら幼馴染みといえ、依澄は守にとって、決して意識しないではいられない相手なのに。

130 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:21:16 ID:eS4+UV2D
「……いくらなんでも不用意だよ」
ため息は沈み込むように深く、濃い。
「ぼくだって男なんだ。少しは気を付けるべきだよ。相手のことを」
「……?」
「……初恋の相手なんだから」
目の前の幼馴染みがずっと好きだった。幼い頃から、ただ好きだった。
だが今の守には別に想い人が存在する。その気持ちに相反するような些細な過去のくすぶりを、今更再燃させてどうなるというのか。
ひょっとしたら、今でも好きかもしれないのに。
「だからさ、誤解を招く発言はやめた方がいいってこと。若い男女が簡単に同じ部屋に泊まるなんて……」
親父臭い説教を始める守。依澄は肩をすくめ、軽くため息をつく。
それからおもむろに立ち上がった。
そのまま守の目前に歩み寄る。
「……?」
僅かにのけぞる。何か嫌な予感が。
「いす──」
名を呼ぼうとして、その言葉は外に出ていかなかった。
依澄が、守の口を自らのそれで塞いだからだ。
「──!?」
「──」
何を、なんで、
脳細胞が混乱し、沸騰する。同時に密着する体の柔らかさがさらにそれを助長する。
たっぷり十秒は費やし、依澄はようやく口を離す。
守は呆然と立ち尽くす。
耳元で依澄の囁きが響く。
『抱いて下さい……守くんにしか頼めないことなんです』
何がだ。理由もわからないままそんなこと出来るわけがない。
そう思ったはずなのに。
守は不思議とその声に逆らえなかった。
「あ……」
依澄の手が守の両腕をがっしと捕えた。
体になんだか力が入らない。夢の中みたいに思い通りにならない。
彼女の細腕に引かれた体は、簡単にベッドに引き倒された。
「……」
依澄の端正な顔が極端に近い。
麻痺したように重い頭が小さな抵抗の意識を生む。しかしすぐに掻き消え、脳が何かに塗り潰される。
(依子ちゃん……)
想い人の名を呟いたのは本当に無意識のことだった。脳に侵食してくる何かを振り払いたくて、必死に抵抗を試みた末にたまたま出てきただけにすぎない。
瞬間、頭の中が急速に晴れた。
体を離した依澄が顔面蒼白になっていた。
守は何がなんだかわからず、体を起こしてぼんやりと依澄を見やる。
「わた、し……なんてことを……」
依澄は悲壮な声を漏らすと、その目に大粒の涙が浮いた。
今日一番の驚きだった。
依澄が泣く姿を見るのは初めてだった。昔から感情を露骨に見せたりしない彼女は、人前で涙など絶対に流さなかった。
それが、今、顔を歪めて泣いている。
またも理由はわからないが、ほっとくことも出来ないので守はおそるおそる尋ねる。
「どうしたの、依澄さん?」
「……、……」
声を抑えて泣き続ける依澄。
守は何も出来ずにしばらくおろおろしていた。こういうとき、男は女にどんな言葉をかけてやるべきなのだろう。
結局、じっと見守ることしか出来ない。
涙が治まってきたようで、依澄がゆっくりと口を開いた。
「……言霊なんて使うつもりはなかったのに、使ってしまいました……ごめんなさい」
「……え?」
言霊を、使った?
思い返す。ではさっきの感覚は、彼女の、
「抱いてもらいたいのは本当です。でもそれはきちんと頼み込むつもりでした。なのにあんな──」
彼女の声には自らを責める思いが混じっていた。

131 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:24:02 ID:eS4+UV2D
『言霊』とは一般的に言葉に宿る霊力のことを指す。神守でもそれは同じだが、依澄の言う言霊とは、もう少し狭い意味合いを持つ。
依澄の放つ言霊は、自身の感情を乗せることが出来るのだ。
普通の人間にもある程度それは出来るが、彼女の言霊は桁違いだ。なぜなら、相手の心に直接自分の感情を侵蝕させるほどの力を持つからだ。
──わかりやすく言うと、『強制的に相手を従わせる』といったところだろうか。
圧倒的な霊力を乗せて感情をぶつける。すると相手はその感情にあてられて、自らを保てなくなる。
狂おしく愛せば相手は自分のみに溺愛し、激烈な殺意を抱けば相手は即座に自殺する。それをただ言葉のみで成しえてしまう。
相手の意思を魂レベルで操る。それが彼女の言霊だった。
普段彼女が滅多に口を開かないのもこのためだ。感情が乗らないように制御することは可能だが、決して自由自在ではないので、人との会話は特に気を付けている。
誰かを魂ごと操るなど、相手の尊厳を奪う行為だから。神守の当主として、やってはいけないことだから。
彼女にとって、その戒めはとても重要なものだった。
なのに、
「あなたが依子を好きだということは知っています。それに嫉妬していたのかもしれません。……いいえ、それは関係なくて、ただあなたを自分のものにしたいだけだったのかもしれません」
「……」
黙って聞く。今は言葉をうまく操っているようだ。
「でも、そんなの許されません。誰であっても、ましてや守くんになんて……」
「……」
沈黙の帳が下りた。
依澄はうつむいて動かない。ひどく落ち込んだその様子は儚げだ。
守はそれをただ見つめる。
胸が強く高鳴っている。不思議なくらいに気持ちが揺さぶられている。
手を伸ばした。
「あ……」
そのまま彼女の右手に重ねると、その口から息を切るように短い声が漏れた。
守は一つだけ尋ねた。
「ぼくに抱かれることが、今、君に必要なことなの?」
依澄は赤く腫れた目をぼんやりとさまよわせたが、やがて小さく頷いた。
それを見て守は微かに笑む。
「……ありがとうね」
依澄は唖然として固まっていた。
「なんでそれが必要なのかわからないけど、ぼくを頼ってくれてるんだよね」
「……」
「それは、ちょっと嬉しいかな。依澄さん、誰かに頼ることないから」
「……でも、私は守くんに言霊を……」
「気にしてないよ。というか、いいんじゃない? たまには」
信じられないとでも言いたげに目を見開く依澄。
「言霊って、依澄さんの感情が素直に出てるわけだから、いいことだと思うよ。誰だって感情でものを言うのに、君だけそれが出来ないなんて、そんなのあんまりだよ」
「……」
「それに、今の依澄さんはすごく綺麗だから」
守は涙で崩れた顔を見つめる。
美しい顔が台無しだった。だが、今の彼女の方が魅力的だと思った。普段の人形のようなたたずまいより、ずっと人間味を感じる。
「……」
「……」
また、沈黙。
守はつい目を逸らす。恥ずかしい台詞を続けたせいで、どうにも視線を合わせづらかった。しかし、こうやって静かな時間が流れるのも気まずい。
「……」
依澄は何の反応も見せない。

132 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:28:46 ID:eS4+UV2D
結局、先に折れたのは守の方だった。
「あの、さ」
「……?」
「依澄さんは、ぼくのことが好きなの?」
「……」
一瞬、躊躇するように目を逸らした。が、やがてこくりと頷いた。
たまらなく可愛く見えた。
ごくりと生唾を呑み込む。
「依澄さん」
呼び掛けに答えるのを待たず、守はすっ、と動いた。
彼女の細身を一気に引き倒し、間髪入れずに覆い被さった。
「──!?」
予想外だったのか、依澄は呆気に取られている。
「抱きたい。依澄さんをぼくのものにしたい」
素直に自分の欲望を吐露する。
依澄は少しだけ目を細める。
「な、なに?」
「依子が怒るかもしれませんね」
不意打ちの言葉に激しく狼狽した。
「え……ええっ!?」
「女たらし」
「い、いや、それは、」
急激に背中に冷や汗が流れる。焦りで言葉がうまく出ていかない。
「……冗談です」
面白そうに依澄が意地悪く笑う。
「二人だけの秘密にしましょう……今日だけですから」
「……了解」
自分はひょっとして女に勝てない性質なのだろうか。依子にも静梨にも、依澄にも勝てる気がしない。
依澄の澄んだ目が守を優しく射抜く。
吸い込まれるように顔を寄せ、守はそのみずみずしい唇にゆっくりと口付けた。
微かに花の香りがした。


ブラウスを脱がそうとすると、依澄は体をよじった。
「……駄目、です」
「え? でも」
脱がさないと先には進めない。守は戸惑ったが、依澄は首を振る。
「……着たままで」
「それが必要なの?」
頷かれる。残念に思ったが、仕方がない。
「ボタンくらいは外していい?」
依澄の了承を確認して、守はブラウスのボタンを外していく。
白いブラジャーが形のいい胸を覆っている。果物を包む発泡スチロールのように、果肉を包んでいる。
依澄が上半身を軽く浮かせた。守は背中に腕を回し、ホックを外そうとする。だが、うまくいかない。
考えてみれば人の下着を剥ぐのは初めてだ。うまくいかないのも当たり前かもしれない。
依澄は赤面しながらもおとなしく待っている。
ようやく外して現れた乳房は、守の脳細胞を弾けさせるに十分すぎるものだった。
仰向きでもふっくらと張りのある胸。白い丘の頂点にある突起物とその周りは綺麗な桃色で、思わず吸い付きたくなる。この歳でピンク色って、結構珍しいんじゃないか。
依澄は不安げな眼差しを向けてくる。顔はずっと紅潮していて、緊張が解けていないようだ。
守は双房を両手で包み込むように触る。依澄の体が一瞬震えた。
つきたてのモチのように柔らかい感触だった。ふにふにとした肌触りは直接脳を揺さぶるようで、心酔しきってしまうほど心地よい。
力一杯揉みしだきたいという願望が沸き起こる。しかし目の前の乳房は潰れ千切れてしまうのではないかと危惧するほどにか弱く感じる。
「……ん……っ」
幼馴染みの口から小さく息が漏れる。
守はしばらく感触を楽しむと、先端に口を近付けた。
「!」
右の乳首に吸い付いた瞬間、依澄が悲鳴を上げた。
柔らかい体の中でピンポイントに固い部分を、ついばむように口でいじる。コリコリした感触は軟骨か何かのようだ。

133 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:31:12 ID:eS4+UV2D
乳首だけではなく乳輪全体を舐め回すと、悩ましげな声が上がった。
「……っ、…………ん……んん…………んっ」
途切れ途切れに放たれる声は、部屋の空気に浸透するように消えていく。守が聞いたことのない、依澄の恥ずかしい声。
耳を打つ度に青年の興奮も上昇していく。
左の乳首にも舌を這わせ、交互に刺激を送り込む。依澄は頭を小さく左右に振った。普段の冷静な姿はどこにもない。
上気してきたのか、肌が赤みを帯びてきた。胸は頂点を中心に唾液で濡れ、部屋の明かりを薄く返す。
吐息が色っぽく艶を増していく。それに合わせて徐々に激しく揉み込んでいく。弾力の強さになかば感動し、さらに行為に没頭した。
舌を離し、今度は首筋に狙いを定める。喉からうなじ近くまで舐めていく。
「は……あっ……」
首を責められると本能的に口が開いてしまうようで、くすぐったそうな声が幾分強くこぼれた。
汗がじっとりとにじみ出てきている。舐め取るとしょっぱさが舌に広がった。
「っ……は…………んんっ!」
首筋からさらに上に、滑るように舌を持っていった。顎先から口元へ。唇を再度奪うと、依澄の目がゆっくりと閉じていった。
守は舌を依澄の口の中にねじ込むと、受け入れた相手のそれと深く絡み合った。お互いの唾液が入り混じり、二つの唇と舌が摩擦を立てる度にぴちゃぴちゃと卑猥な音がした。
ディープキスを長く長く交わし合いながら、一方で両胸をぐいぐい揉みしだく。依澄の喉がごくりと鳴るのが聞こえた。乳首を指で強く押し潰すと、喉の震えが強まった。
一分近く絡み合った口をようやく離すと、酸欠寸前の二人は同時に荒い呼吸を行った。
「……はっ、……はっ、……はっ、」
「……は……っ、……は……っ……」
ぼんやりと目を開ける依澄。
「……は……っ…………ひあっ!?」
不意に頓狂な声を上げた。
守がスカートの中に右手を突っ込み、股間を撫でたためだ。
「柔らかいな……」
太股から股間にかけて撫であげていく守。その肌触りは干したての布団のように柔らかく、気持ちいい。
スカートをめくり上げる。白い下着と、負けないくらい白い肌が眩しく飛び込んできた。蠱惑的な脚線美は芸術的な感動さえ沸き立たせる。
守はショーツに手をかけた。膝から足首までずらしていくと、脚が艶めかしくうごめいた。
恥ずかしさに依澄は脚を閉じようとする。守は両手でそれを防ぎ、大事なところが見えるように横に開いた。
「……」
泣きそうな顔で依澄は目を背ける。
外気に晒された秘部は既に濡れていた。
恥毛の下に見える秘唇は透明な粘液で妖しく煌めいていた。先程のディープキスや胸への愛撫がよっぽど効いたのだろうか。熱の籠った雌の匂いが強く鼻に広がる。
指で筋をなぞる。温かい液がまとわりつく。秘所をよく見ようと顔を近付けると、両脚が小さく暴れた。
「ちょ、依澄さんっ」
顔を上げると依澄が真っ赤になって睨んできていた。あまり恐くない。というか逆に可愛く見える。
「ちゃんとほぐさないとあとで痛いかもしれないよ」
「……」
しばしの間。
「だから少しだけ我慢していてほしいんだけど……」
「……ずるい」
守は眉根を寄せた。
「……は?」
「守くんばかりずるいです……私も、したいのに」
「…………」
守は自身の姿を見直す。まだ服は一枚も脱いでいない。
「あー……じゃあ、その……」
「……」
軽く頭を掻いてから、守はおもむろに服を脱ぎ始めた。

134 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:32:42 ID:eS4+UV2D
守はジーンズを下ろし、下半身を露出させた。
上は薄いシャツ一枚だ。中途半端に服を着ている依澄と比べると、だいぶ裸に近い。
硬化した逸物が縦に揺れる。依澄が小さく息を呑んだ。
二人は膝立ちで向かい合うと、互いの下腹部に手を伸ばした。守の手が依澄の陰部を、依澄の手が守の陰茎を、それぞれ捉える。そして同時にしごき始めた。
依澄の柔らかい手が逸物を上下にしごく。
(うわ……ヤバい)
人にされるとこんなにも刺激が強いのか。たどたどしい手つきが、逆に手加減がわからない分気持ちいい。
このままされるがままになっているのもいいかもしれない。しかしそれでは依澄の体を楽しめない。思い直して愛撫を開始する。
守の右人差し指が膣口の中へ侵入する。愛液が染み出てくる内部をゆっくりと進むと、依澄が体をびくりと硬直させる。瞬間的に強烈な締め付けが指を襲った。
強引に指を曲げ、側襞を擦る。
「あっ」
依澄が顔を歪めた。短い悲鳴と共に体をくの字に曲げ、守の胸に寄りかかる。
依澄の握力が弱まった。守はだんだん擦る勢いを強くしていく。愛液が湧き出すように指に伝っていく。量は増える一方だ。
「ふ……あ…………ぁ、あん……っ」
涎を垂らしながら恍惚の表情を浮かべる幼馴染み。もう陰茎をろくに握ることも出来ず、体中に快楽の波が襲っているようだ。
親指で小さな豆部分をいじってやると、いよいよ叫声を上げた。
「んん──っ! あぁ!」
びくんっ、と痙攣するように体を震わせ、依澄は前のめりに倒れた。守は慌てて支える。脱力した体は、重力に身を任せて何の抵抗感もなかった。
慎重にベッドに横たえると、荒い息を吐きながら依澄がぼう、っと虚空を見上げた。
守は絶頂を迎えた幼馴染みの姿に軽く後悔した。ちょっとやりすぎたように思った。
乱れた衣服を孔雀のように広げ、依澄はテンポの速い呼吸を続ける。
しばらく待っていると、小さな声で何かを囁いた。
「……」
うまく聞き取れない。
「え、なに?」
「早く……入れて、下さい」
ストレートな申し出に守は絶句した。
「早く……」
イったばかりなのにテンション自体は上がりっぱなしなのだろうか。こんな状態になっても言霊は抑えているようだが、あまり持ちそうにない。
ならばさっさと終わらせて、彼女を楽にしてあげよう。
だがそこで大事なことに気付く。
「そういえばゴムがない」
静梨としたときも避妊だけはしっかりしていた。あのときは静梨があらかじめ用意してくれたが、さすがに依澄が都合よく持っているとは思えない。
依澄は落ち着いてきた息を止め、さらりと言った。
「そのまま……どうぞ」
「……いやいやいやいや」
簡単に言わないでほしい。大事なことなのに。
依澄はゆっくりと首を振る。
「大丈夫……受精させません」
「……は?」
依澄が軽く説明する。神守の者は魂を肉体に干渉させ、ある程度肉体を操ることが出来る。それを応用して受精しないように排卵を抑えることが出来るらしい。
にわかには信じられない話だ。
「だから大丈夫……って?」
頷く。大真面目に本気の目だ。
こういうときはどうすればいいのだろうか。今から買いに行った方がいいのかもしれない。しかし待たせるのも悪い気がする。
「……」
最終的な決心を生み出したのは、依澄の重圧的な目だったかもしれない。上目遣いに見つめられて、耐えられなくなったのだ。
「わかった。そのまま入れるよ」
依澄は嬉しげに微笑み、こくりと頷いた。

135 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:36:23 ID:eS4+UV2D
正常位から一気に奥まで貫いた。
「────────!!」
激しい叫声が耳をつんざいた。初めてだったのかもしれない。
「初めて?」
「……っ」
昼間やられた猫手で、再度叩かれた。
やっぱり痛くない。不意に嬉しくなる。
「依澄さんの初めて、もらったんだね」
「……」
じと目で睨まれても威圧感はない。むしろ逆効果だ。
守は一呼吸おくと、ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
最初に訪れた感覚は痛みに近かった。ただでさえ狭い処女の穴が、動きに抵抗するように収縮を重ねてくる。
ゆっくりとカタツムリのように押し進め、逸物を根元まで挿入する。それから腰を引いて、亀頭だけを中に残して引き抜く。処女の中は火のように熱く、締め付けは万力のようだった。
襞々が肉棒全体に絡み付く。何か別の動物にくわえ込まれているような感覚に、守の脳はくらくら揺れた。
「……あっ……あっ……いっ、あっ、ああっ、あっ」
依澄の喘ぎが次第に昂っていく。痛みはあるだろう。だがそれを押し返してしまうほどの快感も、別に起こっているように見えた。
内を擦りあげられている感覚はどのようなものなのか、守にはわからない。だがきっと気持ちいいのだろう。そうでなければこんなに積極的に脚を絡めてくるはずがない。
開きっぱなしの口に何度目かのキスを送る。愛しい想いをぶつけるように、唇をマイナスの距離にまで縮め合う。
胸の辺りに乳房が当たる。心臓の鼓動が微かに伝わり、互いの興奮が伝染しそうに感じた。
「ふっ、ふうっ」
「あん……あっ、ん……あっ、あんっ」
一段と腰の動きが速まる。依然としてきついことに変わりはないが、抵抗はかなり弱まっていた。
依澄の喘ぎが甲高く響く。
たまらない気持ちよさが全身を駆け巡った。ぐちゃ、ぐちゃ、と粘液がいやらしい音を立て、淫靡さに拍車をかけた。
初恋の相手が胸元で悶えている。その事実が守をさらに興奮させ、逸物に強烈な射精感を促した。
「依澄さん、そろそろ……」
耳元で囁くが、依澄は喘ぎに喘いでいるせいか答えない。
このままでは中に出してしまう。依澄の説明があったとはいえ、やはり多少の危惧があった。
数秒後、守は出そうになって抜く準備をした。腰をおもいっきり引こうと力を込め、
瞬間、依澄に強く抱き締められた。
「い、依澄さん!?」
「んっ、あっ、あぁ、あぁんっ」
あまりの急な事態に対応出来ず、守は勢いよく子宮内に精の塊を放出した。
「あぁぁ────────っっ!!」
部屋全体を震わせるような叫び声を上げ、依澄は二度目の絶頂を迎える。
あまりの気持ちよさに守は抜くことが出来ない。断続的に続く射精の波を、全て依澄の胎内に注ぎ込んでいく。
依澄の体が急速に弛緩していく。守も精液を吐き出し終えると、糸が切れたように依澄の上に倒れ込んだ。
しばらく何も言えないまま、互いの体を抱き合っていた。


それは、行為が終わって一分後のことだった。
守はまだ依澄の秘裂に己を埋め込んだままでいた。
そのとき、依澄が荒い息を抑えて右手を動かした。
そして守の頭に掌を置くと、小さく撫で回した。
守は突然の依澄の行動にきょとんとなったが、疲れていたので好きにさせた。
疲労で眠くなりそうな守の耳に、綺麗な声が囁く。
「ありがとう……特別に見せてあげます」
そう、聞こえた。
何を、と問おうとした守の目に、不思議なものが飛び込んできた。
依澄の服が急に淡い光を放ち始めたのだ。
(え?)
沸き起こる疑問を無視して、依澄の服は月のように白く輝く。

136 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:38:27 ID:eS4+UV2D
次の瞬間、ブラウスから抜け出るように、『女性の影』が現れた。
「!?」
驚いて依澄から体を離す。しおれた肉棒が抜け、秘唇から白い液がこぼれる。
女性の影は長い髪をなびかせ、依澄に小さく頭を下げる。依澄は微笑み、控え目に手を振った。
『安らかに……』
特別な響きのこもった言葉を女性に届かせる。それを聞いた女性の影は、やがて空間に拡散するように消えていった。
守は呆気に取られてまばたきすら忘れた。
「あの人はこの服に縛られていた幽霊です」
「幽……霊」
依澄は頷き、そして話した。
あの女性は恋人に裏切られて半年前に殺された人物であること。
成仏出来ずに生前お気に入りだった服に縛られてしまったこと。
それを成仏させるために、依澄が依頼を受けたこと。
依澄が服を着て、自身の魂と繋ぐことで感覚を共有させたこと。
守と一日を過ごすことで、依澄の感覚を通して今一度人の温もりを知ってもらおうとしたこと。
そして──それは成功し、たった今彼女は成仏したこと。
ぽつぽつと小さな声で話し終えた依澄は、服を着直してから、守に深々と頭を下げた。
守は呆然と虚空を見上げていたが、やがてがっくりと肩を落とし、のろのろと服を着始めた。
「結局……依澄さんに乗せられた、ってこと?」
依澄は申し訳なさそうに顔を曇らせる。
「デートで十分だと思っていたんですけど、甘かったです。でも、あの方を救いたかったんです」
「だからって、処女まで失うことないのに……」
気持ちよかったし、役得といえばそうだが、何か釈然としない。
依澄は微笑する。
「守くん以外の人に、初めてなんてあげたくないですけどね」
「……本気で言ってる?」
さあ、とからかいの笑みを向けてくる依澄。
守は落胆のため息をついた。
「……帰ります。そろそろ」
守はいきなりの言葉に顔を上げた。てっきり泊まるものだとばかり思っていたが。
「今から?」
頷く依澄。元の無口に戻り始めていた。
「まあ時間はあるから今からでも大丈夫だろうけど。駅まで送るよ」
しかし依澄は首を振った。
「でも、」
「ゆっくり休んで下さい。それと、妹を……依子をよろしくお願いします」
有無を言わせない口調に、守は仕方なく頷く。
「それじゃ、また。次は隠し事なしで来てほしいよ。まんまと引っ掛かったからね」
「……」
依澄の目が不意に細まる。
その様子にどこか気圧されて、守はひきつった笑みを浮かべる。
「な、なに?」
依澄がちょいちょいと手招きした。嫌な予感がしたが、とりあえず言われた通りに近付く。
目の前まで寄ると、依澄は機嫌の悪そうな目を向けてきた。
瞬間、猫手でまた額を小突かれた。
「……」
どう反応すればいいのかわからず、結局固まった。
「……人を嘘つきみたいに……」
ぼそぼそと呟かれ、守は意味もなく焦る。
「いや、別に嘘つきだなんて思ってないって。ただ、ちょっとしてやられたなぁ、って」
「……」
気まずい沈黙が流れる。
次の瞬間、困り果てた守の頬に依澄は軽くキスをした。
「え?」
驚いて飛び退る守に、依澄はにこりと微笑んだ。
「好きです。その気持ちだけは、本当ですよ」
浮かべた微笑は夜月のように魅力的だった。

137 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 08:43:39 ID:eS4+UV2D
以上で投下完了です。
話自体はまだ続きます。多分あと二回か三回くらい。
新キャラ登場ですが、彼女は制約無口っ娘です。
歳がギリギリ二十代なので「娘」ではないかも。

138 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 08:47:13 ID:LnDxovY6
リアルタイムGJ!!

139 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 09:16:24 ID:WNXZFOYr
GJ!GJ!!

140 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 09:39:39 ID:tEAl6ulw
味噌…

141 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 13:28:38 ID:7tJezjm6
GJ!GJ!
やはりうまいですね。


142 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 16:08:15 ID:6ewgpquB
よーし守君!! 是非姉妹丼にチャレンジだぁ!!

143 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/06/09(土) 18:22:15 ID:eS4+UV2D
>>140
やっべ、間違えたw指摘どうもです。
保管庫に入れるときは以下の訂正お願いします管理人さん。

×味噌ラーメン

○チャーシュー麺

144 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/09(土) 22:54:32 ID:HvSBFx8W
かおるさとー氏GJ!

>>140
てかお前よくそんな細かいとこに気がつくなwwww

145 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/10(日) 02:02:42 ID:kY2e50JW
GJ!!
姉妹共々会ったらどうなることやら。
あと
>受精しないように俳卵を抑えることが出来るらしい。
逆に考えると夢が広がりんぐ。

146 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/10(日) 03:49:10 ID:j5oWYlI7
>>145
依澄さん黒いよ依澄さん

147 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/10(日) 19:35:50 ID:tg/s8hTG
ぐぼああああアッー最高

148 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/10(日) 22:23:23 ID:8udVxwfc
GJ

149 名無しさん@ピンキー 2007/06/10(日) 23:52:54 ID:wheIBbJD
GJ!

150 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/11(月) 00:43:13 ID:1RhArrva
かなりへたくそだなこれはwww
おまいらこんなのにGjす
るのかよwwwレベル低いな
さすが低脳な凡人w
とにかく考えることが低俗w
ー腹痛いぜおまえらwきっとこじきを
様呼ばわりするんだろうなw
神様に作り直してもらえw

151 名無しさん@ピンキー 2007/06/11(月) 00:46:47 ID:NzKmOXA5
気持ちいいか?



お前の腟、最高だ。



うっ!出すぞ!



最高だったよ。




と、ダッチワイフに話かける少年A

152 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/11(月) 01:54:03 ID:8cQ8JXll
とにかくまずGJ!
いいねー。この無口娘見てるとなんか心が暖かくなってくる。
癒されました。ありがとう

153 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/11(月) 02:15:56 ID:3o6Phf3r
>>152
一瞬>>151のダッチワイフに癒されたのかとオモタw

154 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/11(月) 16:10:09 ID:IFKEz8dj
>>150
すごいツンデレさんだw

155 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/11(月) 23:20:32 ID:A0jXCJsK
>>154
あ、ほんとだw
素直にかけばいいのに…

156 名無しさん@ピンキー 2007/06/13(水) 00:36:33 ID:QJ2wdMEO
>>155
恥ずかしがり屋さんなんだよ。
それはいいとして、かおるさとー様GJ!!

157 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/13(水) 18:35:07 ID:0mujc/a8
人はそれを ツンデレ と呼ぶ

158 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/13(水) 23:12:04 ID:vjoKyWS7
さてかおるさとー様GJ!!
やっぱうまいですねー
そんなに長いのがかけるようになりたい…


159 名無しさん@ピンキー 2007/06/13(水) 23:23:47 ID:cZYcTwYW
できれば無口で男っぽいクールな女の子希望…

160 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/14(木) 11:10:35 ID:RwDX3ro4
>>159
いいなそれ

161 名無しさん@ピンキー 2007/06/16(土) 05:27:35 ID:4P1I6BQT
あげあげ

162 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/17(日) 21:04:46 ID:QKbjNAt1


163 名無しさん@ピンキー 2007/06/17(日) 23:26:00 ID:fbQqkTeF
「どうしてこうなったんだろうな……」
「……………キミのせい」
「ですよねぇ」
そう、確かに俺のせいだ。
朝トイレに行きたくて、寝ぼけ眼で扉を開けたら居候先の三姉妹の三女のコイツ、三河冬美が偶然にも用を足していて…
「慌てて飛び出ようとしたらドアノブぶち壊して出れなくなったんですよね…」
携帯も無いから助けも呼べないし、まぁ春香さんか夏希様が来るだろ…と思ってたら。
「あの二人は、今日は、いない」
「だもんなぁ……」
あ〜ヤバい、結局おしっこしてないから出したい、でも出せない。
「…………したい?」
へ?何を?エッチなことならがっつかなくても出てから…
「バカ………」
そうやって真っ赤になって照れるところがまた可愛いなぁ……ってヤバい、流石に限界。
「悪い…させてもらうわ…」
……ってこっちジロジロ見ないで下さいません?
「………………気にしない、気にしない」
いや、そういう弱みを握ったぞ的な笑いはよしなさい。
そして何処か違うところを向きなさい、お願いだから向いてぇ!!
「……………じゃあ、お願い、聞いて?」
聞く!聞くから!人間の尊厳を損なわない限りの範囲で聞くから!
「…………………保守……して……」


164 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/17(日) 23:38:46 ID:ZgXsuAgM
三姉妹で、無口で、保守で、色々要素詰め込んであるとかそういうことよりなにより、

秋がどこにいったのかkwsk

165 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/18(月) 00:30:22 ID:FaaPY+bY
男の名前に「秋」が入っているのではないかと妄想。秋太郎とか。

166 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/18(月) 00:34:16 ID:bJKOVkUf
母親,もしくは長女の娘が秋

167 名無しさん@ピンキー 2007/06/18(月) 01:13:59 ID:b9FQRKIj
もうすぐ秋

168 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/18(月) 10:27:12 ID:VFUbE7Ls
そこで無口・実直な従姉の秋奈が家にくる、ですよ

169 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/19(火) 00:53:46 ID:IgngU3Y2
・・・・・・・・・投下・・・

170 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/20(水) 01:30:38 ID:03+s7VpZ
どう考えても口を動かしてるように見えないけどなぜか考えている事が分かる
実は彼女は超能力者でそれが原因で超展開・・・・

171 名無しさん@ピンキー 2007/06/20(水) 15:33:14 ID:G1lC1zPg
>>169
・・・・・・・・え?投下するんじゃないの?

172 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/20(水) 21:09:09 ID:uzd+zGq8
…………投下…………(ずっと待ってるから……)

ってことじゃね?

173 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/20(水) 23:18:48 ID:n5kAesnn
いやいや、投下したものの、声が小さすぎて………や空白になってるだけなんだろう。

174 名無しさん@ピンキー 2007/06/21(木) 00:24:52 ID:jgwwhOpU
「みんな行っちゃったな…」
「………大丈夫」
「なにがだよ?」
「……私たちが保守するから…」

175 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 06:04:51 ID:dMzcsxTI
二人きりの世界に空気を読まず俺が乱入

176 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 17:43:39 ID:8tBWnQTF
よしわかった!そんなことより野球しようぜ!

177 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 18:00:39 ID:lWIkveEy
そんなことより野球拳しようぜ!

178 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 22:17:13 ID:PF4de8jj
「じゃあ……脱ぐ……」
「おう」
「…………あっち、向いてて」
「ヤダ」
「…………」
「恥ずかしいなら俺が脱がしてあげよっか?」
「……………………いじわる」
「野球拳負けたんだからしかたないだろ。で、脱ぎたい? それとも脱がされたい?」
「………………………………脱がせて」
「…………」
「…………」
「……脱がすだけじゃすまないかもしれないぞ」
「……。…………いい、よ」
「……一回じゃ終わんないかも」
「…………ん」
「……悪い。ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「……ん、大好き」
「…………おりゃ」
「ん────」


なんとなく書いてみた。
無口っ娘のラブラブ野球拳は、俺の中でこんな感じ。

179 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 22:56:11 ID:7FWrgF/S
>>178
経緯とかをもっとkwsk!!!

180 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:30:50 ID:RbAA2ocp
流れを読まずに投下します
【濡れ場4割半】 【クセあり一人称】 【落語調】 【萌えない】 【パラレル世界】
話の元ネタは1スレ目で出た『応挙の幽霊』という落語です
上のどれかに拒絶反応が出た方、トリップ付けてるのでお手数ですがNGワード登録して下さい

181 1/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:31:28 ID:RbAA2ocp
ちょいとそこのあんた。
そう、今こっちを向いた二枚目のお兄さん。お前さんのことですよ。ちょいとあっしの話を聞いてくれませんか?
なにせまだ一度も人に言った事がねえもんでね、ちいーっとばかり長くなるかも知らんが、
そこまで時間はとりやしません。ちらりと見えるその立派な一物よりもずっと、ずうっと短い小咄でございやす。

おっ、下もいける口ですかい? そいつはいい。落ちで霜が降りることもなさそうですわ。
え、何を勝手に話を進めてると? あっしの話なんて聞く気は無い?
まあまあそう言いなさんな。かっかかっかと熱くならずに、これでも一杯ぐいっと飲んで気を静めてくだせえ。
こんなもん飲んじゃ余計に熱くなりやすかね? へっへっへ。

そういえば今から話す小咄も、こんな風に酌をしたことから始まるのでござい――


    おうきょのれい


浮世絵にも美人画やら春画やら色々と種類があるでしょう?
あっしはそういうもんを描いて食い扶持にしてるんですが、この通り手よりも口の方がよく動くんですわ。
なので、他人の画を安く買って高く売る、そういった副業もしている訳です。
ああ、だからと言って朝気付いたらおたくの家に見覚えの無い掛け軸がぶら下がってるなんて事はこれっぽちもありやせんから安心しなすってくだせえ。
あきんど商売はあくまで副業でありやす。そっちの稼ぎの方が大きかった事は気にせんでおきましょう。

その日のあっしは一段と気分が良かった。まんまるいお月様の下でね、ういーひっくとふらふらと覚束ない足取りで下宿先へと歩いていやした。
何故かってそれを話すには、おてんと様が顔を出してた頃まで戻らにゃなりませんな。
日差しがぎんぎんと強い昼過ぎでした。
口に立派な髭を生やした身なりの良い壮年の方があっしの所へすたすたやって来て、持っていた画の一枚を眺め始めたんでさ。

こっちも商売なもんでね、あちらさんが画を見定めてる間にあっしらもその人となりを見極める訳です。
あ、この人は財布の口が緩そうだとか、しっかりした目を持ってるからそうそう吹っ掛けられそうにねえな、てな具合でさ。
その髭丈夫は着ているもんもそうですが、背筋がぴんと伸びておりやした。それを見りゃこっちもぴんと来るもんです。
ははあ、この人は金を持ってるなと。
なになに、死んだじじいも背筋だけは物差しが一本入っているみてえにしゃんとしていたが、うちは見ての通りの貧乏だと?
折り目正しい人は由緒も正しいってね、まあそういった事が多いんでやんす。おじい様もきっと立派な方だったんですよ。

金持ちってえのは、目が確かでも裕福だからちょっとばかし高めに言ってもその値でぽんと払うような気概があるもんでさ。
こっちとしちゃあ願ってもないおいしい相手。何か買ってくれないかと首を伸ばして待っておりやした。

口元に蓄えた髭と同じように金もたんまり持っていたんでしょうかね、やがてその年配は自慢の髭を撫でながらこちらを一瞥してこう言ったんでやす。
これを戴けないか。値段はそちらの言い値で良いね、とな。

182 2/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:33:06 ID:RbAA2ocp
思わずあっしも顔のにやけが止まりませんで。洒落のせいでも、高い値で画が売れる事でもありません。
その髭紳士には悪いですが、もっと気の利いた話をする人もおりやしたし、絵に高値が付く事もそこまで喜ぶ程珍しいもんじゃあねえんです。
あっしがなんで上機嫌になったかっていうと、いくんちか時間をまた戻さにゃなりませんな。
売れた画は他の行商から買い取った画だったんですがね、他の絵師の画かというとそうではない。
かと言ってあっしの描いた画なのかというと、これまた事情が違うんでありやすが。

実はその画は幽霊画だったんでさ。頭がぱっくり裂けて血を垂らした女がうらめしやー、てえな具合の。
それ自体はとうの昔に仕入れたものなんですが、これがさっぱり売り手が付かない。
年季が入っていてねえ、とても巧く描けた良い品なんですがね、なにしろ幽霊なもんで逆に凄みが出て恐ろしく不気味な画でして。
家族連れがふらりと立ち寄れば、それを一目みた子供が泣き出して、
大の大人でさえ気味悪がって手に取ろうとも目を向けようともしないでそそくさとその場を出てしまう程でさ。
そのせいで他の画も売れなくなってきたもんだから、あっしもなんでこんな画を買ったのか頭を抱え始めた所です。
誰か知り合いの行商に押し付けようにもうまく行かないし、かといって燃やして処分するなんてのはもっての他。祟られたら大変でやんす。

なんとかせにゃあ、このままのたれ死んでしまうぞと無い知恵絞った結果、一つの名案を思いつきましてね、早速それに取り掛かりやした。
先に言ったように、まあこれがその後の明暗を分けたって訳なんでさ。
要は、あっしの売り方じゃあなくて、元の画がわりいのは分かってやしたから、それをちょちょいと変えてやりゃあいいでないかと。そう思ったんですな。
幸いあっしは絵描きですしね。そりゃあ腕は大した事ありゃせんですが、その幽霊画よりも悪くない。
失敗して下手な画になったらなったで、元の気味悪さよりはましだろうなんて気楽に考えとったんでさ。

まず岩絵の具をたんと使いましてね、血で真っ赤な顔に白粉をたっぷりと塗りたくってやりました。そりゃあもう豪快にたんまりと。
燃やすのは駄目でそれは良いってのはおかしい? なるほど、そりゃそうだ。
しかしその時のあっしにゃあそんな事これっぽっちも頭に無かったんだなあ。
元々出来のわりい頭ですから、一つこりゃいいやと思いついたらあんまり他の事には回らんようになってるんでありやしょう。

とにかくあっしは、どんどんと絵筆を走らせやした。
白粉なんて言葉使いやしたが本当にその通りで、絵を描くというよりかは年頃の娘っこに化粧してやるような気持ちです。
あれやこれやと施していく内に、なんだかこのうすっきみわりい女にも情がわいてきやしてね、それはそれは丁寧にやったもんです。
手は進まねえが、口は軽やかなもんで、赤い口紅をついーっと塗れば、おうお嬢さんなかなかべっぴんだねえ。
乱れた髪はあっしの腕じゃあどうしようもなかったんですが、そんな所も、たらりとしな垂れかかる黒髪がそそるじゃねえかあ。

なんて、一言一言、口説き落とす勢いで嘯きながら、これより気い張り詰めてやった事はねえんじゃねえかってくらい、丹念に。

183 3/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:34:24 ID:RbAA2ocp
上っていたお天道様もだいぶ下に来た頃でさ。
ようやく筆を置いてその女子を見てみるとまあ、なんということでしょう。
呪詛を吐き散らしていた幽霊の姿は、匠の手によって物静かそうな、とっても素敵な令嬢に変貌を遂げました。ってな具合でさ。
自分で言うのもなんですが、なかなかどうして美しい仕上がりでありやした。
見せろと言われてもその画はもうありゃあせんですがね、見事な変わりっぷりに和田んところのおアキさんも度肝を抜くにちげえねえ優麗な姿でしたよ。
自分の知らない人を出すんじゃねえって? ふひひ、すいやせん。

まぁ半分あっしが描いたようなもんですから、そんな画をどんな値がしても買うと言ってくださる方が現れた訳です。
何度も言っていやすが、あっしはそんな巧い絵描きでねえもんで、それが初めての出来事だったんでさ。もう嬉しいのなんのって。
その髭男爵は今は持ち合わせがねえってんで明日取りに来るという話で、その夜は祝い酒をやってたっつー訳です。
ふぅ。やっと話が追いつきやした。

一杯やらかした後、酔いも宵も良い加減。手に持った一升瓶を見ては酒の肴もなしに一生楽しめるなあ、などと馬鹿な事考えて一笑してやした。
寝床に帰ればそこは独り身の悲しい所。あっしの他にゃあ誰もいない、真っ暗な寝床がお出迎えって訳でさあ。
いつもはがらんとした空っぽの風景を見るたんびに、はあと一つ溜め息を付くんですがね。
その日はそんな事は気にならん位、代わりに酒臭いげっぷが出るってな具合に満ち足りた気持ちでさあ。
いやあ所帯を持った今じゃそんな事は気が狂っても起きやせん。既に狂ってのかもしれやせんがね。へっへっへ。

蝋燭に火を点けて部屋でもう一辺飲みなおそうと思った所、昼間の掛け軸が目に付きやした。
そうです、あっしがおめかしした美人でさあ。考えてみりゃあこうやって美味い酒が呑めるのもこのお嬢のお陰な訳で、
徳利を持ってきやしてね、掛け軸の前にお供えした訳です。ありがてえありがてえ、神さま仏さま紙美人さまでやんす。

瓶の口の一滴まで飲み干すと、なにせ腹がたっぷんたぷんと膨れるまで飲みやしたもんですから、ちょいと用を足しに厠へ行ったんです。
その前の日まではね、きいきいとうるさい床だと文句垂れていたんでやすが、
それすらもあっしの前途を祝ってるように聞こえてきてね、本当かなりのもんでした。
そんで水だけ垂らして部屋へ戻ろうと首をそっちへ向けたんですが、背筋にぞくぞくっと寒気が走りました。

え、また小便に行きたくなかったんだろって? んなあほな。あっしの膀胱はさっき空けた一升瓶の如く一滴残らず出し尽くしやした。
いやあそれもおかしいですね。悪寒がした時あっしは恥ずかしながらあまりの事に酔いも吹っ飛び、小便もちびっちまいやしたから。

薄暗い部屋、音も立てずにひっそりと、いつのまにか見知らぬ女がそこに座っておりました。

184 4/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:35:24 ID:RbAA2ocp
歯はがたがたと震えまして下を向けば膝もがくがくと揺れておりやす。酒が回って前後不覚という訳では決してございません。
きいきいと音を立てるぼろっちい床が何も音を立てねえっていったらもう思い浮かべるものは一つしかありやせん。
蝋燭も風でいつの間にか消えちまって、お月様も姿を隠れてる。墨汁をこぼしたみてえな視界の中で、青白い肌がやけに目立っておりやす。
どうやらあちらさんはあっしには気付いてないようで、このまま身体をくるりと翻してそのまま逃げちまおうと思ったんですが、
ふと掛け軸の事が頭に過ぎりやした。

その晩盛大に飲み散らかしたんで路銀はほとんど残っちゃいねえどころか、明日払うなんて調子の良い事言って周りの連中にも振舞っちまったんでさあ。
おてんと様が昇った後、部屋に戻っても掛け軸が無事である保証は一体どこにありましょう?
なんとか掛け軸だけでも持ってかんと首を括ることになっちめえぞと踏みとどまりやした。

臆病ですからね、幽霊は怖い。前に進むにゃあ相当の覚悟が必要でした。
前を行けば暗い部屋の中に幽霊がいる。後ろを行けばこの先の人生真っ暗だと、どちらも暗闇を歩くことにゃあ変わりねえ。
こんなでっぷりと膨らんだ腹を括れば口からぴゅうっと酒が吹き出ちまうだろうが首よりはましだろうって、やっとのことで決心がつきました。

一歩あちらさんへ踏み出しやした。そうすっとやっぱりこの木の床がきいっと甲高い音を立てる。
あちらは簪も挿さずに伸ばし放題の黒髪を揺らして、こちらに顔を上げました。
するとあっしも堪らなくなって、ひいっと女みてえな声を上げちまう。
その時のびびりようと言ったらね、このままお月様と一緒に雲隠れしちまうかって心境でさあ。

しかしあっしは逃げやせんでした。いやいや歌舞伎や絵巻に出てくるような勇敢さは持ち合わせておりません。
ただの小便ちびりの中年でやんす。
いくら小心者といえど、さっきの悲鳴はさすがに大きすぎるんでねえかと思ったら、
え? お前はこんな所で見栄を張るなって?
いやいやその時張っていたのは気だけでやんす。

えっと、どこまで話しましたっけ? ああそうだそうだ。

声がやけに大きいと訝しんで目を細めると、肩を震わせるあちらさんの姿が見えるじゃありませんか。
悲鳴を上げたのはこっちだけじゃあ無かったんでさあ。
なんでえ、怖がりの幽霊なんて絵の描けねえ絵描きみてえじゃねえかと親近感が湧いてきまして。

暗がりに腹を括って飛び込めば、吹き出されたのは焼酎ではなく笑い声。ってな具合でやんす。


どっとはらい。

185 名無しさん@ピンキー 2007/06/21(木) 23:35:33 ID:jgwwhOpU
「そういえばお前の誕生日ってもうすぐだよな?」
「……覚えてたんだ…」
「自分の誕生日に物くれた奴の誕生日くらい覚えるさ、で、何か欲しいものあるか?」
「…………リボン」
「リボン?でもお前、髪短いから結ぶ必要ないんじゃない?」
「…長くするからいい」
「なんでいまさら髪長くする必要が…」
「……………」
「え?」

「…あなたは髪が長い方が好き…でしょ?」

186 5/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:36:36 ID:RbAA2ocp
……それで腹を抱えて一件落着、めでたしめでたしって訳にゃあいきません。

ひとしきり笑った後、改めてあちらさんを見てみる。暗がりではっきりとは分からないが、その姿を見た時思わず目をそらしちまいました。

目を向けられない、と言っても件の幽霊画とは訳がちげえ。
はっと息を飲むような――あれだけ酒を飲んだ後にお前はまだ飲むのかってえ茶々はやめてくだせえ――
美人というのはこういう人のことを言うんでしょうね、雪のように白く澄んだ肌。どんな夜よりも黒くて長い髪。
絶世の美女。それでいてどこか懐かしいような親しみがある。

自分が唾を飲み込む音が聞こえちまうくらい静かな夜に、盛大な夢を見ました。夢としか思えなかったし、こんな話は嘘っぱちにしか聞こえんでしょう。
頭ん中を覗き見されたのかと疑う程の自分好みの絶世の美女が、小汚い宿の一角、そこにちょこんと座ってる。
呆けている内にあちらさんがもごもごと口を動かしました。
と思ったら身に纏っていた上等な着物をはらりと脱ぎ始めるじゃあありませんか。

「……おう……きょ……の……れい……です」
あちらさんの声がか細いからか、こちらが興奮しているからか、
そん時あっしの耳で聞き取れたのはそれだけでして、何を言ってるのか分からない。
自分で言うからには霊であるんでしょうが、おうきょとは、はてさて。地名か人名かしらんと訝るも無知ゆえに分からぬ。
しかしねえ、花街のどんな女より華のある娘っこの裸が目の前でこてんと布団の上に転がれば、それもしょうがないことですわ。
声とおんなじように控えめな胸が二つ、ほっそりとした肢体についておりやして、
肉も付いてないのに部屋一杯に広がるような色気を、そりゃもうぷんぷんと出されちゃあ、こちらの鼻息もふんふん出るってもんでさあ。

黒髪から覗かせる綺麗な顔は、
あちらさんは口紅をしているようでぷっくりと柔らかそうな唇には白い肌に映えるだろうこれまた綺麗な赤で染まっていたんだがあ、
そいつと同じくらい頬も色づいていてね、恥ずかしそうに眉をへの字にしてこっちを見ていやした。
肩が微妙に震えているのは、安宿に吹き抜ける夜風の寒さだけじゃあどうにも無いようで、その姿はどう穿った見方をしても遊女にゃあ見えねえ。
こっちは何十何百ってえ人を相手に商売してきてますからね、眼には自信があった。
絵描きなのに、口やら眼やらが良くても困ったものですが、とにかくこちらの娘っこは美人局ではなさそうだ。

それにねえ、別にこの続きを見れるのなら夢でも狐の仕業でも別にいいかという気分に不思議となっておったのです。

育ちの良さそうなお嬢さんが、茹でた蛸みてえに真っ赤になりながらもここまでしてくれてるのに何もしないってのは逆に失礼。
据え膳食わぬは絵師の恥ってえ訳でね、はだけた肌に手をすっと伸ばしやした。

187 6/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:37:50 ID:RbAA2ocp
上質の紙でもここまで白くて粗のないものをあっしは触ったことがありやせん。冬の雪のような肢体は、蒸し暑い夏の夜よりも熱を帯びておりました。
小振りな乳房に手を這わせると、びくんと顎が上下する。
気持ちいいのかと訊ねてみると、はしたないと思われるのが嫌だったんでしょうかね、口をぎゅっとつぐんで顔を左右にふるふると振っている。
こういう娘っこには、ついつい意地悪をしたくなってしまうもんですよねえ?
そうけえ、手を乗せるだけでそんなに気持ちよかったのかあ、こりゃあよっぽどの好き者なのかもしらんなあと、
独り言のように呟くと、手で顔を覆い隠してしまいました。その夜のお月様のようにあちらさんの顔はすっぽり隠れて全く見えやせん。

あっしはそういった性癖の持ち主じゃあねえもんで、いやあ本当に違うんですよ、いじめるのはここいらでやめにして、
あっしの手の中に収められたままのそれをいじる事にしました。
ふにょふにょと柔らかい揉み心地はさしずめ大福といった所でしょうか。それでいて搗きたての餅のように手に吸い付いて離れない。
ところで、自分がそうとは思ってえねえのにそうなってしまった、直そうと思っているんだが一向に直らねえ、ってなこたあ、ありませんかね?
あっしですか? あっしゃあこの口ですかね、閉じよう閉じようって手で塞いでいてもいつの間にか開いちまいますからね。
黒髪を垂らしたあちらさんもそういった、人の力じゃあどうにもなんねえもんを持っておられてね、
潤んだ瞳、ぎゅっと噛んで薄桃どころか白くなっている唇、借りてきた猫のようにおとなしく縮こまった肩、
どこを見渡しても私をいじめて下さいと言っているように見えるんでさあ。本人は米粒ほどにも口をきかねえのに、不思議なもんです。

そんな風に否定しちゃあいるが胸は正直だねえ、もっと触ってほしいってこっちの手にひっ付いてくるぞと罵ってみる。
あちらさんがあの調子なもんで、ちょっと前にいじめんのはよそうと決めたばっかなのにもう破っちまいました。
あちらの表情は分からないが、耳や首が真っ赤に色づいていくのが見てとれました。
そりゃあもうはっきりと変わりましてね、はて、もう秋が来たのかと頭を傾げたくれえです。

しかしそりゃあ気のせいでいくら触っていても飽きはまったく訪れません。厚みはねえのにふかふかと心地よい体躯をしっかりと指で堪能していきます。
あちらの身体は相当に繊細なようで、触った場所にゃあ薄く手の跡が残るんですわ。それが面白くって、ぺたぺたといたる所に手をつけました。
それは初雪の、まだ誰も踏み入れていない白絨毯に足跡をつける楽しさにも似ていました。
時が過ぎて昼になる頃にはきっと大勢の人がそこを通って茶色い泥道になっているんだろうが、
そうなる前に自分が初めて歩いたんだってえ印をそこかしこに残しておきたかったんでさあ。

しっかし、あっしばかり愉しんであちらはそうでないじゃあ具合が悪い。
この通り顔は隠れちまってるし、喘ぎ声一つだしやしない。しゅっと肉の付いていないきれいな顎もあれっきり上下しない。
まいった、これじゃああちらさんが悦んでいるかなんて分からんぞ。
乳房を餅をこねる様にいじりながら困っていると何やら硬いくりくりとした感触が指に伝わってきました。
これは何ぞやと指先で転がしてみると、あちらのすらりと伸びた足がぴんと棒のように固まりました。
これは只事ではないと思わず手を引っ込める。暗闇でもその色合いの良さが分かる桃色の小山がぴんと二つ反り立っていました。
美味しそうなその実を口に含む。するとあちらのくびれた腰が釣り上げられた魚のように大きく跳ねました。
昼は淑女で夜は娼婦ってかあ。しかし娼婦でもこんな良い反応はせんだろう。
などと思っていると、口に出ちまったのか、あちらさんの黒髪が左右に宙を舞っておりやした。

188 名無しさん@ピンキー 2007/06/21(木) 23:39:05 ID:jgwwhOpU
うっ…
なんか邪魔しちゃった…

189 7/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:39:16 ID:RbAA2ocp
ひととおり撫で回してみれば、どこを見渡しても白い所なんてありゃあしなくなっておりやした。
と言いましても、雪解けのぬかるんだ泥道が出来た訳じゃあありません。
紅葉山のように赤く火照った身体。乳房の上の桜咲く二つの小山。
あちらさんは相も変わらずその見目麗しい顔すら見せちゃあくれませんが、
盛り上がっているのはあなただけじゃありませんってえ口にせずとも態度で教えてくれています。

はやる気持ちを落ち着かせながら、ふんどしに手を掛ける。すると憤怒した一物が外に出ます。
憤怒てえのは言葉のあやで、そんだけ興奮していたっつうことでさあ。
下の頭は怒っているのに、ほんまもんの頭の方は絶世の美女を前にして狂喜乱舞しておるっちゅうのも変な気がしますな。
口吸いもまだと言われてもなんら不思議じゃねえくれえにうぶなあちらさんの反応が気になる所ですがあ、
何も見ぬこと見猿の如し、うんともすんとも言わぬ。

肉はついていないが、痩けてもいない、美しい頬をナニで叩いてみる。諸行無常の響きはねえが、ぺちぺちと瑞々しい音がなりました。
何が、ってナニがなんですが、自分のほっぺたに当てられているのか気になったのか、目を覆っていた細い指がのそのそと開いていきやす。
指と指の間からでもその形の良さが伝わってくるつぶらな瞳がその正体を捉えると、ぱっとまた指を閉じてしまいました。
けれども、結構な興味がおありのようで、頬に当てていましたから、それはちょうど顔の横にあったわけなんですが、首を回して真正面へと持ってきました。
微々たるもんですが、開いたり閉じたり、手がもごもごと動いている。

気になるのなら手をどかして見たらいいのでないかとこちらが提案する。
当然のことながら、返事は来やせん。
腕ずくでとっぱらっちまえば一番手っ取り早かったんでしょうが、その時はどうしてかそんな考えはこれっぽちも頭にありやしませんで、
いや無理にとは言わんが、嫌なら別に構わん、といった風な言葉を取繕うみたいに添えましてね、
字面から見んとなかなかぶっきらぼうですが、あっしは紳士ですからね、絵を売る時に出すいかにも媚びへつらっている調子で言っとりましたよ。
じいいいと、けらの鳴き声が聞こえてきました。
夜の間中ずっと鳴き声が響いているから、その日も、もうずっと前から鳴いていたんでしょうね、
そんな事にも気づかねえ位に気をとられていたのかと驚きやした。

しかし、けらは本当にうるさい。
蚊に刺されみたいなもんで一旦気づいちまうと無視するこたあ出来んようになってしまう。
じいい、じいいとずっと響かせているその声の主に、よくもまあ飽きもせずに鳴き続けるものだと、
呆れが感心に変わって、どれ位の時が経った頃でしょうか。

障子の向こうの外の景色を、ぼうっと眺めていた両の目を座敷に戻すと、久しぶりに顔をお出しになられたあちらさんがおりました。

190 8/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:40:25 ID:RbAA2ocp
先程の愛撫やら言葉責めやらで、羞恥や快感という染料が綯い交ぜになってあちらさんの、
肉も付いていないのに不思議とぽってりとした、こちらの欲情をそそる頬を鮮やかな赤で染め上げておりやす。
熱に浮かされたような、陶酔した表情であっしの肉棒に釘付けの黒髪美人に、
これからあなたの中に入るものだ、しっかりと挨拶をしときなせえと一言声を掛ける。

するとあちらさんはよっぽどそちらの方面の知識がねえのか、くいっと頭を斜めに傾げてこちらを見上げるので、
これをそそへと入れても痛くないように口に含んで舐めるのだと説明すると、お天道様の下じゃあやらねえようなはしたない事だというのは分かるらしく、
赤い顔がぼんっと更に赤みを増して、ふるふると駄々をこねる童のように首を降る。
けれど、押しには弱いのか、こちらが退かないのを察すると目をぎゅっとつむり、意を決し小さな口をめいっぱい開けて顔を股座へと近づけやした。

目を瞑っていたせいで顔は見当違いの軌道を描き、鼻の穴に男根が擦り付けられる結果となってしまいやす。
そうか、そんなに牡の臭いが好きか、そう嘲るように呟くと滅相も無いというような感じでぱっと目を開き顔を肉棒から離しました。
あちらさんの筋の通った鼻についた我慢汁が、尿道口とあちらさんとを繋ぐ橋を掛けて、それが月明かりに照らされて、やけにいやらしく輝いておりました。

どうせ一夜限りの夢なのだから、自分の不細工な一物を咥えてもらうつもりだったのですが、それを見たらこちらも我慢の限界が来ちまいましてねえ、
飢えた獣のような乱暴な手付きであちらさんの恥部をまさぐりました。
するとどうだろう、もう何もする必要がねえ位にくちゅくちゅと濡れそぼっておるではありゃせんか。
その水気を帯びた音ときたら、あっしが厠で小を足した時よりも大きいほどでさあ。
人の身体は、まああちらさんが何者かはひとまず置いておいて、ここまで水分に満ちているのかと、ただ単純に感心して思わずその旨を口から漏れると、
悪意がないのがわかる分、あちらさんにはよっぽど耐え切れない言葉だったのでしょうね、
自分はそんなはしたない女ではないと主張するみてえに、布団を使ってごしごしと自分のそそを拭き始めました。

それが新たな刺激になってしまうのか、何度拭いても愛液がとめどなく溢れてくるものだから、布団が栗の花の匂いを漂わせる液体でしなしなと、
洗濯をして乾かさなかったもののようにべちゃりとたっぷりと水を含んでしまいやした。
あちらさんは目を伏せて長い睫が夜だというのに影を作り、しくしくと泣き出してしまったではありませんか。
何と言っていいか分からず、肩を出来る限り優しく叩いて慰めて、ようやくあちらさんの涙も枯れると、ようやく男根を挿し入れることとなりやした。

なにせあちらさんは妙齢の、美しい肢体を惜しげもなく晒している訳でさあ、
おおよしよしと宥めている間もつんと屹立している乳首やぽこんとせり出たそそやもじゃもじゃと絡まり波打つ陰毛が見えるのです。
そりゃあ男なら萎えずにおるのもしょうがあるまいて。片方の手が頭を撫でておる間にもう片方が乳房をむにゅむにゅと揉み解すのもこれまたしょうがあるまい。

あちらのそそに突き入れてみると、使い込んでおらんのか、やはり狭くてきつい。しかし進まなんだという訳ではない。
涙は枯れたが下は今もなお大洪水。潤滑液が溢れておるものだから、こちらにみっちりと絡みつく肉襞もその役目を果たせなんだ。

押し入れる度にこちらに抱きついていたあちらさんは、その腕の力を強め、悩ましげな吐息を首筋に吹きかける。
根元まで入ると、動かなくなったことを不思議に思ったのか、どうされたのか、というような眼差しをこちらに向けてきたので、
全部入ったのだと囁いてやると、なにやら微笑みをこちらに浮かべました。
うんともすんとも喋らないあちらさんのことだからどういった理由で笑ったのかは今も分かりません。
しかし、その顔が幸せそうだったのは誰が見ようと明らかだったと、あっしは思います。

191 9/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:41:31 ID:RbAA2ocp
あちらさんは出来る限り声をださまいときゅっとその可愛らしい口を噤んでいるものの、
こちらの肉棒があちらさんを一突きする度、ああっと一声、なんとも美しい嬌声が響きます。
両の乳首が摘んでくれと言わんばかりに存在を主張しておるので、ぎゅうと摘んでやると濁音交じりの悲鳴にも似た声が奏でられる。
下の口がひくひくと蠢くので苦痛でないのだけは確かでありやした。

お前さんは全く喋らんのに、下の口はぱくぱくとお喋りだなあと気持ちよさから頬を釣り上げながら喋ると、
あちらさんは、やはり頭をぶんぶんと左右にするのですが、そそがその通りだと蠕動しているので全く意味がありやせんでした。
じゅぼじゅぼと音を立て、穴と棒の隙間から漏れたどちらとも分からない液体が泡になっておりますが、そろそろあっしにも限界が近づきやす。
すると自然と腰の振りも速くなり、あちらさんもよほど耐えられなかったのか、ようやく重い口を開きやした。
「かん……にん……か……にん」
またも涙目になりながら髪を乱し、堪忍と呟き続けるあちらさんを尻目に突き入れ続け、やがて果てました。
びくんびくんと脈を打つ肉棒を抜くと、あちらさんのそそから濁った白い液体がたらりとだらしなく垂れました。
そんな様子を見ている内に視界が白んでいき、知らん内に眠ってしもうたという訳です。


話はそれで終わりやせん。申し訳ない、もう少しだけ続くんでさあ。
起きてみると、夜も白み、すっかりお天道様が上っておりやす。これだけ明るいのに、あの無口な雪のように白い肌をもった美女はまったく見つからん。
名前も知らないので、おおい、おおいと馬鹿みたいに声を出してみますが、うるさいぞと他の客に言われるだけでありやした。
怒鳴られた時、ふとあの晩のけらのことを思い出しやした。

土の中に潜って、日の光を見ることの無いけらは、何も見えない闇の中、必死で叫び続けているのです。
自分はここにいるということを。誰かがそれに気づいてくれることを信じて喧しく叫び続けているのです。
けらのことを煩わしいと思ったのは、きっと無意識のうちに同属嫌悪を抱いていたのでしょう。
よくもあれだけあちらさんにいやらしく言葉を投げ掛けたのも、何も喋らないあちらさんに自分という存在を知らせたかったからに違いありやせん。

何も反応が返ってこないというのは、いないのと変わりありやせん。
あっしは何か証拠が欲しかったのです。あの綺麗な人がここにいるという証拠が。あの夢のような体験が事実であるという証拠が。

自分以外に人気のない貸家の部屋には昨晩飲み散らかした酒と、裏返しになったあの美人画があるだけでした。
昨日の約束を思い出し、あっしは絵を丁寧に箱にしまうと、髭紳士の元へ向かうことにしました。

192 10/10 ◆95TgxWTkTQ sage 2007/06/21(木) 23:43:55 ID:RbAA2ocp
髭紳士に約束の掛け軸を差し出すと、一目、これは受け取れないと断られました。
裏返しのまま、表を見ないで持ってきたので画を間違えて持ってきてしまったのかもしれない。あるいは昨日酔った勢いで酒を引っ掛けてしまったとか?
色々と理由を考えてみやしたが、見たほうが早いってんですぐさまそれを見てみると成る程その原因が分かりやした。

その画は確かに昨日の美人画でしたが、
掛け軸の向こうの美人は着物を着崩し、太股から赤と白の混じった液体をつーっと垂らし、白い肌を羞恥で真っ赤にして立っておりやした。

あっしは昨日の晩の出来事を正直に話すと、髭紳士は大笑いし、今度またあなたの画をくれればいいと代金だけ寄越して颯爽と去っていかれやす。
こんなこともあるのか。
そうしみじみ思いながら、あっしは掛け軸を、皺がつかないように、抱きしめました。


あの晩の幽霊が自分の理想の美人なのも、妙に親しみを感じたのも当たり前の話でした。だってそれはあっしが描いたんですもの。
その後何度かあちらさんは画から出てはあっしと夜を共にして、「おうきょのれい」という言葉の意味も分かりました。
あの晩の出来事は、幽霊画として世に生まれ、老若男女問わず誰からにも虐げられる存在だったあちらさんを、
言い値で買い取る人が出る位の美人に仕立て上げてくれたあっしへのお礼だったそうです。
なんでまぐわう事を礼にしようかと思ったのか、自分の持っているものなんてそれ位しかあらん、
それに誇れるものなどあなた、つまりあっしですが、が褒め称えてくれたこの身体しかなかったのです、などと、ぽつりぽつりと口ごもりながら語ってくれました。
「今日の礼です」そう言おうとしたものの、なにせ初めて喋ったものだから、うまく言葉にならず、
「今日」が「おう」になり、言いなおしたものの間違えないように注意しながら口に出したので途切れ途切れになってしまったと。そういう訳なんでさあ。
ひょんなことから家庭を手に入れたあっしはその後、心機一転、あの晩のあちらさんの言に因んだ名に変え、画に没頭しました。
描いて描いて描いて描いて。そして気づけば画描きはあっしのれっきとした本業となっておりやした。今では何人も弟子を抱える一大一派でさあ。
今はその画はありやせん。
というのも、はるか昔に生まれた幽霊画は誰の手に取られることも無く百年を過ぎて付喪神となり、
その後ある絵師――まあ、あっしのことなんですがね――によって美人画となり、今では子沢山の幸せ家族画に姿を変えておるからでさあ。



何故こんな素っ頓狂な話を恥ずかしげもなくする気になったのかというと、これまた話が長くなりますがこの際ですから説明させてくだせえ。

ようやく立身出世したあっしは、あの日大金をくだすった髭紳士に恩返しをする為にあの不思議な晩の出来事が起こった町へと戻ってきました。
思えばあの紳士から戴いた大金が無ければ酒場や何やらの借金で野垂れ死んでいた事でしょう。
しかし残念ながら、あの人の好い髭紳士はその性格のせいで騙されて一文無しとなり老衰で死んでしまったと言うじゃありゃせんか。
豪邸を売り払われたご親族は、その輝かしい過去はどこへやら、今も質素な生活をしているのだという。
あっしは思いました。今、この時こそが、あの時のご恩を返す時なのだと。

今の今まで飽きもせずによくあっしの話を聞いてくれました。
話を聞いて下さっている時のあなたの背筋は、あなたの祖父上と同じようにぴんと竹が入ったように真っ直ぐでしたよ。
これがこの日の為に書き溜めた画の山です。これが少しでもあなた方の生活の足しになってくれればと思いやす。
ああ、この円山応挙という印は、紛い物ではありやせんのでご安心を。

これであっしの礼は、しまいでございやす。


(了)

193 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/21(木) 23:53:16 ID:HTMTsUjW
GJ!おあとがよろしいようで。

194 名無しさん@ピンキー 2007/06/21(木) 23:59:40 ID:jgwwhOpU
邪魔しまくっちゃった…
すまない。
そしてGJ!

195 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/22(金) 00:33:52 ID:1AvWFveZ
付喪神とか、そういう話は好きだ。しかもえろい! いい仕事してるぜ。

196 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/22(金) 00:45:07 ID:pySQjJmZ
クオリティ高ぇw
こういう形式は珍しいけど、抵抗なく読めた。韻を踏んだりして面白いな。しかもエロい。超GJだぜ!!

>>194
タイミング悪──ッ!!まあ、どんまいだ、半田くん

197 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/22(金) 02:07:46 ID:W55Kvz3M
>>196
あぁ!車道に猫が!!

198 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/22(金) 19:33:54 ID:ySxkVlxU
>>197

俺が行くっ!!


キキーー、ドカッ!!

あ……と…GJ…

199 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/22(金) 22:08:59 ID:pySQjJmZ
>>197
元ネタわかる人がいて素で驚いた…無口とは関係ないネタだが

>>198
ちょw無茶するなwww

200 名無しさん@ピンキー 2007/06/23(土) 00:45:24 ID:cJVj0k9t
>>197 それについては「すきやき」が浮かぶんだがそうなのか?

201 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/23(土) 01:08:23 ID:SLhwcZ6T
>>200
「1/Nのゆらぎ」じゃないか?昔ガンガンでやってた土塚理弘のギャグ漫画。

202 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/23(土) 01:37:42 ID:sNeIlAvr
>>200
すきやきってどんなん?

203 名無しさん@ピンキー 2007/06/23(土) 11:15:45 ID:cJVj0k9t
気のせいならいいんだが…
自分が無口キャラを好きになった歴史がそこにあるんだよ…
まあ2、3年前の事なんだけど。

204 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/23(土) 14:04:37 ID:8PNoWG3e
詳細kwsk

205 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/23(土) 17:14:52 ID:LoGKd7RF
GJ

206 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/23(土) 21:45:55 ID:sNeIlAvr
からあげなら知ってるんだが

207 名無しさん@ピンキー 2007/06/23(土) 22:36:59 ID:cJVj0k9t
「スキヤキ」については誰も知らないのか…
とりあえずパワ○ケ7をやってみてくれ、分かるから。

208 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/24(日) 00:37:52 ID:NAWu9/L0
>>207
あれでマジ泣きした俺がいるぞ

209 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/24(日) 02:10:19 ID:SAtd9PNX
パワ○ケは確かに恋愛シミュレーションのごとく属性をカバーしてるが、無口っ娘まで守備範囲だったとは知らなかった。

210 名無しさん@ピンキー 2007/06/24(日) 03:41:29 ID:XNPDcu2j
>>208 同志よ!俺も泣いたから気にするな! 真のエンディングを見るために何日励んだか…

211 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/24(日) 11:45:13 ID:7pxz1CvH
>>181
す、すごすぎる…

212 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/24(日) 20:58:14 ID:lg4lRm+v
ちょっと検索かけたらネタバレ踏みまくっちゃったが凄いんだな最近のパワポケ……
正直ヒロインありきのストーリーじゃないか。ちょっとDS買ってくる

213 名無しさん@ピンキー 2007/06/26(火) 00:43:20 ID:lukcwtVg
俺が三河家に居候し始めてからもう三ヶ月だ。
この三ヶ月の間、俺は人生の半分以上の幸と不幸に遭遇したような気がする。
幸は大抵が冬美関係、不幸は夏希様関係だ。
特に48の夏希技は恐ろしいもので、特に夏希ドライバーは本当に死ぬんじゃないかと思ったほどだ。
夏希様の彼氏はその辺大丈夫なんだろうか…
「あれ、今日は早いっすね夏希様」
「ああ、仕事がすぐに片づいたからな」
「そりゃよかったっすね………あぁ…彼氏、いないのか」
「ん、なんか言った?」
「全然全く何も、夏希様の結婚に不安を感じてたりしませんよ」
「…ほぅ……今日は夏希スーパーホールドを味わいたいようだな」
「え?勘弁してくださあぁいだだだぁ!!その関節はそっちに曲がりまがあぁぁ!!!」
夏希様のデカい胸と白く美しい脚とかが体に密着しているが、痛みでそれどころではない、このままじゃ落ちる!
「……夏ねぇ、お風呂」
思わぬ救世主参上!すげぇ、冬美が輝いて見える…
「ん、じゃあ今日はこの辺で勘弁してやる」
俺の命を刈り取らんとばかりに締めていた拘束を解き、上機嫌で風呂に向かう夏希様。
今日のパンツは白のレース、ということだけが倒れている俺に神様がくれたご褒美だった。
「いたたたた…後少しで死ぬとこだったぜ」
「……自業自得」
「ちぇ……まぁ、冬美がギューッてしてくれれば治るんだけどな」
「……馬鹿」
「とかなんとか言って顔真っ赤じゃん」
「………」
お、顔が真っ赤で俯きだした。
冬美のこの反応を見るのは俺だけでいい、誰にも見せたかねぇ。
「……ホントに、治る?」
「あぁ、治る治る、踊り出すくらいに治るぜ」
「……ち、ちょっとだよ?」
「あぁ、いいぜ」
「……エッチなの、しない?」
「んなことしないって」
多分無理だけど。
「……じゃあ」
モジモジしながら俺の背中に腕を回し、体を密着させる冬美。
シャンプーのいい香りと冬美の密やかな胸がパジャマ越しに……やべぇ、勃ってきた。
「……エッチなの、無しって言った」
「いや、これは男の子の正常な状態でだな…」
「……したいの?」
「…したくないったら嘘になる、お前風呂入った後…」
「……別に、いいよ」
へ?マジっすか!?
「……だから……お願い、聞いて?」
「…何?」
「……後で…一緒にお風呂で…保守して」


214 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/26(火) 00:49:30 ID:b6KoidH2
保守だけじゃあ飽き足らないぜ!!!!

215 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/26(火) 00:52:50 ID:nyRPZ7ve
萌えた。いやむしろ燃え尽きた。
>>207パワポケ7?その無口ヒロインのすきやきとやらに泣けるのか?

216 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/26(火) 02:26:11 ID:b6KoidH2
すきや人に焼きを入れるのかい?

217 名無しさん@ピンキー 2007/06/26(火) 23:18:24 ID:S/5GijNj
車にひかれそうになった猫の名前が「すきやき」

218 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/27(水) 02:05:52 ID:g3wPDK7Z
>>217おk。とりあえずかってやってみる。

219 名無しさん@ピンキー 2007/06/29(金) 17:56:30 ID:UI3e+omI
保守

220 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 00:28:49 ID:2R6cL8P0
どうして、こんなことになったんだろうか?
泣きそうな顔をした苺に押し倒されてぼんやりと思う。

「啓くん…」

滅多に言葉を発しない口から漏れたのは、俺の名前。
そして、その唇が俺に重ねられる。
そう、触合うだけの、幼稚とも言える、キス。

この細い体のどこに、俺を押し倒すような力があったのか?
それともこれは、いつも伝えようとして口にできなかった気持ちの力なのか?
とにかく、抵抗しようという考えさえも、奪われてしまった。

唇を重ねたまま、苺は制服のボタンに手を掛け、羞恥に顔を染めながら、ブラさえも外す。
桃色の頂点が視界に入る頃、ようやく苺は唇を離した。
「苺、お前何を考えて…!?」
言葉は最後まで続かなかった。
苺はその華奢すぎる手で、俺の手を掴み、そして自らの膨みに押しつけた。
「…ぁ、あたしのこと、嫌いにならないで…!!」

消え入りそうな声で言いながら、俺の手の形を変えていく。
小柄な体躯に合わない、大きく、形の良い膨みが、醜くゆがんでいく。
「ちょ…っ!!苺、やばいからやめろ…!!」

己の欲望が形になっていくのを感じた。
「…ぁ」
そして、その感触は苺にも伝わる


221 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 00:42:42 ID:2R6cL8P0
反則だと思った。
なんで、こんなに、こいつは嬉しそうに、幸せそうに、無邪気に微笑むんだろう。

この微笑をズタズタにしてやろうかとさえ考えてしまう。

「自業自得だからな」
「…っ!?」
苺の肩を掴み、一気に引寄せ、そして床に押しつけた。
折れない程度に加減して両手を片手で括り、耳朶の溝をを、舌でなぶった。
途端に苺の表情が、恐怖に染まる。
そう、もっとその顔を見せて欲しい。
「ぃゃ…!!」
絞り出すような拒絶の声も、嗜虐心をあおる。



222 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 00:54:02 ID:2R6cL8P0
「どうして、あんなことしたんだよ?」
空いている手で、苺の体をなぞっていく。
その度に、苺の体はビクリと反応し、目にたまっていた涙がボロボロと落ちた。

「ゃぁあっ!!啓くん…っ」
「言えよ」
「っふぁ…!!ゃめ…」
「ったく、いやがる言葉だけは言えるのかよ?」

業をにやして、スカートの中に手を伸す。
苺の抵抗が激しくなるが、力任せに押さえこんだ
「……の」
下着の中に指が入り、硬い蕾をこじあけている最中に苺が呟く。
「だって…、ほ、保守して欲しかったんだもん」

223 名無しさん@ピンキー 2007/06/30(土) 00:56:58 ID:2R6cL8P0
駄作で済みません

224 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 01:11:57 ID:xtSK7aLV
>>220-223
乙。
でも保守オチよりはそのまま青春の情動に任せちまったほうがいいかもなんだぜ?

225 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 01:17:48 ID:2R6cL8P0
次回は保守オチなしで頑張ります〜

orz

226 名無しさん@ピンキー sage 2007/06/30(土) 11:08:48 ID:3KnVZwuy
新たな神候補ktkr

227 名無しさん@ピンキー age 2007/07/02(月) 03:09:41 ID:a79X6E+0
保守

228 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/03(火) 00:42:23 ID:7wJdt3zu
ほ・・・・・・しぃ・・・・・・?

229 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/03(火) 19:18:06 ID:9vFkTlTQ
うん。

230 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/04(水) 15:38:47 ID:eG3T+zNo
話は長め、エロは少なめ。
それでもよろしければ、SSを投下したいのですが、
よろしいでしょうか?

231 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/04(水) 15:48:29 ID:hJSaZTnv
是非お願いします!

232 230 sage 2007/07/05(木) 13:30:52 ID:N2uWHLcu
それでは投下します。
かなり長い上に、設定的に拒否反応が出る方も
いらっしゃるかもしれません。

そういった方はスルーしていただけると幸いです。
ではどうぞ。

233 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:32:28 ID:N2uWHLcu
……猶予は一ヶ月。
……泣いても笑ってもコレが最後のチャンスらしかった。
……でも、私は泣いたり笑ったりしたことがない。
……本当はどうでもよかった。
……がんばることも、がんばらないことも。
……わたしの中では同義だった。
……だから、このままでもいいと思った。
……このまま罰されても、別に構わなかった。
……でも、チャンスは向こうから訪れた。
……神様なんて信じていないけれど、その時だけは信じた。
……ああ、これで私は助かるんだなと、素直に思った。
……でも。


今にして思っても、彼女は不思議な娘だった。

彼女はとんでもなく無口だった。
彼女が三十秒以上何かを喋っているのを僕は聞いたことがない。
いつもボソボソと、なにか重大な秘密を隠しているように話す。
だから僕はいつも、彼女の口元に耳を寄せ、彼女の託宣を拝聴し、一々聞き返さなければならなかった。
そのくせ頑固で、彼女が何か言い出したら聞かないという場面はいくつもあった。
次に時間に凄く正確だった。
待ち合わせに遅れるとか、早くつくと言うことはなく、いつだって、時間ぴったり。
腹の中に原子時計でも入ってるんじゃないかと、冗談でなく本気で思ったこともある。
それに僕は、彼女の家も知らなかった。
どころか、彼女の携帯番号を最後まで知ることはなかった。
それでも僕たちは一緒にいたし、不便もなかったのだけれど。

まぁ、一番ダントツで不思議なのは、彼女が僕なんかと一緒に居てくれたことだろう。

自慢ではないが、僕は醜い(ブサイクなんて生易しい表現はしない。できない)。
背は低く、肌は浅黒く、余計な贅肉が余すところなくついている。
そのうえ汗っかきで、いつも異臭が漂っているのではないかと、気を配らなければならない。
また、性格も悪い。
理屈っぽく、卑屈っぽく、なにより馬鹿で要領が悪かった。
そして、さらに言えることは貧乏だということ。
いつだって、財布は軽く。そして、その財布には何の将来性もなかった。
ほら、見て御覧なさい。
こんな人間に付き合おう何て考える酔狂ものは、天然記念物モノだろう。
それでも僕と一緒に居てくれた彼女は天然記念物モノなのかもしれない。
背は僕より低く、肌は異様に白く、余計な贅肉なんてものは存在しない。
腰まである長い髪の下の顔はどこか幼く、だが、形容しようとすると『かわいい』より、『美人』という言葉がよく似合う。
性格は……、よくわからない。
彼女が何を考えていたのか、今でも僕にはわからない。
賢かった、といいたいが、僕なんかに付きまとうくらいなんだから、どうなんだろう、というところだ。
僕と彼女で唯一の共通点は、貧乏だと言うこと。
バイトを要領悪くこなしている僕よりも、彼女はお金を持っていなかった。
というよりも、お金というものに執着しなかった。
だからどんなときも、お金を払う場面になると、彼女は僕のことを見つめて、救済を求めるのだ。
といっても、彼女は比較的無表情だから、本当は何を考えていたのやら。

と、いけないいけない。
ついつい長くなってしまった。
僕と彼女の話は、実を言うとそんなに長くはない。
書いてしまえば、あっという間。
読んでしまえば、(乱文が苦痛でなければ)瞬く間。
そんな話だ。

それでは最初に何を書こうか。
そうだな、とりあえず、僕と彼女の出会いについて書いてみよう、と思う。

234 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:33:26 ID:N2uWHLcu
夏休みも中ごろに差し掛かった、ある曇りの日。夕方。
道行く人々が、次のクーラーの涼しさを求めて足早に歩く商店街。
そんな人々の中、僕は浮かれて歩いていた。
何しろ給料日だ。
うちの店は給料を現金で払ってくれるいまどき珍しい店で、僕の懐は、真夏だと言うのに暖かかった。
もちろん僕はそれが不快ではない。
不快ではないのだが、浮かれている理由はそれだけでもなかった。
僕が店から出る間際、高校生バイトの女の子が僕に福引券をくれたのだ。
今日の5時までだという福引に、バイトが昼から夜までの彼女はいけないからという理由からだった。
もちろん、僕が嬉しかったのは福引の券が純粋に欲しかったというわけではない。
どんな理由であれ、女の子からプレゼントをもらったのだ。
そのことが単純に嬉しかったのだ。
「(今日は何かいいことがあるかもなぁ!)」
暖かい懐と、明るい気分。
それだけで、僕の足取りは宙に浮くほど軽く、ココロは天にも昇るようだった。
ふと気づくと僕は福引の会場に来ていて、列に並んでいた。
そろそろ、お終いと言う時間もあってか、なかなか人が並んでいる。
「(これで一等なんかがあたったら本当にラッキーだろうなぁ)」
もちろんそんなこと本気で思っていたわけではないが。
それでも、何かが起こりそうな予感で胸がいっぱいだった。
そうこうしている内に列は進み、僕の前には女性が一人立っているだけになった。
「(さぁ、次だ。何か当たるといいけどなぁ)」
そんなことを考えていた僕のシャツの袖を誰かが“クイッ”と引いた。
「?」
見ると前に並んでいた女性が、僕のことを何か求めるように見ている。
「(うわぁ、美人だなぁ)」
背中まである長い黒髪は空の色を映しそうなほど煌き、
全体的に細すぎる体は白いワンピースに包まれており、その肌は、それと同じくらい白かった。
僕を見つめる漆黒の瞳は赤ん坊のように澄んでおり、その目がすえられている顔は
どこか人形じみ、人間離れした美しさだった。
「(………………ホント、美人だ)」
僕が女性に見とれていると、福引の係りの中年男性が声を出す。
「お嬢ちゃん。はよぅ、回してぇな」
どうやら、福引でまごついているようだ。
「(っていうか、福引で何故まごつく?)」
そんなことを考えているうちに、女性はさらに僕の袖を引っ張った。
「な、なんですか?」
どもった。
キモいと思われたんじゃないだろうか?
そんな僕の心中など眼中にないように女性は、空いているほうの手で福引を指差した。
「?」
何かを伝えたいのは判るが、何を伝えたいのか判らない。
僕が怪訝な顔で女性と福引を見比べていると、女性は僕を手招きした。
近寄れ、ということだろうか。
僕は一歩足を踏み出し、女性に近づいた。
すると、女性はいきなり僕の頭を両手でつかみ、強引に自分の頭の近くまで持ってきた。
あまりといえば、あんまりな動作に、僕は身動きどころか声も上げられない。
僕はそのままの体勢で、彼女のほのかに甘い匂いを嗅ぐ羽目に。
「(うわぁ、何か香水でもつけてるのかなぁ?)」
突発的な自体にもかかわらず、僕はそんな場違いなことを考えていた。
そんな僕に構わず、女性は僕の耳に口を寄せると、ボソボソと何かを呟いた。
「………………」
内容は。
「え? 『これをどうすればいいのか?』ですって?」
奇妙なことを聞く女性だ。いままで福引をやったことないのだろうか。
それにどうして普通に聞いてくれないんだろう?
そこまで考えて、僕は自分の無神経さに気づいた。
「(そうだ。なにか、生まれつきの障害で大きな声を出せないのかも)」
女性はようやく気が済んだのか、体を解放すると、僕を見つめながら大きくうなずいた。

235 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:34:18 ID:N2uWHLcu
心底、猛省していた僕は、女性の甘い匂いが遠くに行ってしまったことを少々残念にも思ったが、
そんなことはおくびにも出さず、
「それはですね。まずは、券を渡します。はい、この係りの人に、ええっと、五枚ですね。
……。五枚で一回ですか? じゃあ、一回だけ回せますね。では、そこの取っ手……、
そうそれです。それを握って、あ、片手でいいんですよ。で、矢印が描いてありますよね。
その方向に、取っ手を回すんです。いや、取っ手の部分を回すんじゃなくて、取っ手を持ったまま、
その箱を丸ごと回すんです。……そうです」
紳士的に解説した。
福引から一個の玉が出る。
「あ! もうあかんで! これ以上回したら」
「一回だけ。一回だけしかできないんですよ」
まだ福引を回そうとする彼女を、係りの人と同時に止めた。
彼女と僕、係りの人の視線が出てきた玉に集中する。
係りの人が、大げさにハンドベルを鳴らした。
「も、もしかして一等!?」
自分のではないが、胸が高鳴る。
「おめでとさん! 五等! 五等の花火セットや!!」
係りのオジサンが声を張る。
「(ご、五等……、か)」
なんだ。だったら、あのハンドベルいらなかったんじゃ……。
そんなことを考えている間に、女性に中途半端なサイズの花火が手渡される。
一応、声をかけたほうがいいかな。
「おめでとうございます。よかったですね、当たって」
女性は首をかしげると、また僕のことを手招きした。
なにかまた聞きたいことでもあるんだろうか?
僕はまた彼女に近寄った。
今度は彼女は僕の頭を拘束することはなかった。
その代わり、先ほどよりかは、比較的大きな声を出して喋った。
「………………」
「え?『これはなんだ』ですか? 花火ですよ、花火。したことがないんですか?」
女性は小さくうなずく。
そこで僕は得心がいく。
「(そうか。もしかして彼女、病気でいままでずっと外に出たことがないのかもしれない。
だから、福引とか、花火とか知らないのか)」
それだったら、彼女の小さな声とか、白すぎる肌とかに納得が行ったような気がする。
「これはですね。夜に火をつけて遊ぶものなんです。で、それが燃える様を『きれいだな』とかいって
楽しむものなんです。え? 『火遊び』? ま、そうなんですけど、あまり危険はないですよ。安全な遊びです」
彼女はいまいちよくわからないという表情をしたが、とりあえず納得はしてくれたようだ。
すると彼女は、僕に花火を手渡してきた。
「………………」
「『お礼です』って? なんの? 福引の? いえ、いいです。結構です」
確かに彼女の助けになったかもしれないが、物をもらうほどのことじゃない。
彼女は少し困った顔をして言う。
「………………」
「え、『自分ひとりじゃ遊べなさそうだから』って。じゃ、友達とかと――」
そこでハタと気づく。
「(そうだ。この人は、いままで病弱だったかもしれない人だ。友達とかは少ないのかも)」
「――じゃなくて、家族で楽しまれてはいかがです? それだったら……」
何とか会話を修正した僕を遮るように彼女は言った。
「………………」
「『家族いない』……。あ。ひ、一人暮らしなんですか。そうですか……」
修正、失敗!
ちょっと、気まずい。
彼女はなおも、僕に花火を押し付けてくる。
そこで、僕の脳裏にミューズの託宣が降りた。
「(こ、これだー!!)」
僕は、内心、物凄くどきどきしながら、でも、平静を装って言う。
「だ、だ、だ、ったら、い、い、一緒に、や、やりませんか? ぼ、僕と」
ものすごく挙動不審になってしまった。
これでは、下心があるみたいじゃないか!

236 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:35:16 ID:N2uWHLcu
「(いや、下心がまったくない、というわけでもない。けど、これじゃあまりにも……)」
僕は物凄い後悔の念にさいなまれた。
そんな僕に彼女の一言。
「………………」
それは僕を救済してくれる一言だった。
「い、いいんですか!? そ、そうですか、それだったら――」
「――ラブラブなんは、ええんやけど。はよう、兄ちゃん、福引回してんか」
舞い上がる僕に冷たい一言。
僕を睨む、係りの人。
後ろを見れば、イライラしている、僕の後ろに並んでいる人。
そうだった。
ここは福引会場だった。
僕は彼女に待ってもらい、いそいそと福引を回す。
二回回した結果は、どちらもポケットティッシュだった。

今思うと、突っ込みどころ満載だが、それでもこれが、彼女と僕のファーストコンタクトだった。

「………………」
「待ってないですよ。ていうか、時間ぴったりですね」
僕の家の近くの自然公園。
現在時刻は夜七時を回ったところだ。
昼が長いこの季節、まだ、あたりは薄明るく、花火に適しているとは言いがたいが。
「(あまり時間が遅いと、さすがにマズかろう)」
という僕の配慮から、この時間になったわけだ。
彼女はどこでも、いつでもいいと言ったのだが、そういうわけにはいかない。
だから僕はとりあえず、この公園を候補に挙げてみたのだが。
どうやら、特に都合が悪かったり、機嫌を害することもないようだ。
僕は家から持ってきたバケツに水を張り、ぼんやりと突っ立っている彼女から花火セットを受け取った。
そして、手ごろそうな大きさの手持ち花火を一本抜くと、それに火をつける。
すると、花火の先端から緑色の火花が勢いよく吹き出した。
「(花火なんて久しぶりだな)」
なんて考えながら、ふと彼女のほうを振り返る。
彼女は物凄く集中した顔で、花火の先端、火花が飛び散る様を凝視している。
あまりにも真剣な表情に内心面食らいながら、僕は言う。
「これが花火の楽しみ方です。どうですか? 綺麗ですよね?」
彼女は大きく首を何度も振る。
どうやらお気に召したようだ。
僕は、花火を片手で持ち、もう片方の空いた手で、まだ火がついていない花火をもつと、
そろそろ消えかかってきた花火の火花で、新たな花火に火をつけた。
僕は古いほうの花火をバケツの中に放り込むと、彼女のほうに火のついた新しい花火を差し出す。
「どうぞ。持ってみてください」
彼女はおずおずと手を出し、遠慮がちに柄を持つ。
もう手を離しても大丈夫だと判断した僕は、彼女に完全に花火を手渡した。
彼女は青い火花を真っ直ぐに見つめる。
そして、ふ、と僕の顔を見つめる。
新しい花火を探していた僕は、まじまじと顔を観察され、頬が少し赤くなった。
「な、なんですか?」
彼女は小さな口で、小さくささやく。
「………………」
それはお礼の言葉だった。
ちょっと意表を疲れた僕は反応が遅れる。それでも
「い、いえ。そんな感謝されるようなことしていませんよ。ホ、ホラ! まだまだ、たくさんありますから。楽しみましょう」
僕の言葉にうなずいた彼女は、どこか上気した顔をしていたような気がした。

最後まで花火を楽しんだ僕ら。
ちなみに彼女の一番のお気に入りは、一番数の多かった手持ち花火でも、最後にやった線香花火でもなく、
袋の中でゴミのように放置されていた蛇花火だった。

237 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:36:50 ID:N2uWHLcu
とうとう花火は全て終了した。
僕は、周囲を見渡し、ゴミを片付け終わったのを確認し、バケツの中を見る。
バケツの中には、今日、楽しませてくれた花火の残骸が残されていた。
「(今日はアリガトウな。おかげでこんな美人と遊ぶことができたよ)」
心の中だけで、花火たちに感謝する。
そうしていると、彼女が近寄り、僕と同じようにバケツの中を覗き込んできた。
「………………」
「『何をしていたか』、ですか? いや、今日は楽しかったなと、花火たちに感謝を――」
しまった。
こんなノスタルジックな少女趣味みたいなことをわざわざ解説してしまった。
キモい男だと思われなかっただろうか。
だが、彼女はそんな僕を見つめて大きくうなずいた。
そしてその小さな両手を祈りのように組むと、目を閉じる。
「な、何をしているんですか?」
「………………」
――私も感謝してるんです。
彼女はそう小さく呟いた。
だが、彼女が感謝することなんてあるのだろうか?
なにしろ、今日彼女と花火をしたのは僕なのだ。
醜く、馬鹿で、貧乏な、この僕だ。
そんな僕と花火をして、感謝することなんてあるのだろうか?
「(楽しかった、と思ってくれてるんだろうか? それだったら嬉しいんだけど)」
やがて、彼女は目を開け、手を離す。
そして、僕に向かい合うと、頭を下げた。
「………………」
それは彼女の心底からのお礼の言葉だった。
僕は胸が詰まり、息が苦しくなる。
「(もう、これでお別れなんだな……)」
それでも、笑いながらこういった。
「そんなに感謝していただかなくても結構ですよ。僕も十分楽しかったですし」
彼女は顔を上げる。
そこに浮かんだ表情は、どこか焦っているような、何かに追い詰められている真剣な表情だった。
意外な顔を見た僕は、場違いにも胸を高鳴らせる。
「(連絡先くらい、聞いても、いい、ん、じゃない、か……?)」
それは名案だ。
だが、すこし大胆じゃないか?
そんなことを考えていると、彼女は僕の片手を掴み、ズンズン歩き出した。
「! な、なにを……!」
いきなり手を握られた。
そのことに内心パニックになっていた僕は、冷静な状況判断ができない。
少し冷たい感触、とても柔らかい感覚。
小さな手を片手全部で感じる。
僕の頭の中はそれでイッパイイッパイだ。
それでも、何処へ連れて行く気なのかが気になった。
「あ、あのあの! い、一体、どこへ……!」
彼女は答えない。
振り向くどころか、さらにスピードを上げ、自然公園の奥へと足を向ける。
すぐに整理された区画から、樹木が生い茂り視界の悪い場所を通る羽目に。
それでも、彼女の足は止まらない。
僕は、彼女のなすがままに、彼女についていくしかなかった。

しばらく歩き続け、本格的に木の影で暗く、湿った場所でいよいよ彼女は足を止めた。
「な、なんなんですか? 一体?」
日ごろの運動不足のせいで、もう息が上がっていた僕は、少し不機嫌に彼女に尋ねた。
「………………」
「『花火のお礼がしたい』って……。こんなところで? 一体何を?」
とんと想像できない。
彼女は僕の方を押さえ、僕の後ろにあった樹木に僕の背中を寄りかからせる。
無抵抗の僕。
そんな僕には見向きもせず、彼女は僕のズボンのジッパーを下げた。

238 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:37:59 ID:N2uWHLcu
…………下げたぁ〜!?

「ちょっと、おたく、な、なにを!? あの、どういう――」
すぐさま彼女はその場に跪くと、開いた社会の窓から、僕の性器を取り出し、咥えた。
「…………はぅ!」
いきなりの刺激に僕は何の抵抗もできない。
彼女はそのまま、先端を咥えたまま、手でサオを擦りはじめた。
「ちょ…………、あの。な、なんで……?」
先端が暖かく湿ったモノに取り囲まれ、サオを刺激された僕の男性自身はゆっくりと、固さと大きさを整えていく。
彼女は手を擦り動かしながら、呟いた。
「………………」
「え、じ、持病? えーと、それはつまり……?」
「………………」
つまるところ、彼女の説明によると。
彼女はふとした拍子で性欲が昂ぶってしまい、それを押さえるのは困難なんだとか。
それで、今、お礼をしたいという彼女の感情が、性欲となって彼女をこんな行動に駆り立てているのだ、という。
「(………………えぇ?)」
正直胡散臭い話だ。
そんなことが本当にありえるとは思えない。
でも、彼女の顔は本気のそれだった。
「(…………もしかして、痴女?)」
にしてはやり方が中途半端というか、なんというか。
それに痴女だって、相手くらい選ぶだろう。
でも、今彼女の相手をしているのは僕だ。
醜い、僕なのだ。
「(それに、彼女のあの表情)」
性欲が昂ぶっているというより、どこか落ちつか無さ気で、切羽詰ったような顔。
それは言葉よりも雄弁に彼女の苦境を物語っているようだ。
「………………」
――どうしてもイヤなら、このままやめます。
彼女はそういった。
いつの間にか、性器を刺激する手の動きも止まっている。
僕は目を閉じ考えた。その結論は――。
「(こんな千載一遇のチャンス、逃がせられるかー!!)」
僕だって、一応は男なのだ。
そんな僕がこんな美人が迫ってきているというのに、逃げ出すなんていう選択肢はありえない。
「(それに、礼をしたいという彼女の気持ちも汲んでるし、彼女を助けることになるかもしれないんだ!!)」
無理やり、偽善的な言い訳も考えた。
「じゃ、じゃあ、アナタのそのお礼の気持ち、受け取ります」
それを聞いたときの彼女の表情。
嬉しいんだけれど、恥ずかしい。それよりなにより、哀しげで切なげなその表情。
僕はその顔が何を表しているのか、その時は知る由もなく、ただただ見とれていた。

「ふぁ……ん、ちゅぱ、ちゅぴ、ん、れろ……っ」
先端を丹念に舐めまわし、舌先で先っぽやカリ、裏筋をなぞる。
彼女の小さな口から吐き出される情熱的な吐息と、暖かな舌や唾液の感触に、ペニスはさらに硬くなる。
「ぁあ……あう…………んちゅぴ、ちゅる…………ぴちゅっ」
「く、……うぅ」
「ふぁ……んんっ、ちゅるぷ、ちゅぱ……ちゅ、ちゅ、ぴちゅ……はう、んぅっ……」
先走りすぎているカウパーを、丁寧に舌で攫い、口に含む。
柔らかく暖かい、可憐な唇が、僕の臭い体液を嬉しそうに口に乗せ、咀嚼していく。
「ぁはあ……んんっ、ちゅる、えろ………ちゅっ、ちゅっ……」
粘液を飲み下すごとに彼女は熱い吐息をつき、もじもじと腰を震わせる。
「そ、そんなもの飲み込まなくてもいいんですよ……?」
腰が砕けそうになる快感に襲われながら、正直な感想を漏らす。
しかし、彼女は首を振った。
「………………」
――これもお礼の一つですから。
彼女はそう言うと、再び、僕の性器を咥えた。
「んちゅ……はぁ、はあっ……へふ……ちゅる、ちゅぴちゅ……」

239 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:39:10 ID:N2uWHLcu
唾液とカウパーでベタベタになったペニスを何度も舐め上げたことで、彼女の口の周りはだらしなく汚れている。
それでも、そんなことお構いなしに、彼女は僕の敏感な部分をぴちゃぴちゃと舐めては、吸い付く。
「(このままでもいいんだけれど……)」
少し図々しくなった僕は、彼女に要望を出してみる。
「……あの、スミマセン。こんなことを言うのも何なんですが……もう少し、激しくしていただけると……」
消え入るような声で彼女に訴える。
彼女はペニスを咥えたまま、上目遣いに僕を見て、小さくうなずいた。
「はぷ……ちゅ、れろれろれろれろ……っ」
べちょべちょに唾液を絡ませた舌で、先端部分を激しく責めてくる。
「はぁ、はぁう……! ちゅる、ちゅう、……れる、んんっ……ぴちゃ、んぅ……
マタオオキクナリマシタヨ……あん、ちゅる……」
「え? 何か言いました?」
今、小さく何かを喋ったような。
彼女はそれには答えず、さらに舌を大胆に使う。
「ちゅる……ちゅぴ、れる……ぴちゃ………………れるれる。ちゅぴ…………」
その熱心な奉仕に思わず腰が前に出る。
彼女はそれを受け止め、さらに口戯でかえしてくる。
唇で先端を刺激し、先走りを啜り、口を大きく開けて舌を突き出し、ペニスにヌメヌメと絡ませる。
そもそも童貞の僕だ。
彼女の卓越した舌技に、あっというまに追い詰められる。
彼女もそれを感じ取ったのか、より一層、舌を絡めてくる。
「ん、ちゅるる、れろれろれろ、ちゅぱ、…………んんっ!」
「もう、で、出ますから口を離して……!」
しかし、彼女は口を離すどころか、口内の深くまでペニスを入れ込んだ。
「あ、ちょ。あの、あぅ……、で、出る……!」

――ビュル、ビュルビュ! ビュプッ……!

塊のような精液が、ペニスを上り詰め、先端から射出される。
その瞬間。
まるで命そのものを精液ごと抜き出される、そんな感覚が僕を襲った。
おもわず、僕は後ろの木に倒れるように寄りかかる。
彼女はそんな僕に戸惑うことなく、精液を口で受け止める。
勢いよくだされた精液は、それにとどまらず、彼女の口の周りまで汚す。
「(な、なんだったんだ。今の感覚……)」
戦慄した。
今まで味わったこともない倦怠感。
全身から力が抜ける虚脱感。
下半身を中心にまとわりついてくる、甘く、痺れるような感覚。
ただの射精感ではない何かが、僕の体をさいなむようだった。
「………………」
彼女は無表情に、口内に出された精液をコクリ、コクリと少しずつ飲み込む。
それどころか、口の周りの精液や、ペニスの尿道に残ったものも一滴たりとも逃すまいと、舌を絡めた。
気を取り直した僕は、彼女の行動に面食らいながら言う。
「そんな、飲み込まなくても……」
彼女はふ、と僕を見つめ
「………………」
――飲まないと意味がない、と意味不明な言葉を吐いた。

その後、僕たちはちょうど持っていたポケットティッシュで後片付けをすると、花火をした場所まで戻ってきた。

あたりはすでに暗く、すぐ傍の外灯が直線的に僕らを照らす。
僕は謎の脱力感と、無力感に苛まれ、ただただ無言だ。
当然、彼女も一言も口を利かない。
そして、バケツのところまで着た僕らは、向かい合って立った。
「なんか、今日は、その、あ、有難うございました」
何とか僕は感謝の意を示す。
彼女は困ったように首を振り、頭を下げた。
「な、なんでアナタが謝るんですか?」

240 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:40:17 ID:N2uWHLcu
「………………」
――私の持病に付き合ってもらってしまったから。
申し訳なさそうに頭を下げ続ける彼女。
「(いえいえ! アナタのような美女に誘惑されるのでしたら、こちらから喜んで――なんて言えるか!!)」
彼女は持病のことを酷く気にしているようだし。
そんな持病のために、こんな男のイチモツを――。
僕は首を振る。
言いたいことはそんなことじゃない。
「アナタが僕に負い目を感じることはないですよ。アナタは僕に花火のお礼を下さっただけ。
反対に僕は、アナタと楽しい時間をすごすことができた。それだけで十分です」
僕はできるだけ真摯に言った。
彼女がようやく頭を上げる。
「今日は楽しかったです。また、何処かでお会いしましょう」
正直、残念だった。
否、心底残念だった。
「(あんな美人と知り合うことができたというのに〜! コレでお別れかよっ!)」
それでも、彼女の持病が発症したとき、この醜い僕が隣に居るわけにはいかない。
彼女にはもっとふさわしい男性が居るはずなのだ。
それを彼女の持病につけ込んで、彼女とまぐわうなんていうのは紳士ではない。
だから僕は身を引いた。
彼女と、彼女にふさわしい人間のために。
いやそれだってウソが混じっている。
本当は怖かったのだ。
彼女のような美しい人間と関わるということが。
彼女のような複雑な人間と関わるということが。
「自信」というものとは無縁だった僕。
だから、怖かった。
それでも、心の中で号泣するほど、このチャンスは惜しかった。
そんな心中を見抜かれる前に、僕はバケツを持つときびすを返した。
「(もう、会うことはないんだろうな……)」
寂しい、侘しい、なにより悔しい、惜しい。
「(今日のことは日記に書いておこう)」
心にそう決めると、僕はゆっくりと歩き出した。
すると――。

クイッ。

僕のシャツの袖が引っ張られる。
僕は振り向く。
そこには僕のシャツを掴んだまま、必死な表情を浮かべている彼女の姿があった。
「………………」
「今、なんて?」
聞き間違いじゃないだろうか。
でも確かに彼女は言った。
――私と友達になってください、と。
「トモダチ、ともだち、友達……。友だちぃ!?」
彼女は大きく何度もうなずく。
「そ、それって、ぼ、僕の事、ですよね……? 僕と、友だち……」
「………………」
――だめですか?
彼女は切なげに首をかしげる。
ちょっとその動作は、反則気味にかわいかった。
そのまま、抱きしめかねないほどに。
それでも、僕は自制する。
「(そんなことをしたら、変態だ……!!)」
抱きしめる以上の行為をさっきしておきながら、それでもそれができなかった僕は、間違いなくヘタレだろう。
「ほ、ほんとうに僕なんかでいいんですか?」
醜く、馬鹿で、貧乏なこの僕で。
彼女は大きくうなずいた。

241 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/05(木) 13:41:28 ID:N2uWHLcu
こうして、僕と彼女は友だちになった。
といっても、もうすでに性行為を行っているという奇妙な友だち関係ではあったけど。
それでも、友達には変わりなかった。

242 230 sage 2007/07/05(木) 13:42:22 ID:N2uWHLcu
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

243 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/05(木) 19:54:49 ID:TkxM7JHe
gj

244 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/05(木) 22:26:32 ID:UocJP9vB
GJ!いいじゃんいいじゃん。

245 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/06(金) 01:06:20 ID:RS+ifVv/
期待を裏切らない出来ですな。素晴らしい

246 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/06(金) 01:14:37 ID:57mZ71MU
GJ!!ミステリアス無口っ娘はあまり書かれてないから期待大です

247 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/06(金) 01:57:03 ID:99xDVg/p
GJ!!デブ男は脳内変換しました。
ついでに保守。

248 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/06(金) 16:51:51 ID:ExZqGP7U
>>242
ぐっじょb!
珍しく読んじまったぜ…相手は淫魔なのか、人形なのか、それともただの人間なのか?
なんか野郎が自分にフィードバックし過ぎてちょい感情移入しちゃったりんりん♪・・・orz
続きを待つ楽しみができたぜぃ

249 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/06(金) 19:28:47 ID:57mZ71MU
>>248
個人的には宇宙人と予想。

250 名無しさん@ピンキー age 2007/07/07(土) 06:40:13 ID:qF8F0BcQ
続き待ち保守

251 230 sage 2007/07/08(日) 17:47:46 ID:GzuXLU2D
申し訳ございません。
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、エロも少な目かもしれません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

252 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:48:50 ID:GzuXLU2D
それから彼女から連絡があったのは、あの花火の夜の三日後だった。
僕はその日はバイトが休みで、朝から自室でゴロゴロとしていた。
一応言っておくが、ただゴロゴロしていたわけではない。
『家庭の医学大百科』なる書物で調べ物をしていたのだ。
調べていたのは当然、彼女の持病。
しかし、この本が古いからか、それとも彼女の持病はよほど特殊なのか、残念なことに
この本には彼女の持病については触れられていなかった。
ちなみに、何故三日後の今、調べているかというと、僕は小さいころから本を読んでいると
眠くなってしまう体質だからだ。だから、バイト前には読めないし、バイトの後に調べると、簡単に眠ってしまう。
だから、バイトが休みの今日、気合を入れて本を開いたのだが。
しかし、睡魔は目の前に来ており、意識の陥落は目前。
そのときだった。
僕の滅多にならない携帯がなり、半分眠りかけていた僕は一瞬混乱しながらも、それに手を伸ばした。
表示されたのは、知らない番号。
訝しみながら、とりあえず電話に出てみる。
「はぁ〜い、もしもし」
「………………」
無言電話かと思った。
しかし、耳をよくすませてみれば、雑多な音に混じりかすかに人の声がする。
そして、その声は待ち望んでいた声でもある。
「ああ! あなたでしたか。お久しぶりです」
「………………」
「いえいえ。ちょうど今、暇していたところなんですよ。あなたも?」
「………………」
「ああ、そうなんですか。へぇ〜…………」
「………………」
「………………」
会話が途切れてしまった。
「(なにか、なにか話題はないか!!)」
僕は必死に頭の中を探り、目を部屋中にいきわたらせ、何とか活路を見出そうとする。
しかし、無常にも救いの手は何処にもなかった。
「(くっ、これだから、馬鹿は救いようがないというのだ!!)」
自分の無能さが吐き気がするほどイヤになる。
しかし、救済は意外な方向から訪れた。
「………………」
「はい? 今、なんて……?」
「………………」
――お暇でしたら、一緒に街で遊びませんか?
そう聞こえた。
確かに、そう聞こえた。
「はい! はいはい! はい!! 喜んで!!」
「!……………」
いきなりの僕の大声に少し驚きながら、彼女は笑った。……ような気がする。
「今何処に居るんですか? え? 駅前? わかりました、直ぐに――」

それから僕は、音の速さで身支度を整え、光の速さで待ち合わせ場所に直行した(誇大表現)。
待ち合わせ場所の、何を意味しているのかよくわからないモニュメントの前。
僕は、待ち人を探す。
どうやら、自分のほうが早く着いてしまったらしい。
しょうがなく、近くのベンチに座る。
「――!? おぉ?」
すると、間違いなく空席だったベンチの端に彼女が座っていた。
「(あれ? さっきまではいなかったのに……)」
見落としていたのだろうか?
というか、そうとしか考えられないが……。
気を取り直し、とりあえず、挨拶。
「お久しぶり、というのもなんですが、こんにちわ。待たせてしまいましたか?」
彼女は僕を見て、(気のせいかもしれないが)少しだけ顔を明るくした。
そして、丁寧に頭を下げた。

253 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:50:00 ID:GzuXLU2D
「………………」
「え? 飛んできた? あぁ、今ちょうど来たって意味ですか。なるほど」
「………………」
「………………」
沈黙。
「(いかんいかん。コレでは電話の二の舞だ)」
そう思った僕は、カバンの中から情報雑誌を取り出すと、彼女に見せた。
彼女は不思議そうにそれを見つめる。
「実は、今日は映画を見ようと思いまして。それでこれを持ってきたんです」
「………………」
「『エイガって何ですか』? え? 見たことも聞いたこともありませんか? イヤ、
怒ってないですよ。……そうですか。ええっとですね。映画というのは……」
彼女に説明しながら考える。
「(そうか。彼女病弱だから、家とか病院から出たことがないのかも。知らないのは無理もないか)」
勝手に結論付けながら、説明を終了させる。
そして、情報誌の映画の一覧のページを見せる。
「なにか見たいのはないですか……って、映画の事知らないんじゃ、選びようがないですよね……。いや、怒ってないですって」
彼女はまるで、初めて見たかのように雑誌を見つめる。
そして、そこに書かれている映画の紹介文をたどたどしく読み始めた。
「………………」
「そうですね。それは戦争モノです」
「………………」
「え? あぁ、戦争モノっていうのはつまり――」
彼女に一つ一つの映画を説明する。
驚くほど何も知らない彼女に何かを教えるのは、妙な優越感に浸れて、少し気分がよかった。
そして、とうとう映画紹介のページが終わる。
僕はとりあえず、彼女の希望を聞いてみる。
「なにか、面白そうなもの、ありました?」
「………………」
彼女が少し遠慮がちにページの一部分を指差す。
そこには。
「……えー、と。なになに『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R−18指定』
………………、ん?」
………………。
なにか誤解があったようだ。
僕はもう一度彼女に聞きなおした。
すると、彼女はやはり『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX』を指差した。
………………。
「え〜!? こ、コレが見たいんですか?」
彼女は大きく、何度もうなずいた。
「ち、違うのにしましょうよ。コレなんてどうです? この恋愛映――」
「……………!」
僕が言い終わらないうちに却下されてしまった。
どうしよう。
できるだけ、彼女の期待にはこたえたいが……。
しかし、『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R−18指定』だ。
どんな映画なのか、想像もできない。
なぜかコレだけには写真も紹介文も載ってないし。
それでも、彼女はコレを見たいという。
僕はほかにも面白そうな映画をピックアップして、薦めてみたが、結局、全て却下され、僕たちは
『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R−18指定』を見ることになってしまった。

まだ上映まで時間があるので適当に店をぶらついてみる僕ら。
周囲の人たちの視線がいたい。
何しろ、天女のような美人と、猪八戒のようなブ男のコンビだ。
目を引かないわけがない。
彼女はそんなことには全く頓着せず、足元のタイルに集中して歩いている。
僕は少しだけ鼻高々だった。
なにしろ僕はこんな彼女と『友だち』なのだから。
一緒に歩くことができるのだから。

254 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:51:09 ID:GzuXLU2D
それでも、不意に不安に駆られた。
「(本当に僕なんかでいいのだろうか)」
それは彼女と知り合ってずっと付きまとう恐れだった。
僕のようなどうしようもない男が彼女の隣に居ていいのだろうか。
知らず、大きなため息をついてしまう。
そして、ふ、と気づく。
「(イカン、イカン。ため息なんかついたら彼女に失礼だ)」
誤魔化すように、僕は彼女を誘った。
「あと少し時間もあることですし、あの文房具屋に入ってみませんか?」
彼女は頷いた。
文房具屋に入った僕は、そのお洒落なデザインの商品に圧倒された。
そうした鋏やらペンにはべらぼうな値段がついている。
「(こりゃあ、ちょっと場違いなところに入っちゃったかな……?)」
こっそり、彼女の顔色を伺う。
彼女は興味深々な表情で、文房具たちを見ている。
どうやら何の気兼ねもしていないようだ。
そのことに僕は安心する。
そして僕らは、店の中の比較的日常的な、つまり安めな商品がおいてある一角に足を進めた。
「(ここらへんは特に面白いものもなさそうだ)」
適当にぶらついて、そろそろ店を出よう。
そう考えたときだった。

クイッ。

袖が引っ張られる。
見ると彼女が足を止め、一心に何かを見つめていた。
「どうしたんです?」
「………………」
彼女は目の前の何かを僕に差し出した。
それは、一冊の黒いノートだった。
ディフォルメされた骸骨が描かれた、どちらかというと子供向けのノート。
彼女はソレを真剣な眼差しで、見つめている。
まさか。
「……欲しいんですか? ソレ」
彼女は少し泣きそうになりながら頷く。
どうやら、本気のようだ。
ま、ノート一冊ぐらいだったら。
「買ってあげましょうか?」
彼女は目を見開き、首を振る。
「……………!」
「そんな遠慮しなくてもいいですよ。今日付き合ってくれたお礼ってことで」
それでもなお、彼女は首を振る。
「大丈夫です。それ一冊買うくらいは余裕ありますから」
僕は強引に彼女からノートを奪い取ると、袖を引っ張り引きずる彼女を放置しながらレジに向かった。
「×××円です」
よかった。
値段は見ていなかったが、どうやらそんなに高い代物ではなかったようだ。
僕は安堵しながらお金を払った。
そして、品物を受け取るとそのまま店から出る。
まだ僕の袖を引っ張ったままの彼女に向き直ると、袋に入ったノートを彼女に手渡した。
「どうぞ」
「………………」
そっぽを向き、彼女は受け取らない。
どうやら、勝手にお金を払ったのがいけなかったらしい。
僕は苦笑しつつ、彼女の手にノートを握らせた。
「コレは、今日、僕にお付き合いいただいたお礼です」
「………………」
彼女は僕の袖から手を放し、両手でノートを掲げるようにして持つ。
「僕のお礼の気持ち、受け取ってもらえませんか?」
ちょっと卑怯な言い回しかもしれない。

255 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:52:04 ID:GzuXLU2D
そんなことを考えてた僕が見たのは、気持ち微笑み、頭を下げる彼女の姿だった。
「………………」
「お礼の言葉なんて要りませんよ。さ! もうそろそろ映画の上映時間です。急ぎましょう」
僕は威勢のいい言葉とは裏腹に、ドギマギしながら彼女の手に触れようとする。
すると、吹っ切るように頷いた彼女は、僕の思慮なんて構いもせず、堂々と僕の手を握ってきた。
そして、足早に歩き出す。
僕は赤くなりながら言った。
「もしもし、映画館はそっちじゃなくて、反対方向ですよ」

何とか上映時間までに映画館についた僕たちは、一も二もなく券の販売窓口に寄り、指定された座席へと急ぐ。
もうすでに上映会場は暗く、何らかの予告が流れ出していた。
僕たちはなるべく足音を立てないように上を目指す。
しかし、そんな遠慮は無用だったようだ。
スクリーンの光を反射する座席には、人っ子一人いなかったのだから。
「(ま、『俺たちの大悪魔図鑑』だもんなぁ)」
納得といえば、納得の結果に僕は内心苦笑した。
目当ての座席までたどり着いた僕たちは、並んで座った。
ちょうど、予告が終わり、本編が始まるところらしい。
ふ、と隣の彼女を見る。
彼女は本腰を入れた表情でスクリーンを見守っている。
「(これで面白かったらいいんだけど……)」
いよいよ始まった本編映画は、ただただ赤かった。

「(なんで、こんなことになっているんだろう……)」
僕は便器の上に座り、呆然と考えた。
ズボンは足までずり下げられ、下半身がほぼ完全に露出している。
そして、本来一人ではいるべきその個室には
「ん……じゅる、れろ…………んん、はぁ」
熱心に僕のペニスをしゃぶる彼女の姿があった。

結局、僕は映画の全編を手で目を覆い隠しながら見過ごした。
時々大音量で何かの奇声が聞こえ、いい加減気分が悪くなる。
地獄のような責め苦が続き、ようやく映画は終了した。
僕は隣の彼女を見て、感想を聞こうとした。
しかし。
「どう――」
彼女は僕の手を掴むと、猛然と駆け出したのだ。
何らかのデジャブを覚えながら、僕はなされるがままだ。
そして連れ込まれたのが、男性用の個室トイレ。
彼女は僕を立たせると、そのままズボンを脱がし、座らせた。
「(もしかして、また持病が――)」
なんて思う暇もなく、彼女は僕の性器を咥えた。

「ん……やっぱり、持病が、出たんですか?」
僕は性器に与えられ続ける感触に耐えながら、聞いてみた。
彼女はペニスを口から離し、僕の顔を見て頷いた。
「………………」
謝る彼女。
僕は苦笑しつつ答える。
「謝る必要はないですよ。むしろこちらこそ謝りたい気分です」
「……………?」
不思議そうに聞いてくる彼女。
しかし、僕は答えなかった。
僕からの答えがないことを悟ると彼女はまた性器を咥えた。
先端部分に吸い付き、口のかなの性器を舌でなぶる。
「ん…………ちゅる。れる、ちゅぱちゅぱ」
「くぅっ……」
「ちゅく、ちゅくくっ……ん、んんんっ、ちゅぷぷ……」
舌先を使い、敏感なカリ口を攻めてくる。
そして、そのまま舌をおろしサオの部分を舐める。

256 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:52:51 ID:GzuXLU2D
敏感なところから、鈍感なところに攻めが変わり、僕はもどかしくなる。
しかし、僕の気持ちとは裏腹に、彼女は舌先だけを使い、僕を追い詰めようとする。
そのじらすような動きに僕は我慢できず、腰を前後に動かす。
「!……………」
彼女はその積極的な動きに動揺したようだが、直ぐにソレに慣れると、腰の動きに同調して舌を動かす。
「ぴちゃ、れる………………んちゅっ」
「ふ……ぁ」
彼女の小さな舌がペニスの側面を這いまわり、僕はその気持ちよさに思わず小さくため息をついた。
「んん……れろ、れろれろっ……んふっ、ちゅぴぴ………」
舌がだんだんと先端に近づき、とうとう亀頭にいたる。
「く、ぅ………」
「はぷ、んむ………んっ、れるれる………ぴちゅ」
しかし、僕の期待を裏切るように、舌は直ぐに裏に回り、裏筋を辿る。
それも声が出るほど気持ちがいいのだが……。
「ん、気持ちいい……んですけど、そろそろ、あの、しゃぶって――」
彼女は上目遣いに頷くと、その小さな口で剛直を飲み込んだ。
「んっ、んんっ、んぷぷぷ……っ」
ペニスが、亀頭の先から順番に柔らかい粘膜に包まれていく。
全ては入り込めなかったが、彼女はかなり深いところまで咥え込んでくれた。
「んふぅ、んん……ちゅむっ……ちゅぶ……」
「くぅ……」
ペニスと唇の間から漏れ出した唾液を塗りつけながら、彼女は強く吸い付いた。
その滑らかさと吸い上げに、腰が震える。
「フフ………ちゅるっ、ぢゅる………ぢゅるる、ぢゅちゅちゅちゅ………!」
「? いま、笑いませんでした?」
「………ちゅ、ヂュッ、ちゅう、チュウウウ………」
彼女は返答する代わりに、ひと吸いごとの加減を変えてきた。
緩急をつけて唇を狭め、ペニスに緩慢な刺激を送ってくる。
誰もいない男性トイレにイヤらしい音が響く。
その音に、僕はトイレでこんなことをしているのだという認識でさらに興奮した。
「す、すごい………」
「ちゅぽっ、フフフ………れろれろ………」
「今確かに笑いましたよね?」
彼女は亀頭を舌の裏で嘗め回しながら、こちらを見た。
………なんだか彼女の瞳の色がおかしい。
あれほど真っ黒だった彼女の目が、なぜだか暗い深紅に見える。
「あ、あの………」
問いかける僕を無視するように、ペニス全体を舌で刺激しながら、口内を動かす。
柔らかい頬の粘液や舌がペニスの敏感な部分に当たり、僕のペニスがさらに大きくなる。
「んぷっ、んむっ、ぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅ………!」
止めを刺すような大きなバキューム。
いつのまにか限界まで上り詰めていた僕の官能が終わりを迎える。
「うっ、で、出ます……!!」

ビュブッ!! ドビュッ、ビュビュッ!!

「はぁう。……ん、んん。ぺちゃぺちゃ……」
射精中に、彼女は先端を嘗め回した。
敏感になっていた僕の性器は、完全に精液を出し終える。
「(くっ………まただ!)」
僕の体が異常を訴える。
頭が白く染まり、全身を削られるような脱力感。
力が抜け、僕はだらしなく後ろに倒れこんだ。
彼女は精液を舐めとっている。
僕は意識がかすむのを感じる。
完全に僕の視界が落ちる瞬間。
「………………」
――ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
確かにその時、彼女は謝っていた。

257 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:53:51 ID:GzuXLU2D
息苦しい。
それで僕の意識は覚醒に向かった。
どうやら、濡れたタオルが顔の全体を覆っているようだ。
「って、殺す気か………!!」
僕は慌てて、そのタオルを放り投げた。
「!……………」
そのタオルが向かった先。
そこには彼女が居た。
「って、ええ!? こ、ここは!?」
見慣れた布団、見慣れた本棚、見慣れた台所。
どう見てもそこは、僕が一人暮らしをしているアパートだった。
僕は混乱する。
「え、ええ……!? なんで、なぜ、ホワイ? ぼ、ぼくは……」
体を起こそうとする僕。
しかし、急激なめまいが僕を襲い、すぐさま僕は仰向けに倒れる。
たったそれだけの運動で、僕の息は上がり、喉は痰が絡まり痛い。
彼女が心配げにこちらを見ている。
僕は気持ちを落ち着けるため、深呼吸した。
寝たまましたので、効果があったかどうかはわからないけれど、とりあえず息は落ち着いた。
そして、この現状を一番知っているはずの人間に事情を尋ねることにした。
その人間とは、もちろん。
「………………」
彼女は心配そうに、こちらを見つめている。
僕は彼女を安心させるために無理やり笑顔を作った。
「大丈夫です。心配はいりません」
「………………」
彼女は俯き、謝罪の言葉を呟いた。
「? なんであなたが謝るんですか?」
「………………」

彼女の説明によると、僕はトイレの個室での一件の後、気を失ってしまったようだ。
驚いた彼女は、とりあえず僕を背負い、映画館を出たのだという。
「……それからどうしたんです?」
「………………」
途方にくれた彼女は、街中のベンチに僕を寝かせ、様子を見ることにした。
すると、僕は意識を取り戻し、『家に帰る』と盛んに繰り返しだしたのだという。
心配になった彼女は、僕に付き添い、この家までたどり着いたのだ。
「……そんなことがあったんですか」
「……………?」
――覚えてないんですね?
「……ええ、まったく記憶にないですね。最後の記憶はトイレの中です」
「………………」
彼女はすまなそうに頭を下げる。
「いえいえ! あなたが悪いんじゃない。なにか調子が悪かったのでしょう」
たぶん。
というか、それ以外考えられない。
それでも彼女は頭を下げる。
僕は無理やり上体を起こすと、彼女に向き直った。
「あなたの持病は、あなたの持病。僕の不調は、僕の不調。分けて考えましょう、ね」
彼女は、く、と顔を上げると、僕に抱きついてきた。
まだ力が入らない僕は、そのまま彼女に押し倒される。
いきなりのことに、僕の顔は一瞬で沸騰する。
「ちょ、ちょ、な、な、なんですか〜!?」
「………………」
彼女は僕の胸に顔をうずめたまま小刻みに震えていた。
「……もしかして――」
言いかけた僕は口をつぐみ
「(――泣いているんですか?)」
心の中だけで呟いた。
それに答えを示すように、僕の服の胸の部分が濡れた。

258 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:55:00 ID:GzuXLU2D
その日、彼女は僕の看病のためといって一晩泊まった。
もちろん一人暮らしの僕の部屋に予備の布団なんていう贅沢なものはない。
だから、一緒の布団に寝ることになってしまったのだが……。
正直、そのことに僕は興奮したが、しかし、体は言うことを聞かず、日が完全に傾く前に僕の意識は落ちてしまった。
翌朝、起きると彼女は適当な朝食を作ってくれた。
本当に適当な朝食で、その手抜き加減は田舎の母親を思い出させてくれたけど、
単純なその料理は、一人暮らしが続いていた僕の胸には結構響いた。
「………………」
彼女が感想を聞いてくる。
当然僕は絶賛した。
安堵したように彼女は吐息を漏らす。
「………………」
ここで衝撃の告白。
どうやら彼女、料理は始めてだったらしい。
「ん? っていうか……」
一人暮らしをしているのに料理をしたことがない?
どういうことかと彼女に尋ねてみる。
彼女は少しだけバツが悪そうに顔をしかめ、俯き加減に言った。
「………………」
――私、小食ですから。パンだけでも足りるんです。
「(しまったぁ! 彼女は病弱なんだった!!)」
失念していた。
そりゃそうだ。小食だったら、買ってきたものとかでも足りるじゃないか。
僕はなんと言う無神経な質問をしてしまったのか。
「(――いや、待てよ……)」
病弱なんだったら、なおのこと栄養なんかに気を使わなければならないんじゃないのか?
それを、買ってきたものとか、パンとかだけで足らせていいのだろうか?
「(否。よくない!! 僕が彼女のことを何とかしなくては!)」
僕は一大決心をして、彼女のほうに向き直る。
「あの……!」
「……………?」
不思議そうな彼女の顔。構わず僕は言い放つ。
「もしよろしければ、これから僕の家に食事を食べにいらしてください。……ちょくちょく」
少し驚き、なお不思議そうな彼女の顔。
「あの、その、僕、料理とか結構できますから。一人暮らしとかも長いですし、……どうですか?」
「………………」
――あなたがお料理上手なのと、私が一緒にお食事をすること、何の関連が?
ぐうっ。
そう突っ込まれると……。
僕は「(ここまできたら、破れかぶれだ!)」とさらに踏み込む。
「ええっと、とにかく! あなたと食事がしたいんです。ダメ、ですか?」
彼女は少し困惑した表情になる。
「(っていうか。僕って相当、キモいぞ……)」
内心、凄く反省する。
だが、口に出してしまった言葉は、喉に戻ることはない。
彼女の裁定を震えながら待つのみだ。
そして、彼女は僕のほうを再び見つめてきた。
「………………」
それは、……肯定の返事だった。

それからちょくちょく彼女は僕の家を訪れるようになった。
バイト終わりに彼女から連絡があり、街中で待ち合わせ。
それから一緒に買い物をして、帰宅。
そのあと、僕は調理を、彼女はその手伝いをする。
そして、一緒に食事をして、そのあと――。
たびたび彼女の発作が起こった。
僕はその都度、彼女に弄られた。
でも、彼女が体を許してくれることはなかった。
いつも、口か手、あるいはスマタとか。
行為の後、僕は必ず気絶するようになった。

259 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/08(日) 17:55:55 ID:GzuXLU2D
軽いときには一時間。重いときには翌日の昼までかかるということもざらだった。
だんだん僕はバイトに遅れたり欠勤したりするようになった。
そして、とうとうある日、僕はバイトを首になった。
もともと夏休み前後の短期のバイトだったから、特に問題はない、と思ったけど、ショックなことはショックだった。
でも、彼女には正直に言えず、『バイトは自分から辞めた』といって誤魔化した。
また彼女が自分の発作のことを責めないように。
彼女はその埋め合わせをするように、僕と長い時間一緒に居るようになった。
僕はそのことがとても嬉しくて楽しかったのだけれど、彼女が何を思ってそうしてくれたのかは判らない。
彼女との時間が増えても、やっていることは変わらない。
買い物をして、食事をして、たまに行為に及ぶ。
そのことに本を読んでぼんやりすごすとか、どこかに行って遊ぶとか、そんな時間が追加されただけ。
それでも、僕は幸せだった。
ただ、心配なのは、彼女の食事の量。
彼女は僕の三分の一以下の量しか口にしなかったし、どうやら、夜中にソレさえも吐いているようなのだ。
『これはイカン』と食事に気を配り、手をかけてみたけれど、ソレと反比例するように、彼女の食事量は減少した。
だからといって、彼女が変わったか? というと、そうでもない気がする。
むしろ、僕との時間が多くなるたびに、彼女は元気になって言ったような気さえする。
まぁ、そんな日がいつまでも続くと考えていた。
――あの日までは。

260 230 sage 2007/07/08(日) 17:57:31 ID:GzuXLU2D
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

261 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/08(日) 19:41:46 ID:50n/AHCP
GJです!なんつーか、起承転結の承にあたる部分て感じ。次は転かな?

262 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/08(日) 20:11:37 ID:Ju5qksHQ
>>260
ナイスやでほんまGJ!
罰、悪魔、栄養摂取から核心に迫りつつありますね?
しかしどっかで擬し感があるってさっきからずぅーと調べてたのだが
数年前に同人ソフトで出た蜜牢だ…どうでもいいですね♪

きっとなにか見せてくれるだろうから、それを楽しみに待つぞぃ


263 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/08(日) 22:13:17 ID:BMEwB5eb
GJ!
幸せなのと反比例して命を削られていくという
退廃的な雰囲気はたまらんですわ

264 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/09(月) 01:24:33 ID:8d1RQYtY
GJ!
読んでてゾクゾクしまさぁねw
しかしヒロイン、なんてゆーかこう……サキュバス?

265 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/09(月) 02:32:51 ID:oPLd+SgQ
なんたこのwktk神作品は・・・・GJ!

266 名無しさん@ピンキー age 2007/07/09(月) 02:34:02 ID:oPLd+SgQ
またミスた。age

267 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/10(火) 00:52:22 ID:gZz6S4KR
シャンブロウ?

268 230 sage 2007/07/11(水) 14:13:21 ID:ICGccihB
これより、投下させていただきます。
前回並みに長い上に、エロも御座いません。
申し訳御座いません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

269 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:14:42 ID:ICGccihB
それは彼女と出会って、ちょうど一ヵ月後のある日のことだった。
僕は前日の彼女との行為で、いつものように意識を失って、気づいたら夕方だった。
だんだん、気絶している時間が長くなっている。
「(病院には行ったけど、健康体そのものだって言われたしな……。なんなんだろう)」
そんなことを考えながら、部屋の中を見渡す。
どうやら彼女は出かけていて、今、部屋には僕一人のようだった。
「(買い物にでも行っているのかな?)」
そんなことをぼんやりと考え、ふとテーブルの上を見る。
そこには、いつか僕が彼女にプレゼントした骸骨のイラストのノートが乗っていた。
「(あれ? 出しっぱなしだ)」
いつもは彼女の私物が入っているらしい段ボール箱の中に収められているソレが、どういうわけか真っ直ぐに置かれていた。
まるで、僕が中身を見るために差し出すように。
「(イヤ。それはマズイだろう)」
彼女がたまに真剣な顔で何かを書き込んでいたのは知っていた。
ふざけて覗こうとしたとき、彼女の機嫌を酷く害したのを覚えている。
「(イカンイカン。彼女に対して失礼だ)」
そう思いながら、ノートから目が離れない。
そのとき。
開けていた窓から突風が吹き込み、閉じていたノートがめくられる。
「(!!)」
瞬間目を逸らし、しかし、再び視線はノートへ。
「(イカンイカン。と、閉じなくては……)」
そう思いながら、しっかりと、目はノートの字を捉える。
……捉えてしまった。
「(? なんだ? この文字……)」
そこには今まで見たこともない記号、文字らしきものがつづられていた。
しかし、全く意味不明なその記号は、奇妙なことに、僕がその羅列を追うと、そこに書かれている内容が頭に浮かぶ。
まるで、語りかけてくるような不思議な感覚。
僕はノートが彼女のものだというのを半分忘れながら、最初からソレを読み始めた。

『彼と出会ってしまったのは、運命なのだろうか、それとも単なる偶然なんだろうか?
 私にはわからない。
 それでも、彼に出会わせたのが神様とかの気まぐれなんだったとしたら、私は感謝したほうがいいのだろうか?
 それとも、出会ったのが彼でなかったらと、肩を落としたほうが正解なんだろうか?
 本当は、彼なんかに出会うはずはなかったのだ。
 私はただただ一ヶ月を浪費し、その後、しかるべき処罰を与えられる。
 それだけでよかったのだ。それ以上は望んでいなかった。
 それが、何の因果か、彼に出会ってしまった』

彼というのは僕のことだろうか?
しかし、一ヶ月? 処罰? 
どういうことなんだろう。
僕は文字を追い続ける。

『最初はただの気まぐれだった。
 ただ、困っているお婆さんが目に付いたからという、ただそれだけの理由。
 私はおばあさんを躊躇無く助けた。たやすいことだった。
 やたら感謝してきたお婆さんは、私に無理やり何かを握らせた。
 それは何らかの紙切れで、五枚もまとめて手の中に入っていた。。
 これは何かと尋ねたら、お婆さんは商店街のほうを指差し、フクビキフクビキ、と繰り返す。
 意味がわからないうちにお婆さんはサッサと行ってしまった。
 しょうがないから、おばあさんが指差したほうに行ってみた。
 すると、同じような紙切れを持った人間たちが列を作って並んでいる。
 どうやら、この紙を持っている人は、ここに並ばなければならないらしい。
 面倒くさいな。
 正直に言えば、そんな感想しかもてなかったが、しかし、ここでコレを無視すれば、
 お婆さんの好意を踏みにじる結果になってしまう。
 悩んだ挙句、私は列に並んだ。
 そのまま、ぼんやりと列が進むに任せる。

270 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:16:11 ID:ICGccihB
 そして、とうとう自分の番が来た。
 しかし、ぼんやりしていた私は、何をすればいいのかがわからない。
 私は困り果て、あたりを見渡す。
 すると、私の後ろに幸福そうに突っ立っている青年が見えた。
 混乱していた私は、とりあえず青年に助けを求めてみた』

どうやら彼女と初めて出会った福引の日のことらしい。
……こんな経緯があって、彼女は福引に並んでいたのか。
それにしても、『幸福そうに突っ立っている青年』って……。
間違いなく、僕の事なんだろう。
最初は僕の事をそんな風に思ったのか……。

『袖を引っ張ると、青年は私のほうを初めて見た。
 そして、そのまま、固まってしまった。
 ますます困ってしまった私を助けてくれたのは、テントの中のおじさんだった。
 おじさんが声をかけるとようやく青年は気がついた。
 私はここぞとばかりに、さらに袖を引っ張る。
 そして、どもりながらも事情を聞いてきた青年に私は指をさして窮状を伝える。
 しかし、伝達には失敗したようで、彼は怪訝な顔をするばかり。
 しょうがないので、私は強引に彼の頭を抱え込むと、耳元で喋った。
 ……本当はいまいち言葉に自信がないので喋りたくなかったのだけれど。
 青年はどうにか私の言いたいことを理解してくれたようだ。
 私はフクビキというものについての説明を受ける。
 意味がわからなかったが、とにかく回せばいいらしい。
 機械を回す。
 玉が出る。
 さらに回そうとした私をおじさんと青年が止める。
 どうやら、一回きりらしい。
 玉を見たおじさんがハンドベルを鳴らした。
 これから何らかのイベントが始まるんだろうか、と少しわくわくした私に、おじさんが何かを手渡した。
 青年の説明によるとハナビというものらしい。
 意味がわからなかったので、青年にあげようとした。
 どうせ、私にとっては必要のない代物だ。
 しかし、青年は受け取らず、逆に私を誘ってきた。
 ……正直に書こう。チャンスだ、と思った。
 これで助かる。何とかなる。青年は自ら飛び込んできてしまったのだ。
 異界への入り口に。
 魂の牢獄に』

? 『チャンス』?
『異界への入り口』『魂の牢獄』?
何を、何のことを書いているのだろう、彼女は?

『夜、再び出会ったとき、青年の魂は著しく脈動していた。
 花火をしているとき、ソレはさらに高まった。
 私に視線を送っていたときも、それは激しく波打っていた。
 私はハナビというものの美しさに心を打たれながらも、悲しくなった。
 これから青年を貶めなければならないということに。
 こんなに無邪気な青年から魂をいただかなければならないということに』

魂を、いただく?

『ハナビが終わり、全てはバケツの中に落ちた。
 どうやって青年を貶めるか考えていた私の目に、青年がバケツに向かって何かを呟いているのが見えた。
 不思議に思い、聞いてみると、青年はバケツの中のハナビに礼を言っているというではないか。
 こんな物言わぬ物たちに対する真摯な姿勢に私は心を打たれた。
 それでも、容赦することはできない。
 わたしは青年を林の奥深くに連れ込み、行為に及ぶことにした。
 青年が私に問う。
 なぜ、こんなことをするのかと。

271 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:17:15 ID:ICGccihB
 本当は無視してもよかった。答える必要もなかった。
 それでも、私は答えてしまった。
 持病の発作と何故か誤魔化してしまった。
 そして、ハナビのお礼です、と口が動いた。
 言って初めて気がついた。
 本当に楽しかったのだ。本当に心躍ったのだ。
 初めてだったのだ、こんな楽しいこと。こんな嬉しいこと。こんな美しいこと。
 私は躊躇した。
 ……躊躇して、しまった。
 そして挙句失敗した。
 行為自体が初めてだったからなんて言い訳はしない。
 でも、こんなことが起きるなんて考えもしなかった。
 青年は、行為の後も生きていた。
 私は混乱しつつもその魂の欠片を啜った』

………………。
彼女は僕の精液を残らず飲み込んでいた。
どんなときも。
飲まないと意味がない、と。

『そしてお別れの時間が来た。
 私は謝った。
 青年の魂を汚してしまったことを、誤魔化しながら。
 青年は許してくれた。
 当然だ。私が本当は何をしたのかを知らないのだから。
 青年が後ろを向く。
 でも。
 私は青年の、彼の袖を引っ張り、そして、言った。
 私と友達になってください、と。
 ……打算があったのは否定しない。
 せっかくの獲物が逃げてしまうのを、指を咥えてみているだけというのは耐えられない。
 でも、それだけじゃなかった。
 そのときは訳の判らない感情だと思っていたけれど、今では判る。
 あれは本当に寂しかったのだと。
 本当に友達がほしかったのだと。
 だから、怖かった。
 断られるのが、物凄く恐ろしかった。
 でも、彼は許してくれた。
 こんな私と友達になってくれた
 友達になって、くれたんだ』

………………。
僕は無心に読む。
彼女の記録と、記憶を。

『あんまり早く連絡したら迷惑になると思って、三日後に電話した。
 彼は直ぐに答えてくれた。
 後から聞いたら、バイトというものがなかったらしい。
 直ぐに私たちは会うことになった。
 待ち合わせ場所に着いた彼を驚かそうと、私は飛んでいった。
 予想通り、彼は驚いてくれた。してやったり。
 エイガというものを見に行くことになった。
 彼が何か見たいものはないか、と聞いてくる。
 私は一つだけ心が躍ったものがあり、ソレを指し示した。
 彼はどうしてか、それには直ぐに賛成してくれなかった。
 「俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX」の何がいけないというのか。
 どうせなら、楽しいものを見たほうがいいに決まっている。
 だから、私は頑なにほかの意見を却下した。
 でも、結局、ソレを見ることに決定してから、私は後悔した。
 どうせ、私にはエイガなんて判らないから彼に決めてもらえばよかったのだ。

272 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:18:32 ID:ICGccihB
 私の強引な決定を、彼はどう思っただろう。
 頑固者だと、ワガママな奴だと嫌われたかもしれない。
 凄く不安になった。
 それでも彼は笑顔だった。
 私は、自分の頑なさを反省しながら、それでも救われた。
 彼と友達になれてよかった、と』

『私たちは街中を歩いた。
 街の中は私の知らないものばかりで、私の胸は高鳴った。
 なかでも気に入ったのは、このノート。
 とてもイカしている。
 今でも、これ以上のノートなんて存在しないと、確信している。
 彼が買ってくれた。
 本当は私にだって少しくらいは手持ちがある。
 自分のお金で買って、自分のものにしたかった。
 でも「僕のお礼の気持ち、受け取ってもらえませんか?」なんて言われたら……。
 初めてその時、彼のことを卑怯だと思った。
 でも、嬉しかった。
 人からもらった初めてのプレゼント。
 内心、感動する私は彼と手をつなぎ、エイガカンに向かった』

『エイガの内容は書かない。
 というよりも、書けない。
 エイガの最中、私は胸が苦しくなり、途方もない飢餓感に襲われた。
 原因は直ぐにわかった。いつものことだからだ。
 人の魂が、補充分の、体を維持するための魂が切れ掛かっているから。
 でも、ソレはいつものこと。
 我慢しようと思った。我慢できると思った。
 でも、ダメだった。
 私の体は貪欲に獲物を求め、気がついたら、私は彼に襲い掛かっていた。
 私は夢中になって、彼を求めた。
 本当にその時は夢中で、私は何をしていたのか、あまり覚えていない。
 覚えているのは彼が果ててから。私が満ち足りてから。
 私は謝った。
 でも、彼は気を失ってしまっていた。
 私は動転した。
 なにしろ、二回目なのだ。
 こんなことが起きるなんて想像だにしていなかった。
 私は混乱しながら、彼を寝かせられる場所を探した。
 勝手に彼の記憶を弄り、探り、家の場所を確認した。
 部屋の中に入ると、彼の匂いが私を包む。
 そのことを新鮮に感じながら、私は彼を寝かし、懸命に祈った。
 魂は採っていないはず。だから、きっと目覚める。
 私は半端な知識で看病した。
 すると、彼はまもなく目を覚ました。
 彼は心配する私を見て、微笑んだ。
 私は適当に状況をでっち上げ、説明し、謝罪した。
 罪深い私を。
 彼は笑って許してくれた。
 私はたまらなくなって、彼に抱きつき、泣いてしまった。
 ものも言わず泣きついた私を彼は黙って受け入れてくれた』

『それから私たちは一緒に寝て、食事をした。
 私は生れ落ちて始めて食事を作った。
 彼は美味しいといってくれた。
 お世辞でも嬉しかった。
 それから何故か、彼は私のこと、特に食事のことを気にした。
 私は人間の食事は食べられない。食べても味がわからないし、消化できないのだ。
 そのことを適当に誤魔化した。
 すると彼は、私と一緒に食事をすることを提案してきた。

273 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:19:39 ID:ICGccihB
 正直、困った。
 でも、一緒に居たいといわれて、嬉しかったのも事実。
 だから、私はうなずいた。
 その時の彼の喜びようといったらなかった。
 私も彼が喜んでくれたら嬉しかった』

『私たちはたびたび会うようになった。
 一緒に買い物をして、調理をして、食事をした。
 楽しかった。
 本当に楽しかった。
 でも、私は我慢できずに彼を求めてしまった。
 そのたびに彼は衰弱していった。
 そのためにバイトとかいうのを駄目にしてしまったらしい。
 口には出さなかったけれど、私のせいだろう。
 行為を重ねるごとに罪悪感が募った。
 申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。
 生きるためには糧を得なければならない。
 そのために彼を犠牲にしている。
 ……死んでしまいたかった。
 朝、目覚めることなく、眠りながら死ぬ。
 ソレが理想だった。
 でも、朝は毎日訪れたし、そのたびに私は絶望した。
 そして、絶望の淵で、それでも生きていられたのは彼のおかげ。
 彼の笑顔のおかげ。
 でも、そんな彼を犠牲にしなければ生きていけない。
 そんなジレンマに頭が狂いそうになった。
 逃げ出したかった。
 何もかもを捨てて、逃げ出し、何もかもなかったことにして消えたかった。
 でもできなかった。
 彼の隣にいたかった。
 彼を犠牲にしても、何を犠牲にしても。
 彼の隣にいたかったのだ。
 でも、隣にいても私には何もできない。
 馬鹿で愚図で無知な私には。
 だから、せめて、彼のことを慰めようと、より一緒の時間をすごすようになった。
 ……でも、コレは自分のためなのだろう。
 もっと彼のことを知りたくなった、彼と近づきたくなった、自分のため。
 それでも、体を許すことはできなかった。
 体をあわせない行為でも、彼はあんなにも衰弱してしまったのだ。
 もし、本格的な性行為に及んでしまったら、彼がどんな目にあうのか。
 想像するのも恐ろしかった。
 今、彼を失ってしまったら。
 私は……、どうすればいいというのだろう』

それから、彼女と僕の生活が延々と書かれている。
そして、彼女の書いた最新の、最後のページ。

『期限が来てしまった。もう時間がない。
 一ヶ月後の今日、私は魂を手に入れることができなかった。
 しかるべき罰を受けなければならない。
 でも、その前に、彼に知ってもらいたかった。
 私が何者なのか。
 何を考えていたのか。
 私が彼のことを知りたかったように、彼にも私のことを知ってもらいたかった。
 そして、軽蔑して欲しい。
 私のことなんてゴミ屑のように忘れて欲しい。
 それが彼の幸せなんだ。
 だから――』

274 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:20:59 ID:ICGccihB
「わざわざノートを僕の目に付くところに置いたんですね。僕が勝手に読むと思って」
僕は隣に話しかける。
いつの間にか、音も無く彼女はそこに居た。
彼女はうなずく。
そこは否定して欲しいところだったんだが。
「僕が人のノートを勝手に見るような人間だと思ったんですか? 酷いですね」
苦笑しつつ、尋ねる。
彼女は比較的、困ったような顔になった。
「あの突風もあなたが起こしたんですか?」
とんでもない、というように彼女は首を振る。
「………………」
――そこまで、人間離れした魔物じゃありません。
魔物。
彼女はソレだというのか。
「……あなたは一体、何者なんですか?」
僕は吐き出すように、問う。
それは彼女自身のことを問う、初めての質問だった。
「………………」
――私は、異界から来た人外。
「人外? 人外って……」
「………………」
――いやらしいことをして、魂を盗る、低俗な化け物です。
「………………」
符合してしまう。
行為に及ぶたびに、何か重要なモノが削られ失われていく感覚。
あれは、超常的な何かを持ってこないと説明できない。
「……そんな馬鹿な」
言いながら、気づいてしまう。
時間に正確すぎ。
いつだって、時間丁度に来ていた。
いまだって、音も無く、僕の隣に来たじゃないか。
……異常だ。
「……そんな、馬鹿な」
彼女は何も食べなかったじゃないか。
ほんの少ししか、ソレすらも吐いていたじゃないか。
それでも、元気だなんて。
……異常すぎる。
「……そんな、馬鹿な……!!」
異常だ、異常だけれど……!!
認めたくない……!
僕は、ぼくは、ボクハ!!
彼女は僕の肩にそっと手を置いた。
その小さく暖かな感触に、僕は反射的に体をビクつかせる。
ビクつかせて、しまう。
彼女は、そんな僕を悲しげに見ながら

チュッ

唇を合わせた。
その瞬間、胸の奥から頭の先、手足の指先まで何かがみなぎる。
熱い。
とても熱い何かが僕の体を満たしていく。
それが体の中を蹂躙するのと比例するように、急速に眠気が襲ってくる。

275 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/11(水) 14:21:47 ID:ICGccihB
「………な、にを……?」
「………………」
――今までいただいた分、お返しします。魂を。
「…………そん、なこ、と……したら……あな、た………………は……」
彼女は悲しげに微笑んだ。
……微笑んだと、思う。
でも、霞みだした意識と視界の中でソレは定かではない。
「…………待って、くだ……さい。ぼくは…………あなた、の……ことが……」
「………………」
――わたしもです。
確かにそう聞こえた。
彼女は僕の背中に両腕を回し、抱きついた……と思う。
「(……あたたかい)」
僕はその暖かさの中で、ゆっくりと意識を落としていった。

276 230 sage 2007/07/11(水) 14:23:23 ID:ICGccihB
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが、
次回で完結です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。

277 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/11(水) 17:02:43 ID:IATcqb/D
GーーーーーJーーーーーー!!

やはり人間じゃなかったのか、ノートの独白に萌えた

278 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/11(水) 17:03:49 ID:aZcUhlyb
GJ!これはラストに期待大な展開ですね。そして筆が速い!素晴らしすぎる

279 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/12(木) 05:04:19 ID:fsUUM5/Q
GJ!!
これはワッフルせざるを得ない

280 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/12(木) 06:09:04 ID:CchsV7Yx
GJ!
どうか幸せな結末を・・

281 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/12(木) 06:17:24 ID:SlwEosPw
>>276
ザッピングできましたか・・・GJ!
生きていく為に絶対不可欠なもの、存在が違えば弱肉強食ならば当然の摂理・・・
しかし、この魔物は優し過ぎた
最後は分からない

いや、最後の最後はまだ分からない・・・。

282 名無しさん@ピンキー age 2007/07/13(金) 03:28:32 ID:+ljP4vNJ
アゲ

283 230 sage 2007/07/15(日) 16:27:29 ID:kJaKvyeb
これより、投下させていただきます。
前回よりは短いですが、それでも長いですし、何よりエロが御座いません。
まことに申し訳御座いません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

284 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/15(日) 16:28:24 ID:kJaKvyeb
それからの一週間。
正直あまり覚えていない。
ただいえる事は、部屋の中に彼女の姿は無く、そしてもう二度と帰ってこないだろう、ということだけだ。
僕は何を食べて生きたのだろうか。
でも、何かを食べるたびに彼女を思い出した。
だから、何かを食べてはいたのだろう。
僕は何処に居たのだろうか。
でも、何処かに行く度に彼女を思い出した。
だから、何処かには居たのだろう。
僕はただただ、家の中を、街中を、彼女の姿を求めてさまよったのかもしれない。
僕はただただ、家の中に引きこもり、彼女のノートをめくっていたのかもしれない。
かもしれない、かもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。
重要なのは、彼女が居ないこと。
それだけだった。

「お客さん、いくらなんでも飲みすぎですよ」
いがらっぽいだみ声が聞こえる。
どうやらここは何かの店のようだ。
僕はうっすらと目を開ける。
明るい木目調の日本家屋的な店内。そのカウンター席に座っているらしい。
どうやら飲み屋のようだ。
その証拠に、僕の目の前には小料理と、片手にはしっかりとコップが握られていた。
店に入った記憶も、何かを注文し、飲み食いした記憶がないのだが……。
僕はそのことに戦慄しながらも、意識の全体は“どうでもいい”という結論を下していた。
彼女がいなくなってどれだけ経っただろうか。
彼女のいない世界は灰色で、現実感が希薄だった。
こんなにも薄汚れていたのか。
こんなにもつまらないものばかりだったのか。
こんなにも希望という言葉が見当たらない場所だったのか。
この世界は。
ぼくはコップの中身を舐めた。
口先から胸の中に熱い感覚が下りていくのを感じる。
それはまるで彼女との最初で最後のキスを連想させる感覚だった。
「君、起きたようだね」
隣から渋い低音が響く男の声がする。
ふと横を見てみると、僕の隣の席にくたびれたスーツを着た男性が座って、コップを傾けている。
だが、照明の具合か、僕が酔っているためなのか、その男の体型、体格あるいはどんな容貌をしているのかさえ、僕には見えなかった。
見えるのはただの灰色。
周りの風景同様の、灰色。
「……ええ、起きてますよ」
正直、人と話す気分ではなかったが、僕の中の小市民気質がソレを許さない。
僕の気分を知りもしないであろう男は、こちらに体をむけ喋りかけてくる。
「なにか大切なものでも失くしたのかな?」
「………………」
そのものズバリだ。僕はうなずくこともせず、コップの中身を舐める。
男はそれだけの動作で得心したようで、口を開き、続ける。
「何をなくしたのか当ててあげよう」
「………………」
「ズバリ、恋人。つまりは失恋、だね?」
僕は皮肉に見えるように苦笑した。
「ハズレです。僕がなくしたのは恋人ではないです」
「じゃ、友達かな」
即答で核心を付かれる。
喉が詰まり、何もいえない。
「というよりも、君はかの人のことを友達以上に感じていた。だが、名目上は友達ということになっていた。
君はソレに甘んじ、かの人と関係を続けたが、本当はそれ以上に進みたかった。
でも、できなかった。友達という名目さえ失ってしまうんじゃないかという怯えに足がすくんでしまったのだね」
ズバズバと僕の内心を言い当ててくる。
半分酩酊した意識で、この男は何様なんだろうという理不尽な怒りがこみ上げてくる。

285 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/15(日) 16:29:12 ID:kJaKvyeb
否、正直なところ、逆ギレだった。
図星を付かれ、核心に迫られ、僕の小心をいとも簡単に言い当てた男に対する怒り。
「まるで見てきたように言うんですね」
何も知らないくせに、知ったかぶって。
「まさしく、見ていたのかもしれないよ」
「馬鹿な……」
僕はコップの中身を思いっきりあおる。
さらに意識は朦朧とし、視界が狭くなり、頭が熱くなる。
「じゃー、なんでも知って、何でも見ているアンタ。教えてくださいよ。僕はこれからどうすればいいのかを」
呂律が、理性が回らない。
食って掛かる僕の言葉に、彼は若干、口調に笑いをこめて、返答した。
「忘れなさい」
「なぁんですって〜?」
「かの人のことを、一刻も早く思い出にしなさい。……時間というものはどんな傷にも効く特効薬だよ。とくに心の傷にはね。
かの人もそれを望んでいるのではないかな?」
「………………。ばぁかですか〜? そんなことができたのなら……」
そういいながら思い出す。
彼女のノートの最期に書かれた一部分を。
『そして、軽蔑して欲しい。
 私のことなんてゴミ屑のように忘れて欲しい』
………………。
……そんなこと、できるわけが、ないだろう。
彼女の問いたげな顔、怒った顔、困った顔、なによりはにかんだような笑顔。
本当は彼女は無表情といっていいほど、顔に表情が出ないタイプなのだろう。
それでも、僕にはわかった。
僕だけにはわかっていたんだ。
「彼女がいない世界なんて、そこに流れる時間なんて、無意味ですぅ〜。彼女は、彼女こそが――」
気分が悪くなってくる。
僕は彼女のことなんて何もわかっていなかったじゃないか。
彼女が何を見、何を聞き、何を思い、何に苦しんで、何に謝っていたのか。
僕はわかっていたつもりだった、だけじゃ、ないか……。
彼女のことなんか一つだって理解していなかったんじゃないか?
それでも、彼女は僕の事を生かしてくれた。
魂を返してくれた。
真剣に喋って、真剣に遊んで、友達だといって、いつも隣にいたじゃないか。
なにより、こんな僕を見て微笑んでくれていたじゃないか。
それだけは事実だ。
僕が彼女のことをどう誤解しようと、それだけは真実だと信じたい。
黙りこくってしまった僕を見て、男性はため息を漏らし、そして言う。
「たとえ話なんだが、君は、その失ってしまったかの人を取り戻すためにどれだけ払える?」
「はい〜?」
「つまり、失ってしまったモノを取り返すために、いくらまで、どこまで代償を負うことができる?」
愚問だ。
僕は即答した。
「はい〜? ハッ、僕の人生、命、魂の半分までならぁ、支払ってもいいですよぉ」
「? 何故、半分なんだ?」
僕はみみっちくコップの中身を舐める。
「簡単ですよぉ。本当は全身全霊を払ってでもいいんですがぁ、それだとぉ、彼女が戻ってきたときに、
彼女の隣には誰もいなくなってしまう。それじゃ、彼女はさびしいじゃないですかぁ。
だから、たとえ魂が半分にかけていようとも、彼女には僕が、友達が隣にいないとダメなんですよぉ〜。
それにぃ、僕が返ってきて欲しいのはぁ、『僕の隣にいる彼女』なんですよぉ?
僕がいなくなっちゃ意味がないじゃないですかぁ?」
「? ということは、もし彼女が帰ってきて、君の下を去ってしまったら? そしたら、そんな彼女には何の価値もないと?」
「違いますよぉ。何聞いてるんですかぁ? いくら僕の隣に彼女がいても、彼女が幸せじゃなきゃ意味がない。
僕の隣にいて、もし幸せじゃないんだとしたら、彼女に三行半つけられてもしょうがないんですよぉ。
僕はね、僕が欲しいのはね。僕が、僕の隣にいる彼女を幸せにしたい。ということなんですよぉ。わかります?
結局、友達なんて、持ちつ持たれつじゃないですかぁ。彼女が隣にいるだけで僕は幸せだし、
僕が隣にいることで、彼女に何かを与えられるのだとしたらサイコーですよ」
「でも、それでも、彼女が君から得るものは何もないと、君を切り捨てたら?」
おいおいこの男、人の話聞いているのか?

286 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/15(日) 16:30:09 ID:kJaKvyeb
「だから、さっきも言ったじゃないですかぁ。彼女が幸せでなければ意味がない。
……あ〜、もう、ここまで言わせるんですか? じゃ、言いますけどね……。
彼女を幸せにできるのは、この僕の隣しか存在しない。いや! 断言します! 
彼女を幸せにできるのは、この僕だけだと!! ……たぶん」
アルコールではない何かのせいで頭に血が上る。
男性は少しだけ、呆気にとられてしばらく何も言わなかったが、ポツリと言葉を漏らす。
「君は自分のことを、『醜く、愚かで、貧乏のどうしようもない人間』だと評価していたのではないのかな?」
どうしてそんなことを知っているのだろう。
だが、酔いが究極的に回り、冷静ではない僕は声を張り上げる。
「あんな美人がいつも隣にいたんですよ? いてくれたんですよ? 勘違いしない男はいないですよ」
「だから、彼女のことを幸せにできると勘違いした?」
「……勘違いでも、思い込みでもいい……。彼女が隣にいてくれるのなら僕は……」
いよいよアルコールは睡魔を呼び寄せ、僕の意識が怪しくなっていく。
その意識の中で思う。
僕の魂の半分なんかではとうてい彼女のことを取り戻すことはできないだろう。
それでも、彼女が隣にいてくれたら。
何でもできる。
何だってしてやる。
そして、彼女を幸せにしてみせる。
絶対に。
だから。
だから、だから、だから。
どうか、どうにか帰ってきてください。
薄れ行く意識の中で男の声が木霊する。
「ふん。君はたいそう気持ちが悪い男だな。言ってることは支離滅裂、まぁ、
酔いのせいなのかもしれないが。確かに、醜く、愚かで、貧乏だ。だが、
この私の前で、あの娘を幸せにできると宣言したのは君一人だ。大変遺憾なことに」
その声にこたえるように、店の親父の声もする。
「では、この者に?」
「何でもする、といっている。あの娘のためにこの者になにができるのか。少し興味がわかないか?」
「しかし……」
「なにより、この者といる時、たしかにあの娘は、わたしが見たこともないような顔をしていた。
無表情で無感動なあの娘が。無論、それが幸福だったからとは限らないが」
「そうですか。……私には、いつもどおりの無表情としか……」
「そして、娘の幸せを願わない親はいない。おい君よ。娘のためなら何でもでき、何でもしてやるといった君よ。
我が娘を幸せにして見せろ。力を失いただの人間に落ちぶれた娘を。
無知で無口で頑固で、だが無垢なあの娘をなにがなんでも幸せにしろ。ただし――」

気がつくと、僕はベッドの上に倒れていた。
外出着のままだったから、どこかに言って飲んだくれたのかもしれない。
だが、まったく記憶にない。
たしか、誰かと彼女の話をしていたような――。
酔いがまだ残っているのかぼんやりとした頭で思い出してみる。
すると。

トゥルルルルル、トゥルルルルル………………

唐突にソレは訪れた。
滅多にならない僕の携帯にかかった、たった一本の着信。
「…………もしもし」
酔いがさめた状態で久しぶりに出した声は、酷く擦れて、醜い。
僕はこんな声をしていたのか?
「………………」
無言電話かと思った。
だから僕は切ろうとした。
でも、思い出す。
確か前にこんなことがあったような。
………否。
いつもそうだったじゃないか。
あの人からの電話は、いつもこうだった。

287 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/15(日) 16:31:18 ID:kJaKvyeb
僕は知らず高鳴る胸の鼓動を抑えながら、通話に集中する。
そして、慎重に耳を澄ませれば、雑多な音に混じりかすかに人の声がする。
「………………」
それは。
「………………」
それは……!!
「………………」
――、――――――。
僕は携帯を片手に矢のように飛び出した。

そしてついたのは、何を意味しているのかよくわからないモニュメントの前。
運動不足な僕は息を切らせながら、雑多な人々の中に視線をめぐらせ、かの人を探す。
いない。
いない、いない、いない。
どこだ、どこにいる?
僕は焦りながら、足を進め、一人ひとりの顔を確かめていく。
時々足を止め、鋭い視線で人々を探る。
その様子は明らかに不審で、警察官がいたら間違いなく職務質問されていただろう。
それでも見つからない。
もしかして、あの電話は僕の妄想が生み出した産物なのではないのか?
そんな予感、否、悪寒がよぎる。
「……いや、そんなはずはない。確かに……!」
声に出すことで、悪寒を遮り、意識を保つ。
もつれそうな足取りで、それでも諦めずにかの人を探す。
いない、いない、いない、本当に妄想だったのか。いない、いない、僕は何をしているんだ……? いな――。
そして、見た。
灰色の景色、灰色の人々、その中のたった一つの純白を。
背中まである長い黒髪は空の色を映しそうなほど煌き、全体的に細すぎる体は
白いワンピースに包まれており、その肌は、それと同じくらい白い。
僕を見つめる漆黒の瞳は赤ん坊のように澄んでおり、その目がすえられている顔は
どこか人形じみ、人間離れした美しさを保持していた。
その姿を見て、僕は涙がこみ上げてくる。
わけのわからない衝動に駆られ、叫びだしたくなる。
きっと、もう飛ぶことのできないその人は。
こんどこそ、ちゃんと待っていた。
僕を待っていたんだ。
僕はよたよたとかの人に近づき、倒れるように彼女を抱きしめた。
「あなたは……!! あなたって人は!! 本当に!!」
意味もわからず、喚き散らす。
その人も、……彼女も僕をあやすように抱きしめた。
「………………」
そして彼女は、意味も無く謝る。謝り続ける。
僕は興奮気味に尋ねた。
「どうして、どうしてあなたがここにいるんです!?」
本当はそんなことはどうでもいい。
彼女が僕の目の前に、僕の腕の中にいる、それだけで十分だ。
でも、何かを喋らなければ、嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだった。
僕の問いに彼女は無表情に、だがどこか興奮したように答える。
「………………」
――わかりません。気がついたら人間でした。
あまりにもどうしようもない回答。
いつものような、どこかたどたどしい子供のような呟き。
僕はそんな彼女の一言に無性に可笑しくなって
「アハハハハ、ハハハハハハハハハ……」
笑い出してしまった。
可笑しい、可笑しい、可笑しい。
ダメだ、どうしても笑いが止まらない。
そんな僕の胸で彼女は泣き出した。
なぜなのだろう。
でも、傲慢かもしれないが、僕にはその理由がわかったような気がした。

288 彼女の事情と僕の慕情 sage 2007/07/15(日) 16:32:47 ID:kJaKvyeb
僕は笑いながら考える。
今の状況を。
一人は大笑いし、一人は大泣きしている。
傍から見たら、どんな二人に見えたのだろう。
僕はソレさえもおかしくて笑った。
その時、脳裏に、微かに聴いた覚えのある声が響いた。

『――君の魂の半分、確かにいただく。それで君はあの娘を幸せにして見せろ。
ただし、このチャンスただではない。君の魂の半分だけでは到底足りないこの賭けを
成立させるために、君は、もう片方の魂をかけなければならなくなる。
つまり、あの娘を幸せにできなければ、もう半分の魂も頂戴することになるということ。
これは実験でもあり、試験でもある。だが、それ以上に、あの娘を幸せにしたい私と君が望む結末を導き出すための唯一の道でもある。
私の勝手な行い、勝手な期待。だが、君はそれでも構わないだろう? なにしろ娘が、彼女が――』

――僕の隣にいるのだから。
僕はそういわれたときに確かに、頷いた。
彼の提案、賭けを了承したのだ。

「(僕らの評価、結論はとりあえず、しばらく保留ということか)」
そして、それらは全て、僕の手にゆだねられているらしい。
彼女のことを幸せにできるんだろうか?
賭けられているものの大きさに体が震える。
もう、自分が醜く、愚かで、貧乏だといういい訳はできない。
それでも、僕はやらなければならないのだから。
死にたくない僕のためにも。
幸せにしたい彼女のためにも。
たった一つの『彼女の事情』は、かけがえのない『僕らの事情』になったのだから。
そこまで考えた僕は、腕の中の暖かな存在をもっと確かにしたくて、目を瞑り、腕に力を入れた。

そして、ひとしきり笑い、泣いた後、彼女は言った。
「………………」
――帰りましょう。“家”に。

「当然です」
僕は瞳に溜まった涙をふき取りながら、大きく頷いた。

見ていろ、どんな手を使ってでも、彼女を幸せにしてみせる。
彼女がもう要らないというまで、幸せ漬けに、幸せまみれにしてみせる。
この賭けは、僕が勝ち取ってみせる。
だから見ていろ。いつまでも。
僕らの幸せな生活を。
そして、なにより、ありがとう。
お義父さん。

僕はためらい、彼女は躊躇なく、手をとった。
いつもの光景に、僕は胸が熱くなる。
涙を悟られないように、僕は笑った。
こちらを見つめる彼女も、同じように笑っていた。
僕にしかわからない微妙な微笑で。
僕は彼女の手を、もう離さないように強く握った。
彼女もまた、小さな手で強く握り返してくる。
そして、僕らは帰っていく。
僕らの家に。
いつものように。
笑いながら。

薔薇色の日々を、いつまでも。




289 230 sage 2007/07/15(日) 16:37:08 ID:kJaKvyeb
以上です。

稚拙なSSにここまで付き合ってくださった方々。
駄文の垂れ流しを許容してくださった方々。
あまつさえ感想まで書き込んでくださった方々。

皆様のおかげで何とか完結させることができました。

では、改めて。
ここまでお付き合い有難う御座いました。
また機会が御座いましたら、お会いいたしましょう。

そのときまで、ごきげんよう。

290 名無しさん@ピンキー 2007/07/15(日) 17:11:35 ID:Zdsg8tJ8
>>230さん、GJ。
いい話だ。とにかくいい話だ。
特に最後の1行がお洒落だな。

では、また。

291 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/15(日) 19:21:35 ID:sAWsevrS
うおあっ、完結編キタ───────!やばい感動度が高すぎてヤバい。もうひたすらにGJです!

292 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/15(日) 22:26:11 ID:wfIALHgb
GJ!
ちょっとだけ主人公の事を尊敬してしまった。

293 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 03:36:07 ID:lVX+tnwo
まずいってこれは・・・・・名作すぎる。
涙と一緒にいろいろと汚れた物が流れていったような気がするよ・・・

さて言わせてもらうよ。
神GJ!!

294 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 04:44:59 ID:GW7M23MQ
>>289
230の君グッジョb!
昔どこかで感じた感動を思い出したようだよ・・・

途中携帯のとこから俺自身が動作に移行して、走り、外聞を気にせず、彼女を見つけ、そして泣いた。
そもそも事の男自身狙った感じではあったが、それこそがこうまでシンクロさせ、
長文ダメダメキングのこの俺を毎回楽しみにさせてたのにはほんと驚いたよ……

最後は互いが前を見据え共に歩んで行ける事を・・・


「最後の最後にありがとうを君へ」


295 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 08:58:05 ID:RNsXBJOc
感想が無駄に厨臭い長文だと萎えるな

296 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 13:34:22 ID:3d3bxwFQ
これだろ?!
http://jggj.net/fbi/
http://jggj.net/7878/
http://jggj.net/papapan/

297 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 19:06:53 ID:qsstGIeJ
ここのスレマンセーしてる奴らって、リアルで女と話せずに女が全部従順で
自分のいう事に頷くだけの存在ならいいなーとか思ってるヒキオタなんだろうな

298 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 19:15:55 ID:gND64C8J
以下、何事も無かったかのようにスルー。

299 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 19:44:06 ID:qsstGIeJ
否定しない、つまり認めるってことか

300 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/16(月) 22:58:50 ID:0CvBsIlW
なんという一人芝居……

301 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 00:02:16 ID:osEbpVBk
だいたいリアルなんかくだらないことが殆どだし。嫌になるよ。
せめて二次元だけでも癒しが欲しいのさ。

302 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 00:03:24 ID:d16xRBps
嵐に反応するなってーの

303 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 00:10:49 ID:xVSyYMa8
エロパロに来る人なんてみんなヒキオタですっ!!



……あれ、ちがうの?

304 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 01:25:52 ID:yhT6BMkl
>303
お前は全俺を敵にまわした

305 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 01:56:17 ID:SrYzALY8
>>303
お前に全俺を敵に回したかった

306 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/17(火) 02:01:17 ID:UBnR+iiR
他所でも煽りやらかしたやつだからスルー推奨。

307 名無しさん@ピンキー age 2007/07/18(水) 03:02:59 ID:sRXcIRdC
保守
↓以下無口女の作り方を書き込んでくれ。

308 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/18(水) 11:59:42 ID:Hji6gfPr
@口が臭い、声がうざいなどと言い続ける
➁さらに喋る度に殴りつける
Bそれでだめなら声帯をぶった切る

勿論DVで訴えた際には必ず殺すと言い含めておくのは基本

309 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/18(水) 12:21:42 ID:HvqwoGon
その手の無口にはイマイチ萌えないなぁ・・・

310 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/18(水) 13:29:33 ID:BTT3Xvv8
日本語のしゃべれない女のコ
共通言語が外国語しかないと、必然的に口数は少なくなる

311 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/18(水) 15:13:30 ID:W3UoyfUf
>>307
本読ませまくる
ひたすら

312 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/19(木) 01:32:23 ID:z5qZhjOc
>>310
人によっては母国語で猛烈にしゃべりかけてくるので要注意
 あ、でもお互い言葉を教えあうというシチュいいなぁ・・・

313 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/19(木) 02:37:57 ID:BsA7LmtI
お互い自国語で話してて通じてないのに、
続けてるとなんか楽しくなってくることあるよな。
うなずいたり、ちょっと首傾げたり笑ってみたりしてんの。
いやこれじゃ全然スレ的にダメだが。

314 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/19(木) 14:10:10 ID:/CGT44Md
>>310
だがそれを書こうとすると、作者は出す国の言葉をある程度しゃべれなくてはいけないような気がするのは俺だけだろうか?
おもしろそうだけど

315 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/19(木) 17:33:52 ID:EzfV12al
主人公の一人称にしてしまえば、判別不可能な言葉はある程度主できるんだぜ。

316 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/19(木) 18:41:03 ID:88/MFZFt
>>314
つyahoo翻訳

317 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/21(土) 00:54:40 ID:MWsYx+B/
人魚だから発音(発声)出来無いってのがあったな。


318 名無しさん@ピンキー age 2007/07/21(土) 04:11:14 ID:2DFcj/r1
投下してくれ

319 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/21(土) 21:22:05 ID:hUU08EIv
私の知らない武器が内蔵されているのか…?

320 名無しさん@ピンキー 2007/07/21(土) 21:22:53 ID:hUU08EIv
すまん!誤爆した

321 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/22(日) 15:14:03 ID:WecqGOL2
>>313
もう読んでるかもしれないけど、

【不可抗力】女の子と二人きりスレの520〜のシチュがまさにそれかと。

完結してるし、無口スレの住人にも向いてそうな感じの話かも?

322 名無しさん@ピンキー age 2007/07/23(月) 03:32:05 ID:8VD74LaO
書いてくれる職人さん来ないかな・・・

323 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 12:56:40 ID:E9GkA+Nn
主人公・・・俺
ヒロイン・・・雪華 (設定に沿って無口。)
こんなカンジで書いていきます。
初心者なので、見苦しいところはあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

324 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 13:14:23 ID:rDkLx+IC
>>323
改行を多用し過ぎないことと
書きながら張るのはしない
ということを忘れないで

325 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 13:30:39 ID:E9GkA+Nn
四月の春。みんなが入学にうかれる季節に、俺は彼女と出会った。
彼女の名前は雪華。
俺とイッコ下で中学卒業したての高校一年生。
ちょうど入学式&始業式も終り、俺は一人で帰っていると、前に女の子がいるのに気付く。
彼女の特徴の長い黒髪に魅かれて、声をかけた。
「君、この春入学してきた、一年生だよね。俺、一応帰り道一緒みたいだから覚えておいてね。」
帰り道一緒だから、覚えておいてって、あまりにも変だけどこれ以外話し始めの機会が無かったので、右肩に掛けているバッグの中の参考書と教科書を見ながら言った。
「私は・・・雪華・・・。」
持っていた本のページをめくりながら、彼女は答えた。
不自然な喋りだしに無視されると思っていた俺は、すんなり来た返事に少々戸惑いながらも、話を続けた。
「じゃあ、雪華でいい?」
「うん・・・。」
いきなりの呼び捨てに今度こそ無視されると思ったが、またもや、彼女は答えてくれた。
「家どこ?」
「○○町三丁目」
「じゃあ、俺ん家の向かいじゃん! 」
意外だった。俺ん家の向かいといえば、近所でも有名な夫婦ゲンカの名所で、
毎晩、毎晩大声でケンカしているので、近所の評判は悪かった。俺は敢えてそのことは聞かず、話題を変えた。
「ウチの学校の受験、何点で入った?」
「492点・・・」
これには、びっくりした。入学式最中となりの男子が話していた、ウチの学校に492点で入った
バケモノがいるというのは本当だった。(男子の情報力の凄さにも驚いたが)
「じゃあ、今度勉強教えてもらっていい?」
「いいけど・・・、あなた私の先輩だから・・・多分たいしたこと教えれない・・・」
「大丈夫だって! 俺バカだから(笑」
まあ、確かに、高2の俺が入学したての高1に勉強を教えてもらうのもなんだが、俺の狙いはそこじゃなかった。
勘がいいやつはもうここで気付いたと思うが、俺は雪華のことが好きになってしまった。
ヒトメボレとかいうやつだ。


326 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 16:24:41 ID:0Mkf4+nN
なんとまぁ…

327 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 16:28:35 ID:+CMQ8Vao
これまたキツい…


328 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 16:51:17 ID:E5EmfJC5
なんというか・・・・・
まあ、どんまい。

329 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 21:00:31 ID:RaVXiWpW
マジレスすると、
ネット上のものでもいいから、小説をもっと読んで見るといい。
意気はなかなかいい。

330 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 21:36:46 ID:rA5X1qDP
とっかかりとしては、ネット小説やラノベでいいと
思うのだが、できれば、夏目漱石とか志賀直哉とか、
古典といわれる、小説にも挑戦してみたら
もっといいと思うぞ。


331 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 23:03:42 ID:0ZZ7y790
>「家どこ?」
>「○○町三丁目」
>「じゃあ、俺ん家の向かいじゃん! 」

紅茶がキーボードまみれになりました……

それはともかく、
マジレスすると、知り合いなどで普段から小説を読んでる人に読んでもらって
容赦のない意見をもらうといい気がする。
それで書かなく(書けなく)なってもそれはそれでいいんじゃないかと。

332 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 23:05:35 ID:d5t6z0eR
みんな優しいな
そういうスレの空気は嫌いじゃないが

333 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/23(月) 23:48:19 ID:E5EmfJC5
>>332
もうこうやって職人を育てていかないとスレの過疎具合が限界なんだよ;;

334 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 01:34:55 ID:SOMEZ6DQ
皆なかなか厳しいな。
違和感読んでしまった俺ってダメなのかな。
皆のコメント見た上でもう一度読んだら
「成る程」とも思ったが。

331のポイントも三回読んで初めて気付いたぞ。

。。。と、こんな読者もいるので
E9GkA+Nnさん、気にしすぎることなく、
このまま頑張って続けください


335 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 03:36:50 ID:6gTeKCrV
>>331のどこが変なのか分からない俺orz
教えて童貞さん

336 334 sage 2007/07/24(火) 04:09:32 ID:SOMEZ6DQ
>>334
> 違和感読んでしまった

「違和感なく読んでしまった」の間違いだ。
orz


337 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 06:20:03 ID:ZTyKaUV5
3丁目という情報だけで向かいの家とわかる。
(3丁目には2軒しかないのかもしれない)

向かいの家が夫婦げんかで有名なのは知っている。
でも子供の顔を知らなかった。

338 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 09:31:51 ID:gYtZO2th
下はまぁ子供が居なくても夫婦喧嘩の激しい家があるからともかくとして、上はな

339 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 11:08:32 ID:np//1+U8
多分、生まれて初めて書いたSSだと思うが、それを躊躇する事無く
ココにうp出来る『勇気』に対して、最大級の敬意を表する

少なくとも一週間以上、隠しフォルダの中で寝かせすぎて
腐敗寸前まで逝かせている自分に比べれば、百倍もマシ

340 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 11:45:34 ID:0gmjANm5
よし、腐る前に放出するんだ!

341 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 13:36:40 ID:FD92lQis
腐ってても美味しくイタダク!

342 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 13:47:27 ID:PxvGfWLz
ハハノ\/\

343 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 13:51:59 ID:PxvGfWLz
今から続き書いていくんだけど、
ちょっと焦ってるから、話の展開速いけど
気にしないで読んでください。

344 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 16:36:53 ID:GMIChF8l
wktk

345 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/24(火) 21:45:36 ID:w7SJ3CsH
今は発酵させていると考えるんだ


よし、そろそろ蔵から出してみようか?

346 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/25(水) 00:06:41 ID:SOMEZ6DQ
339に皆で勇気を分けてあげなきゃ

347 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/25(水) 04:49:45 ID:rtYPZboc
>>343
>ちょっと焦ってるから、話の展開速いけど

GJ !!

勇者に乾杯!

348 名無しさん@ピンキー age 2007/07/25(水) 04:52:31 ID:DGXcwKNa
>>343さあ舞台は整った。腐る前に投下したまえ。

349 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/25(水) 23:45:54 ID:1mzYAmfG
ちょっと、待ってください・・・。(初心者なもんで、打つの遅いです。。。)

350 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/25(水) 23:55:46 ID:hnwgZUDw
断りはいらないよ。
一週間後でも1ヶ月後でも構わないんで
できあがった時点で投下してくれればいい。

351 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 05:10:43 ID:QLc5j37y
>>349ゆっくり推敲して自己最高の作品を投下してくれたまえ。


ずっと君の後ろ7mから無口になって見守るから。

352 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 12:14:08 ID:xalQV6zc
7mって俺の真後ろじゃねぇか。やめてくれよ

353 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 17:24:31 ID:UH8L4WzA
じゃあ俺は毎晩>>352の枕元で見下ろしているよ

354 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 17:40:57 ID:25wGU1aT
耳元に熱い吐息がかかる。
無口な女だとは思っていたが、こういうときまでとは
下からしがみつく細い腕が愛しさを募らせる
潤んだ瞳は俺しか映さない

可愛い女だ

自分が、この女から離れられないことを理解した夜

355 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 17:50:33 ID:h23S74ig
>>331
>紅茶がキーボードまみれになりました……

ちょwどんな紅茶だwww

356 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/26(木) 18:26:47 ID:EeZm8OaR
>>355
ネタに(ry

357 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/27(金) 02:42:35 ID:zCcXY0XW
>>354>>353の事を書いたのかと思って笑い死んだwww


スマソ

358 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/27(金) 23:12:21 ID:y9sWNqUp
ん?

359 名無しさん@ピンキー age 2007/07/28(土) 05:19:47 ID:kRXIr/kH
つまり>>354の耳元に熱い吐息がの部分が、>>353>>352の枕元で>>352の耳に熱い吐息を吹きかけてあげてるのかなと。

わかりにくくてスマソ

360 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/28(土) 14:18:31 ID:8w2/TJeS
流れ切って小ネタ。


ポンポン
弱々しいながらも気付ける範囲に叩かれて振り向くと
「・・・・・・」
無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場には俺を含めて二人しかいないわけだが。
「ん?どうした?」
「・・・背中・・・向けて・・・」
最低限聞き取れる声の言われるがままに背中を向けたのち、
「んで?」
と問えば、
「・・・文字・・・当てて・・・」
と人差し指を出しながら答えた。
なるほど、よくわからんが文字当てゲームをやろうとしてるらしい。
さして断る理由もないので
「よし、来い!」
と威勢よく言って背中に意識を集中させた。
それから多少間があった(その中に深呼吸するような音が聞こえた)のち、
スススっ、と背中をなぞってきた。

・・・・・・

「・・・ぉ、終わり・・・」
なんか最後のほうが震えていたような気がするが、長いことかけたものがようやく終わった。
だがそのおかげでわかりやすかったのですかさず振り向いて答えを言おうとしたら、
「・・・・・・」
顔を真っ赤にさせている無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場(ry
じゃなくて、
「ど、どうした!?風邪でも引いたのか?!」
「・・・ぇ、いやちが」
相手の言うことお構いなしに額に手をあてた瞬間、
しゅ〜、ぱたん
と音をたてて倒れ込んだ。「おい?!大丈夫か?!おーい・・・」



小ネタなうえ文才がないので続けられません。
あと携帯から書いたので見づらいかもしれないです。

361 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/28(土) 17:04:21 ID:x9inJUH3
GJ!
背中には「好き」とか書いたのかな?

362 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/28(土) 19:51:02 ID:A2PjOwBa
>>360
 GJ!
 本当、かわいいよなぁ

 短く効果的にまとめられる文才、テラホシス
 

363 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/28(土) 22:38:21 ID:H1o/blrY
800

ニャ━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━ン!!



364 名無しさん@そうだ選挙に行こう sage 2007/07/29(日) 09:12:54 ID:NWfP2fgi
「シテ」

とか書かれたら・・・

365 名無しさん@そうだ選挙に行こう sage 2007/07/29(日) 12:18:03 ID:/ZpyD5zq
おkするしかないだろ・・・・・ 常考

366 名無しさん@そうだ選挙に行こう sage 2007/07/29(日) 12:19:43 ID:/ZpyD5zq
つーか今更だが改めて読み直してみると>>360氏文才ありすぎwww
しかも携帯でこのクォリティ
ぜひ続編書いていただきたいです。

367 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/29(日) 22:39:50 ID:64etFQfM
そろそろ誰か池戸美穂について語ってくれないか?

368 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/30(月) 05:26:45 ID:BhHZkoh5
>>360
かわいいねぇ〜
どうも無口っ娘はティセ=ロンブローゾを想像しちまうぜぃ!

369 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/30(月) 10:36:55 ID:YU9YGEB4
>>360
GJ
さぁ、そのクオリティのまま続編を投下するんだ!

370 coobard ◆69/69YEfXI sage 2007/07/31(火) 22:33:14 ID:tfQb24Fp
初めまして。coobardと申します。
今から12レスほど投下させていただきます。
よろしくお願いします。

371 1/12 sage 2007/07/31(火) 22:34:03 ID:tfQb24Fp
《無口なミュウマ》

 ぼくは、いつもの保健室で目を覚ました。
 小さい頃から体が弱くて、よく保健室にお世話になっている。
 今日も朝礼で気分が悪くなり、ここに来てそのまま眠っていた。

 天井が仄明るい。
 グラウンドに反射している初夏の日射しを、窓から受け入れてるんだろう。
 ぼくのいるベッドは、つい立てに囲われている。外は見えない。
 隣のつい立ての向こうにはベッドがもう一つあるけど、いつも誰もいない。
 足元のほうにいるはずの、保健の先生も気配がない。

「静かだな……」
 ただ、わずかに体育の授業をやってる音が聞こえる。
 野球かな。高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 窓際から授業そっちのけで応援してるんだろう。

 ふいに、すぐ近くから鳥の羽ばたきが聞こえた。
 またカラスが来てるのかな……。カラス、多くなったなぁ。

 そんなまだ半分眠っている思考の中にぼんやりと、ある女の子の顔が浮かぶ。
「そう言えば佐藤さん、そんなのに全然興味なさそうだったな……」

 ぼくには最近、気になる女の子がいた。
 名前は佐藤 美馬(さとう みうま)。
 彼女はいつも一人で、教室の窓から外を見たりしてる。
 実は特に何を見ているわけでもなく、ぼんやりとしているだけみたいだけど。
 成績も運動も普通。話しかけられれば返事はするが、ほとんど単語だけ。
 会話が続いているのを見たことがない。
 誰にも興味が無さそうで、必要以上にしゃべらない。無口だ。何を考えてるんだか全然分かんない。
 でも、そこがぼくの興味を惹いた。
 知りたい。彼女が何を考えているのか。
 そう思った。

372 2/12 sage 2007/07/31(火) 22:35:00 ID:tfQb24Fp
 見た目は全体的に小さい。出るところも全然出てない。
 高校生なのに、第二次性徴のまだない少年とも少女ともつかない、そんな中性的な雰囲気だ。
 髪は普通に黒く、短めで肩より上。
 顔はけっこう整っている。でも、きれいというよりは幼い、かわいいといったほうが似合う気がする。
 瞳は印象的だ。明るい茶色、とび色っていうのかな、そんな感じ。

「でもなぁ……」
 ぼくは腕を上げて、それをもうかたほうの手で確かめた。なんて白くて細い腕。
 ぱたりと腕をベッドに落として、溜息をついた。
「こんなんじゃ、佐藤さんどころかどんな女子でも相手にしないよな……」

 ふいに人の気配がした。
「大丈夫? 佐藤さん」
 あの声は、うちのクラスの保健委員だ。どうやら佐藤さんを連れてきたらしい。
 佐藤さんが保健室に来るなんて珍しい。
 確かに物静かで無口な子だけど、いつも普通に元気そうだった。

 保健委員は佐藤さんを奥のベッドのほうへ連れて行く。
「先生いないけど、とりあえずそこのベッドで横になってればいいよ! それで大体、大丈夫だから」
 保健委員は大雑把な性格だった。

 保健委員が教室に戻ってしばらくすると。
 どこからか優しい花の香りが漂ってきた。佐藤さんの香りなんだろうか。
 ちょっと頭を回して、隣のつい立てのほうを見た。
 窓から入る明かりで、つい立てには佐藤さんのシルエットが映っている。
 彼女は横向きに転がっていた。シーツを被っているようだ。
 つい立てひとつ隔てた向こうに、佐藤さんがいる。その状況にちょっとドキドキした。

 彼女のほうを何となくそのまま見ていた。
 肩が動く。
 シーツの衣擦れと一緒に、かすかな金属音がした。
 なにかアクセサリーのチェーンみたいだ。

373 3/12 sage 2007/07/31(火) 22:35:46 ID:tfQb24Fp
 彼女が微妙に震えだした。
 吐息と声が聞こえてくる。
「……ふっ……うう」
 これは……泣いてる?
 どうしたんだろう。
 なにがあったんだろう。
 彼女は何か、つぶやいた。
 しかし、それは聞いたこともない言葉だった。
 でも。
 悲しげなのは、わかった。
 ぼくは……なにもできないんだろうか。
 好きな子が悲しんでるのに。

 いや。なにができるかじゃなくて、なにかしないといけないんだ。
 ワケがわからなくても、それでも、きっと。

 ぼくは息を大きく吸って、深呼吸した。
 そして。
「あ、あの佐藤さん?」
 声を掛けた。

 彼女の影が、びくっとなった。
「サハラ……君?」
 彼女のか細く頼りない声。
「う、うん。ぼく、体弱くてさ。よくここにいるんだ」

 返事はない。
 ぼくは心臓の鼓動をなんとかしようと右手で胸を押さえながら、話を続けた。
「佐藤さん、ちょっと聞こえちゃったんだけど、その、泣いて……ないかな」
 彼女の、すん、という鼻を鳴らす音が聞こえた。
「えと……ぼくでよかったら、話、聞くけど……」
 言った。言えた。

374 4/12 sage 2007/07/31(火) 22:36:21 ID:tfQb24Fp
 しばらく沈黙。
 怒った、かな。それとも無視、なのか……。

 ふいに、彼女のシルエットが大きく動いた。
 ベッドから降りて、ぼくの足元のほうへいく。
 つい立ての向こうから、ぼくのほうをちらりと覗いた。
 ちょこっと頭から鼻先までが見える。
 髪はくしゃくしゃで、その瞳は潤んでいた。
 そのまま、そこで立ちすくんでいる。

 また、無言の時が流れた。
 ぼくがその沈黙に耐えられなくなって、何か言おうとしたとき。
 ここが静かでなかったら、聞き取れないほどの声がした。
「……いいの?」
 ぼくは体を起こして即答した。
「あ、うん! もちろんだよ」
 彼女はじっと見つめている。
「あ、えと、そ、そこで立って話すのもなんだから、よ、よかったらこっちに……」
 それってすっごい誘い文句じゃん。なに言っちゃってるんだ、ぼくは。
「あっ、いやそれってヘンてか、やらしい意味じゃなくて、ごめんね、なんかその」
 照れ笑いしながら、彼女のほうを見ると。
 彼女もちょっと笑って。
 ぼくの太もものへんにやってきて、ちょこんと腰を掛けた。
 短い制服のスカートがひらりと揺れる。

 彼女のきれいな太ももに置かれた両手は、緊張のせいなのか、きゅっと握られていた。
 彼女の横顔はうつむき加減で。
 寂しそうに見えた。
 それだけで、ぼくの心は締め付けられた。
 なんとかしてあげたい。

375 5/12 sage 2007/07/31(火) 22:37:00 ID:tfQb24Fp
「それで……佐藤さん。なにか……あったの?」
 彼女はぼくの言葉を聞くと、スカートのポケットから何かを取り出した。
 握られたこぶしを、ぼくのほうへ突き出すと、ゆっくり開く。
 そこには銀色のペンダントがあった。さっきのチェーンの音はこれだったのか。
 ペンダントトップは卵形で、開くようになっているみたいだ。
 周りの飾りはものすごく細かく作り込まれている。
 よく解らないけど、相当高価な物に違いない。
「すごく、きれいだね」
 彼女は軽くうなずくと同時に、それをさらに突き出す。
「え、これぼくに?」
 彼女はちょっと笑って、首を横に振る。
「開けて」
「あ、そか、はは……」
 ぼくは勘違いに赤くなりながらそれを手に取り、ペンダントトップを開けた。

「えっ……これって……」
 そこにはどうみてもぼくの顔写真があった。
 だが、その肩まで写っている服装は見たこともないもの――なんというか貴族っぽいものだった。
「ぼくの写真……? にしては、こんな服持ってないし、撮られた記憶もないけど……」
 彼女を見ると、また軽くうなずいて。
 今度は寂しそうに笑う。
「それ、向こうであたしの好きだったひと」
 その言葉に対して瞬間的に色々な思考が巡り、ちょっとパニックになる。

 向こう? ってどこだろ。
 恋人がいたの? いや、好きだっただけなのかな?
 それがでも、ぼくにそっくりってどういうこと?
 なんでそれを見せたの?

 ぼくがそんな状態で、あわあわしながら彼女を見ると、その瞳が強く輝いていた。
「運命、信じる?」
「え……?」
「あたし、信じる」

376 6/12 sage 2007/07/31(火) 22:37:45 ID:tfQb24Fp
 彼女はペンダントを持ったぼくの手を上から握った。
 ぐっと顔が近づく。
「もう戻れない。でも……」
 彼女の顔が、赤みを増しながら更に近づいて来る。
 ぼくはパニック度と血圧がぐんぐん上昇した。
「え、え、なに」
 鼻が当たるほどの距離。
 彼女が不思議な言葉を囁く。
 意味は解らないけれど、心地良くて。
 ぼくは彼女の頬の熱を感じて。
 彼女は目を閉じて。
 ぼくの唇を奪った。

「あ……そ、そんな、佐藤さん……」
 長く熱く濃いキスの後、彼女はぼくの太もものあたりで馬乗りになっていた。
 ぼくの股間が、彼女の開けた制服のズボンから飛び出している。
 ぼく自身はもうすっかり、彼女の手の中にあった。
 彼女は少し楽しそうに、ぼくのモノのぬるぬるとした先端部分を弄ぶ。
「う、く……」
 彼女はくす、と笑ってぼくを見る。
「はじめて?」
「そ、そりゃあ……。あ、もしかして佐藤さんは違うの? あの、ぼくに似た人と、その」
 首を横に振る。
「好き、だっただけ。してない」
「そ、そうなんだ」
 こっくりと、うなずいた。
 ぼくは彼女に失礼だけど、少しほっとした。
 男の身勝手、というか……好きな子の処女は自分が貰いたい、なんて思ってる。

 彼女は火照った顔でぼくの手を取ると、自分の制服のすそから中へ入れる。
「ふっ……ん……」
 ぼくの手がお腹に当たる。なめらかな肌触り。
 ムダな脂肪がないどころか、本当に子供のように痩せている。
「はぁっ……おっぱい、触って」

377 7/12 sage 2007/07/31(火) 22:39:14 ID:tfQb24Fp
 ぼくは彼女の指示に従った。
 ハッキリ判る肋骨の上で、わずかに膨らんでいる胸。その先端が痛々しく尖っている。
「の、ノーブラなの?」
 恥ずかしそうに潤んだ瞳で、小さくうなずいた。
「そか……」
 ぼくは精一杯優しく笑って、彼女の乳首を親指で刺激した。
「ふぅ……んっ……はぁっ」
 小刻みに彼女の体が震えた。
 あごが上がって、背中が反る。
 その反応を見て、ぼくの股間に血が集まるのが判った。
 ソレを握っていた彼女が少し、はっとした。
「また、硬く……」
 彼女の手にぼくのモノから、鼓動が伝わる気がした。
「あ、はぁ……」
 彼女の眼がとろん、となる。
「も、もう、挿れたい」
 ひざ立ちになって、自分のパンツが覆っている大事な部分を晒した。
 その濡れてぬめぬめと光る割れ目からピンクの肉が覗く。
 そのまわりに毛はなく、つるりとしている。こっちも子供みたいだ。

 彼女はぼく自身に手を添えて、その部分にあてがった。
 ゆっくり腰を落としていく。
「ん! んん……」
 強い抵抗感がある。
 しかしそれさえも、強烈な快感の渦に巻き込まれている。
「あ、佐藤さんの中、すごく熱くて……っ! 気持いい!」
 彼女はあごを上げたまま、金魚のように口をぱくぱくさせている。
「く……はぁっ!」
 全体重がぼくの腰に乗った。
 根元まで、ぎっちり挿入された。
「あ、はぁ……ああ、うあ、はぁはぁ……っ」
 彼女はもう苦しそうではなかった。
 半分笑うように、口を開けて舌を突き出す。
 よだれがたれて、制服を汚した。
「サハラ君……きもち、いい……あたし、きもちいい」
 ぼくは彼女の腰を抱いて、中を突いた。
「うあっ! あ、ああ!」
 彼女の腕が、ぼくの首に回る。
 見上げると、その瞳は焦点が合っていない。
「はぅう……好き、好きぃ……ナオユキぃ」
 ぼくの名前を呼びながら、唇に吸い付いた。

378 8/12 sage 2007/07/31(火) 22:39:54 ID:tfQb24Fp
「ん! んぷ、ちゅる、んん!」
 ぼくはあまりの淫乱ぶりにびっくりしたが、こうなったらもっと激しくしてやろうと思った。

「ん! どう! 佐藤さん! 良いんだよね、これが!」
 スカートの中に手を入れ尻を掴んで、思い切り突き込んでいく。
「うあ! あ! ふんぐ! あぁお! う!」
 彼女は軽い体を仰け反らせて、喘いだ。
「ミ、ミュウマって、呼んで! ナオぉ!」
 ぼくは腰をさらに回すように突き上げる。
「ん! ん! ミュウマ、腰が動いてるよ、スケベだなぁ!」
 彼女の腰はぼくの動きに合わせて、そのぐちょぐちょになった部分を強く擦りつける。
「ああはぁ! あたし、スケベ! スケベなのぉ!」
 彼女の腰がうねうねと、快感をむさぼるように動く。

 ぼくはそれを放置して、両手を上にずらし、彼女の制服をまくり上げた。
 淡いピンクの乳首が両方、露わになる。
 その硬く小さな先っぽを、唐突に吸った。
「ひうっ!」
 一瞬、彼女の動きが止まる。
 ぼくは構わず、さらに吸って舐めた。
「あぶぁ……! くるるぁ! いふぃんくぉ! いふぃ……」
 意味不明の言葉が飛び出した。

 彼女の動きが止まったままになったから、ぼくはまた、突き上げた。
「ん! ナオ、いふぃん! くるるぅ!」
 彼女は泣きそうな声を上げた。
 よく解らないがどうやら、絶頂が近いようだ。
「ぼくも、ん! い、イクよ! イクイク……!」
 ぎゅっと締め付けられる感覚が、ぼくの射精感をより強くした。
 彼女はぼくを抱きしめる。
 脚もぼくの腰に絡まる。
「あ、な、中にでっちゃ、出ちゃうよ! い、いいの? ミュウマ!」
 彼女はいやらしい水音と共に腰をぼくの腰に打ち付けながら、囁く。
「ん、いい、中で、中にいい! いふぃん、う、いふぃんんん!」

379 9/12 sage 2007/07/31(火) 22:40:45 ID:tfQb24Fp
 不思議な、でも、かわいい鳴き声にぼくの我慢は限界に達した。
「あ、あっ! ミュウマ、出すよ出すよ出すよっ! うっうう!」
「ナオナオナオぉ! いふぃ! いふぃいふぃいふぃぃ!」
 ぎしぎしと安物のベッドが激しく軋んだ。
「うあぁぁ――ッ!」
「いぎぅ――ッ!」

 ぼくたちは、思い切り果てたあと。
 狭いベッドで、抱き合いながら微睡んでいた。
「ミュウマ……好きだ……」
 彼女の髪をくしゃ、と掻いた。
「ん……ナオ。好き……」
 初めてがこんな経験で良いんだろうかとか、それにしても誰も来ないってどういうことだろう、とか。
 そんなことをぼんやり考えていると。
 ベッドの片隅に、いつの間にか黒いオウムのような鳥がいた。
 くくっと頭をかしげると、急にしゃべった。
「ミュウマ様。ついに本懐を遂げましたか」
 ミュウマは上半身を起こすと、こっくりとうなずいた。
 黒い鳥がまた、頭をかしげた。
「ふむ。では、魔法を解きましょう」
 ミュウマは、ぼくに軽いキスをしてベッドを降りた。
 元々いた隣のベッドへ、手を振りながら戻る。
 鳥が一歩近づいて、首を上下させた。
「ナオユキ殿。ありがとうございます。これからも姫をよろしく頼みますぞ」
「は、はぁ」
 思わず、応えてみたものの、ワケがわからない。
 鳥が頭を左右に振った。
「その顔は、何が起きているのか判らないといったご様子ですな。では、説明しましょうぞ」


380 10/12 sage 2007/07/31(火) 22:41:39 ID:tfQb24Fp
 鳥――執事ということらしいが、彼の言うにはこうだ。

 彼女は、一年前まで別の世界にある王国の姫だった。
 悪い魔法使いに追われて、秘められた魔法でこの世界に来た。
 その魔法は命はあるものの二度と帰ることは出来ないという過酷なものだった。

 魔法の力で、こちらに来たときには、もうミュウマは“ここに居る”ことになっていた。
 もちろん、執事も一緒だ。
 佐藤というのは、こちらの両親の名前だ。

 まだこちらでは一年しか経っていないから、こっちの言葉があまりしゃべれなくて、ほとんどが単語の返事になってしまう。

「さらに、ナオユキ殿は姫の思慕されていた隣国の王子の、こちらでのお姿なのです」
 うーん……にわかには信じられない。
 でも、もうこんな普通にしゃべる鳥とか目の前にいるし、信じるしかないかぁ。
「ですから、あなたに逢った時の姫の喜びようは……」
 てか、そんなの全然気付かなかったんだけど。
「姫はこちらでは言葉も拙い上、あのように内気なお方」
 ちらっと彼女のベッドのほうを見ると、最初と同じ姿勢で寝転んでいる。
 あれは……照れてるんだろうか。
「ですので、なかなか打ち明ける機会がございませんでした。
ところが、今日、あなたさまがこちらで寝ておられたところへ、偶然にも恋に憔悴された姫が来られて……」

381 11/12 sage 2007/07/31(火) 22:42:26 ID:tfQb24Fp
 あー! それでペンダントを見て泣いてたのか。くぅ。なんてかわいいんだ。
「ありがとう、だいたいわかったよ。執事の、えと……」
「エルシャーロットデンバームヘンデル二世……もっぱら、エルと呼ばれております」
「エル、事情はわかったよ」
「ふむ。それでは今度こそ、魔法を解きましょう。ちなみに、これは時間がゆっくり流れるという魔法です」
 気付かなかったけど、そう言えばかなり経ったはずなのに外の明るさも全然変わってない。
「では、大切なことですのでもう一度、言いますよ。姫をよろしく頼みます」
 そう言うと、ばさっと羽を広げて天井のあたりをぐるぐる飛び回った。
 なにか呪文のようなものを唱えている。
 優しい花の香りがする。
「これは、最初、ミュウマがここに来たときに嗅いだ……そうか……全部、エルが仕組んでたのか……」



382 12/12 sage 2007/07/31(火) 22:43:34 ID:tfQb24Fp
 ふと気付くと、ぼくは教室にいた。
 時計を見ると、まだ一時間目の途中だった。
 窓のほうから高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 そちらを見るとミュウマがいつものように外をボンヤリと見ていた。
「え……と……夢?」
 そう思ったとき。
 ミュウマがぼくの視線に気が付いた。
 スカートのポケットから何かを取り出して。
 こぶしから、光る卵形のペンダントトップを少し垂らした。
「あ……」
 彼女はそのとき、ものすごくキレイに、この初夏の太陽みたいに笑ったんだ。

《end》


383 coobard ◆69/69YEfXI sage 2007/07/31(火) 22:44:48 ID:tfQb24Fp
以上です。
お読み頂いたかたには感謝いたします。
それでは失礼します。

384 名無しさん@ピンキー sage 2007/07/31(火) 23:24:03 ID:nprGLKwo
>>383
GJ!ミュウマエロかわいいな。
トリップからエロい職人さん、続きはありますか?

385 名無しさん@ピンキー age 2007/08/02(木) 04:43:36 ID:dMM9dVFC
>>383GJ!!俺も続き期待

386 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/02(木) 10:13:42 ID:X6llqWXH
>>383
GJ!

確かにコテがエロいwwwww

387 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/02(木) 12:50:49 ID:MeSIpPbv
GJ!続きwktk


388 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/03(金) 16:14:36 ID:3QUYmYoE
とりあえずコテトリでググると吉

389 名無しさん@ピンキー age 2007/08/04(土) 04:19:45 ID:6bh9T3XI
保守

390 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/04(土) 19:04:14 ID:wRAHo/Nk
>>388
トリップだね。マチガタ

391 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/04(土) 23:15:12 ID:3ZdJ0psI
>>390
いや、ごめん、そう言う意味でいったんじゃあないんだ
>>383が書き込んでるコテトリをググるといいよ、って言いたかった

392 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/05(日) 22:52:01 ID:x4H7LnrF


393 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 12:51:12 ID:j4Yjr9JS
こんにちは、お久しぶりです。七月投下ができずに愕然としていました。
以下に投下します。縁シリーズ続き。今回はストーリー重視です。

394 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 12:52:16 ID:j4Yjr9JS
『縁の滅 揺蕩う少女』



 十一月。
 霜月の空気は肌寒く、季節はあと一歩で冬に辿り着くところまで来ていた。
 街は徐々に様変わりを始め、人々の服装も厚みと枚数を増している。商店街では一ヶ月先のクリスマスに向けて装いを改め、駅前にはイルミネーションの鮮やかなツリーが立てられた。
 依子はそんな駅前のオープンカフェで、注文の品を待ちながら、人の波を眺めていた。
 土曜日の午後。人の数はなかなかに多い。平日でも休日でも、賑わいは常にあった。
 房総半島の一隅にある街、神守市。
 百万都市にはまったく届かないが、交通のアクセスが行き届いているため活気を呈している街。
 かつてこの街は、彼女の家の一族によって統べられていた。
 一族の名を冠し、霊能によって統御された街は、明治初期までは神守の手にあった。
 しかしそれも時代の流れに飲み込まれ、今ではどこにでもある地方都市に様変わりしている。
 神守家は少し離れた緋水という土地に本拠を置き、今では市の名に跡を遺すのみだ。
 神守家そのものにとってはあまり意味を為さなくなった街である。しかし依子はこの街に複雑な感情を抱いていた。
 この街は好きだ。八年前から住んでいるこの街には、人生の半分の年数が詰まっている。そしてその時間はこれからさらに積み重ねられていく。
 友達がいる。家がある。居場所があって、依子はそこで生きることができる。
 嫌いなわけがない。
 それでもこの街を素直に愛せないのは、街の至るところに神守の名が、影が見えるためだろう。
 東の川、西の道、南の海、北の山、それぞれに冠されるはやはり神守の名。
 駅も病院も学校も神社も、同じ名前がつきまとっている。
 依子が名乗れなかった苗字を、この街は持っている。
 くだらないことなのだろう。実際依子は執着を奥底に溜め込んでいるわけではない。未練はあるが、もうあらかた流れてしまった。
 微かに、胸の内に名残があるだけで。
 だからこの街に対して依子は、好意と、僅かばかりの懐かしさや寂しさを抱く。
「お待たせしました」
 ぼんやりと物思いに耽っていた依子の前に、注文のチョコレートパフェが届いた。飲み物を頼むことが多かったこの店では、初めて食べる品だ。
 スプーンを手に取り、クリームをすくう。口に運ぶと濃厚な甘さが広がった。
 空を見ると、秋の薄い陽光が降っている。夏よりだいぶ高度を下げてきている。
 青空とはいかない。白を混ぜすぎたかのように、空に広がるは白っぽい水色。
 道行く人の波は、昼下がりの午後も落ち着く様子はなかった。
 依子はほんのり冷たい甘さを舌に覚えながら、そんなありふれた街を眺めている。


 その日、最初に会ったのは同い年の少女だった。
「……依子さん?」
 水本静梨はカフェの前で足を止め、小さく首を傾げた。
「久しぶり、静梨ちゃん」
 にこやかに手を振って返すと、静梨は小走りに寄ってきた。
「久しぶり! 元気だった?」
 はきはきした声音に依子は少しだけ驚く。夏に会ったときはもうちょっとおとなしい印象だった。
 しかし考えてみれば、あのときは声を聞いていないし、笑顔もなかった。

395 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 12:55:22 ID:j4Yjr9JS
 依子は冗談めかして答える。
「元気も元気。元気すぎて死んじゃいそうなくらい」
「ダメじゃん。……あのときはありがとうね、お見舞いに来てくれて」
「ううん。あなたも元気そうでよかった」
 社交辞麗ではない。彼女に降りかかったことを思うと、心底からよかったという気持ちが生まれる。
 静梨は照れ臭そうに笑み、
「守さんのおかげだよ。あの人が私を支えてくれたから」
 いとこの名前を出されて、依子の心が小さく揺れた。
 遠藤守。二十歳の大学二年生。
 あのお人好しないとこの『お兄さん』は、夏に静梨と出会い、彼女を助けた経緯がある。
 静梨はそれ以来守に好意を抱き続けている。直接静梨からその想いを聞いたわけではないが、依子には一目瞭然だった。
「ところで今日はどうしたの? こんなところで」
 不思議そうに問いかけてくる静梨。
 依子は答えた。
「ちょっとした趣味」
 静梨の眉が寄る。
「……趣味?」
「そう。人間観察」
 答えて正面に視線を向ける。灰色の道路を行く人の波は少しは収まってきていた。
「……よくここに来るの?」
「休みの日に結構ね。いろんな人たちが見れておもしろいよ」
 静梨が合わせるように、依子の視線の先を追った。昼下がりの時間帯に子供連れの主婦や若いカップルが通りすぎていく。
「おもしろい……かなぁ」
「いっしょにどう?」
「……人間観察?」
「街の様子を楽しむと言い換えてもいいけど」
「……遠慮しとく。私には合わないかも」
「じゃあお話ししようよ」
「それなら喜んで」
 依子の提案に静梨は頷き、テーブルの対面に座った。それからやって来たウェイターにコーヒーを一杯頼む。
「静梨ちゃんって神高だっけ?」
「え? ……ああ、学校の話? 私立はお金かかるから……。依子さんは?」
「明宝」
「すごっ。頭いいんだ?」
「成績はいつも平均だけどね……」
 神守市には三つの高校が存在する。公立の神守高校、同じく公立の福山工業高校、そして私立の明宝高校である。
 神高は学費の安い公立校なので、私立に行く経済的余裕のない市内在住者の多くが通っている。市内には同じ公立の福高もあるが、偏差値の低さがネックになっている。
 一方明宝は、普通科、商業科、理数科と三つの学科を有し、全校生徒二千人を超えるマンモス校である。特に理数科は優秀で、他県からの受験者も多い。
「私は普通科だし、特に部活もやってないからすごくもない。すごいのは一部の人たちだよ」
「私から見れば充分すごいけどね。商業科はともかく、普通科も結構難しいんでしょ?」
「宿題が多いのが困りものだよ……」
 二学期に入ってから課題の量が一気に増え、そのことを思うと憂鬱になる依子である。
「……まあ進学校だし、それは仕方ないよ。依子さん要領良さそうだし、大丈夫じゃない?」
 慰めるように静梨が言う。
 依子は微かに顔をしかめた。
「あのさ静梨ちゃん、さん付けやめない? 言いにくいでしょ」
「え、……じゃあちゃん付けで?」
「いいよ。そっちの方が友達って感じがするから」
 同い年の子にさん付けで呼ばれるのは、少々こそばゆい。
 ウェイターがコーヒーを運んできた。静梨は受け取ると、角砂糖を一個、黒い液体の中に落とした。スプーンで軽くかき混ぜ、そっと口をつける。
「ところで、守さんは元気?」
 再び出されるいとこの名前。
 依子は自身の心が煙るのを感じた。
「……さあ? 最近会ってないからわかんない」
 本心とは別に、そっけない答えを返す。
「会ってないの? なんで?」
「別にいつもいっしょなわけじゃないよ。ただのいとこなんだし、不思議でもないでしょ?」
「……」
 静梨は口をつぐむ。
 が、それも一瞬で、すぐに口を開く。

396 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 12:59:46 ID:j4Yjr9JS
「一つ訊いていい?」
「なに?」
「守さんのことどう思ってるの?」
 投じられた問いは直球だった。
 静梨の顔は真剣そのもので、からかいの色は微塵もない。
 依子は──言葉に詰まった。
 静梨は何も言わない。ただ依子の答えを待っている。
「……別になんとも、って言っても納得しないよね」
「答え方によるよ」
 どうにもはぐらかせる雰囲気ではないようで、依子はそっと息を吐いた。
「大切な人だと思う。でも、静梨ちゃんみたいに真っ直ぐな想いじゃないかも」
「……どういう意味?」
「近すぎるとそういう目で見られなくなるってこと」
 底のチョコレートはビター質が強い。スプーンで口内に運ぶと甘苦い味が全体に広がっていく。
 守に対する感触はこのパフェの味に近い。遠くから見ている分には甘そうな雰囲気しか感じられないのに、実際には苦味を含んでいる。
 人は皆そうなのだろう。他者を深く知るということは、酸いも甘いも知るということだ。依子は守の良いところも悪いところも知りすぎてしまっている。
 守は自分にとって大切な存在だと思う。だがそれは、兄弟姉妹の関係に近い。依子にとって彼はいとこの『お兄さん』なのだ。
「兄に恋愛感情を抱くのは……違う気がするよ」
「……依子ちゃんにとって、守さんは兄なのね」
「とびきりお人好しな、ね」
 静梨は微笑した。
「私はあの人が好き」
「……」
「だから依子ちゃんが羨ましい。誰よりも近くにいて、あの人に愛されているあなたが羨ましい」
「……」
 ひゅ、と秋風が小さく吹いた。
 依子は少しだけ肌寒く感じた。
「……憎いの?」
 こういうのも修羅場と言うのだろうか。ずれた思考から生まれた問いはかなりストレートだった。
 静梨はゆっくりと首を振った。
「羨ましいだけ。まあちょっとだけ、嫉妬はあるかもしれないけど、あなたが憎かったりはしないわ」
「諦めるの?」
「今のところは、ね。でもチャンスがあればいつでも狙っていきます」
「諦めてないじゃん」
 突っ込むと静梨はくすくす笑った。つられて依子も口元が緩む。
 この娘はなんて強いのだろう。依子は感嘆の思いで同い年の少女を見つめた。
 もしも自分が同じ立場だったら、こんなにも吹っ切れた顔は作れないだろう。未だに昔の名残に囚われているような自分には。
「しかし守さんも大変ね」
「え?」
「だって好きな相手に兄としか見てもらえないんだから。どうすればいいのかしら」
「……」
 依子は反応に困った。
「あれ、どうしたの? ……守さんの気持ち、初耳だったとか?」
「ううん。知ってる。こないだ告白されたから」
「──。なんて言われたの?」
「…………」
 沈黙。
「……そんな固まるほどのこと言われたの?」
 依子はしばし悩む。はっきり言うべきかどうか。しかしあれは、
 思い出すと顔が熱くなる。思えばあれは生涯でも最も恥ずかしい瞬間だった。
 少しだけ、ひねって答えた。
「……いとこ同士って、結婚出来るらしいよ」
「? 知ってるけど……って、え?」
「……」
 静梨の驚いた顔はなかなか見物だった。

397 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:03:19 ID:j4Yjr9JS
 一時間程話し込んだところで急に静梨の携帯電話が震えた。ちょっと、と言って静梨は席を立つ。
 依子は軽く頷き、離れていく彼女を見つめていた。隅の方で電話に出る静梨は驚いた表情を浮かべている。
 目の前の空になったパフェのグラスに目を向ける。なかなかおいしかった。舌に自信はないが、これはいける。と思う。
 手持ち無沙汰になった依子は近くのウェイトレスを呼び、オレンジジュースを注文した。
 ウェイトレスと入れ違いに静梨が戻ってきた。
「ごめん! おばあちゃんに呼ばれたから、私行くね」
「あ、りょーかい。それじゃまたね」
 静梨はぺこりと頭を下げると、テーブルにコーヒー代を置き、バス停の方へと小走りに駆けて行った。
 再び一人になった依子は、ぼんやりとテーブルに両肘をついた。組んだ手にあごを乗せ、薄い空を見上げる。
 たそがれながら静梨のことを思う。急な呼び出しだと思ったが、祖母に大事にされているのだろう。そして静梨も大事に思っているに違いない。
 彼女の胸には、とても暖かい縁糸が見えていた。あれはきっと祖母に対するものだったのかもしれない。
(うらやましいのはお互い様かもね)
 あんな風に素直に肉親を想えたら、きっと心のわだかまりもなくなるのだろう。名残など吹き飛んでしまうに違いない。
 溶けそうに白い雲がのんびりと流れていく。人の数も落ち着いて、穏やかな空気が世界を包んでいる。
「ため息ものだなぁ……」
 意味のない独り言を呟きながら、依子はジュースが来るまでずっと空を眺めていた。


 十分後。
「あれ?」
 どこかで聞いたことのある声が依子の耳を打った。
「依子……か?」
 意外そうな声の調子。
 顔を巡らせると、斜め向かいにさほど歳の変わらない少年が立っていた。
 まっすぐな質の髪につり上がり気味の目。依子は眉を上げた。
「ああ、マサハルくんか」
 沢野正治。夏に少しだけ話をした相手だ。友達というには遠いが、他人というほど遠くもない。
 正治はなぜか顔をひそめた。
「久々に会ったのに随分そっけないな」
「あ、ごめんごめん。じゃあ改めて……久しぶり!」
「おせえよ」
 つっこむ少年。依子はくすりと笑う。
「こんなところで一人で何してんだ? ……また誰かにちょっかいかけるつもりか」
「……もうちょっと言い方を考えてほしいな。まあ確かにちょっかいかもしれないけど」
「いや、そういうつもりじゃない。お前にしかできないことなんだから、誰かにとって大事なことだと思うよ。その、縁が見える力っていうのは」
 正治は落ち着いた調子で言う。前に会ったときもそうだったが、この少年はあまり冗談を言ったりするタイプではないようで、そのためにまっすぐな言葉だった。
 依子が持つ、縁を見る力。
 彼女が縁視(えにし)と呼ぶそれが何のためにあるのか、それは彼女自身にもわからない。
 だからこそ、それは彼女の判断の下で使われなければならない能力だった。意味も、責任も、彼女が決めることだ。
 結局依子は人のためにこの力を使っている。依子が正しいと思えることのために。
「これでも感謝してるんだ。会って、ちゃんとお礼を言いたかったしな」
「縁が繋がっててよかったね」
「まだ、繋がってるのか?」
 依子は自分の胸に視線を落とす。
「そろそろ切れそうなくらい細くなってるけど」
「切れたら会えなかったか?」
「さあ、どうかな」
 未だに縁の原理も法則も見出せない依子には、そんな曖昧な答えしか返せない。
 縁糸が繋がっていることで、互いに何らかの影響を及ぼし合っているのは確かだ。想いや行動がそれに引っ張られるように揺れ動く。
 だからといって逆らえないわけではない。
 依子は人の意識を縁に繋げてやることで、その者がより強く縁の繋がりを意識できるようにすることができる。そうすればその者の意識次第で縁の方向性は変わりやすくなる。
 人の想いや行動で、縁もまた変わるのだ。それは相手が物でも同じだ。縁は確かなものであると同時に、気まぐれに揺蕩うものでもあるのだ。
 依子は、本当にささやかなおせっかいを焼いているにすぎない。要は本人次第なのだから。
「でも、お礼を言いたいってことは、その人とは仲直りできたんだね」
「ああ、お前のおかげだよ。ありがとうな」
「マサハルくんが自分で頑張った結果だよ。私は手伝っただけ」
 正治の胸元を見ると、他のよりも温かく太い縁糸が見える。きっとうまくやってるのだろう。

398 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:06:12 ID:j4Yjr9JS
 そのとき、正治の顔がなぜか曇った。
「どうしたの?」
「いや……お前にはいるのかと思って」
 依子は怪訝に思い、目を細める。
「何が?」
「お前は誰かを手伝う。それで俺みたいに救われる奴もいる。でも、お前には誰かいるのか?」
「……」
 それは想い合える誰かだろうか。それとも救ってくれる誰かか。多分両方だと思う。
 想ってくれる人はいる。今の家族もそうだが、いとこのお兄さんが依子にはいる。
 しかし守の気持ちと依子の気持ちには差異があるし、助けたり助けられたりという関係でもない。
「私は別に困ってないし、必要ないんじゃないかな」
「いずれ必要になるかもしれないだろ。誰かが支えになってやらないと、一人じゃどうしようもないんだし」
 ぶっきらぼうな口調だが、真摯さは伝わってきた。
 依子はにっこり微笑むと、小さく手招きした。
「まあ立ってないで座ろうよ。暇ある?」
「暇っつーか待ち合わせしてるんだけどな。まだ来てないみたいだ」
「彼女さん?」
「この街とは違う学校に通ってるんだけど、進学校だから土曜日も補習授業あるんだと」
 ということは電車通学か。依子はついにやける。
「じゃあ毎週迎えに来てるんだ。すごーい、優しいんだね」
「優しさは関係ない。この店のコーヒーが好きだから来てるだけだ。駅前で便利だしな」
 素直じゃない反応は見ていておもしろい。
「じゃあ彼女さんが来るまでお話ししようよ。てゆーか彼女さんのこと聞きたいな」
「……お前はお前で暇なのな」
「うん。だからマサハルくんに会えたのは丁度よかった。暇潰しさせてよ」
「……」
 うんざりした表情で正治は依子をねめつける。
 反対に依子は愉快な気分を隠しもしなかった。
「……まったく、感謝の気持ちを忘れそうになる」
 正治は対面の椅子を引いてどっかりと腰掛けた。ため息をつきながら一言。
「お礼がわりに付き合ってやるよ」
 変に義理固い台詞に依子は苦笑した。


 それから二十分。
「まさくんお待たせー」
 呼び掛けてきた声に、正治は後ろを向いた。
 可愛らしい少女だった。大きな瞳が嬉しげに細まり、肩口辺りで揃えた髪が笑顔に合わせて小さく揺れる。
「ゆかり、学校終わったのか?」
「うん、ちょっと日直で遅くなっちゃった。……その娘は?」
 目を向けられて、依子は微笑みを返した。軽く手を挙げてチャオ、と言ってみる。
「はじめまして、依子です」
「は、はじめまして。……?」
 困惑気味に首を傾げるゆかり。仕草がなんとも愛らしいと依子は思った。
「ねえまさくん。この人は友達?」
「知人。たまたま会っただけ」
 そっけない言葉に依子は苦笑した。ゆかりについてからかうように質問攻めしたことを、根に持ったのかもしれない。
 時刻は四時前。
「じゃ、私行くね」
「は?」
 依子はおもむろに席を立つと二人に対して言った。
「あなたたち、本当にわかりあってるんだね。これからも仲良くね」
 正治は呆気にとられたかのように口をつぐんだ。

399 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:08:33 ID:j4Yjr9JS
 すると代わりのようにゆかりが頭を下げてきた。
「なに?」
「あ、その、なんだかあなたにお礼を言わなきゃいけないような気がしたから……」
「……」
 依子は正治に顔を向けると諭すように言い放った。
「マサハルくん、大事にしてあげないとダメだよ。こんなにいい娘、滅多にいないと思う」
「言われなくてもわかってるよ」
 おもしろくなさそうな少年に薄く笑むと、依子は奥のレジへと足を向けた。


 勘定を済ませてカフェを出ると、空にはぼんやりと淡い朱が滲み出ていた。
 今日は珍しい日だったのかもしれない。もう会うかどうかわからなかった人たちと再び出会い、いろんな話をした。そしてとても楽しかった。
 縁糸はまだ繋がっている。また会う日が来るかもしれない。普通に連絡すればいいとも思うが、依子は今時携帯電話も持っていない。
 やっぱり買った方がいいだろうか。電話越しには縁は感じられないので、あまり欲しくはないのだが。そのためよく守にぼやかれる。
 依子は夕時の道をのんびりと歩く。
 人波はそこそこ。駅から離れていくにつれてその波は小さなものになっていく。
 この時間帯は嫌いではなかった。季節の為す肌寒い空気と空を覆う朱の色が、クラシックを奏でるように美しいこの雰囲気が。
 本当は街中よりも田舎の方がより好きだ。もっと周りに自然がある、静かな環境の方が。
 小さい頃に住んでいた、緋水の実家のような。
 未練がましいと自分でも思いつつ、依子は裏路地に入った。こちらから公園を抜ければバス停により近い。
 普段誰も通ることのない道を進もうとして、依子は足を止めた。
 先の方に、小さな女の子が立っていた。
 歳は十三、四くらいだろうか。自分よりもずっと小さい。無表情な顔は整っていたが、愛想に欠ける。右手には不釣り合いなトランクを引いて、ぼんやりとうつむいていた。
 別に外見や様子に変なところがあったわけではない。
 ただ、依子にだけは不思議に見えた。
 その少女は周りとの縁がほとんど見られなかったのだ。
 よく見ると微かに薄く細い縁糸がいくつか伸びているが、ほとんど切れている。消えていくものもあり、縁は無いに等しい。
 唯一、一つだけ胸の中心から太い糸が生えている。しかしその先はどこにも繋がっておらず、すぐ近くの虚空で途切れていた。まるで空中に投げ掛けた釣り糸のようだ。
 依子は一瞬ぼう、と立ち尽くした。
 少女が視線に気付き、こちらを向く。
 依子は慌てて言葉を紡いだ。
「ごめんなさい。まさか人がいるとは思わなくて」
「……」
 少女は小さく首を傾げたが、すぐに頭を振った。
 気にしてない、といった程度の意味だろうか。言葉はないが、なんとなく動作で意思を読み取る。
 少女は依子をじっと見つめる。
 依子は若干ながら落ち着かなくなる。言葉がないのもあるが、それよりも少女の縁があまりに希薄なので。
 それでもほっとけないと思ったのは、縁視の力を持つ者としての責任感があったためかもしれない。一人よがりでもそれをなしにはできない。
 だから、
「ねえ、ちょっといいかな?」
 気付いたら依子は少女に話しかけていた。
 少女は特に反応を見せなかったが、やがてこくりと頷いた。

400 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:11:39 ID:j4Yjr9JS
 路地を抜けた先の公園の中、二人はベンチに座っていた。
 駅周辺にはもう一つ大きな公園があるが、そちらは反対方向だった。こちらの公園は二回りは小さい。
 だからだろうか。公園内には他に誰の姿もなかった。
「私、依子。依頼の依に子どもの子。あなたは?」
「……」
 少女は答えない。
「……言いたくない、とか?」
 ふるふると首を振る。依子の頭に疑問符が浮かんだ。
「えと、」
『みはる』
 少女が初めて口を開いた。
「え?」
『美しいに、季節の春で……美春』
 春のように澄みきった、美しい声だった。
 聞いた瞬間鳥肌が立つような、異様とまで言えるかもしれない質を感じた。未成熟な歳のせいもあるのかもしれないが、依子は小さく息を呑む。
「……歳、訊いてもいいかな?」
 動揺を気取られないように、依子は取り繕いながら尋ねた。
 美春と名乗った少女は、右の指を二本立てた。続けて左手の指を三本付け加える。
 一瞬意味を図りかね、
「二十……三?」
 うわ言のように呟くと、依子は驚きのあまり固まってしまった。見る者が見れば、その反応をとても珍しく思っただろう。
(歳上……てか大人? まさか)
 美春は何の感情もこもらない顔で依子を見つめている。
 冗談を言っているようには見えない。
「ご、ごめんなさい」
 とりあえず謝ると、美春は再び首を振った。気にしてない、の意思表示。
 依子はとりあえず安心するが、無口につられてか、次の言葉が出てこない。
「……」
「……」
 沈黙。
 微妙な空気をどうにか横に押しやって、依子は本題に入った。
「……私、ちょっと変わった特技を持ってるの」
「……」
「その特技は、信じてもらえるかわからないものなんだけど、それのせいで美春さんが不思議に見えたの」
「……?」
 初めて美春が表情らしき表情を見せた。訝しげな目を向けられて依子は怯む。
 よくわからないことを言っているのは自覚しているが、普段は全然気にしないのだ。なのにこの少女(とみなす)に対してはなんというか、ひどく落ち着かない気分になる。
 どこかで似たような感じを受けたことはあるのだが、とにかく今は続ける。
 依子は自身の能力のことを説明した。縁の性質から自分に見える世界、それに対して自分に何ができるか、何をしてきたか。事細かに話した。
 どこか機械的な口調になったのは、少女に対する違和感を意識から追い出したかったからかもしれない。
 説明を終え、依子は単刀直入に言った。
「美春さんには縁糸がほとんど見えない……。どんな人にも縁糸は繋がるのに、あなたは薄い、切れかけた縁糸しか持っていない」
 どれほど人付き合いの少ない人間でも、生きている以上何かと結びつくはずなのだ。
 だがこの少女は、ほとんど縁糸を持っていない。
「……」
 美春はちらりと後ろを見やった。
 何を見たのか、依子にはわからなかった。美春の視線がこちらに戻る。相変わらず感情の乏しい顔だ。
 と、

(聞こえる?)

 頭に柔らかい声が響いた。
 いきなりの出来事に、依子の体はびくりとすくんだ。
 なにが、と混乱しそうな頭に続けて声が流れ込んでくる。
(落ち着いて。思念を飛ばしてるだけ)
 依子は目を丸くする。ほとんど反射で隣の少女を見据えた。

401 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:15:40 ID:j4Yjr9JS
 美春は慌てた様子もなく、頷きを返した。
「え……?」
(そう)
 音なき声が内に囁く。
(気にしないで……こっちの方が話しやすいから)
「…………えー」
 気にするなと言われても。
(……あなたも似たような力、持ってるんでしょ)
「いや、全然違うよ……」
 何なのだろうこれは。多くの人に会ってきたが、こんなことも、こんな相手も初めてだった。
 思念ということはテレパシーのようなものだろうか。霊能に関しては多少の知識を持っていたが、超能に関しては当然ながら専門外である。一般的には違いなどないだろうが、依子には大きな違いだ。
(不思議?)
 美春は少しだけ得意気な様子だった。
「……」
(心を読み取るとかは……できないよ)
「え?」
(だから喋って)
 そんな言葉こそ心を読んだかのようで、依子はどきりとした。
 それでもうん、と答えたのは、やはり使命感のようなものがあったからだろう。
(私の縁……希薄なの?)
 頷きを向けると、美春は目を細めた。
(……その糸って、霊にもできるものなの?)
「え?」


 変な言葉を聞いたような気がした。
 霊?
(別に幽霊じゃないけど)
 先回りの思念が依子の疑問をうち払った。
「……本当に、心を読んでないの?」
(幽霊か何か……だと思った?)
 失礼ながら思った。
 容姿が子どもだったり、思念を飛ばしたり、縁糸がなかったり、特殊要素が多いために「実は幽霊なの」と言われても、そっちの方が納得できる気がしたのだ。
 美春は軽く溜め息をついた。
(……間違いでもない)
「……何が?」
(幽霊)
「え? だって今、」
(死んでないだけ。それ以外は幽霊なんかと変わらない……かも)
 またわからなくなってくる。何を言っているのだろう。
 美春は言った。
(私は、生きた霊なの)
 脳に響く声は、どこか寂しげだった。
「……生霊? ドッペルゲンガーとか、そういうやつ?」
(知ってるの?)
 頷きながら本家で学んだ知識の記憶を掘り起こす。
 ドッペルゲンガーとかもう一人の自分とか呼ばれるものは、大抵が生霊だと言われる。
 彼らは死霊とは違い、生きている。元の人間の魂からなんらかの原因で分裂し、自我を持った魂が生霊の正体だ。
 話には聞いたことがあるが──
「……」
 中学生くらいにしか見えない自称二十三歳の少女は、睫毛を右手で小さくいじっている。
 その挙動は少しも不自然ではなく、どう見ても人にしか見えない。縁糸の薄弱さだけが浮いている。
(説明……するね)
「うん」
 語り出す美春。

402 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:19:15 ID:j4Yjr9JS
(……私の『本体』は病弱な人で、いつも寝たきりだった)
「……」
(あるとき容態が悪化して、その人は死にたくないと強く願った。そのとき私が生まれたの)
 その説明は多くのドッペルゲンガーの誕生と同じものだった。彼らは、死にたくないという想いから生み出されたもう一人の自分なのだ。
(元々霊力は強かったみたいだけど、制御する力を持ってなかった。たぶん、私が生まれたのは本当に偶然だったんだと思う)
「……」
(最初は自分のことがよくわからなかった。しばらくして、本体と出会って、初めて自分のことを理解した)
「……」
(やがて本体が死んだけど、私は生きていた。私は魂だけだから、病気とかにはならないみたい。私はその人の代わりに、その人の分まで生きていこうと思った。でも……)
「……でも?」
(声が……)
 声? 急に出てきた言葉に依子は戸惑った。が、すぐに今、彼女は声を出していないということを思い出す。それと関係があるのか。
「……声が、どうしたの?」
(……言霊って、知ってる?)
 心臓が跳ねた。
「……言葉に霊力を乗せるあれのこと……だよね?」
(そう)
 それのことはよく知っている。依子は姉のことを思い出す。あの人も、言霊の力に左右されていた。
(誰かと話して、すぐに言葉の異常に気付いた。私が何かを言うと、誰もが暗示にかかったかのように放心した)
 彼女もまた、言霊の力を持つのだろう。それも、相手が意識を保てなくなる程の言霊だ。彼女の霊力の強さが窺える。
(だから私は喋らないことにした。喋らなければ……問題ないから)
「それで思念を……?」
 そのとき、美春が微かに笑んだ。
 幼い顔に映るには不自然な、大人びた微笑み。
(思念を飛ばしても……それを気味悪がる人も多い。だから……私は他人と関わりをほとんど持たない)
 達観と諦念が入り混じった微笑。
 依子はその顔にようやく気が付いた。
 この人は姉に似ているのだ。言霊だけではない、まとう空気や、表情が。
 あの人も底知れない気配を見せ、こんな風に寂しく笑う。
 思念を飛ばす力はないが、二人はよく似ている。落ち着かないのはきっとそのためだろう。容姿も話し方もまるで違うが、依子には重なって見えた。
 ちょっとだけ苦手な雰囲気。
 だが決して嫌いではない。ペースを狂わせるところまで姉と似ていたが、懐かしさの方が勝った。
 これも名残の一つなのかもしれない。
「……友達とか、いないの?」
 美春は微笑を消し、
(……元々一ヶ所にとどまることがないから)
「……」
(それに私は歳を取らない……この体も、十年前から変わらない。そんな私が他の誰かと共に生きるなんて、無理)
「そんなこと、」
(無理……言葉を使わない、戸籍も持たない。歳さえ……重ねることがないのに)
 何の感情もこもらないようにしているのだろう。美春の言葉は無機質に満ちていた。
 きっとこの人は、自分なんかよりもはるかに複雑な時間を過ごしてきたのだろうと思う。
「……友達なんていらない、ってこと……?」
(そういうの、だいぶ前に考えなくなっちゃったから)
「……」
 執着が感じられない言葉に依子は落胆する。
「……私じゃ、駄目かな」
 うつむいて、出た言葉はそれだった。
(……?)
「私とは普通に話せているもの。私じゃ友達にはなれない?」
 美春は一瞬金縛りにあったように押し黙った。ひどく驚いたようで、目を眩しげにしばたたいている。
(なんで……?)
 問われてもすぐには返せなかった。
「え……それは」
(同情?)
「! そんな失礼なこと言わないよ!」
 あまりと言えばあんまりな物言いに、依子はつい声を荒げた。

403 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:21:32 ID:j4Yjr9JS
「私が友達になりたいの。それ以外何もない」
 美春は息が詰まったように固まる。
 依子はじっと相手を見つめる。
(あなた、変わってる)
「美春さんほどじゃない」
 少女は唇を小さく緩ませた。
(でも……友達って具体的にどうすればいいの?)
「は?」
(何か、ある?)
 依子は答えに窮した。
 友達の定義とはなんだろう。基準が果たしてあるのだろうか。
 けっこう根元的な問いに悩み込む。
(冗談)
 美春の思念に依子ははっとなった。
(好きに思えばいい……それは人の自由……だから)
 じゃあ思わせぶりなことを言わないでほしい。依子は拍子抜けする。
 でも、
「友達になってもいいの?」
(あなたがそうしたいなら……私は構わない)
 その思念を受けて、依子はとても嬉しくなった。今日一番の笑顔が自然とこぼれた。
(いつまでこの町にいるかはわからないけど……しばらくよろしく)
「──うんっ」


 自分よりも大きな少女が公園から出ていくのを見送りながら、美春は自身の魂が弱まっているのを自覚した。
 彼女はここ最近、ろくに『食事』を摂っていないのだ。
 このままでは長くは持たない。どこか『食事』の摂れる場所を探さなくては。美春は背後に思念を飛ばした。
 あきら。
 名を呼ぶと、小さな返事が返ってきた。が、それは周囲の大気を微塵も震わせない。
 美春にだけ聞こえる、声なき声。
 美春に付随する唯一の存在。彼女を守護し、彼女が保護する浮遊霊、明良。美春はそれに話しかける。
(ここでいいの?)
 肯定の返事が返ってきた。美春は周囲に注意を向ける。
 集中して辺りの気配を探ると、確かに何体かの霊の存在を感じ取れた。
(……でも悪霊じゃないみたい。外れね)
 後ろから抗弁の意思。
(嫌。寝覚めが悪いことはしたくない)
 言葉なしに意思を伝え合う。
(とにかくここにはいないから別の所へ。大丈夫。まだしばらくは平気だから)
 美春は立ち上がり、出口へと向かう。
 生霊とは言ってみれば、魂が剥き出しになっている存在である。しかし死霊とは違い、彼らは生きている。
 体という、魂を入れておく『器』がないため、彼らの魂は安定を欠く。そのため、体を持つ生物よりも速いペースで命を削っているのだ。
 加えて元々一つだった魂が分かれてしまった存在であるため、その分寿命が短い。
 生霊がその存在を保つためには、誰かの命を吸い取らなければならないのだ。
 美春は生きた人間からは命を取らないようにしている。命を吸い取る相手は悪質な霊だけだ。死霊にも一応微細ながら魂が存在するので、その残りカスを奪うのだ。
 魂を奪われた相手は消滅する。それを成仏と言うのかどうかは知らないが、相手が消え行く様は見ていて後味が悪い。だから、美春は悪人しか食べない。
 高尚的意味合いはまったくない。これはただ、自分のエゴなのだ。精神的負担を軽くするためだけの誤魔化しにすぎない。
 それでも美春は食べる相手を選ぶ。

404 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:24:26 ID:j4Yjr9JS
 公園を出て、美春は明良の示した方向へと進む。さっきの少女が進んだ方向と同じ道だ。
 ──私が友達になりたいの。
 先程の言葉が蘇る。頭の中で少女のポニーテールが揺れた。
 あんなに真剣な言葉を他人から吐かれたのは久しぶりだった。そのためだろうか。早まる動悸が苦しいくらいに胸一杯に広がっていくのを感じた。
 以前にも何人か声をかけてくれた人々はいた。だが、あんなに簡単に身の上を明かした相手は初めてだった。
 会話が楽しいと、少しだけ思った。
 不思議な少女だ。他人に対して随分と警戒の薄い、自分とは反対の立ち位置に彼女はいる。
 それを美春は羨ましいと思う。自身の力にさえ警戒し続けている自分とは全然違う。
 それは彼女が言っていた、縁の力に影響されてのものなのだろうか。
(……)
 詮なきことだ。美春は物思いを払い、歩みに集中した。
 周囲の霊的存在に意識を向け、食事のできそうな場所を、

 ざあ────

 瞬間、皮膚が粟立つような感覚に捕われ、美春は麻痺したかのように立ち尽くした。
 その感覚は、まるでラジオのノイズ音のように不快な種のもの。
 強力な霊の波動。感知のあまり得意でない美春にさえはっきりと感じられ、それと認識すると、美春は感覚の走った方角へと急いで駆け出した。
 視界の先に見えたのは小さなバス停の標識。
 その一角には先程会ったポニーテールの少女が、手持ち撫沙汰に佇んでいた。
 他に待っている客は一人しかおらず、周囲に人の姿はない。夕方の街中の間隙を突くような、一瞬の寂れた空間。
 美春はポニーテールの少女の背後に鋭い視線を送った。スーツ姿のもう一人の客が、薄く笑うのが見えた。
 少女は気付いていない。
 あいつだ。そう確信したのも束の間、男が両腕を振り上げるのと、美春がバス停まで十メートルの距離に近付いたのは同時だった。
 間に合わない──

『やめてっ!!』

 反射的に放った大声は、強烈な霊波を乗せて男の体を硬直させた。
 男は一瞬の硬直から解かれると、美春の姿に怯んだように身を翻した。飛び退るように逃げる相手に、美春は後を追う。
 猫のように少女の後ろをすり抜け、あっという間に男の逃げた路地裏に飛び込む。
 後方から呼び掛ける声が聞こえたような気がしたが、美春は無視してビルの隙間を縫って行った。


「よくも邪魔してくれたな……」
 男の低い声が廃ビルの一階層に鈍く響いた。
 裏路地の一隅、半年後に取り壊されるビルの内部で、美春は男と相対していた。
 薄暗い一階ホールは埃が積もって少し息苦しい、と普通の人間なら思っただろう。美春にとって呼吸動作は生命維持に関わりのないものなので、不便はなかった。
 改めて男を見据える。
 中肉中背。スーツ姿。七三分け。
 一見すると無個性の塊のようだが、美春は誤魔化されない。さっきあの少女に手を伸ばそうとした動きは、美春には明確な異常動作として映った。
 いや、生霊達にとっては正常な動作かもしれない。あれは相手の魂を食べるときの、最もありふれた動きなのだ。
 直接相手の魂を握り掴み、そのまま自身に取り込む。美春自身、何百回も繰り返してきた動きだ。
 今回は、標的が人間だっただけで。
(あなたも、生霊……ね)
 思念を飛ばすと男は驚いたように目を見開いた。
「思念伝達か。変わった力だな」
(生きてる人から命を取ったら大騒ぎになる。もっと考えた方がいい)
 男は嘲りの笑いを漏らした。

405 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:26:46 ID:j4Yjr9JS
「あんたも生霊か? ならわかるはずだ。生きた人間から吸い取った方が効率がいい。死霊どもの残りカスなんぞを何十も集めるより、人一人食った方が長生きできるじゃねえか」
 そんなことは知っている。だが、この男が狙ったのは……
(なぜあの子だったの?)
「あんまり警戒してないようだったからな。魂の質も綺麗だったし、あの娘を食えば最低十年は生きられる。ひょっとしたら倍は行けたかもな」
 低音質の声には、恨めしげな感情が込められているようだった。
(……あの子は私の知り合いなの。他の人なら別に口出しはしないけど、あの子は駄目)
「……なんだ、あんたの餌だったんだな。そりゃ悪かった」
 その物言いに、美春の目に微かな険が生まれた。
 いつもの美春なら聞き流せただろう。他人と関わり合うことを避ける美春は、怒りや悲しみを表に出さないようにしている。感情の乱れは他人に付け入る隙を与えるからだ。
 しかし、
(餌じゃない)
 強い思念が叩き付けるように放たれた。
「は? 何が?」
(あの子は……そんなんじゃない)
 喧嘩を売る気も怒りをぶつける気も、どちらもなかった。そのはずだった。
 だが、思念には妙に熱がこもる。争う気はないはずなのに。
(あの子は……)
 きっと嬉しかったのだろう。何の制限も遠慮もなく、友達になりたいと言ったあの少女を、美春はとても嬉しく思ったのだ。
 それを貶める態度も発言も、美春は許せなかった。
(あの子は……私の友達。餌なんかじゃない)
 強い意思をぶつけると、男は呆れたように鼻を鳴らした。
「気に入らねえ。善人ぶっても、人間らしくあろうとしても、俺達は他の誰かを食わなきゃ生きていけないんだ。生霊は生霊であって、人間とは違うんだよ」
(……)
 それはそのとおりだった。実際こうしている今も、美春は魂を削って生きている。できるだけ早く誰かの魂を吸い取らなければ、消滅してしまうのだ。
 だが、それとわかっていても美春は、
(あの子に……手出しはさせない)
「じゃああんたの魂を貰おうかな。他の生霊に会うのは久し振りだが、相性悪いみたいだしな」
(……)
「食事の邪魔されて気が立ってんだ。悪く思うな──よっ」
 短い呼気を漏らし、男は一息に突進してきた。
 美春はすかさず横に跳び、距離を取る。こういうときはどのような対処が一番なのか、頭は迷ったが体が先に動いた。
 警戒を崩さず、相手を注視する。男は振り向き、獰猛に笑った。
「なかなか骨が折れるな。その分旨そうだ」
 恐らく触られただけで魂を持っていかれるだろう。この男は『食事』に慣れすぎているように見えた。美春よりも何年も長く生きている、いわば格上の生霊。
 美春は決める。この男を食べよう。そうすれば少なくとも人間の犠牲は増やさずに済む。
 正義感とは違う。あのポニーテールの少女に手を出させないため。こいつをここで呑み込む。
『動くな!』
 声を張り、喉の奥から言霊を放つ。言霊の利点は声の届く範囲全てが射程距離になる点だ。建物内では逃げ場はない。
 果たして男の体が止まった。美春は一気に魂を奪おうと距離を詰め、
 目の前から男の体が消えた。
(!?)
 目が追い付かない。言霊に縛られていたはずの男の体が、背後に回る気配を感じた。
 まずい。
『来るな!』
 夢中で叫び、前方に転がり込むように逃げる。男の動きが一瞬停止し、間一髪一撃から逃れた。
 すぐさま振り向いて正対する。同時に美春は焦りを覚えた。
 言霊が通じない──?
 効果はある。だが持続は一瞬で、男は三度放った言霊の拘束全てから抜け出していた。
 恨めしくも強力な武器の一つであった言霊が通じないとなれば、美春にとって不利なことこの上ない。
「さっきから妙な力使いやがるが、たいしたことないな。言葉に霊波を乗せて暗示をかけてるようだが、その程度の貧弱な霊波じゃ虫も落とせない」
 馬鹿なことを言うなと思う。言霊の制御は未熟だが、それでも普通の人間や霊相手には充分な効果を発揮していたのだ。だからこそ戒めていたのにこの男は。
「生霊としてもまだ若すぎる。とっとと食わせてもらう」
 そう言うと、男はゆっくり歩を進めてきた。
 闇雲に突っ込んで来てくれた方が美春としては隙を突きやすいが、それをさせてはくれないようだ。

406 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:28:38 ID:j4Yjr9JS
 ならば、こちらから隙をつくる。
 美春は隅の方にじりじりと下がると、壁に立て掛けられていた短い箒を手に取った。
 見たところ実体以外に変化するような能力は持っていないようだ。幽体には物理攻撃は意味をなさないが、実体ならダメージを与えられる。
 箒の柄の部分を先にして、両手で前方に突き出すように構える。剣や棒の心得はないが、相手を近付けさせないという意味では多少なりとも有効なはずだった。
 男はニヤリと笑みを浮かべた。
「そんなものでどうにかなると思ってんのかよ」
 美春は角を背に、男を強く見据える。
 逃げ場はない。コーナーを背にしている美春に、男は慎重ににじり寄る。
 美春は歯を強く噛み締めた。慎重すぎる。駄目か。
 再び言霊を当てようと、息を吸い、
 先に男の手が伸びてきた。喉を抑えられればもう言霊は使えない。その前に体に触れられた瞬間から魂を食われる。
 それがチャンスだった。
(明良──)
 言霊よりも、男の動きよりも、思念の呼び掛けの方が早かった。
 呼び掛けた瞬間、美春と男の間に突然十五歳くらいの少年が現れた。
「!?」
 驚きで鈍ったのか、緩慢に伸びてきた男の腕を少年は上に捌く。
 そして美春の突き出していた箒を掴むや、男の胸を正面から貫いた。
「がっ!」
 呻く声を気にもかけず、少年は遠慮会釈なく突進する。
 そのまま前方に押し込んでいき、入り口の扉に磔にするようにぶつけた。
「あ……ぐ……」
 苦しみに喘ぐ男。刃物でもなんでもないただの箒を無理矢理力のみで突き刺した少年は、小さく息をついて後ろを振り返った。
 美春は微かに笑むと疲れたような息を吐き、男へと歩み寄った。
(……)
「なんなんだこいつは……どっから沸いた」
 男の苦しげな声に思念で返す。
(やっぱり……あなたは『感知』が苦手みたいね)
「な、に?」
 バス停で見たときからひょっとしたらとは思っていた。美春には気付いても、明良に気付いた様子はなかったから。
 美春が思念で答えるより早く、少年が口を開く。
「俺はずっと美春の隣にいたよ。気配をできるだけ消してたから、あんたは気付かなかったようだな。魂摂取や霊的防御みたいな正面からの対処は得意でも、広い範囲での感知や操作は不得手のようだ」
「……てめえは、守護霊か……」
「俺は魂摂取が苦手で、美春から魂を分けてもらっている。その代わり、いざというとき美春を守るのが俺の役割だ」
 普段は幽体でいるけどな、と明良という名の少年は無表情に答えた。
 男は苦々しい表情を浮かべた。
「こんなところで……終わってしまうとは、な」
 胸には銛のように箒が突き刺さっている。出血や内臓損傷というのは生霊であるためないが、魂そのものが実体化しているため、大きな怪我は直接魂の破壊に繋がる。
 新たに誰かの魂を食べなければ、このまま消滅するだろう。
 もちろん、そのまま放っておくような真似はしない。
(いただくわ……あなたの魂)
 近付き、おもむろに腕を伸ばす。
 そのとき、男が不意に笑った。
 怪訝な様子に美春は固まる。
(……何?)
「……」
 男は答えない。
 明良が訝しげに男を睨む。
 男の腕が箒を掴んだ。力を込め、どうにか引き抜こうと動かす。
 まだ動けるのか。美春はとどめを刺そうと、ショベルカーで刈るかのように男の頭に腕を振り下ろした。
「! 待て、美春!」
 明良の声が響くのと、男が持たれかかっているドアが後ろに開いたのは同時だった。
 開いたドアの先に、綺麗な顔が見えた。
 美春の手は止まらなかった。
 男の魂を体ごと削り取り、それに巻き込まれるように少女の体が袈裟に流れた。
 ポニーテールが秋の夕空の下、すすきのように揺れた。

407 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:32:40 ID:j4Yjr9JS
 直接少女の魂を食べたわけではない。
 あくまで美春が狙ったのは男の魂であり、少女はそれに巻き込まれただけである。だが無傷ではなく、少女の魂にはひびのような傷が刻み込まれてしまった。
 否、刻み込んだ。
 故意ではなかったとはいえ、美春がその手で少女を傷付けてしまったのだ。
 呆然と膝をつく美春を尻目に、明良は気絶した少女を抱き起こす。
「……大丈夫。魂に傷はあるけど、まだ充分間に合う。美春ならこの程度問題なく治せるだろ?」
 美春は答えない。
 放心した表情は地面をぼんやりと眺めている。
「おい!」
 明良は相棒の肩を乱暴に掴んだ。
「まだ間に合うんだ。後悔は後でいくらでもできる。今はできることをしろ。美春にしかできないんだからな」
 顔を近付けて強く叱咤すると、美春はゆっくりと頷いた。
 少女を美春の膝に移す。美春は優しくいたわるように少女の頭を撫で、マッサージをするように体を撫で回していく。
 魂操作を得意としている美春は、他者の魂の傷を治したり、魂を送り込んだりできる。その分感知は得意ではなく、明良がその穴を埋める立場だ。
 にもかかわらず、少女の接近に気付くのが遅れた。そのことを明良は許せなく思った。
(もっと早く気付けるはずだったのに……何やってるんだ俺は!)
 男にダメージを与え、戦闘はほぼ終わったと油断していたのかもしれない。
 しかしそんなことは言い訳にもならなかった。
「どうだ。治りそうか?」
 努めて冷静に問い掛けると、美春は小さく頷いた。
(一応……ただ、安定していた魂を何の準備もなく傷付けたりくっつけたりしたから、何か異常が出たりする……かも)
「具体的には?」
(視力とか、感覚機能の低下とか……)
「そうか」
 明良は少女を見やり、次いで美春を見やった。
「起きたら事情を説明しよう。それで異常がなかったら問題ない」
(……ん)
 美春の顔は曇ったままだ。
 溜め息をつきかけて、明良は慌てて我慢する。自分まで落ち込んでしまったら、もっと空気が重くなる。
 しばらくして、
「ん……」
 か細い呼気を漏らして、少女がゆっくりと目を開けた。
 美春が勢いで覆い被さるように少女の顔を覗き込む。
「…………みは、るさん?」
(気が付いた? 大丈夫? おかしいところとかない?)
「え? あの……」
 少女は戸惑った様子で体を起こすと、周囲を見回した。
 明良は何も口を出さない。さっきまで話していた美春に対応を任せた方がいいだろう。
 現状をうまく把握できていないのだろうか、少女はしきりに目をこすったり、周りをじっと見つめたりしている。
(……どうしたの?)
「……ううん……何も」
(何があったか覚えてる?)
「えっと……」
 少女に思念で語りかける相棒を確認すると、明良はビルの外へと向かった。さっきバス停前に置き去りにしていった荷物を取りに行く。
 ビル内では美春が少女に事情を説明し続けている。


 旅行バッグを引いて戻ってくると、座り込んだまま二人が沈黙していた。
 なんだか妙な空気になっている。明良は軽く頭を掻いた。
「何だ? どうしたんだ?」
 心配になって美春に問い掛けると、首を振られた。
(なんでもない……この子を送っていきたいから、行こうか)
 弱々しい思念の波に、逆に心配が増す。
 ポニーテールの少女はどこか気が抜けたような顔で、ぼんやり床に視線を落としていた。

408 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:34:52 ID:j4Yjr9JS
 何も言わなくなった美春の手を引きながら、明良はすぐ近くのビジネスホテルに入った。
 ポニーテールの少女を送った後(家まで送るつもりだったが、断られたのでバス停までだったが)、日も暮れてきたのでどこか寝床を探そうと歩いて、十分程で見つけた場所だ。
 裏通りに面した小さなホテルで、あっち目的で使われることの多そうな雰囲気だったが、休めればどこでもよかった。
 受付でチェックインをする。明良は二人、と人数を伝え、空室を確認した。
「美春。頼む」
 そこでバトンタッチ。ここからは美春の役割だ。
 美春は前に出ると、従業員に向かって囁いた。
『私達をただで泊めて』
 瞬間相手の体が強張り、虚ろな顔になった。
『私達の宿泊記録を残さないで』
「……」
『他の従業員達にもうまく言っておいて』
「……」
 それだけ言うと美春は鍵を受け取り、踵を返した。言霊の縛りはしばらく続くので、当分はゆっくり落ち着けるはずだ。
 二階の隅部屋に入るとベッドが二つあった。荷物を端に置き、二人はベッドに腰かける。
「……長い一日だったな」
(……うん)
 美春の表情は晴れない。
 明良には、何があったのか問い正す気はあまりなかった。なんとなく聞いてほしくないと思っているような気がしたからだ。
 代わりに言ったのは別のことだ。
「実体になるのも久し振りだな。半年振りくらいか?」
(……うん)
「声を出すのも久し振りだ。五感を働かせるのはやっぱりいいよ。生きてる実感が湧くから」
(……うん)
「……疲れただろ? 普段あまり使わない言霊を、今日は使いすぎなくらい使ったからな。もう休もう」
(……うん)
 言葉が途切れた。
 明良は言葉を探すが、何も出てこない。こういうときこそ支えてやらなければならないのに。
 もっとも、原因がわからないままでは対処のしようもないが。
(ねえ……)
 不意に思念が頭に響いた。
「ん?」
 それにできるだけ変わらぬ口調で短く返す。
(明良は……友達欲しいと思ったことは、ある?)
 少しだけ、意表を突かれた質問だった。だが心情はすぐにわかる。
「……昔は、な。今は、特には」
(……私もそう思ってた)
「……」
(でも……今日あの子と会って、思っちゃったの。友達になれればいい、って)
「……いいんじゃないか」
(駄目だよ……私、あの子を傷付けてしまったから)
「許してくれなかったのか?」
(わからない……心は読めないもの)
「……」
(友達になれればいいって……本当に思ったんだよ……)
「……ああ」
(なりたかった……でも、やっぱり駄目だよ。一緒にいたら、今日みたいに巻き込んでしまうから)
「……今日のは事故だろ」
 あのスーツ姿の男を恨めしく思った。最期妙な動きを見せたのは、これを狙ってのことだったのかもしれない。助からないと悟るや、せめて嫌がらせをしてやろうと、タイミングよく扉を開いたように見えた。
 邪推が過ぎるかもしれないが、明良はそう考えている。もっと動けないくらいに魂を壊しておくべきだった。
 それでも、あの男を食って、美春は今生きている。
 それだけは確かで、喜ぶべきことだった。

409 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:37:01 ID:j4Yjr9JS
「とにかく、気にするな。下手したらあの子は死んでたかもしれない。傷付けたのはお前かもしれないけど、それを救ったのもお前なんだ。悔やむことはない」
(……ありがとう)
 感謝の台詞に明良は嬉しくなってはにかんだ。
「ほら、もう寝ろよ。疲れただろ?」
(うん……)
 美春はしかし横にならず、腰を上げて明良の隣に移動した。
(明良……)
「……何」
(久々に……抱いて)


 生霊の持つ欲求で欠かせないものは、せいぜい食欲くらいなものである。
 それも一般的な食事ではなく、魂を食らう食事なので、普通の人間が持つ欲求を、彼らは基本的に必要としない。
 ものは食べれるし、水も飲める。眠ると気持ちいいし、お風呂に入るのも心地よい。が、それらは決して不可欠ではないのだ。
 それでも楽しい感覚を、心地よい感覚を捨てることはない。
 だから、生霊も性行為をする。実体があれば人間と同じように交わることができる。
 裸の少女を下にして、明良は自身の逸物をズボンのチャックから抜き出す。既に屹立したそれを、少女の頭に近付けた。
「舐めて……」
 少女は顔を真っ赤に染めながらも、おずおずと舌を伸ばした。
 小さな紅い舌が先端に触れるや、強烈な快感が脳を揺さぶった。
「く……」
『……あ……んむ』
 さらにそのまま亀頭をくわえ込まれ、新たな電流が走る。
 明良は右手を相手の下腹部に伸ばした。
『ひ……あっ』
 霊波の乗った色っぽい声が、明良を陶酔させた。喘ぎ声まで言霊の力がこもっており、それが行為に夢中にさせる。
(気持ちいい……?)
 思念が具合を問いてくる。決まりきった答えを明良は律儀に返した。
「よすぎだ……もう繋がりたい」
(ん……いいよ)
 美春は棒から口を離すと、にこりと微笑んだ。
 いつもならもっと輝く笑みなのに、今日はやや翳が差している。明良は胸が締め付けられそうになった。
 体勢を正し、正常位に入る。腰を落とし、少女の股の間にあてがう。
「行くぞ」
(うん……)
 一気に奥まで挿れた瞬間、美春が大きく喘いだ。
『あああっ!』
 半年振りの叫声は、我を忘れそうな程に刺激的だった。
 少女の秘所は狭い。美春の体が十三歳で止まっているためだ。胸も膨らみはほとんどなく、幼さが目立つ。
 明良にとっては一番の体に思えた。己が愛し、守ると決めた女の子の体なのだ。魅力的に見えて当たり前だと思う。
 腰をぐっと奥に突き入れる。
『あんっ!』
 色っぽい喘ぎと共に、少女はのけ反って体を震わせた。
 二度、三度と連続して腰を打ち付けると、綺麗な声が取り乱すように響く。
『あっ、あっ、やっ、すご、いっ、あぁ』
 凄いのはお前の中だ、と明良は内心余裕を失っていく。肉棒全体が激しく肉圧でしごかれているみたいで、先走り液が中の愛液と激しく入り混じる。
 顔を胸に寄せ、小さな乳首をちろちろと舐めてやる。前後に強く体を動かしながら、明良は二つの突起物をひたすらに弄った。
『あきらぁ……きもち、いいよ……』
「俺もだよ……」
 体を揺すり、中をかき混ぜるように大きく動いた。美春の体は感電したかのようにびくっ、びくっ、と反応する。

410 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:39:54 ID:j4Yjr9JS
(ねえ明良……)
「なん、だよ」
(ずっと、一緒にいてね……私が、他の誰とも交わらなくても、あなただけは……)
 つまらないことを言う。
「俺はお前の家族だ。ずっとお前を愛するし、ずっとお前のそばにいる。美春も、そばにいてくれるんだろ?」
(明良……)
「俺だって……一人は寂しいんだ。美春と一緒じゃなきゃ……いやだ」
(明良ぁ……)
 美春の目に涙が浮いた。
 どちらからともなく二人は同時にキスをする。
 舌を絡め、唾液を吸い合い、夢中で唇をむさぼる。愛しさが苦しくさせて、たまらない気持ちになった。
(あきら……わたし、もう)
 弱々しい思念に明良は頷く。
「ああ、一緒にな」
 頷き合い、明良は絶頂へ向けて鋭く腰を動かした。
『ああっ! んはっ!』
 言霊の力がさらに増し、明良の理性を塗り潰していく。催眠状態に陥るように、意識が飛びそうになる。
 性器同士の摩擦が激しく互いの感覚を上らせていく。液が飛び散り、ぐちゃ、ぐちゃ、といやらしい音が耳を溶かした。
 もう我慢はできそうになかった。
「美春! もう──」
 一分一秒を争うかのように高まる射精感が、明良の意識を真っ白に染めていく。
 しかし、先に絶頂を迎えたのは明良ではなかった。
『ひゃ、ひあっ、うん、あっ、あっ、あっ』
 無茶苦茶に声を上げながら、明良の肩を懸命に掴む。耐えるように、すがるように、美春は明良を見つめる。
 そして、
『あっ、ああっ、だめ、いっ、あ、あっ、ああぁぁ────っっ!!』
 甲高い絶頂の声が明良を最大限に陶酔させ、同時に強まった締め付けが、あっけなく射精を促した。
「うわっ、うっ」
 未成熟な少女の胎内に、少年の欲望の液が大量に注がれていく。
『あ……出てるよぉ……』
 しばらく続く射精感に身を任せ、明良はそれが止まるまで丁寧に中に擦り付けていた。

411 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:42:37 ID:j4Yjr9JS
 合計三度愛し合った二人はベッドに倒れ伏し、互いに何も喋らなかった。
 気持ちいい倦怠感に包まれて、明良はこのまま眠ってしまおうと目を閉じ、
(ごめんね明良……)
 思念が来たので目を開けた。
 横に目を向けると、美春がこちらを見つめていた。
「なんだよ、どうした?」
(明良が一緒にいてくれるのに、私、友達が欲しいと思っちゃったから……)
「……いや、別に謝る必要はないだろ」
 美春は不思議そうな目になる。
「いてもいいだろ、友達。俺だって欲しいし、美春に友達ができたら俺も嬉しい。なんで謝る?」
(……)
「むしろ謝る相手は別だろ。ちゃんとあの子に謝ったか?」
(うん……でもあの子、ずっと放心してたから、きちんとはできてない)
「……何があったんだよ」
 今なら訊いても大丈夫だと思い、尋ねる。
 すると美春は顔を曇らせ、唇を噛んだ。
(私、あの子の大事なものを壊してしまったかもしれない……)


 遠藤守が自宅アパートに帰ってきたのは夜八時を回ったところだった。
 秋の夜風に小さく身震いしながら、守は階段を上り、部屋の前に辿り着く。
 ……部屋の前にいとこの少女が座り込んでいた。
「依子ちゃん」
 二ヶ月振りのいとこの姿に内心嬉しくなったが、少し様子がおかしかった。
 依子はうつ向いた顔を上げ、こちらを見つめてきた。
 そして立ち上がるや、いきなり胸に飛び込んできた。
「ど、どうしたの?」
 焦りながら守は依子を受け止める。小さく体が震えているように見えた。
 依子が微かな声で呟く。
「マモルくん、私……」
「なに?」

「縁……見えなくなっちゃった」

 空気が寒い。
 薄暗い空間の中、寿命が近い廊下の灯りが微かに明滅を繰り返していた。

412 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/08/06(月) 13:48:28 ID:j4Yjr9JS
以上で投下終了です。改行の都合でラスト2レスが他より短いですが御容赦下さい。
今回はラストに笑顔がありませんが、次は綺麗な笑顔を見せたいと思います。
次で多分終わりです。

413 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/06(月) 17:17:57 ID:02t7sWN/
久々のかおるさとー氏キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
GJです!
相変わらずすばらしい

414 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/06(月) 20:02:55 ID:tmSry+7O
激しくwktkさせる展開にGJ!

415 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/06(月) 20:59:25 ID:DV7whKTA
いや、深い話ですね。感動しました。
次が楽しみです。頑張って下さい!

416 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/06(月) 21:27:35 ID:ZTaXJEdk
で、どう無口なの?

417 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/06(月) 23:12:35 ID:02t7sWN/
>>416
もう一回読み返せ。
口では余り喋ってない。口では。

418 名無しさん@ピンキー age 2007/08/07(火) 04:43:29 ID:L92u1xp7
>>412最終回予告ですか・・・悲しいし嫌だけど、それでも心から楽しみにしてます。GJ!!


さて、俺も悪霊スポットいって縁視を身につけてきますかね。

419 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/07(火) 20:48:35 ID:pkIq00/r
>>418
食われるなよw

420 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/08(水) 04:02:33 ID:DHxX1ty8
エロなくても十分面白いのにきちんとエロ入れてくれる心意気に泣いた

421 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/11(土) 00:47:23 ID:0FLX8P1P
「……暑い…」
夏休みを利用して、俺と冬美は親父が今滞在している南の島に来ていた。
親父の仕事は動物の研究で、ゲテモノ…いや、爬虫類の新種を探したりしてるらしい。
そして新種がいる場所ってのは大抵が未開の地らしい。
いかにもジャングルしたジャングルや、南国の海を体現した白い砂浜と青い海原。
探索の拠点となっているロッジがある島には電気やら何やらはあるが、いざ探索となると蚊やら蛇やら蜘蛛やら獣やらとの異種格闘技戦だ。
まぁ……俺たちがそこに行くことは無いだろうし、南国の島で誰にも邪魔されず一時のアバンチュールを楽しもう…と思ったんだが……
「まさか……エアコンが無いとは…」
そう…電気はある、冷蔵庫もある、ベッドもある、風呂もある、オマケに天井にデカい扇風機もある。
なのにエアコンが無い、いくら風通しが良くて海に突き出たロッジにいるとはいえ暑いもんは暑い。
「家のリビングが懐かしいぜ……」
ガンガン冷房を効かせて冷たい麦茶を飲み、ソファーて腹を出して寝て風邪をひきかけるあの素晴らしい生活をここでも送りたかった…
だが、だがまだ負けない、冬美と二人きりなのだ…何時もなら邪魔が入りそうなものだがここには邪魔者はいない。
「………とにかく、冬美の部屋に行くか」
海にでも行って、冬美の水着を合法的に視姦しよう。
あわよくばお外で……
ベッドから飛び起き、水着に着替えて隣の冬美の部屋に向かう。
下心を隠すためにインパクトがあり、なおかつ元気良く、有無を言わさず海へと誘わなくては。
「冬美〜海行こうぜ!!」
我ながら完璧、決まった、百点満点。


「………………?」
「…………………」


……相手を間違えなければ、の話だった
が。

「え……あれ……?」
おかしい、部屋を間違えたのか?
つーかこのセクシーな下着姿の人誰?
しかし、今この辺りのロッジは親父の研究所が貸し切ってるから関係者ではあるはずだが…見覚えがない。
しかしこの人胸でかいなぁ……夏希様クラスかそれ以上か…
だがこう…何て言うか年上の優しいお姉さんオーラ出しまくり。
ってイカンイカン、現実逃避をしている場合じゃない!
ひとまず華麗にこの場を乗り切らないと。
「…………あ、スイマセン……部屋、間違えました」
「…………そう」
「悪気があった訳じゃ無いんです…」
「…………そう」
「スイマセン……本当スイマセン……」
「………君、もしかしたらこーくん?」


422 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/11(土) 01:19:34 ID:0FLX8P1P
「へ?」
「…やっぱり…こーくんでしょ」
え?何で俺の子供時代のあだ名を知ってんだこの人。
ってことは俺の知り合いって訳か?
「あの………失礼ですけど、どちらさまで」
「あぁ……そっか、随分昔だもんね…」
何故か一人で納得したように唇に人差し指を当てて考え込むお姉さん。
この仕草……まさか…
「秋夜さん……?」
「大正解…ふふ、お久しぶりね」
幼少時代、俺の五つ上だった秋夜さん。
親父の親友の教授の娘で、昔はよく面倒をみてもらってたっけ……
あの時から優しいお姉さんオーラ全開で、近隣のガキ共のマドンナだった。
引っ越してから疎遠になってしまっていたが…どんな偶然なんだ…
「ってか何で秋夜さんがここに!?」
「あれ?おじさんに聞いてなかったの?」
下着姿からTシャツとホットパンツに着替えながら秋夜さんが俺の質問に答える。
「聞いてませんよ!」
「私ね、今は父の代役として研究チームに関わってるのよ」
「え…じゃあ大分前から親父と…?」
「いいえ、父が珍しく病気で倒れたから急に…おじさんも『ウチの馬鹿息子も来るからどうだ』って言うし…」
「は……はぁ……」
「でもホント久しぶり、背、抜かれちゃったね」
そう言って秋夜さんは俺の背と自分の背を比べる。
子供の頃とは違って今度は俺が若干見下ろす形だ
「あぁ…あの時はまだガキだったから…」
「声もすっかり大人っぽくなってる」
「成長期ですから」
「ふふ…かっこよくなったね」
「そうかな…?」
ヤバい、なんかめっちゃ照れる。
心臓バクバク言うし、何か恥ずかしい。
「うん……うん、かっこよくなったよ…」
体をピタリと密着させ、俺の顔を見上げてくる秋夜さん。
どことなく瞳が潤み、頬にほんのり桃色
がさしているようにも見える。
鮮やかな茶色のセミロングが風に揺れ、どことなく儚げな印象を与える。
「……………私は……どう?綺麗になった?」
「………えぇ…綺麗ですよ、とっても」
秋夜さんの細い指がいつの間にか俺の指に絡む。
耳を澄ませば吐息すら聞こえてきそうな距離にまで秋夜さんの整った顔が近づいてくる。
何故か体が動かず、秋夜さんの唇が俺の唇と触れようとしたその時、俺の小物入れの中の携帯の呼び出し音が鳴り響いた。
冬美と空港で選んだ揃いの海外用の品だ。
ふっと体が慌てて軽くなり、慌てて秋夜さんの体を離して携帯に出る。
「もしもし?」
「……………迷った」


423 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/11(土) 01:50:01 ID:0FLX8P1P
電話の向こうから冬美のいつも通りの声が聞こえる。
「迷ったって……今どこだよ……」
「………外……船着き場の近く…」
「わかった、迎えに行くからそこで待ってな」
「………早くね?」
「あいよ」
そう言って通話を切る、まったくあいつは意外なところでドジを発揮するから困る。
「スイマセン秋夜さん…迎えに行かないと…」
「ん、いいよ、行ってあげて」
さっきのあの雰囲気から一転、あの優しいお姉さんオーラたっぷりの秋夜さんに戻っていた。
「じゃ、これで失礼します…また後でお話しましょう」
あの雰囲気を切り払うようにかぶりを振り、俺は秋夜さんに背を向けて冬美のいる船着き場に向かって駆けていった。














「………彼女……かな」
久しぶりに会った彼は、私の想像よりも格段にかっこよくなって秋夜の前に現れた。
「………うらやましいなぁ……」
彼の手に触れただけであれほどの幸せがこみ上げてきたのだ、あれ以上進んでいたら恐らく戻れなかっただろう。
その点ではあの電話に感謝をしておくとして、取り分け今の問題はこの高ぶった体だ。
「んっ……はぅ……あぅ…」
シャツの上からも分かるほどに胸の先端は天を向き、ショーツは既にぐっしょりと濡れ、ホットパンツにまで愛液でシミが出来ている。
「んっ…あっ…あんっ…」
Tシャツとホットパンツを脱ぎ捨て、ベッドに四つん這いになると自然と自分の体を慰め始める。
彼の手に触れた指で自分の秘部をショーツの上からなぞる。
くちゅりと優しく触れた後、ぐちゅぐちゅとショーツごと秘部の奥へと指を突き入れる。
「んあぁ!ふぁぁ!こーくんっ!こーくんっ!」
何年間も恋い焦がれた待ち人の名を叫びながら指の速度を上げていく。
乳首は痛いほど天を向き、既にショーツは秘部が透けるほどに愛液を吸っている。
乱雑にショーツを脱ぎ捨て、大きく自己主張しているクリトリスこね回しながら指を2本膣口に出し入れし、快感を高めていく。
「こーくんっ!!こーくん!!イッちゃうよっ!!私っ!私っ!こーくんっ!」 愛しい人の名を叫びながら、トドメとばかりに膣口の再奥を爪でひっかく。
「ひぃうぁぁぁっ!!!!」
その瞬間潮を盛大に噴き出し、尿をチョロチョロとこぼしながら盛大に絶頂に達してしまう秋夜。
「はぁっー…はぁっー…こーくん……好き……」
虫の羽音程の小さな声でそう呟くと、秋夜は意識を手放した。


424 名無しさん@ピンキー 2007/08/11(土) 01:54:56 ID:0FLX8P1P
保守ネタ盛り込むの忘れた……
秋はドコだよって誰かに言われたので
軽くキャラづけして出してみました

……スイマセン調子に乗りました

設定としては二人きりや一人の時にだんだん無口になってくる性格なんですけど……
分かりにくいですね、スイマセン
少しでも暇潰しになれば幸いです

そのうち冬美とのなりそめを含めてきちんとした形で書いてみたいですね

それでは失礼

425 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/11(土) 02:06:21 ID:G29kNcVV
>>424
それ言ったのぼくです。何はともあれGJ!下着姿見られても落ち着いている秋夜さん萌え。
もう保守ネタを越えてるんでぜひ続きを!お願いします!

426 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/11(土) 05:23:54 ID:w+wsUZfp
下のお口は雄弁よのお〜

427 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/12(日) 20:41:03 ID:PVNMc6N0
「…のエ…じが。…ろ…れ…い…か?」

428 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/13(月) 00:11:12 ID:A6AH8oQR
やっぱリアルで無口系のキャラはアカンよ。会話にならへんもん。迎えに行くのは別にええけれど、連れて帰ってくる道中のこと考えたら、ホンマそれだけでうんざりしてくるわ……。


夏になると、これ↑を思い出す(;_;)

429 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/13(月) 00:30:57 ID:qsvRUATW
炉と熟女どちらもOKって人間は居ても、無口と多弁どっちも……ってのは聞かないしね。

430 名無しさん@ピンキー 2007/08/13(月) 06:57:02 ID:m0UdGrnk
age

431 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/13(月) 13:58:44 ID:CCZ7oSoM
保守

432 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/14(火) 00:12:54 ID:j0a5f64m
>>428
last kiss 乙

433 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/15(水) 02:28:22 ID:Af0UnZSq
ほっす

434 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/17(金) 01:18:09 ID:CzKSdZ+D
妄想が出来ても、それを文に出来ない自分が憎くて憎くて堪らない保守

435 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/17(金) 01:58:38 ID:CxF0hQIF
誰でもみんな、最初は初心者さ

436 じうご sage 2007/08/19(日) 05:49:40 ID:fX55UZMN
さてと、お久しぶりです
覚えてくれてる人いるかなぁ…

ちょっとチラシの裏
パソコンがウイルスでぶっとぶというえらい目に会いました
おかげで小説原案が全部HDごとぶっとび、パソコンも買いなおしを余儀なくされ…
ノートン先生は、使えないと本気で学習できました
まぁ、ほかのがソフトがとくになにもわからないので、仕方なくまだ使ってますが…



さてと、久しぶりに書いた作品です
…意味わからないくらいへたくそになってました
…展開は強引だし…
…おまけに、久しぶりすぎて推敲のしようがない始末…
……さらに、人物の性格を微妙に覚えてない始末
……ヤヴァイ?
と、とりあえず、久しぶりということリハビリだと思って
生あたたたたかい目で見てくれると嬉しいかもしれないけどどうなんだろう…

437 じうご sage 2007/08/19(日) 06:01:40 ID:fX55UZMN
「………」
「………」
ここは、とある高校の、とある教室で
「………」
「………」
現在3時間目の授業中、
「………」
「………」
授業内容は自習で
「………」
「………」
いつもならにぎやかな会話が交わされるのだが、
「……本当にだれもいないな」
「……だね」
その教室には、4人しか生徒がいなかった。
「やっぱり、自由参加の夏休み講習に律儀に来てるやつはまずいないか…」
「そうだね…」
「…当たり前」
「………」
ちなみに、現在教室に居るメンバーは、お察しの通り
佐藤悠、大城美夏、白木誠、木村千恵、の4人である。
「しかし…だるいな…」
「…暑いしね」
「…気温38度」
「………」
しかし、3人は暑さのためにろくに勉強できてなく、
「帰るか…」
「…あと12分あるよ」
「…我慢」
「………」
そんな会話を延々と繰り返してたりする。
「シャワー浴びたい…」
「…激しく同意」
「…うん」
「………」
ちなみに、クーラーはとりあえずついているのだが、古いタイプで故障も多いので使用は禁止されている。
「ああ、もう俺我慢できないから帰るぞ…」
「…僕もそうする」
「…私も」
「………」
そして、講習は、いつもこんな感じで切り上げられている。







438 じうご sage 2007/08/19(日) 06:02:12 ID:fX55UZMN
暑い…」
「言わなくてもいいよ…」
「…言っても変わらない」
学校からの帰り道、いつも通りの会話
「なぁ、千恵」
「……?」
「なんでお前はこんなに暑いのにそんな平気な顔してるんだ?」
「あ、それ僕も気になる」
千恵は少し悩んだ素振りを見せ、
「………」
口に指を当てる
「結局秘密か…」
「寒いのは苦手なのにね…」
「…暑くて死にそう」
そして
「っと、じゃぁな」
「…またね」
「はい、また明日、悠さん美夏さん」
「………」
お互い、手を振って分かれる





「…ただいま」
鍵を開けて家に入る
今は両親ともに長期出張なので、家には私一人だ。
「……」
別に、一人だからといって、とくにやることはないけれど。
「…お風呂」
まず、シャワーを浴びてさっぱりしよう、そうすれば大分楽になる。
「………」
そうと決めたら早速行動する。
部屋に戻り、バスタオルと下着と私服を取り出し、すぐにお風呂場に移動する。
「………」
汗を吸ったシャツやなどの下着を外しただけでも、大分楽になった。
「………」
今日はこの後どうしようか、そんなことを考えつつ、お風呂に入る



439 じうご sage 2007/08/19(日) 06:09:15 ID:fX55UZMN
「あー…さっぱりした」
今は自分の部屋、もちろん、クーラーはスイッチをとっくにいれてあるから部屋は大分涼しくなっている。
「全く、このごろ暑すぎなんだよな…」
ぶつぶつと文句を言いつつ、ベッドに寝転がり
「………」
べつになにもやることはない
「あー…やばい、このあとなんにも予定ねぇや」
新しく買った小説もみんな読んでしまったし、暇をつぶせるものがない
「…久しぶりにゲーム…微妙だな」
本当にやることねぇ、とか呟きつつ、ベッドの上をゴロゴロ転がっていると
「…ん?」
この部屋の窓を叩く音が聞こえた、
「どちらさまですかー」
まぁ、こんなとこの窓を叩くやつは一名しか居ないわけだが
「よっと」
窓を開ける、で、やっぱりそこに居るのは
「美夏か」
半そでにスカートといったかなり涼しそうな格好
ちなみに、俺は半そでにジーパンなんて穿いてる
「…本読みに来た」
「まぁ、そんなことだろうと思った」
とりあえず、部屋に招き入れて、
「とりあえず、どんな本読むんだ?」
「…とくに決めてない」
「……珍しいな」
「…そう?」
「ああ」
まぁ、特に決めてないのなら片っ端から本を入れてある段ボール箱を出すわけで
「…あの」
「ん、どうした?」
聞きながら、読みたい本が決まったのかな、とか思いつつ、段ボール箱を出そうとする手を止め
「…あのね」
「うん、なんだ?」
「…していい?」
…気のせいだろうか、なんか考え事をしてたせいでうまく聞き取れなかったかな
「悪い、なんだって?」
「…していい?」
うん、気のせいじゃなかったか、ついでに軽いデジャヴを感じるのは何故だろうか
「…なんでこんな昼間っから?ってか、いきなりどうした?」
とりあえず、美夏のほうへ向いて尋ねる。
美夏は顔を赤くしながら
「…夏休み入ってから…してない」
…そんなこと考える気力も体力も暑さで根こそぎ奪われてたな、うん
「…我慢…出来ない」
そう言い、美夏はするするとこっちに近寄り、ぽふっと、こっちに体を預け
「…だめ?」


440 じうご sage 2007/08/19(日) 06:20:13 ID:fX55UZMN
そう、聞いてきた
「あー…」
いや、まぁ別にかまわなかったりするから、
「あ……」
とりあえず、美香の顔を上に向かせ、唇を重ねた
「ん……」
ただ単に、唇を重ねるだけだがお互いにスイッチが入るには充分
そのうち、どちらともなく唇を離し
「…えっと」
「ん、どうかしたか?」
「…もう、入れて、いいよ?」
いや、まだなんにもしてないんだが。まぁ、もうこっちものは準備が出来てるが
「えーっと、ほら、久しぶりだから楽しみたいし」
その言葉に美夏は
「…我慢、出来ないから」
そう言って、こちらを押し倒してくる。
そしてそのまま、こっちのズボンのチャックを開けて硬くなった俺のものを取り出して
「ん…ふぁぁあ」
服を脱ぐ時間も惜しいのか、そのまま下着を下ろしただけでこっちを中に迎え入れた
美夏の中はなにもしてないのに蜜で濡れていて、動くには支障はなかった
「はぁっ、んっ、あぁ!」
本当に我慢できなかったのか、美夏はこっちを迎え入れてからすぐに、貪欲に快感をむさぼる様に腰を動かし始める
「ふぁっ、あっ、はっ、いいよぉっ!」
美夏は、もう蕩けた目をして、口の端からよだれをだらしなくたらしている
「あっ、ひぁぁぁぁぁぁあ!」
そして、あっという間に絶頂に達してしまったらしい。
体をがくがくと震わせながら、倒れこんでくる
「あ、はぁ、ん、はぁ」
まぁ、あっという間過ぎて、俺のものは全然元気なわけで
もっと乱れた美夏を見たくなり、体を起こして、美夏の体を抱え、思いっきり上下に揺さぶってみる
「ああっ、やっ、まだっ、だめぇっ!」
そのたびに、美夏の体はビクッと、電気が流れたように跳ねる
「ふぁっ、あうっ、ああっ、あっ!」
奥を抉るたびにひときわ甲高い嬌声があがる
「あ、だめ、あ、ふぁ、やぁ!」
そろそろ、俺も我慢が利かなくなって、どんどんペースをあげていく
「ああっ、はぁっ、もう、あっ、だめぇっ!」
美夏もそろそろ限界らしく、こちらにぎゅっと腕を回してくる
「あ、あぁぁぁぁぁぁあ!」
そして、美夏は限界に達したらしく、がくがくと体をふるわせる
「…く」
それを、確認した俺も、自分自身を解き放った







441 じうご sage 2007/08/19(日) 06:22:17 ID:fX55UZMN







ちなみに、このあと二人して動けなくなったりするのは、まぁ、別の話

442 じうご sage 2007/08/19(日) 06:23:50 ID:fX55UZMN
はい、変なとこで変に区切ってしまいました


おまけに読み返してorz



ちょっとコンセントで首吊ってきます

443 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/19(日) 07:04:27 ID:HBY9Ut1L
エロシーン短すぎ吹いたw

だがGJ!

444 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/19(日) 15:16:22 ID:eO8IRA/z
インスタントエロチックGJ!

445 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/19(日) 17:27:25 ID:0wCyH7ef
久々のじうご氏到来!GJ!

446 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/19(日) 17:29:19 ID:0wCyH7ef
「到来」は人が来たときに使う言葉じゃないですね…すみません。

447 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/19(日) 18:51:05 ID:AiVjN3IK
じうご氏、乙
こんな腐れ暑い最中だとエチも簡潔だなw

448 名無しさん@ピンキー age 2007/08/21(火) 05:47:22 ID:OJqwQCuA
保守

449 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/22(水) 03:27:20 ID:LSLAsdDb
>>442GJ!!これから調子直るのを願ってる。

さて>>447見て思ったが、夏はセックスすらあまり犯る気がしない。




な ら 冬 は ?



後は言わなくても・・・わかるな?

450 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/22(水) 11:38:57 ID:WC7Z8bMm
>>449
互いを温めあうように濃厚な愛が炸裂

451 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/24(金) 00:49:26 ID:Nmhhvs7f
>>450


あと3ヶ月後だな……


ちょっと全裸で正座して待機しとく

452 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/24(金) 01:30:31 ID:nNm4u73Z
>>451
風邪ひくぞ?w

453 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/24(金) 08:49:38 ID:kYHfZ5Nd
>>451
紳士として靴下とネクタイだけはつけとかないと。

454 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/24(金) 22:42:18 ID:oPV9uxGM
まあ冬に凍え死ぬヤツはいても暑くて死ぬヤツは・・・・
いる時代なんだよな、この暑さどうにかならんかね?

455 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/25(土) 00:22:48 ID:54lPDyXo
>>454



つラブラブなエロSS

456 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/25(土) 01:19:05 ID:b8ChZfyy
>>455
何その無差別殺人w

457 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/25(土) 16:01:00 ID:agX0oCCr
「もうだめだー!」
僕は絶叫しながら家の外にとび出した。母親の方針でうちはクーラーはなるべくつけないんだけど、
ここらの地域の最高気温を更新しましたってニュースをやってる今つけずにいつつけるのさ!

僕はチャリで坂を登る。もうちょっと上に、川のいい感じの浅瀬があって、ほんとは泳いじゃダメだけど、
もちろんムシですよ。いけばたぶん友達も誰かいるし。とか言ってると、前を誰かが歩いてた。あれ、相馬?

相馬優(そうまゆう)は、今年転校してきた子で、少し体を悪くして静養に、みたいな。とにかく、細くて、
白くて、長いまつげをいつもふせてる感じの、キ、キ、キレーな子!なんだけど、とにかくしゃべんない。
無表情。最初はもちろん、みんないろいろ話しかけたけど、あまりのリアクションの薄さ、というか無さに、
別にハブじゃないんだけど、いまや気がつくといつも一人、みたいな。でも、クラスの男は、何もしないけど
ほぼ全員彼女を意識してますねえ、たぶん。クラス委員の美香に言わせればミエミエでアホみたいとの事。
ウッセ!いまどきスカートめくっぞ!

なんだっけ、あそうそう。その相馬が、こんな山道に一人。なぜ?例の川にも一度も来たこと無いのになー。
だいぶ体は良くなったらしいけど、いくら日傘さしてるっていっても、こんな日に歩き回るのはダメだろ。
と、なんとなく自転車を下りて、押しながら彼女のかなり後ろを歩いていると、急に彼女の姿が見えなくなった。
急いで彼女の消えた辺りまでチャリをとばす。両脇は森。横道なし。ははあ、実は彼女は僕の青春に訪れた
ひと夏の幻影…とかアホみたいな事(スマン美香、お前の言うとおりだ)考えてると、ヤブの中に足あと発見!
チャリを置いて、なぜか音を立てないようにそっと突入。時間は、えーヒトヨンフタマル。

すこしだけ森に入ると、3m四方くらいだけど、開けた場所があるみたいだった。そこには、数本の、腰の
高さくらいのひまわりが生えていて、彼女はその前に立っていた。ぼくはどうしようか迷いつつ、まあこんな
きっかけはめったに無いなと思って、声を掛けようとした。すると、彼女が!

畳んだ日傘を足元にそっと置くと、彼女はサンダルを脱いで裸足になって、ついでにスカートの中に立った
まま手を入れると、パンツをするりと下ろした。なるほどねえ…ってナニー!!脱いだ薄ピンクのパンツを
ポイと放ると、そのままひまわりの前でスカートを捲り上げた。小さい、真っ白なお尻が丸見え。そのまま
しゃがみこんで、ひまわりの根元にシャーッと、オ、オシッコを掛け始めましたよ!意味分からん!

僕は、あまりの動揺に身動きしてしまい、足元の枝がポキリと鳴ってしまった。ザ・ピンチ!彼女が、しゃが
んだまま、というか、オシッコをしたまま顔だけこちらを向いて、大汗をかいている僕とバッチリ目が合って
しまった。さて、このあと彼女はどうするでしょう。
正解は、また僕がいなかったのように前を見て、オシッコし続けながら少し腰を上げてカニ歩き、となりの
ひまわりにもおしっこを掛け始めた、でした。当たったかな?

さて、出すもの出した彼女ですが、ポケットからティッシュをだしてアソコを拭いて、さっき投げたパンツを
装着。日傘を差して僕の横を、僕をちらりとも見ずにとおりすぎ……って、ちょっと、ちょっとちょっと!
「そ、相馬!」
彼女はすっと立ち止まって、クルリと振り返った。いやー、すっと通った鼻筋とか、小さくて薄ピンク色の
唇とか、うーん、カ、カワイイ!!
「…なに」
「あ、あの、オレの事、知ってるよな」
「田島君」
よかったあ。クラスメートだから別に知ってて普通だけど、知らんとか言われたらヘコむどころじゃないよな。
「あ、あのさあ、アレ、なにしてたの」
「自由研究」
即答だよオイ。…自由研究?!よけい分からん?
「え?テ、テーマ何なの?」
「尿の、有機肥料としての有効性」
「…?ごめんもう一回」
「尿の、有機肥料としての有効性」
あー、確かに昔、動物のウンチだけじゃなくて、オシッコも使ったって聞いた事かあるけど
「でも、今さらなんでそんな事…」
「…究極のリサイクルとして、これからの地球には必要」
ほっほー…なーるほど。分かりました。相馬、お前アホだろ。いや、頭はいいと思うよ確かに。でもアホだね。




458 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/25(土) 17:09:35 ID:agX0oCCr
彼女は、また前を向いて山を下り始めた。僕は、あわてて自転車を回収して、押しながら彼女の横に並んだ。
「よくあんなとこ見つけたなあ」
「ネット。あれぐらいあれば空から分かる」
僕は分からない。まあいいや。
「しかし、キャーくらい言ってもいいんじゃないの?」
「なぜ」
「だって、オ、オシッコ見られたんだぜ、恥ずかしいだろ!」
「別に」
「ウソつけ!恥ずかしくないわけ無いだろうよ!」
「別に」
言っとくけど、全然いやらしい気持ちはないよ。ただ、彼女の様子にカチンときただけだから。いやホント。
「なら…なら僕の前で出来るかよ」
「出来る」
また即答!ちょちょちょ、そんな事言われたら、もー引っ込みつかないじゃん!相馬のアホ!空気嫁!
「じゃ、じゃあしてみせろよ」
彼女は無言で一時僕を見つめていたが、すっと日傘を差し出す。
「エ?」
「…持ってて」
僕が、相変わらずあっけにとられたまま傘を受け取ると、彼女はいきなりスカートをその場で捲り上げようとした。
「ちょちょちょちょちょ待っいやちょ」
あわてて自転車を放り出し、彼女の手をつかむ。
「…なに」
「え、今「なに」っていった?…なんで?あーなんか腹立ってきた」
彼女の、このクソ熱いのにひんやりとした細い手を引っ張って、本道の脇にある細い林道を上がる。
そこには小さな作業小屋があって、この時期はだれもつかっていない。
「じゃあここで」と僕が彼女のほうを向いて言うと、彼女はまたあっさりパンツを脱いで、僕の真正面にしゃがみこむ。
彼女のソコには全然毛とか生えてなくて、しゃがんでるからか、少しだけ開いた割れ目から、ピンク色の部分が見えた。
そこから、ホントに少しだけオシッコが出る。
「…さっき出したばっかりだから、ほとんど出ない」
と、全く冷静な声で言う。くそー、どうすりゃいいんだよ!
僕は、無我夢中で彼女を突き飛ばした。
「あ」といいながら彼女は尻餅をつく。表情は全く変わらず。ぼくは、彼女の白い下半身に「わー」」とか言いながら
覆いかぶさって、割れ目を指でグッと開きながら、その間の薄ピンクの肉が合わさったとこを、メチャクチャ舐め始めた。
少ししょっぱい味がした。そらそうだオシッコしてたんだもん。でもなぜか全然イヤじゃなかった。
どんどん奥に舌を入れてみる。そのあたりを強く擦るように舐め続けていると、そのうち、その奥の方から、なんていうか、
トロッとした感じのが湧き出てきた。
最初、一所懸命アソコを舐める僕を無表情で見下ろしてた彼女だけど、今は目をつぶって、少しだけ口を開いて、
「…ハッ…ン…ハ…」
と、かすかに震えるような浅い吐息を吐き出している。
彼女の中が、少しピクッ、ピクッとなって、僕の舌をかすかに締め付けるような動きをする。
やがて、そのピクピクがビクン、ビクンという感じになって、彼女は少し腰を浮かして、僕の顔にアソコを押し付けるような
動きをし始める。
そこでクリトリスですよ。もちろん実際に見たことは無いけど、どんなもので、どういうふうにするかは知ってる。インターネット万歳!
舌で探って、この辺かなーというところに、思ってたよりずっとずっと小さなそれがあった。
あんまり強くなりすぎないように気をつけながら、それを舌で擦り始めると、彼女はこぶしを口にくわえて
「…グッ…ウン…クッ!」
と、耐え切れないように色っぽい声を出しはじめ、そのうちかすかに悲鳴のような声を上げると、グイッと僕の顔にアソコをあてて
しばらくピクピクしてたけど、やがてガックリと腰を落とした。わずかに肩で息をしている彼女に、
「どうよ」と聞くと、彼女は本当にうっすらとだけ頬を染めて
「…えっち」
とだけ言いました。うわー、僕その場で立ち上がって、いてもたってもいらんなくて足をドタドタドタドタさせてましたよ。

乗るかと聞くとあっさりうなずいたので、彼女の畳んだ日傘を前かごに入れて、自転車に二人乗りして山道を下る。
途中、クラスのアホどもとすれ違う。「よお、田じ…」までいって、僕にしがみつきながらチャリの後ろに乗ってる彼女を見て
全員口あんぐり。
あとで説明が大変そうだけど、また明日彼女とひまわりのところで待ち合わせをしてる事を思い出せば、全然OKなのさ!




459 名無しさん@ピンキー 2007/08/25(土) 22:05:39 ID:N8xkBal3
>>458
おつかれgj。主人公もヒロインも馬鹿だと物語に違和感を感じます。

460 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/25(土) 22:22:29 ID:54lPDyXo
>>458
おつかれー

まず、これから投下〜と、これで終わり〜
って入れてくれると嬉しい

主人公もヒロインも馬鹿でちょっと吹いたw

461 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 10:25:32 ID:/dn/tAk4
いやいやいや、
男は莫迦じゃないぞ?いや男は皆美少女のおまたの前ではバカになりますよ?

462 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 13:21:08 ID:0mge7cQ3
>>458
何故か「う〜トイレトイレ」みたいなノリを感じてしまったw

463 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 17:05:50 ID:vykK8Et+
>>462
うほっ

464 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 19:48:14 ID:NuheFfVa
無口っ娘『………やらないか…?』
小首をかしげながらな。

465 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 19:51:44 ID:KOP03hdZ
『…………しないの……?』の方が好きだ。

466 名無しさん@ピンキー 2007/08/26(日) 19:59:35 ID:YWmvi9UT
『………やらないか…?』 だと、クールな感じがする。
『…………しないの……?』だと、子犬系の愛らしさがある。

どちらも素晴らしい。
だが、あえて私は『…………抱いて……』をお勧めするっ!!

467 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 20:06:59 ID:KyiU0XLa
服の裾とか袖を掴んで
『……して……』
だろうが

468 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 20:07:41 ID:UMXRD5/r
『・・・・・・・・・・・・して・・・・・・』

がいい。

469 名無しさん@ピンキー 2007/08/26(日) 20:15:16 ID:Btu88gDe
>>467-468
結婚おめでとう

470 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/26(日) 22:49:15 ID:CBCd8GUK
「……………しよ……」に一票

471 じうご sage 2007/08/27(月) 00:31:55 ID:QXNro8V8
なんとなく覗いてみたら面白い話で盛り上がっているので
即興で話を考えてみました

とりあえず、やらないか?編と、しないの?編で書いてみました

エロは無いです
あと、即興で書いたので両方1レス分しかありません

では、投下します

472 やらないか?編 sage 2007/08/27(月) 00:33:19 ID:QXNro8V8
やらないか? の場合

「はぁ、今日も暑いね……」
シャツが汗でじっとりと張り付く、熱帯夜、そういってもいいくらいの暑さだ、それなのに彼女は
「……別に」
ほとんど汗を掻いた様子もなく、涼しげな顔をしてちょこんと座って、本を読んでいる
「毎回思うけど、本当に暑さに強いのは羨ましいね」
彼女は、こちらと目を合わせ、すこし顔を傾けながら
「……そう?」
そう返してくる
「うん、暑いのは、薄着になるとかでも対応には限界があるからね」
「……そう」
……会話が続かない。なんというか、まぁ、いつものことだけど
「…………」
「…………」
そして、いつも先にこのだんまり状態に耐えられなくなるのは僕で
「暇だねぇ……」
誰に向けてでもなく、ポツリと呟いてみる
「……暇?」
彼女が本に目を向けたまま、聞き返してくる
「うん、暇」
その、言葉を聞いた彼女は
「……いい方法がある」
そう、言っていきなり立ち上がり、するすると服を脱ぎ始める
「ちょ、ちょっとなにやってるの!?」
いきなり、目の前で服を脱ぐ彼女を見て、平静が保ってられるほど僕は出来てない
思いっきりあたふたと慌てている間に、彼女は服を全部脱ぎ終わり
「………やらないか…?」
なんというか、明日の天気はなんだろう、みたいな軽さで言ってくる
「え、いや、ちょっと待ってよ!」
まだ慌てている頭はその言葉を聞いてさらに慌てる。もちろん、きちんとした答えが出せるわけない
彼女は僕の言葉を聞いてから、僕の方を後ろに倒すように、僕の方に手を当てて倒れてきて
「うわっ!」
当たり前のように、僕は後ろに倒れ、彼女が僕の上に馬乗りになる
そしてその体勢のまま、彼女は僕に唇を軽く重ねて、離し
「……嫌?」
聞いてくる
ほのかに紅潮した頬、期待に潤んだ瞳、もちろん、僕はそれを見て理性を保ってられるほど出来てない
僕は無言で体を起こして、彼女を逆に押し倒し、唇を深く重ねた










473 しないの?編 sage 2007/08/27(月) 00:37:55 ID:QXNro8V8
しないの? の場合



「あー、文明の利器万歳」
今日、ニュースでやってたところによると、今日は熱帯夜らしいが
「……うん」
クーラー全開の部屋で過ごしている俺たちには関係なかった
彼女は俺に背を向けてぼーっとしている、で、俺はその姿を見てちょっと彼女に触れたくなった
「ちょっと寒いなぁ」
俺は白々しくそんなことを言いつつ、こちらに背中を向けている彼女に抱きつく
抱きつかれたせいか、少しずつ彼女の耳が赤くなっていく
「……暑いよ」
彼女はそんなこと言うが、特に嫌がる素振りも見せず、そのまま俺に抱きつかれたままだ
「んー…俺は寒い」
俺はそういいつつ、彼女をぎゅっと抱きしめる
「ん……」
彼女は小さく声をあげ、そのままこちらに体を預けてくる
彼女の体温が心地よく俺にじんわりと伝わってくる。その心地よさは、なぜだか俺に眠気を運んできた
…明日は早いし、このまま寝るかぁ
彼女を抱いたまま後ろに倒れる。で、抱きついたまま彼女を俺の横にポフっと寝かせる
そういえば風呂入ってなかったなぁ、とか思いつつ
彼女の体温を感じたまま、俺は目を閉じて眠



「……えっと……その」


れなかった
「ん?どうかしたか?」
俺は、すこし目を開けながら聞く
「…………」
彼女はくるり、と器用に俺の腕の中で体を回し
「……しないの…?」
そう、言ってきた
「……………」
…ああ、そういえばこのごろ課題やら塾やらでお互い忙しかったからしてないなぁ
俺がそんなことを考えていると、その考えている間に出来ていた沈黙を否定の意味でとらえたのか
「……しない…のか…」
彼女はすこし落胆した様子で、またくるりと器用に俺の腕の中で回って、俺に背を向ける
…やばい、すごく可愛い
ん?明日早いからもう寝ないと?黙れ天使、明日なんか知るか
俺は右手を彼女の中心に、左手を彼女の胸に伸ばしながら
「しないなんて、一言も言ってないぞ?」
そう、彼女の耳元で呟いた














474 じうご sage 2007/08/27(月) 00:41:29 ID:QXNro8V8
以上です

本当はエロ書きたかったけど明日早かったりする
さてと、こんな駄作ですが楽しんでいただければ嬉しいです

475 名無しさん@ピンキー 2007/08/27(月) 01:01:14 ID:InOsxFMQ
乙。仕事速すぎw

476 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 01:18:56 ID:ZNdxlwGM
>>474
乙!どっちも萌えましたハァハァ

どっちも好きだけど「やらないか?」だと違うヤツ想像してしまうw

477 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 01:40:30 ID:dqzlJG2v
大抵のねらーはあの人連想するよなw

478 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 02:10:38 ID:aolGDBXp
本家のやらないかにはクエスチョンマークはつかない…
と言い訳してみても結局アイツが浮かぶw

479 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 02:19:15 ID:SnAG2Fqd
無口クールだと思っても!


……やっぱりだめだ

480 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 08:55:16 ID:l9fcviZs
>>474
 >>「……しない…のか…」
 
  おっきした

481 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 11:34:07 ID:fPUm8mGx
gjでした

482 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 12:46:10 ID:ohWKR4kh
ここであえて
「・・・・・・・・・・・・・する・・・」

有無を言わさないところが(ry

483 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/27(月) 14:14:06 ID:rayjwRBF
>>476-477
うほっ

484 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/28(火) 01:39:12 ID:dUBSDTs5
そこは嬉しいこといってくれるじゃないの、じゃね?

485 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/28(火) 08:13:43 ID:LpW9GcBA
くそみそスレはここですか?

486 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/29(水) 01:30:53 ID:Cd334eUP
ちげーよwwwwwwwwwww

487 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/29(水) 02:26:06 ID:oJjHYprx
>>482
描いてみた
ttp://www.imgup.org/iup452281.jpg.html


488 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/29(水) 03:38:32 ID:6kuyhuUy
>>487

 神 降 臨 ! !

GJすぎて感涙ものですわマジで…

489 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/29(水) 11:31:25 ID:okdXhBUp
>>487
GJ!!!!
君のせいで妄想が止まらなくなったから1レス投下


「……する」
いきなり、唐突に、彼女が言った
「待て、なにをする気だ」
俺の質問に答えず、服をするすると脱ぎはじめ
俺は彼女がなにしようとしているのか理解した
「待て待て、俺はする気ない、ってかまだ昼前だし」
「……私がしたい」
いや、だから俺の意見を聞け
「我慢しろよ、あと八時間ぐらい」
「……無理」
そんなことを言っている間に、彼女は服を脱ぎ終わり、一糸纏わぬ姿になり
「……する」
「拒否する」
「……却下」
「駄目だ」
「……やだ」
「無理」
彼女は、少し考えこみ、そしてぼそっと呟いた
「…………襲う」
「おい、女の子が襲うとか」
なぜか、妖笑しながらこちらに近づいてくる彼女。目が……なんか危ない
「待て待て待て待て!!」
「……待てない」
……やばいな
彼女なら本気で襲ってくるはず、で、そしたら確実に俺の理性が飛ぶ
逃げようにも、この部屋に逃げるだけのスペースなんて存在しなかった
おまけに部屋の出口である扉は、彼女の向こう、つまり彼女の背後にある
「……はぁ」
とりあえず、結果が目に見えてるけど
「最後まで頑張ってみるか……」
彼女がこちらに

490 名無しさん@ピンキー age 2007/08/30(木) 05:36:31 ID:AbRc0aju
>>489その後は何だ!!続きを言え!!
たとえ貴様が無口っ娘でも容赦せんぞ!!

>>487パソコン妹に壊されて、携帯からうらる打ち込んだが見れない俺涙目ww

491 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/30(木) 10:08:52 ID:k7EEWQqt
>>490
無口な機械音痴の妹にパソコンを壊されたと解釈するが構わんな?



兄「あー! 何やってんだよ!」
妹「……?」
兄「わからないのに勝手に人のパソコンをいじるなよ」
妹「……」
兄「待て、だからっていきなり電源落とすな! テレビ消すのとは全然違うんだ」
妹「……」
兄「いや、確かに使った後はきちんと電気を消せと親父にも言われてるけど」
妹「……」
兄「じゃあ問題ないね、って大有りだ! うおっ、コンセント引っこ抜くなっ! 壊れたらどうすんだ!」
妹「…………」
兄「あ、わ、悪い。急に大声上げて……わわっ、泣くなよ、別に怒ってるわけじゃないんだ、その、」
妹「……」
兄「と、とにかく顔拭け。な?」
妹「……………………ごめんなさい」
兄「大丈夫、これくらいで壊れたりしないって。そうだ、冷蔵庫にアイス残ってたから一緒に食おう。な?」
妹「……」
兄「え? 取ってきてくれる? いいのか?」
妹「……」
兄「そっか、じゃあ頼む。代わりに好きなやつ選んでいいぞ」
妹「……」
兄「バニラか。じゃあ俺はチョコレートで。よろしくなー」

兄(やっべ、画面がなんかブルーなんすけど。でもあいつのせいにはしたくねーししゃーねーか。携帯でチェックしよ。……って画像見れねー!)

妹「……」
兄「ん? うまいか?」
妹「……ありがと」
兄「バニラか? よかったじゃないか好きなやつ選べて」
妹「……違う」
兄「じゃあアイス買ってきてたことか? これは俺じゃなくて母さんが」
妹「違う! …………ありがと」
兄「…………ああ、どういたしまして」
妹「……」
兄「……」
妹「……」
兄「……早く食べないと溶けるぞ」
妹「ん……」

兄(……携帯じゃ画像見れなかったけど……)

妹「…………」

兄(こいつが笑ってくれるなら別にいっか)



こんな感じで。

492 名無しさん@ピンキー 2007/08/30(木) 10:34:14 ID:Dv4iuQ53
携帯からで画像見れない俺は負け組wwwwwwwww
と思ったけど、>>491を見たらどうでもよくなった
俺単純wwwwwwうぇっwwwwうぇっwwwww

493 名無しさん@ピンキー 2007/08/30(木) 18:51:51 ID:q629un9w
太陽のせいで無駄に暑い中オレ達はクーラーのおかげで涼しい部屋でごろ寝中。
「暇だねぇ」
俺の右腕を枕代わりにしている彼女に呟いた。
「……そうだね」
「かといってこのまま寝て過ごすのもなぁ。せっかくの休日だし」
「……出かける?」
「暑いから嫌だ」
俺も返答に彼女は困った表情をする。
「………じゃあどうするの?」
「何かこの有意義な休日に持って来いなものはないのかね?」
「…あるよ」
彼女は自身満々(これでも一応)に答えた。
俺としてはこの暇な時間を潰すことが出来ればそれでいい。

俺がそんなこと考えていたら彼女はいきなり脱ぎ始めた。
「えっ!?なにやってんの!?」
「………有意義な時間を過ごすための準備」
彼女は当然といった表情。俺は愕然とした表情。
「ねぇ……しよ?…私にとってこれ以上有意義な時間は…ないよ」
彼女は俺の答えを待たずに唇を奪った。





こんなの思いついたから書いてみた。
反省なんてしていない。

494 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/30(木) 19:38:53 ID:JjCG/DO5
反省しないのは結構だが話を自重しないでくれ

まあ何かってえとワッフルワッフル

495 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/30(木) 22:43:34 ID:Oej5ZmFk
>>487
流れたので、ちょっと描き足して再。
ttp://coobard.h.fc2.com/pic/nonamegarl_big.jpg


496 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/31(金) 03:00:26 ID:i27MBjb4
>>491最高の解釈をありがとう。感涙しました。>>487は見れなかったが、その話で十二分ですよ

と思ってたら>>495がファイルシーク使えば見れる画像ですた。神GJ!!

そして>>493が更なるアクセントを加えてくれて、もう俺感動涙目wwwwww

改めてここは本当にすばらしい神スレですな。

そして>>493、ワッフル擬人化無口っ娘を送ってやるから続き頼むぜ

497 名無しさん@ピンキー sage 2007/08/31(金) 22:48:20 ID:OjpNFtRY
本気で誘ってるわけじゃなくて、
「…………やらないか…?(って言えばいいの…?)」
って感じでやらないかって書いたんだけどなぁ。
もちろんくそみそにかけてあるわけだけど。

498 名無しさん@ピンキー 2007/08/31(金) 23:05:52 ID:miDq3oBZ
俺は呆然と目の前に立つ彼女を見つめていた。
彼女の顔なんて毎日見ているから今更凝視する必要なんてないのだが、
今日は別だ。
「……私の顔に…何か付いてる?」
「いや、顔には特になにも…」
確かに顔にはご飯粒が付いてるわけではない。
ただ…頭に…

「あのさぁ、何その格好?」
「………猫」
だよなぁ。
彼女の頭上に小さな三角形の耳があった。おしりには細長い茶色い
尻尾がある。
もちろんコスプレ用のパーティーグッズなんだろうけど。
「…こういうの……嫌い?」
「いや、嫌いじゃない。むしろ好きだけど」
「じゃあ…問題は無いね」
そういう問題か?良いのか?俺は別に構わないけど。
「…そういう問題。良いの。私も別に構わない」
「人の心を勝手に読むな!!」
「愛があれば無問題」
問題ありありだ!!と突っ込んでも何も聞かないだろう。実際に耳を
両手で塞いで聞く気アリマセーンって感じだ。
なんか悔しいけどもう良い。諦めも肝心だし。

「さて……諦めてくれた様だし…愛を深めようか」
「おいっ」
「……諦めも肝心だよ」
彼女は俺のYシャツのボタンを易々と外す。
しょうがない、最後の抵抗だ。
「今日は絶対寝かせねぇ!!!」
「ふふっ…お願いにゃ」





>>496が俺に送ってきたので書いてみた。
もちろん反省n(ry

499 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/01(土) 03:38:38 ID:xGctEgS9
>>498>>お願いにゃ


くっ・・・ああああああああああああ!!!!!神GJ!!
完璧に脳内が無口っ娘パラダイスで埋め尽くされた。

猫擬人化ネコミミ無口巨乳美乳甘えん坊する・・・少女が欲しいです。

500 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/01(土) 07:55:57 ID:4ilFixFk
無口……か?

501 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/01(土) 09:00:54 ID:9t8FUvOv
手話で会話w

502 名無しさん@ピンキー 2007/09/01(土) 14:30:32 ID:fN3kFZmf
腹話術

503 coobard ◆69/69YEfXI sage 2007/09/01(土) 22:53:17 ID:lNZ98Uko
どうも。ミュウマ再登場です。10レスほど頂きます。
よろしくお願いします。


504 1/10 sage 2007/09/01(土) 22:54:05 ID:lNZ98Uko
 何か……向かってくる。
 あれは……なんだ……!
 巨大な、トカゲみたいな生き物。
 赤い眼。
 鋭いツノ。
 怖い、怖い、怖い!
 でも、ぼくは動けない。
 なす術なく、ぼくはその鋭いツノに……!

「うわぁあぁあっ?!」
 ぼくは驚いて目を覚ました。
「はぁっ、はぁっ……」
 ぼくは体を確認した。生きてる。よかった。
 周りを見ると、そこはぼくの部屋だった。
 時間は深夜。ほの明るい月明かりがカーテンの向こうから入ってきている。
 汗のしずくが、ぼくの太ももに落ちた。
 胸が痛む。思わず、押さえる。
 ぼくはこの胸の痛みのおかげで、ずっと身体が弱く、俗に言う運動音痴になってしまった。
 だけど、病院で検査を受けてもなんの異常も見つからない。
 心因性としか考えられないそうだ。
「ううっ……痛つっ……っはぁっはぁっ……」
 それにしても、今日は特にひどい。夢のせいだろうか。
「あんなファンタジーな夢見るなんて……ミュウマとエッチしたからかな……」
 ミュウマは、ぼくの彼女だ。この前、ひょんなことからエッチして付き合うことになった。
 彼女は可愛い感じだけど、いつも無口だった。
 その理由は、彼女が異世界から来たお姫様で、こちらの言葉がまだあまり解らないからだという。
 ぼくは、そんなゲームみたいな世界の王子様で、こっちの世界に生まれ変わった姿なんだそうだ。
 ミュウマは向こうのぼくを好きで、でも逢えなくなって。
 そんなとき、彼女はぼくに巡り会った。それで……。
 信じられない話だが、しゃべる黒オウムの執事、エルが説明したんだから、信じるしかない。


505 2/10 sage 2007/09/01(土) 22:54:35 ID:lNZ98Uko
 しばらく、ぼくは痛みが治まるまでじっとしていた。
 そうしていると、ふいに窓のほうから鳥の羽ばたく音が聞こえてきた。
「ん?」
 窓のほうを見たが、なにもいなかった。
「ナオ様。このような時間にすみません」
 ふいに後ろから声がした。
 驚いて振り返ると、見事なスタイルをした女性が立っていた。
 全身を真っ黒なスーツに包まれている。
 長い髪も黒く、額で切りそろえられている。切れ長の目の瞳も黒い。
 ただその顔だけは抜けるように白く、ドキドキするほどきれいだ。

「だ、誰?!」
 彼女は一礼して口を開いた。
「エルでございます。夜の間は一時的に人の形をとれるのです」
 エルってあの執事のオウム?
 声も大人っぽくて、雰囲気も落ち着いている。
 あのオウムの時とは全然違う。
 ぼくは彼女に問いかけた。
「そ、そうなの? ほんとに?」
「はい。本当です」
 なんていうか、まだ夢の続きみたいな気分になってくる。
「そうなんだ……ってか、女だったの? 執事っていうから、てっきり男だと思ってたんだけど……」
「わたしの知っているこちらの言葉では、適当な単語が見つからなかったもので。申し訳ありません」
 うやうやしく頭を下げた。
「いや、謝らなくってもいいけど……それで、なにかぼくに用でもあるの」
「はい。ミュウマ様があなたをお求めになっておられます」
 ぼくは真っ赤になって吹き出した。
「こ、こんな時間にどうしろっていうんだよ。今から出掛けるワケにもいかないしさ」
「ご心配には及びません」
 彼女は、その白く長い指先を伸ばし、空間に円を描いた。
 するとそこに別の部屋のようすが見えるようになった。
 何か中から甘い香りが漂ってくる。
「空間をミュウマ様のお部屋に繋ぎました。どのような状況なのか、まずはご覧下さい」
 エルに言われるまま、その中を覗き込む。

506 3/10 sage 2007/09/01(土) 22:55:13 ID:lNZ98Uko
 高い位置から下を見る感じだ。
 薄暗い部屋のベッドに誰かが寝ているのが見える。むこうを向いているので顔は見えない。
 だけど、エルがミュウマの部屋に繋いだっていうんだから、ミュウマなのだろう。
 かわいいピンクの寝間着を着ている。薄い毛布は、お腹のところだけを覆っていた。
 「ん……ふ……っ」
 肩が揺れている。
 また泣いているのかと思ったが、今度は何かもっと甘い感じだ。
「ん……」
 彼女は、ごろりと仰向けになった。
 両膝が立つ。それはやや開いていた。
 その太もものつけねには彼女の手があり、指が寝間着の上から大事な部分を押さえている。
 それは敏感な部分を緩やかに、さする。
 彼女のもう一方の手は、はだけた寝間着の間から胸へと入り、蠢いている。
 ぼくは思わず、つぶやいた。
「あ……お、オナニーしてるんだ……」

 口には例のペンダントをくわえている。
「ちゅぷっ……」
 彼女は胸にあった手を口元に持って行くと、それを口から取って舐め回す。
「らぁ……ナ、ナオぉ……ん」
 名前を呼ばれたぼくは顔が真っ赤になると同時に、股間に血が一気に集中するのを感じた。

 ミュウマはその秘密の部分を擦る指を早めた。
「……ん! んん! はぁっはぁっ」
 彼女は指を止めた。
 急に体を起こすと、もどかしそうにパンツごとパジャマのズボンを脱ぐ。
 だが全部は脱げず、すその片方は足首に掛かったままだ。
 白く艶めかしい下半身が闇に浮かぶ。
 また彼女は、ころんと寝転んだ。
 膝を広げ、その部分に指を滑らせる。
「んー……っ! はっはぁっはああっ」

507 4/10 sage 2007/09/01(土) 22:56:41 ID:lNZ98Uko
 彼女の息が早く浅くなる。
「はっ、はぅ、はっ、はぁ……っ」
 ペンダントトップをつまんだ指が、徐々にその部分に下がっていく。
 ぼくは思わず生唾を飲んだ。
 片手でその濡れるアソコを広げ、もうかたほうの手でペンダントトップをあてがった。
「ふぅ……っん」
 ゆっくりと、その丸い金属が彼女の中に挿入される。
「んんんっ!」
 彼女の腰が少し浮いた。少し震えているみたいだ。
「うう!」
 そのままそれは、指と共に激しく出し入れされた。
 ぐちゅぐちゅと、いやらしい水音が響く。
 ぼくはだんだん、たまらなくなってきた。
「はっ、はっ、はぁうんん! ナオ、ナオぉ!」
 ぼくのことを考えながら、あんなに感じてる。
 そのミュウマの姿に思わず、硬くなったぼく自身をパンツの上から握ってしまう。
「ナオ様。お手伝い致します」
 ふいに背中からエルの優しく低い声がした。
 彼女は、後ろからぼくをふんわりと抱く。
 大きめの胸が押しつけられて、さらにぼくのものは大きくなる。
「一度、出しておいたほうが二回目は長くもつのでしょう?」
 柔らかく白い指が、ぼくのパンツにするりと入る。
 硬くなっているモノを軽く握った。少しひんやりとした。
「こんな感じ、ですか?」
 その人差し指と親指が輪を作り、先のほうを滑らかにしごく。
「ううっ! いい……」
 もうそれだけで、爆発しそうだ。
「これではナオ様の着ているものが汚れてしまいますので、お脱ぎになって頂きます」
 エルがいったん手を離し、後ろからぼくの寝間着のズボンをパンツごとずり下げる。
 それはぼくのモノにちょっと引っかかってから、完全に下ろされた。
 暗闇に下半身を晒す。
 ぼくのモノはずっと上を向いていて、萎える気配はない。
 彼女は前に回ると、それを見つめた。
「ナオ様、ご立派です……」

508 5/10 sage 2007/09/01(土) 22:57:24 ID:lNZ98Uko
「え、そ、そうかな……」
 彼女は妖艶に微笑む。
「はい。素敵です……それでは、上も取らせて頂きます」
 流れるような指さばきで、あっという間にぼくは全裸になった。
「さあ、ミュウマ様をご覧になりながら、どうぞ達して下さい」
 エルがまた後ろに回り、ぼくのモノを擦り始めた。
 もう片方の手でぼくの乳首を優しく転がす。
「う……っ……」
 初めての感覚。
 ぼくは体を支えるように、その腕をつかんだ。
 背中にエルの胸を感じながら、ぼくはどんどん興奮してきた。
 ぼくはもう片方の手を後ろに回し、エルのお尻を触る。
「ん……な、ナオ様……」
 少し困惑したような声。しかし、拒否はしない。
 目にはミュウマの物凄くエッチな姿が映る。
「はっ、はぁ、はうう……」
 ミュウマがパジャマの前を全開にした。
 尖った乳首が、その薄い胸を覆う人差し指と中指の間から、飛び出している。
 指と手に力を入れ、強く揉む。
「くふぅ! んーっ」
 彼女のアソコには指が二本と、それに絡めたペンダントトップが出入りしてる。
「はっ、はっ、はっ、あー、あーっ……」
 ミュウマの腰が別の生き物のように、くねる。
「ナオ、好き、しゅきぃ! あー、くるるぁ! くるるぅ!」
 彼女の腰がぐねぐねと激しく上下する。
 あれは、ミュウマがイクちょっと前の時の言葉だ。
 それを聞いたとたん、急に何かが心の中で弾けるような気がした。

 これは、このパワーは……この湧き上がる力は……。


509 6/10 sage 2007/09/01(土) 22:57:57 ID:lNZ98Uko
 エルの手の動きが速くなる。
「ん、ナオ様の、モノがガチガチに硬く、なってますよ、はっ、ん、んふぅ」
 きれいな横顔がぼくのすぐ横で、ささやく。
 その頬は熱く、息も少し荒い。
「エル、あ、きもちいいよ! も、もうすぐ、で、出ちゃう、うっあう」
 彼女は微笑む。
「な、ナオ様、い、イッて下さいませ、わたしの、エルの手の中で、あ、はぁっはぁっ」
 彼女の甘い息が掛かる。
 エルの腕に、ぼくはしがみつく。
 もうかたほうの手を彼女のお尻から前に回し、彼女自身に触れた。
 スーツパンツの上からでもそこが熱を持って、とろけているのがわかった。
「あっ、な、ナオ様……い、いけませ、あ、ああはっ!」
 ぼくは、ぼくだけど、ぼくじゃない何かに突き動かされた。
「いいじゃないか! エルもイかせてあげるよ」
「は、はぅっ! あ、ありが、とうご、ざいますぅっ!」
 お互いの性器を激しく擦り、高め合う。
 ミュウマの嬌声も聞こえてくる。
「……ナオのぉ、お、おチンポ……あたしの、お、お●んこに、欲しいのぉ……!」
「うわ……ホント、ミュウマはスケベだなぁ……」
 エルの手がさらに速くなる。
「はぁっ、はぁっ! な、ナオ様……ああ、ああん」
 その脚の根元はもうどろどろだ。
 目はトロンとして、口元からはよだれが、だらしなく垂れていた。
 彼女はぼくの手を握り、自分から腰を振ってきた。
「……ん、んん! ん! ナオ、さ、ナオ様ぁ、イキます、イキそ、うです!」
 ぼくもエルの手に合わせるように腰を突き動かす。
「あ、い、いいよ! ぼくも、うっうう!」
「はっ、はああん! はあっはぁっ! ナオ様、ああっ」
「ナオ、ナオぉ! 好き、しゅきひぃ!」
「ミュウマ、ああ、ぼくも、好き、好きだっ!」

510 7/10 sage 2007/09/01(土) 22:59:29 ID:lNZ98Uko
 腰の律動が激しくなってくる。
 エルも声が出ている。
 彼女の腰がぼくの腕の上で、がくがくと震える。
「ああ、ああっ……はぁっはぁっ、ああ、くるるぁ、くるるぅ!」
 ミュウマも同じ言葉を発した。
「くるるぁ、くるるっううう!」
 その言葉は絶頂が近いしるしだ。
 ぼくももう、限界だ。
「あっ出るっ! 出る出る出るっ!」
「いひゅ、いひゅ、いひゅうん!」
「ナオ様いひゅぅっ!

 三人同時に、弾けた。
「うあぁぁ――ッ!」
「いぎゅぅぅぅ――ッ!」
「いぎゅぅふぅ――ッ!」
 最後の声はステレオで聞こえた。
 ぼくの精液は弧を描いて、見事にミュウマに降りかかる。
 イキ顔のミュウマにべっとりと付着するぼくの体液。
「……?」
 彼女は荒い息の中、それをぼんやりと指に掬い取り、ねぶる。
「……ナ、オ?」
 彼女が首を動かし、目線を天井、つまりぼくのほうに向けた。
 ぼくと目が合った。
 彼女が慌てて胸と股間を毛布で隠した。
「……見て、た?」
 彼女は顔を真っ赤にして聞いた。
「あ、あはは、ご、ごめん……」
 ぼくは頭を掻いて謝るしかなかった。

511 8/10 sage 2007/09/01(土) 23:00:35 ID:lNZ98Uko
 しばらくしてから、ぼくはとりあえずパンツだけは履いて、ミュウマの部屋に降りた。
 エルが、ミュウマの部屋のもう少し低いところを繋ぎ直してくれたんだ。
 ぼくが現れたのを見て、ミュウマがぎこちなく照れるように笑う。
「……こ、んばんは」
 まだ服は着ていない。毛布で体をくるんでいるだけだ。
「こんばんは……その、さっきはごめん……」
 彼女はふるふると首を横に振った。
「……別に、いい……ナオなら……」
 可愛い。
 ぼくは彼女のそばに行った。

 ミュウマの横に座る。
 彼女がぼくの肩に頭を預けてきた。
「……くふ……」
 柔らかくて、ふにふいにしている。

 エルが目の前に来て膝を突き、かしづいた。
「本当にあなたはナオ王子がこちらの世界で転生した姿なのですね」
 ミュウマの頭を撫でながら返答する。
「どういうこと?」
 エルは頭を垂れたまま、応じた。
「その胸の輝きは、王家の証です。王家のかたは皆、その力を胸の輝く鳥、ヴァーディアに宿しているのです」
 見ると、ぼくの胸の中央に羽を広げた鳥のような形が青白く浮かび上がっている。
「これは……そうか、これのせいで……」
 今まで、ぼくがぼくじゃないような感じがしていたのはこれだったのか。
 そう思って見ていると、すーっとそれが消えていった。
 とたんに体が重くなる。
「う、わ……なんだこれ……ヤバい……死ぬ……」
 体が動かなくなって、そのまま後ろに倒れ込んだ。

512 9/10 sage 2007/09/01(土) 23:01:19 ID:lNZ98Uko
 ミュウマが焦って呼びかける。
「ナオ? ナオ!」
 ぼくの体を必死に揺する。でも、もう意識も……
「エル!」
 涙の混じったミュウマの叫びだけが耳に残った。

 目が覚めると、ぼくは自分のベッドにいた。
 覗き込む黒いオウムがいる。エルだ。
 首をくくっと曲げると、甲高い声で喋り出した。
「ナオ様、お目覚めですか。回復魔法を掛けた甲斐がありましたな」
 どうやら、エルのおかげで命は助かったらしい。

 しかし、このオウムがあの美女とはとても思えないなぁ。
 声もしゃべり方も違うし……キャラが違い過ぎる。
 ぼくはあの胸とミュウマの体を両方、思い出した。
 すると……股間が反応した。
 エルがくるっと頭を回して、それを見た。
「ふむ。さすがですな。もう大丈夫ということでしょう。ではわたしは失礼します」
 羽を広げると、二、三回羽ばたいて宙に浮く。
 すると、もうその姿はどこにもなかった。
 ちょっと溜息。
 まぁ、ここんとこ色々あり過ぎて、もう驚かないけどね……。


513 10/10 sage 2007/09/01(土) 23:02:02 ID:lNZ98Uko
「ナオユキ、佐藤さんがお見舞いにいらしたわよー」
 突然、母さんがドアをノックした。
「ええっ?!」
 ミュウマがお見舞いー!?
 って、ぼくはどのくらい寝てたんだ?
 混乱したがとりあえず、母さんには返事をした。
「あ、ああ。どうぞー」
 ドアが開けられ、ミュウマが顔を出した。
「こんにちは……」
 ぺこりと頭を下げる。
 母さんが彼女の後ろで、にやにやしまくりながら去っていった。

 ミュウマはぼくのそばに、とてとてといった感じでやってくる。
「大丈夫……?」
「ん。エルのおかげでなんとか大丈夫みたい」
 彼女はちょっと拗ねるように頷いた。
「……そう、ね」
 これはもしかしてエルにジェラシーを燃やしてるのか?
 ぼくは重たい体を無理矢理に起こして、彼女の薄い胸に頬ずりした。
「来てくれてありがとう」
 すりすり。
「ん……あ、あぅ」
 ミュウマがぼくの頭をぎゅっと抱いた。
「……だめ……」
 ぼくは彼女の顔を見上げた。
「ん?」
 ミュウマは真っ赤になっていた。
「気持ちよくなっちゃう、から……」
 うわ……ドキドキする……。
 なんて可愛いんだろう。
 ここで押し倒したい。でも、ぼくの体がヤバいのも解っていた。
 これ以上、体力を消耗してしまっては本当に死んでしまう。
「ん、解った。また、今度ね」
 そう返事をすると彼女は嬉しそうに、でもちょっと残念そうに、こっくりと頷いたのだった。

514 coobard ◆69/69YEfXI sage 2007/09/01(土) 23:02:49 ID:lNZ98Uko
以上です。ここまでお読み頂いて有り難うございました。
失礼します。

515 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/01(土) 23:51:01 ID:iupEvKJt
乙!

516 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/02(日) 00:02:58 ID:XlUTr+LD
うお、続きですか。ミュウマ相変わらずエロカワですな。エルの変化にかなり驚きました。GJ!

517 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/02(日) 03:03:02 ID:nLPGrCC4
寝る前に来てよかった……

Gj!です
実は密かに楽しみに続き待ってた私


518 名無しさん@ピンキー age 2007/09/05(水) 02:53:44 ID:fAYkHM+1
久々にきたら良作が。
GJ!

519 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/06(木) 12:05:07 ID:amIN82y2
三時間以内にレスつかなければ
全作品の無口っ娘は俺の嫁

520 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/06(木) 12:07:44 ID:a0ZU2Gn0
…………だが……断る

521 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/06(木) 12:13:48 ID:amIN82y2
>>520




早すぎだw




人居るんだな、意外だ


522 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/06(木) 12:16:01 ID:D1X2tueM
ノシ
居るよ

523 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/06(木) 12:18:18 ID:a0ZU2Gn0
携帯さえあれば時間なんて関係無いんだぜ?

524 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/07(金) 18:46:49 ID:KvBcT8ph
無口娘情報!
まんがライフMOMO 10月号
新連載 [森田さんは無口]佐野 妙

キタコレ!



525 名無しさん@ピンキー age 2007/09/08(土) 07:13:15 ID:o9ZlKoi7
>>524購読確定

526 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/09(日) 00:21:39 ID:fe5DtJ6a
GJ

エルハァハァ...

527 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 02:05:24 ID:KQbYrIGO
GJ

528 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 16:29:58 ID:9vtA1Ik7
無口だけど活発な娘はこのスレの対象外?

529 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 17:05:39 ID:1E2OUiqb
十分、対象内

530 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 19:38:38 ID:SWgWCfPA
無口ならおk

531 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 21:18:32 ID:GfknvrLX
あんなに過疎ってたのに結構な反応の速さ。おまいら普段どこにいるんだw
活発無口っ娘ガンガンおk。むしろ大歓迎

532 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 21:50:05 ID:Tt2cxukj
>>531
ここの住人も無口なんだろ

533 じうご sage 2007/09/11(火) 22:09:30 ID:H7KNeoXk
さてと、みなさんこんばんは
じうごです

なんというか……現在書いているものの筆がなかなか進まないので
気分転換に1レス分のものを投下します
エロはありません、ご注意を




534 じうご sage 2007/09/11(火) 22:10:36 ID:H7KNeoXk
ふと外を見る。
豪雨、といってもいいような勢いで雨が降っている。
そのせいか、夏――暦の上では秋だが――なのに気温は肌寒いくらいだ。
「ん……」
まぁ、そんな寒さも彼女が俺の背中に抱きついてきているおかげで、たいして感じないが。
「はぁ……いつもいつも、暇さえあれば、俺に抱きつくのはやめろよ」
「……いや?」
「別にいやではないけどな」
というか、すこし話ずれるが自分の好きな人に抱きつかれるのが嫌いな人とかいるのか?
「……なら、いいでしょ」
そういい、先ほどより強く抱きついてくる。
俺の肩に顔を乗せているのが、なんともほほえましく思える
「まぁ、そうだな……」
ザーッと、雨の降る音が聞こえる。
……窓を閉めないと吹き込むな、
そんなことを思うが、動く気はない。
吹き込んだとしても、どうせあとで拭けばいい、今は、なんとなくこのままでいよう。
「なぁ」
俺は彼女に呼びかけるが、
「…………」
返事がない、どうしたかと思い、顔を横に向ければ、
「…………」
俺の肩に顔を乗せたまま、なんだかどこか幸せそうな顔をして寝ていた。
「ったく……」
自然に頬が緩むのを感じるが、別にだれかが見ている訳でもないから、そのままにしておく。
「仕方のないやつだな……」
言うのは口だけ、俺は彼女を背中に抱きつかせたまま器用に立ち上がり、彼女をベッドの上に優しく置き、布団を被せる。
ザーッと、雨の振る音が聞こえる。
「俺も寝るか……」
床に座り、ベッドに背中を預けて、彼女の寝息を聞きながら、俺は目を閉じた。
ザーッと、雨の振る音と、彼女の寝息が聞こえる。





終わり


535 じうご sage 2007/09/11(火) 22:14:22 ID:H7KNeoXk
あ、あと、
>>528

ぜひ書いてくださいお願いします

536 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/11(火) 22:18:41 ID:W7+93nlz


537 名無しさん@ピンキー 2007/09/12(水) 00:39:02 ID:/TdZOiEa
>>534


駄作乙www

もう二度と来るなよ低脳野郎www

誰もお前のSSなんて待ってないしなwww

538 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 00:41:07 ID:9EMFGxTk


>>537
ツンデレは帰れw

539 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 15:35:18 ID:hnPD0jL1
 彼女は何も言わない。
 ただ、その頬は窓から差し込む夕日より赤くしている。
 彼女の目の前には、SSを書き終えて、疲れたためベッドで眠っている>>534がいる。
 彼女は、深呼吸して、その上に静かに乗る。
 目が覚める>>534
「ん……な、なにやってんだ。降りろよ>>537子……」
 彼女は持ってきていたスケッチブックに文字を書き込む。
『駄作乙www 』
 >>534は、一瞬きょとんとした。だが、悪魔のように嗤った。
「そうか」
 >>534は彼女の腕をぐいっと引っ張る。
 彼女の息がふっと漏れて、>>534の胸に倒れ込む。
 すっかり熱くなっている彼女の身体が、眠っていた>>534の少し冷えた身体と熱交換をする。
 彼女はちょっと横に転がると、まだ片手に持っていたスケッチブックにまたなにか書き込んだ。
『もう二度と来るなよ低脳野郎www』
 くくっ、と声を上げる>>534
「もう言うことはないのか?」
 彼女はほんの少し挑むような目つきで、さらに書き込む。
『誰もお前のSSなんて待ってないしなwww』
 それを見たとたん、>>534は激しく彼女の唇を奪った。
 お互いの吐息といやらしい水音が部屋にこだました。
 >>534はむさぼるように彼女の胸を揉みしだく。
「……んっ……」
 ばさりと、彼女の持っていたスケッチブックが床に落ちた……。

540 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 16:15:38 ID:F8WTmZhr
わっふるわっふるwwww

541 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 17:34:27 ID:DwSycxOg
らんま思い出したwww

542 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 17:41:09 ID:9EMFGxTk
これはw

543 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 17:42:34 ID:z4/6+0PC
わっふるわっふる

544 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/12(水) 19:27:12 ID:/mTJ1AXp
わっふるわっふる

545 『彼女』の呼び声 sage 2007/09/12(水) 23:38:10 ID:nFPgP+Xf
 学費の足しにしようと始めたコンビニのバイトは、予想以上に退屈かつ苦痛なものだった。
 ただひたすらバーコードを読み込み、金額を合計し、レジに打ち込んで行く。
 売り上げを記録し、店長の指示の元機械的に商品を補充。
 自己研鑽も達成感もない、ルーティンワークの繰り返し。

 本当なら、もっとやりがいがある、例えば製造系のバイトがしたかった。
 が、それらの仕事は総じて拘束時間が長い。
 学業に支障がでない範囲でできるバイトと言えば、このコンビニのバイトくらいしか――学生の多い街ゆえ、新聞配達の奨学生はあっと言う間に埋まってしまった――なかった。

 そんな燻る火種のような日々を送っていた少年、古橋仁がその少女と出逢ったのは、夏の終わり。
 まだ蒸し暑い、夏の夜のことだった。


 彼女が店内に入ってきた時、仁はすぐにその存在に気づいた。
 決して汚れているわけではないが、撚れてくたびれたワンピース。
 不潔なわけではないが、年頃の少女にしてはあまりに手入れのされていない長い髪。
 何より、彼女くらいの年齢の少女が、お洒落なバッグの一つも持っていないというのがいかにもな感じだ。
 ――そう、彼女は、一目でそうと分かるほどに家出少女にありがちな特徴を持っていた。

 彼女は店の入り口にあるカゴを左手に持つと、レジの真っ正面を横切り、そのまま迷い無く食料品の並べてある一角へと歩いて行く。
 間近で彼女の姿を見て、仁は気づいた。
 彼女のワンピースの右腕に中身は無く、無造作に縛ってある袖口だけがぶらぶらと揺れている。
 如何なる理由があるかは分からないが、彼女は隻腕なのだ。

 そして、食料品コーナーにたどり着いた彼女はカゴを床に置き、片方だけの左手を棚へと伸ばし、

「――って、おいおいおい!?」

 無造作に掴んだ菓子パンを次々とカゴの中にほうり込んで行く。
 あっと言う間に一杯になったカゴを、彼女はそのまま片手で掴むと、レジを素通りして入り口へと。

 レジを飛び出し追いかけようとした仁だが、しかしそれは叶わない。

「ちょっとアンタ、これ」

 弁当とレトルト食品と、そして少しのスナック菓子の詰め込まれたカゴを、子供連れの若い女性が突き出す。
 それどころじゃない。と言おうとした仁だが、その時違和感に気づく。

 今し方の彼女のような、普通とは異なる人間が視界に入ってきた時、人間は思わずそちらに視線をやってしまうものだ。
 家出少女、隻腕、そしてあの突飛な行動。
 注目される要素がいくつもありながら、しかし彼女の存在に気づいたのは彼ただ一人。
 ゆとり教育の弊害だとか都会の人間は周囲に無関心だとか、そんなチャチなものではない。
 仁は、もっと恐ろしい何かの片鱗を味わった気がした。

 ――その日の売り上げと在庫にはやはり大きな差があり、仁や他のアルバイトは在庫確認のために残業を強いられることになる。


 次の日も、そのまた次の日も。
 少女は同じような時間にやってきて、同じようにカゴ満載の菓子パンを手に夜の街へと消えて行った。
 仁の予想通り、どうやら少女の姿は他の人間には見えていないらしい。
 一度など、店長の目の前を堂々と横切って行ったにもかかわらず、だ。

 それだけではない。監視カメラにも彼女の姿は映っていなかった。
 まるで幻。しかし、現実に店の品物は消えて行く。

 そんなことが一週間ほど続いた時、仁は一つの計画を実行に移した。

546 『彼女』の呼び声 sage 2007/09/12(水) 23:39:43 ID:nFPgP+Xf
「やっぱり、今日も来たな」

 その日、仁はいつもと同じようにコンビニに居た。
 が、いつもと違うのは店員としてではなく、客として来ている、と言うことだ。
 今日はバイトは休み。普段はバイト以外でコンビニに来ることなどめったにないが、今回は特別である。

 少女はいつものように片手でカゴを掴み、無造作に菓子パンをカゴにほうり込んで行く。
 真後ろにあるおにぎりを選ぶ振りをして仁が近づいても、一考に気にする気配はない。
 やがてカゴが一杯になると、いつものように堂々とレジ前を横切り入り口へと歩いて行く。
 仁は数歩遅れるように、その後を追いかける。

 幸い、コンビニを出た途端幻か何かのように少女の姿が消えてしまうようなことはなかった。
 迷いなくてくてくと歩いて行く彼女を、仁はつもりだけでも足音を忍ばせて追いかける。
 やはりというべきか、彼女が向かって居るのは近所の市民公園だ。

 街灯の頼りない明かりの中、少女にわずかに遅れるようにして仁が追いかける。
 そして公園の中央付近、噴水の回りにあるベンチまでやってくると、彼女はようやく足を止め、手にしたカゴをベンチの上に載せ、その横にちょこんと腰掛ける。

 カゴへ向かって手を伸ばし掴んだのは、袋に子供たちに大人気な黄色い電気ネズミの描かれたパン。
 左手と歯で器用に袋を破り、彼女はかわいらしい口を大きく開け、思い切りよくパンにかぶりついた。

 今だ。仁は茂みから、大股に歩み出る。

「あのさ、あんた……」
「…………(もぐもぐ)」

 聞いちゃいなかった。それどころか、仁の方に視線をやろうともしない。
 あっと言う間に一つ目のパンを食べきり、次に手に取ったのは大きなメロンパン。

「…………(はぐはぐ)」

 幸せそうに目を細める彼女の姿は、薄暗い街灯でもはっきりと分かるほどに愛らしかった。

「――って、聞けよおいっ!」

 思わず見とれてしまった仁だが、我に返って再び声を上げる。
 が、それでも彼女は彼を見ようともしない。
 仕方なしに仁は彼女の目の前まで歩いて行くと、その両肩をがっしりと掴む。
 見た目どおりに細いその肩は、確かな実体を持ってそこにあった。

「…………!?」

 驚いたように、初めて彼女が反応を示す。
 見上げる視線がちょうど彼女を見下ろす仁のそれと重なり合った。
 夜空よりもなお暗く深いその瞳に、引き込まれそうになる感覚をしかしなんとか堪えながら、

「なあ、あんた。家出中なんだろ? 親とか、心配してるんじゃないか?」

 少女は応えない。沈黙に居心地の悪さを感じ、仁は言葉を続けた。

「まあ、百歩譲って家出なのは別にいいとしよう。けどな、万引きは不味いぜ。
最近のコンビニは容赦ないから、見つかったら即行警察行きだ。
あんただって、警察のお世話になんかなりたくないだろ?」

 肩を掴み言い含めるように言うが、少女は意味が理解できないのか、不思議そうにことんと首を傾げる。
 見た目は黒髪黒目の日本人のようだが、ひょっとすると外国人なのだろうか。

「あー。俺の言葉、わかる? きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず?」

547 『彼女』の呼び声 sage 2007/09/12(水) 23:40:30 ID:nFPgP+Xf
 ちなみに、仁は発音こそ壊滅的に悪いが、リーディングやライティングは得意な方だ。念のため。
 が、それでも少女は返事をしない。と言うか、仁への興味が失せたのか、それとも食欲の方が勝ったのか、手にしたメロンパンの咀嚼を再開する。

「まいったな……」

 色々な意味で困った。
 しかし、いつまでも彼女の肩を掴んでるわけにも行かない。
 というか、彼女のワンピースは胸元が少し開いているため、この体勢では柔らかそうな胸の谷間が覗けてしまう。

「ああ、もうっ!」

 仕方ないので、仁もベンチに腰掛ける。
 彼女の左にはパンの入ったカゴが置いてあるので右側に。
 その位置から彼女の横顔を見ようとすれば、自然と中身の無い右袖が視界に入る。
 一体、彼女は何者なのだろうか。
 気にはなるが、多分聞いても答えてくれないだろう。
 それどころか、まともに意志の疎通が図れるかも不安になってきた。

 と、その時だ。

「…………」

 もう何個目か分からないパンの袋を手に、彼女は困ったように眉根を寄せる。
 どうやら、袋がうまく開かないらしい。
 その姿を見ると仁はひょいと手を伸ばし、彼女の手から袋を取り上げる。
 何をする、とでも言うように不満げな彼女に向かって苦笑し、

「別に取らないって。……開けてやるよ」

 力の入れ方を工夫すれば、開けにくい袋も簡単に開く。元々手先は器用な方だ。

「ほら、開いたぜ」

 開いた袋を手の中に押し込んでやる。
 彼女はきょとんとした表情を浮かべ、手の中の菓子パンと仁の顔を交互に見つめた。
 が、すぐにまたパンを口に運び――咥えたまま、左手に力を入れる。
 口に残った大きな固まりと、手の中の小さな固まり。
 二つに分かれたパンを彼女は困ったように見つめ、だが決心したのか、口元の大きな固まりを器用に薬指と小指で掴むと、仁に向かって差し出した。

「…………」
「え、くれるのか?」

 こくりと頷く。
 が、渡されても困ってしまう。元々彼のバイト先から盗まれたものだし――何よりこれでは間接キスだ。

「――――」

 迷っていると、不意に少女が口を開いた。

 が、最初仁は、それが彼女の発した声だとは気づかなかった。
 それは言葉と言うにはあまりに異質で、また声と言うにもあまりに異質だった。
 それはむしろ、鳴き声や音に近い、名状しがたき何か。
 しかし、それが仁に向けて明確な意志と共に発された、彼女にとって何等かの意味を持つものならば、それはやはり、声あるいは言葉と表するべきだろう。

「わかったよ。ありがとな」

 だから仁は柔らかな笑みを浮かべ、彼女の差し出した菓子パン――蜂蜜がけのベルギーワッフルを受け取る。
 ただでさえ甘いワッフルが、この時はさらに甘く感じられた。

548 『彼女』の呼び声 あとがき sage 2007/09/12(水) 23:44:22 ID:nFPgP+Xf
そんな訳で>>528でした。

要するに、わっふるわっふる、と。
エロく無くてごめん。

549 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 00:12:25 ID:0pazShQx
なんだか新しいな……新鮮な感じ


まぁようするに、非常にGj!

550 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 00:42:01 ID:rClAvBgg
>>548
ユーこのまま続けちゃいなYO!

551 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 00:43:11 ID:c3aSW4LU
なんだ これ!

よくわかんねーけど、よかった。
よくわかんねーけど、あんたの書いた世界が勝手に頭の中で画になって

ありがと。



552 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 02:57:11 ID:hASoXKdy
>>548たった今、全世界主要国脳内妄想電波サミット会議にて連載が確定しました。

続きこなかったら無口でベッドの中で泣き続けるからな。

GJ!

553 『彼女』の呼び声 第二話 sage 2007/09/13(木) 21:22:37 ID:6EVXz4JX
 夜八時。今日も仁のバイト先のコンビニに、片腕の家出娘が現れる。
 相変わらず周囲に認識されてない彼女に、仁は視線だけで待っているようにと合図を送る。
 そして彼は店長に向かって振り返り、

「じゃ、俺はこれで上がるんで。期限切れの商品、適当に持ってきますね」
「ちゃんと廃棄伝票切っとけよ。しかし、前まで期限切れの商品に手を付けなかったお前が、一体どんな風の吹き回しだ?
まあ、外の奴と違ってちゃんと断って持ってくし、常識の範囲内で持ってくから文句は言わんが」

 ゴミとして廃棄するにもコストがかかるからな、と笑う店長に挨拶をして、仁は店の裏へと回る。
 期限切れの商品の中からいくつかを適当に見繕って、伝票に記入。手にしたトートバッグに詰め込むと、着替えるためにロッカーへ。
 手早く着替えて表に回れば、そこには待ちくたびれた彼女の姿。

「よ、お待たせ」
「――――♪」

 そろそろ聞き慣れてきた、名状しがたい音――彼女の声。
 喜んでいることまでは分かるのだが、それが果たして仁に向けてなのか、あるいは彼の持って来た食料に対するものなのかは定かではない。

「じゃあ、行こうか」

 トートバッグを少女に渡し、二人は並んで歩き始める。
 様々な食べ物の入ったバッグはかなり重く、片腕の彼女にはやや重いはずだが、彼女自身が持ちたがるので、仁は彼女が望むようにしてやっている。

「――――」

 公園までの道を歩きながら、彼女が続け様に声を発する。
 ひょっとして、歌っているのだろうか。残念ながら仁にはそこまでは分からないが、少女が上機嫌なことは分かる。

 満月の月明かりの下を踊るように歩く隻腕の少女。
 ステップを踏み、時にクルリと回る度、腰まである長い髪がふわりと揺れる。
 と、手にしたバッグの遠心力に負けたのか、その体が不意にバランスを崩した。

「っと、気を付けろよ」

 慌てて手を伸ばし、その体を抱きとめる。
 どちらかと言えばインドア派な仁でも受け止められるほどに、少女の体は軽かった。
 だが、軽いだけではない。腕の中に感じるのは、わずかな重みと柔らかさ。
 彼女が幻ではなく、現実に存在しているのだという、確かな重みだ。

「――――? ――――♪」

 抱きとめられた彼女は一瞬不思議そうな表情を浮かべ、しかし仁の顔を見上げると、嬉しそうに笑った。
 その笑顔に釣られるように、仁も笑みを浮かべる。
 そんな何気ない一つ一つの出来事が、不思議ととても楽しかった。

 仁とて、女性と付き合った経験くらいある。が、最長でもせいぜい二カ月が良いところだ。
 整った表情に、いかにも切れ者と言ったメタルフレームの眼鏡。当然成績は良く、スポーツも特別苦手という訳でもない。
 そして何より、その雰囲気だ。どこか近寄り難い、理知的な雰囲気。
 そんな見た目に騙された女性たちに告白され、人並みに異性への憧れはある仁は、大抵の場合OKする。
 が、しばらくたつと彼女達は決まって言うのだ。
 あなたは真面目すぎて、面白みがないと。
 そして彼女達は彼と早々に別れ、もっと話の巧い、いかにもなクラスメイトに鞍替えして行く。

554 『彼女』の呼び声 第二話 sage 2007/09/13(木) 21:23:22 ID:6EVXz4JX
 真面目で何が悪い。ああそうさ。俺は話し下手だ。
 テレビもニュースや歴史番組くらいしか見ないし、新聞はまず政治欄と経済欄から目を通す。
 音楽は滝廉太郎や中山晋平くらいしか聞かないし、好きな作家はチャールズ=ドジソンだ。

 他人を楽しませるような話題など欠片も持っていない。
 なのに、彼女といると――

「自然……なんだよな。別に何も特別なことなんてない」

 バイトが終わって、二人で公園に行って。
 おにぎりや菓子パン中心のジャンクな夕飯を食べて。
 その後は何をするでもなく、二人でベンチで体を寄せ合って。
 そんな、変わり映えのしない毎日がひどく楽しい。

 女の子向けの話題なんてほとんど知らないから、仁はほとんど喋らない。
 たまに学校やバイトであったことを淡々と話すくらいだ。

 そして彼女は、声を出すことはできても喋ることはできない。

「なのに、楽しいんだ。二人でいるのが、凄く――心地良いんだ」

 不意に、彼の腕の中から少女がするりと身を引き抜いた。
 くるくると踊るように駆け出しながら、しかし時折振り向いては声を上げる。
 呼んでいるのだ。彼を。

「ああ。今行くよ」

 未だに、仁は彼女のことを何も知らない。
 家族はいるのか。その片腕はどうしたのか。彼と逢っている以外の時は何をしているのか。
 だが、そんなことはどうでも良かった。

 言葉や理屈なんかじゃあない。心ではっきりと理解できた。

 古橋仁は、今。
 ――この、名前も知らない少女に、恋をしている。

555 『彼女』の呼び声 第二話 後書き sage 2007/09/13(木) 21:26:20 ID:6EVXz4JX
書いてる本人が言うのもなんですが、名状しがたい声ってどんな声なんでしょうね?
様々な伏線を凄い置き去りにしながら激しくバカップル。
無口キャラって、なんとなくいちゃいちゃさせやすい気がします。

またネタが浮んだら投下します。
あと、今回もエロ無くてごめん。

556 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 21:37:53 ID:0pazShQx
形状しがたい声なんて……なんだろ

エロ無しなんて別に気にならない〜♪
文章も読みやすくていいです


やっぱりなにが言いたいかと言うと

………………GJ

557 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/13(木) 22:25:43 ID:/H5yJBAp
GJGJ!

>形状しがたい声なんて……なんだろ
あれじゃね?超音波。

このバッドエンドになりそうな空気にハラハラしてるww

558 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 01:45:47 ID:nAsnoHDL
最初の話読んだ時、
正直、続編はなくてもいいと思った。
このまま何だかよく分からない感じを自分なりに消化する感じで・・・。

でも、今回の話を読んで少女の事、仁との係わり合いを
もっと教えて欲しくなりました。

ありがと。

559 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 04:51:47 ID:YchKwLTX
>>555

アリス、かわいいよアリス(違)

GJ !!

560 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 09:04:26 ID:bNIyIgg2
名状しがたい声って聞くとクトゥルフ的な何かかドラえもんのダミ声しか思い浮かばない

561 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 09:33:56 ID:oi2DrqNh
普通に、動物とか鳥の声 >>名状しがたい声

イヌは『びょうびょう』もしくは『バウワウ』
鶏は『キッキラキ』

一応、聞き成しなんかされていても、違う
と思うモノは、違ってるようにしか聞こえません

562 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 10:57:22 ID:btgHYKaa
ノイズとか
……完全に人間の声じゃないな

563 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 13:08:15 ID:NBmkRVch
>>561

何故古典www

564 『彼女』の呼び声 第三話 sage 2007/09/14(金) 22:52:44 ID:BT196Iyq
「色々あるが……どれがいい?」

 いつものベンチに腰掛け、仁はトートバッグを開き、少女に尋ねる。
 少女はわずかに考えるような素振りの後、エビマヨネーズのおにぎりを指さした。

「ん、わかった」

 手早く包装を解き、ビニールを引き抜く。

「――――♪」

 少女はそれを仁から受け取ると、嬉しそうにかぶりついた。
 単に菓子パンの包装ならなんとか破れるから菓子パンを選んでいただけで、おにぎりや弁当も好きらしい。

「そうだよな。片手じゃさすがにこの包装は破れないよな」

 ――普通に両手が使えても、巧く破けない奴もいるし。
 などと考えつつ、仁も適当にひとつを手に取り、包みを破る。

「ん、美味いな」

 やや塩味のきつい鮭は、しかし米に良く合う。
 コンビニのおにぎりなどと莫迦にしていたが、こうして味わってみるとなかなか侮れない。
 食べかけのおにぎりを手にそんなことを考えていると、

「――――☆」

 横合いから彼女が食べかけのおにぎりを齧り取る。
 もきゅもきゅと咀嚼し、

「――――♪」

 満足そうな声を上げた。

「あ、このっ。やったな!」

 お返しとばかりに仁も彼女の食べかけのおにぎりを狙うが、彼の口が届くより早く、おにぎりは少女の口の中へと消えた。
 が、仁は止まらない。

「――――!?」

 口元へと運ばれるおにぎりの軌跡を追うように仁の体が動き、そのまま彼女の唇へと。
 かつんと前歯と前歯がぶつかり合う数度目のキスは、ほのかな塩味とエビマヨネーズの香り。

「…………」

 一瞬驚きに目を丸くした彼女は、しかしすぐに目を閉じ、口付けに応える。
 それはまだ初々しい、唇と唇と重ねるだけの軽いキスだ。
 ほんの一呼吸か二呼吸の間だけ。
 だが、唇が離れると、彼女は満ち足りた笑顔で声を上げる。

「――――」

 相変わらずの名状し難い声だが、その奥に秘められた想いを、仁は感じた。
 だから、彼女の体をそっと抱き寄せ、耳元で囁く。

「ああ。俺も好きだよ」
「…………」

 月が二人を祝福するかのように、柔らかな光を投げかけていた。

565 『彼女』の呼び声 第三話 後書き sage 2007/09/14(金) 22:55:52 ID:BT196Iyq
(´・ω・`) やあ。ようこそ無口(ry

うん、正直短くてすまんかった。
なんか、いちゃついてるだけであっという間に行数が埋まったので、切りの良いところで一旦投下。
次こそ話が進むはずです。

>>559
実はヒロインの名前考えてなかったので、それ採用しても良い?

566 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 23:25:54 ID:aO88LIvK
早く投下しないと全国から無口っ娘が押し寄せるぞ!



それはそうとGj〜!


ただ、やっぱりそれなりに書き溜めてから投下してもらえるほうが
悶えずに済むのでお願いします

567 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/14(金) 23:39:13 ID:LcYNesiU
>>565
バーボン吹いたwwいや、実際吹いたのは焼酎だけど

おにぎり奪うときに「手ェ使えよw」と思ったのは内緒。
でも口から行く仕草に萌えるのでアリなのです。アリスたんに萌えなのです。

568 名無しさん@ピンキー age 2007/09/15(土) 08:20:43 ID:dQdcu2HV
アリス万歳!!超GJ!!

なんて萌えのツボを突いてくるキャラなんだ・・・

ちょっくら会社辞めてコンビニでバイトして無口幽霊っ娘と運命の出会いをしてきます。

569 559 sage 2007/09/15(土) 17:09:38 ID:WAcwPULU
>>565
ドジソン ちゅ~たら、アリスでっしゃろ?

強度ロリコンになるけど、いいんですか?

570 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/17(月) 10:13:40 ID:R8SRpSTn
アリスと聞いてRAMZと歪みの国思い出した俺orz

571 名無しさん@ピンキー 2007/09/17(月) 10:17:55 ID:bfJe2L2T
ager

572 230 sage 2007/09/17(月) 20:47:03 ID:hHNoayui
皆様、お久しぶりです。
以前、SSを投下させていただいた230という者です。
>>565氏が再臨されるまでの間、また投下させていただきたいのですが宜しいでしょうか?

というか、今回の作品自体が長い上にエロがR−15くらいしかないので、正直、投下するか
それとも斧とかにUPしたほうがいいのか、それとも作品の混合ないし皆様の混乱を避けるために
565氏が作品を完成させるまで行動を起こさないほうがいいのか迷っています。

皆様のご意見がいただければ幸いです。

573 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/17(月) 21:14:50 ID:C2Ew1DR1
スレに落としておk

574 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/17(月) 21:17:21 ID:APlVrMrq
全く問題ない
つーか投下してくださいお願いします

575 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/17(月) 21:18:03 ID:XNvovkdX
読み手を舐めんじゃないよ!

そのくらいの事、てめーの頭で整理するさ!
しょーもない事気にしないで、あんたはいいの書く事考えてりゃー良いんだよ!

さぁ、勢いついたかい?
どーんとやりな!

576 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/17(月) 22:11:28 ID:OftEdge2
>>575の内容を視線だけで訴える無口男らしい女の子を想像したら萌えた

577 565(´・ω・`) sage 2007/09/17(月) 22:35:18 ID:yvEzPS/z
>>230
私は全然気にしないので、じゃんじゃん投下しちゃって下さい。
私なんて、R−15どころかエロシーンすらありませんしね。
いや、そのうちエロくなる予定ではあるのですがー(=ω=.;)
ちなみに、この話自体、>>230氏の影響受けまくりなのですよ(´・ω・`)
激しくワクテカさせていただきます。

あと、お待たせしてしまっているスレの皆様に、本編では未だ名無し少女なアリスからメッセージがあるそうです。

アリス「――――♪」

578 名無しさん@ピンキー 2007/09/18(火) 00:44:09 ID:RdOxLV2l
ごめんなさい、>>230さん、>>575です。
自分このスレ、新参者です。
230さんの作品、どうゆう訳か>>252から読んでました。
今回の>>572のレスを見て230を読ませてもらいました。

バケツの中の花火に感謝するところ、好きです。

場違いなレス書き込んで、ごめんなさい。

579 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/18(火) 03:06:42 ID:uqj75Cmd
俺っ娘無口娘(強引)


これと「・・・やろ・・・?」組み合わせたら大変なことに・・・

580 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/18(火) 07:51:57 ID:2qeGZMfF
>>579


そんなこと言うとじうご氏が書いてくるんじゃないか?w

あの時も書いてネタ投下してたしw

581 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 00:32:26 ID:MAwNXpJj
いきなり友から

「無口は欠点じゃない、ステータスだ希少価値だ!!」
とかいう電波メールが来た


俺になんて返して欲しかったんだろうな……

582 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 00:47:59 ID:+0tvbBo8
「……」って、無口メール返すべきだったんじゃね

583 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 00:57:29 ID:okxG5bd0
……バカ
でもいいんじゃね?

584 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 01:03:15 ID:+0tvbBo8
それじゃ>>581が友人から惚れられてしまうぜ
お幸せに( ・∀・)ノ

585 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 04:10:45 ID:5k0jsSIV
ってか下手すりゃここの住人なんじゃねw?

586 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 09:05:00 ID:cpZpptI8
恐らく友人は無口で普段から無口なことを周囲の人に陰口叩かれて心を許せる友人の>>581に愚痴ったんだよ

587 純情プレパラート(1/4) sage 2007/09/19(水) 15:53:23 ID:PQQClnxQ
 満員電車に乗るとき私はドアの傍にいく。
 ドアの収納口近くに取り付けられた手摺りが私のお気に入り。
 都心に向かう電車は毎朝混んでいて、人見知りな私は周りの人と視線を合わせたくなく
て、ずっと窓の外を見てる。
 窓から見える田圃とか通過する踏み切りの音も好き。
 痴漢にあっても一駅我慢して、乗車口を変えればやり過ごせる。

 でもその日はドアの傍にいけなかった。
 人身事故のせいで人が多くて、ドアの傍に行こうとする私のわがままな動きは人の波に
押し流された。吊革にも掴まれない一番嫌いな場所。煙草くさい。俯いて前の人の鞄を見
てる。見慣れた鞄。うちの学校の人。
「かや……相原さんじゃん、おはよ」
「ぁ、相川くん……」
 相川くん。男子の出席番号一番の人。私は女子の一番。入学式から最初の席替えまで隣
の席だった人。人見知りの私に構ってくれる人。「かや」ってなんて言おうとしたんだろ。
かやこ? なんで相川くんが私を名前で呼ぶんだろ。学校で誰にも名前で呼ばれたことな
い。
「今日、人多いな」
 相川くんが私を見てる。私は相川くんのネクタイの結び目を見てる。いつも綺麗な形。
器用な人なんだ。返事しなきゃ。
「ぇ……あの、今日……人身事故で」
 だから電車が遅れてて、人が多くて。私はドアの傍行けなくて、そしたら相川くんがい
て。

588 純情プレパラート(2/4) sage 2007/09/19(水) 15:54:23 ID:PQQClnxQ
「相原さんって駅までチャリ?」
 チャリ……自転車。
「ぇ……うん。自転車」
「今日チャリ乗ったらさ、ギッタンバッタンいうわけ」
「パンク?」
「そうそう。漕ぐとギッタンバッタンってなるじゃん。しょうがないから走ってきた」
 相川くんの顔を一瞬だけ見る。汗びっしょり。髪が汗で張り付いてる。タオル貸したほ
うがいいのかな。
「足、速い……」
 相川くん足速いよね。速いよねって言ったら偉そうかな。でも私が走ってきたらきっと
遅刻してる。
「そうでもないって。チャリ使わないと近道できるし」
 私は目を泳がせて相川くんを見る。右手で吊革に掴まって、左手で鞄。ちょっと大きい
口。唇が荒れてる。髪が張り付いてる。目が私を見てる。どこ見てるんだろう。他の子み
たいにブラウスの第二ボタンを開けてたら相川くんも見たりするのかな。
「近道?」
「ん、ああ、うちって駅から直線で近いんだけど、道路通ってないから」
「遠回り?」
「神社抜けてショートカット。階段あるからチャリ通れないんだよな。ていうか神主に怒
られそうだし」
「……うん、怒られそう」
「だよなー」


589 純情プレパラート(3/4) sage 2007/09/19(水) 15:55:12 ID:PQQClnxQ
 電車が揺れますのでご注意ください。
 いつものアナウンス。
 相川くんと話すのに一生懸命で、車内放送を聞き流す私。
「相原さん、揺れ――」
 彼がぼーっとしてる私に注意しようとしたとき、がくんっ。揺れた。
 今日はドアの傍じゃないから掴まる場所ない。ヤダ倒れる。周りの人に迷惑かける。脇
から強い力でひっぱられて止まった。倒れてない。強い力が肩甲骨の辺りを鷲掴みにして
私を引き寄せる。制服が引き攣る。相川くんの手だ。電車が逆に揺れた。彼の胸に飛び込
む形になる。車内がざわめいて落ち着いた。
「ぇ、ぁ……」
「あ、ごめん、相原さん倒れそうだったから」
 お礼言わなきゃ。
「ぁ……うん……」
 ありがとう。言葉が出ない。私はいつもそう。
 背中がもぞもぞしてる。
 相川くんが私の後ろの人と私の背中の間から手を抜こうとしてる。でも車内は混みすぎ
るほど混んでて、それ以上したら私はともかく後ろの人が怒りそうだよ相川くん。手の動
きが止まった。
 彼の手は結局そこに留まることにしたらしい。ちょっと気まずい。相川くんは左手がお
かしい動きにならないように気を使ってくれてるけど、でもそこブラの紐だよ。恥ずかし
すぎる。
 それから駅に着くまで二人とも黙ってた。左手が私の背中をしっかり支えてくれて、ま
た電車が揺れて、吊革、相川くん、私が一塊で揺れて、身体が触れて、耳まで赤くなって
た私はずっと俯いて、早く到着して欲しかったけど、このままでいたかった。
 相川くんはその間ずっと私を見てた。と思う。

590 純情プレパラート(4/4) sage 2007/09/19(水) 15:55:56 ID:PQQClnxQ
 相川くんに抱えられるようにして電車を降りて、左手が自然と離れた。彼に触れられて
いた場所が急に涼しくなった。気恥ずかしくて彼の後ろについてホームを歩いていく私。
 そのとき彼のシルエットが不自然なことに気づいた。
「ぁ、あの、相川くん、鞄」
 そうなのだ。私が倒れそうになったとき、彼は左手の鞄を放して支えてくれた。降りる
まで彼の左手はずっと私の背中にあったから、彼の鞄はまだ電車の中。乗客の足元で踏ま
れてるかもしれない。
「あ、ちょ、やばいって」
「どうしよう」
 二人とも慌てまくって、ホームを右往左往して――相川くんも私も電車の中に大事な物
を置き忘れるのは初めてだったのだ――駅員さんに聞いたら、忘れ物は三駅先の終点で車
内点検のときに回収されることを教えてくれた。
 終点まで取りに行くと私たちは完全に遅刻だ。私も一緒に行くと言うと相川くんは言っ
た。
「相原は先行っててよ。二人とも遅刻したら家に電話来そうだろ。先生に事情話しといて」
「でも……」
「ほんと気にしないでいいって。つか楽しかったし」
 そう言って、相川くんはにこにこしながら、左手をにぎにぎさせた。
 私が思わず笑ったら彼も笑いだした。

 結局、相川くんの鞄は無事に戻ってきた。少し汚れていたけれど、親切な人が網棚にあ
げてくれたおかげで、ひどく踏まれたりもしていなかったみたい。
 それからどちらともなく電車の時間と乗車口を合わせるようになって、私たちは一緒に
登校するようになった。

591 いじょ sage 2007/09/19(水) 15:59:01 ID:PQQClnxQ
告白編セクロス編と続くかも

592 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 17:10:03 ID:z5EFEicM
GJ。早く続きが気になるな。


……ところで“いじょ氏”と“230氏”って別人だよ、な?

593 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 18:31:53 ID:81L8ocV0
>>570 歪みの国って何だ?

594 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/19(水) 18:43:37 ID:THzr9fM8
>>593
ぐぐれ

595 いじょ sage 2007/09/19(水) 22:00:29 ID:PQQClnxQ
230氏の投下直前だったんですね。空気読めずにごめんなさい。

596 名無しさん@ピンキー 2007/09/19(水) 22:13:27 ID:MAwNXpJj
>>595



そんなことは気にしない気にしない
先に投下したもの勝ちだから
あと、GJ!!展開が非常に気になるな

597 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/20(木) 11:31:39 ID:LfXcGHxf
これはGJ。無口娘の独白という感じがよく出てる。

598 230 sage 2007/09/20(木) 18:18:19 ID:1oOHll9i
申し訳御座いません。
結局、モタモタしている間に事態を混乱させてしまい、
スレをご覧の方々、いじょ氏にご迷惑をおかけしてしまいました。
重ねてお詫び申し上げます。
また貴重なご意見を下さった方々、真に有難う御座いました。

これより、投下させていただきます。
見苦しい真似を重ねますが、作品をご覧になる前に諸注意、ないし“いいわけ”をさせて下さい。

今作には『エロ』も『萌え』も多分、殆ど御座いません。
どうか、期待だけはされないようお願い申し上げます。
また、前回投下させていただいたSSより、相当、気持ち悪い話になってしまっています。
どうか、気分が悪くなりましたら即座に切って捨ててください。

それでも構わないという方は、片手間にでもご覧戴けますようお願い申し上げます。

それでは投下致します。

599 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:20:25 ID:1oOHll9i
――俺はシスコンである。

少なくとも、周りの人間にはそう認識されている。
ソレも当然だ。
携帯の待ち受け画像が妹の写真で、PCの壁紙、スクリーンセーバーも妹で、さらに目覚まし時計の音声も妹の肉声だ。
朝は、自慢の目覚ましで起き、朝食と弁当を作った後、妹を起こす。
そして、朝食を一緒に済まし、一緒に一緒の学校に登校する。
学校でも暇を見つければ、妹の教室に入り浸り、授業を覗き見たり。
で放課後は、二人とも帰宅部なので無理やり時間を合わせ、一緒に家路に着く。
家では、勉強を教えるという名目で妹の部屋に押し入る。
その時間を堪能した後、夕食を作り、団欒を楽しむ。その後、二人で家事。
さすがに風呂に一緒に入ったり、覗いたりはしないが、風呂上りの妹を鑑賞するためにゲームに誘ったりする。
いい感じの時間になったら妹を寝かせ、後は自分の時間。
まぁ、課題をやっつけたり、家事の残りをしたり。
そんなこんなで深夜になり、本格的に寝入る前に携帯の妹の写真に挨拶をして、寝る。

な? シスコンだろ?
………………。
……おい、ちょっと待て。
引くな。
距離をとるな。
やめろ! やめてくれ!!
そんな白い目で俺のことを見ないでくれ!!

自覚はしているんだ。
自分がどういう人間か。
自覚してはいるんだ。
でも、しょうがないことでもある、と思いたいのも事実。
なにしろ妹は、昼ドラみたいな親の人間関係のもつれで生まれてきたんだ。
そんな親共の馬鹿げた関係を間近で見てきた俺は、幼い頃から妹のことを守らなくちゃならないと自分に強いてきた。
俺が小学生のとき、俺と妹の血が繋がっていないことを酔った父に告白されてからは特に。
でも、それだけじゃない。
親がどうしようもないから、血が繋がっていないから、というだけではない。
そう、物理的にも精神的にも守ってやらなきゃならないほど、妹は本当にか弱いヤツなんだ。
小さいときから病弱で、いつも床に臥せっていた妹。
俺は、そんな妹の世話をいい加減な親どもに任されていた。
妹が熱を出せば看病し、妹が倒れれば医者に連れて行き、妹がいじめられれば助け、妹が勉強について行けなくなったら教えた。
時が経ち、人並み程度に生活できるようになった今でも、華奢で、繊細なのには変わりない。
病弱な性質の妹は、ソレに準じるように性格もか弱かった。
押しが弱く、人見知りも激しく、自分の言いたいこともいえない無口な性格だ。
無口。
いや、無口な性格なのは確かだ。
でもそれだけじゃない。
妹は脳の言語野に後天的な障害がある。
そのせいで妹は、極めて端的なことを、極めてゆっくりとしか話せない。
なぜ、そんなことになったのか。
ま、簡潔に言えば下種な元母親の、愚劣な行為によってそうなってしまったのだが。
話すとイライラするし、長くもなるので割愛する。
妹はそんなハンディを抱えながら、それでも生活できている。
本人の努力の賜物だ。
そんな妹は、(俺としては悪いことに)外見がいい。
俺の贔屓目じゃなく、本当にかわいいのだ。
一度も染めたことのない黒髪は足に届こうかいうほど長く、伏目がちだが大きな瞳は一点の曇りもなく澄んでいる。
また小さい頃から肌が弱いため夏でも露出しない肌の色は抜けるように白い。
低めの身長と、痩身の体は、まるで動く人形のようだ。
そんな外見を備えておきながらも、控えめで、おしとやかな性格なのだ。
これでモテないわけがない。
もらったラブレターは山の量。受けた告白数知れず。
最低でも一ヶ月に一回は妹に取り成してくれ、と学校の男子共が俺に相談に来る。

600 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:22:25 ID:1oOHll9i
え?
『それで妹さんは誰かと付き合ったことがあるんですか?』だって?
……無いな。一度も。
ん?
『それじゃあ今まで告白してきた人達はどうしたんですか?』って?
………………。
ハハハハハ。
うん。
……潰した。
俺が全部、握り潰した。
エヘ☆

……まぁ、とにかく、妹――エリは、俺が守らなくちゃならないんだ。
行き過ぎた行為かもしれない。
もはや出すぎた感情なのかもしれない。
それでも、俺は今まで、エリの傍にいた。
ソレが正解だと信じて。

……ん?
『それって、待ち受け画面とか目覚ましとか授業覗いたりする行為とは関係ないような』?
い、いいじゃないか!
ちょっと、こっちこい。
見てみろ、このエリの画像を。
……ほら、な。
かわいいだろぉ?
俺がコレほどまでの愛情を注ぐのも納得、だろ?
え? 『アナタの妹さんは確かにかわいいが、アナタの態度が気に食わない』?
いや、だから!!
引くな!
そんな目で俺の事を見るな! 見ないでくれ!!
……おい、ちょっと!! まだ話は終わってない!
行くな! ちょっと、オイ! 行かないでくれ!!
………………。

閑話休題。

でも、間違っていたのだろうか?
俺がエリの傍にいて、エリを守り続けてきたのは。
本当は、俺の提示し続けた答えは不正解だったのだろうか?
だから、天罰とでも言うのか?
もし、たとえそうであっても受け入れられない。
受け入れることなんてできるはずがないだろう?

――俺が死んでしまったなんて。

俺が死んでしまったことはとりあえず置いておく。
どうせいずれ、人は死ぬ。
それがたまたま早かっただけ。
そう考えれば、理不尽だが、納得できなくもない。
……いや、本当は納得なんかできない。できるはずがないだろう?
生きたい。まだやりたいこと、遣り残したことがあるんだ。
生きたい! 死にたくない!! 助かるんだったら、なんだってする!!
………………。
……でも、もうソレも叶わない。そして、叶わないことは何より自分が実感している。
死んでしまった、ということは、死んでしまったということ。
それ以外のなにものでもない。
だから、とりあえず棚の上においておく。納得したことにする。
……そういうことにしておく。
だが。

601 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:23:32 ID:1oOHll9i
妹はどうなる?
今まで、俺が生涯をかけて守ってきた妹はこれからどうすればいいんだ?
エリはまだ学生なんだぞ?
今まで、俺に守られてきたのに、どうやってエリがやっていけるというんだ?
……『両親がいるんじゃないですか?』、だと?
ふん、両親なんて当てになるものか。
あいつらの自分勝手な行いにどれだけ俺たちが振り回されてきたことか。
俺たち兄妹はそのたびに苦い思いをして、身を切るような感覚を我慢して生きてきたんだ。
………………。
そうだ。これからは、そんな両親の振る舞いにも、俺はエリを守ってやれない。
それどころか、学校の連中、道ですれ違う他人、言い寄ってくる親戚。
それら全てにエリは怯えなければならないじゃないか。
どうしよう。
どうすればいいんだ。
俺は。
こんな中途半端な状態じゃ、エリを守ってやるどころか、自分の世話さえ満足にできやしないというのに。

………………?
お前今なんていった?
『アナタが生きていようと、死んでしまおうと、妹さんはやっていける』?
『むしろアナタがいないほうがいい』?
……馬鹿な。何を言ってるんだ。
エリは華奢なんだ、病弱なんだ。お人よしで、人見知りで、押しが弱いんだ。
そんなエリが、俺なしで生活できるなんて……。
………………。
……なんだと?
『妹さんが自分ひとりで生きていくためのチャンス』、だと?
エリが自立する、チャンス……?
………………。
いや、だが、しかし。
……たしかに、俺がエリの面倒を一生見ることは不可能だったろう。
いつか袂を分かつ。
そんなことは当然だ。覚悟だってしてきたし、できているつもりだ。
だが今は、それでも傍に居たかった。傍にいて守ってやりたかった。
嬉しいこと、辛いこと、いろんなこと一緒に分かち合いたかった。共有したかった。
確かに、いずれは俺が守る必要もなくなる。
それでも、今はいくらなんでも早すぎる。
エリが自立するのはまだまだ早すぎだ。
今のエリには俺が必要なんだ。絶対。



……どういうことだ?
『あなたが納得するまでの猶予を与えます』……?
それまで、世界に留まってもいい、だと?
つまり、エリが自立できるまで、自立できたと俺が納得するまで、この世界にいてもいい、ってことか?
いや、でも、俺は死んだんだろ?
どうやって……。
! ……まさか。

――俺はシスコンである。ついでに妹、エリを見守る幽霊でもある。

……。
こんなところか。
わかった、猶予は俺が納得するまで。
納得して、成仏するまでってことか。
……今のうちに言っておくが、俺はまだ信じていない。
まだまだ、エリには俺が必要なんだ。
だから、俺が納得するのは、エリが死ぬまで無理かもしれないぞ。
それでもいいんだな?

602 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:25:03 ID:1oOHll9i
……。
よぉ〜し。約束だ。
んじゃ、ちゃっちゃと、元の世界に戻してくれ。
エリが心配だからな。早くついていてやらないと。

俺の葬式の翌日、エリは元気に登校した。
………………。
え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
なんで!?
なんで、なんで!?
っていうか、ショックで登校できないとかあるだろう!?
お兄ちゃんいないんだよ!? 死んじゃったんだよ!?
ほら、隣にいつもいるお兄ちゃんがいないだろう!?
まぁ、そりゃ幽霊としての俺はいるが……。
それにしても、一日寝込むとかもないのかよ!?
ちょっと、それはないだろう、エリ!?
俺はもうエリが学校辞めてしまうんじゃないかとまで危惧していたというのに!
それが、なんで、なんでなんでなんで。なんで!?
どういうことなんだ!?
理解できない。
お兄ちゃん、全く理解できないよ!!
………………。
……ま、まぁ、元気なのはいいことだ。
いいことだと思い込むことにする。
それに、それでも、エリは寝過ごしかけたし、弁当だってコンビニのおにぎりだ。
ほ、ほら、俺がいないとどうにもならないじゃないか。
ね? 俺は必要な存在だったんだよ。
そんなことを必死で考えながら、規則正しく歩くエリの後ろを行く。
宙に浮かび、空を飛ぶこともできるのだが、まだ慣れていないので歩くしかない。
エリの後を歩きながら、それでも混乱からなかなか立ち直れないでいると、俺の後ろから誰かが駆けてきた。
ソイツは俺をすり抜け、エリの隣で足を止めると、足を止め振り向いたエリに話しかけた。
「……おはよう、水城」
ソイツは兄が死んだばかりのエリに気を使ったのか、トーンを落とした声でエリに挨拶した(ちなみに“水城(みずき)”とは俺とエリの苗字だ)。
エリは少し微笑むと、挨拶代わりに頭を下げた。
ソイツも、エリの事情を知っているのでソレが無作法だと怒ることはない。
前を向き、再び歩き出したエリの隣を同じペースでソイツも歩き出す。
俺はソイツのことを知っている。
たしか、『武田……なんとか』とかいう名前のエリの同級生でクラスメイトだ。
家から学校への距離は遠いのだが、通学路が一緒なので朝によく接敵する。
“接敵”。
そう接敵だ。
俺の勘だが、コイツはエリに好意を抱いている。
いや、まちがいなくエリに惚れているな。
そんなヤツと接触することを、“接敵”といわずになんと言う?
……まぁ、いい。
沈黙のまま歩き続ける二人。
武田は言いにくそうに口を開いた。
「お兄さんのこと……なんていうか、………その、残念、だったな」
ん?
なかなかいい事を言うじゃないか。
ほら、エリ。残念だっただろ? 残念だった、と言うんだ。涙なんかを流すとなお良い。
……ってぇ! 妹が悲しむかもしれないというのに、喜んでどうする! 俺!! 俺の馬鹿ぁ!!
しかし、エリは武田の発言に、静かに首を振る。
「………………」
「え? 『今も見守ってくれてるから寂しくない』?」
………え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
何ソレ!? ねぇ、何、ソレ!?
確かに今も見守ってるけど、見守ってるけど……!

603 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:26:39 ID:1oOHll9i
その言い草じゃ、もう俺、思い出の人になってるじゃん!
遠い星空から見守る、『気のいいやつだった』的ポジションじゃん!!
早い! 早すぎるって!! エリ!!
せめて一ヶ月はもってくれ!
お兄ちゃんの名前を聞いただけで涙を流す、とかさぁ!
そういう、なんていうの? あの、あれだよ。
とにかく、思い出にするの早すぎだから! ね? エリちゃん!!
混乱する俺をよそに、武田も意外だったのか目を見開いている。
「あ、……そう、なんだ」
エリは首をかしげ、不思議そうに武田を見る。
「いや、ていうか、なんて言うのかな。ほら、水城ってよくお兄さんと一緒にいたからさ。もっとショック受けてるのかと思った」
武田の言葉を聞いて、少しエリの顔が曇る。
ソレを見て、武田は言う。
「あぁ、ゴメン。思い出させて」
すまなそうな武田に、エリは静かに首を振る。
「………………」
「『まだ傍にいてくれているから大丈夫』? ……。そう、か」
あう!?
確かに傍にはいるけどさぁ! いるけどさぁ!!
いないじゃん! 実際問題、いないじゃん!! 見えてないじゃん!!
ていうか、ちょっと、ホント、立ち直り早くね!?
エリってこんなに強い娘だったっけかなぁ。
『か弱い子』っていうの、俺の勘違い〜……?
いや、いやいや。勘違いなはずはない。エリはか弱いことは間違い、ない、はず。
でも。あれ〜? おかしいなぁ……。
だったらなんでぇ……?
そんなことを言っている間に、二人は学校につき、教室へ向かう生徒の群れの中に混じっていった。

教室でのエリはやっぱり落ち着いていた。
席に着いたエリにクラスメイトたちが次々に激励の言葉をかける。
俺は少し離れた位置でその光景を見守る。
……ふ〜ん、そうか。
俺の知らないところでエリは友達に、クラスメイトに恵まれていたのか。
ただ授業を覗いていただけではわからなかったクラスメイトたちの優しさに俺は初めて気づいた。
うんうん。そうか。そうだったのか。
今、エリの机の前で盛んにエリに話しかけている女子がいる。
この娘は確か……。
『ユウキ』とかいう娘だったはずだ。
ソレが苗字だか、名前だかは忘れたが、確かそんな名前だ。
彼女は明るい声で、エリのことを元気付けようとしてくれている。
よかったよかった。そんな友達もいたんだな。
俺が感慨深げに頷いていると、始業のベルが鳴りホームルームの始まりを告げる。
少女ユウキもエリの席から離れ、自分の机についた。
ふと、エリが携帯を覗く。
そして、そのまま表情が固まる。
俺は異変に気づき、エリの席に近づくと携帯の画面を悪いと思いつつ覗く。
そこには。

『エリ。今日、食べたいものはあるか?』

携帯の液晶には簡素な文章が表示されている。
それは俺がエリに送ったメールだった。
その日は珍しくエリに用事があり、夕食の用意がある俺は仕方なく一人で帰っていた。
途中買い物によるために商店街に入り、そこでメールを打った。
できるだけ、エリの希望に沿ったメニューを出すために。
そして、その直後。

俺は死んだ。



604 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:27:43 ID:1oOHll9i
その後、俺が死んだことに関する緊急連絡は直ぐにエリに届いた。
ソレからは怒涛の流れだった。
多分、そんな中でエリは携帯メールを見る暇、余裕なんてなかったのだろう。
ほったらかしにされたメールは、そして、今、開かれてしまった。

教師がホームルームのために教室に入ってくる。
すぐさま、教師はエリの異変に気づく。
「おい、大丈夫か? 水城。顔が真っ青だぞ」
エリはその言葉に反応しない。
人形のように固まった表情のまま、涙が大量に零れ落ちる。
「お、おい。どうしたんだ?」
エリの息遣いが荒くなり、苦痛に耐えるように体を折る。
涙をボロボロと零しながら、苦しげに喘ぐ。
異変に気づいた教師はすぐさま保健委員に保健室にエリを連れて行くようにする。
当然、俺もソレについていく。
ふと振り向いた俺の視界には、教室の中で、呆然となった教師と生徒たちが、出て行くエリの背中を眺めているのが見えた。

「(っていうか、保健委員ってお前かよ……)」
ジト目でソイツを見る。
ソイツは過呼吸状態のエリにビニール袋を渡し、それで口を押さえるように指示した。
保健室の中には、俺とエリ、そしてソイツしかいない。
どうやら、保険医は外出しているようだ。……ふん、頼りになるな。
ベッドに座り込んだエリは未だに苦しそうにしゃくりあげている。
俺はそんなエリを眺めながら、心配する。
そして同時に、不謹慎ながらも安心した。
「(やっぱりエリには俺の死がショックなんだな)」
本心では相当傷ついていたのを必死に押し隠し、普段通りに、気丈に振舞っていたのだろうか。
そんなエリを俺は愛おしく思う。
「(ああ! 抱きしめて慰めたい! 昔のように頭を撫でてやりたい! 安心させるために声をかけたい!!)」
衝動は膨らみ、今すぐに行動に移したい!
だが、幽霊の俺にはそんなことはできない。
……そんなことは解っている。
だから、心底残念だが、試すことさえしなかった。
今、この場でエリを慰めることができるのは、小憎らしいことに保健委員のヤツしかいない。
ソイツは心配そうにエリのことを見守る。
沈黙の中、しばらくそのままの状態が続き、ようやくエリの状態が落ち着いてくる。
「(気の利かないヤツだな! 飲み物の一つくらいもってこい!)」
ソイツを睨みつける俺。当然、そんな意見は届かない。
「………………」
歯がゆい思いをしていると、エリは真っ赤な顔を伏せながら、たどたどしくソイツに礼を言った。
気の利かない憎っくきソイツ――武田は少しだけ微笑み、しかし、首を横に振る。
「僕のせいだろ? 水城がそんな風になったのは」
ん?
何言ってるんだ、コイツは。
エリも意外だったらしく、首をかしげる。
それに構わず、武田は続ける。
「僕が朝、余計なことを言ったから、思い出してしまったんだろ?」
そういうと、武田は勢いよく頭を下げる。
「本当、ゴメン。無神経なことを言ってしまって。……思い出させてゴメン」
エリは唐突な武田の行動に動揺を隠せず、オロオロとしながら首を振る。
「(ふ〜ん……)」
武田の言っていることは間違いなく勘違いだが……。
「(自分が謝るべきと思ったときには、ちゃんと頭を下げられるヤツだったんだな)」
俺は少し感心した。
今までは、妹に近づくただの敵だと思っていたが、どうやら見るべきところはあったようだ。
「(っていうか、死んでから妹に関係する人に目を向けられるようになるとは……。
ずいぶん俺は近視眼的な人間だったんだな……)」
そう自嘲する。
覗き魔のような、否、まさに覗き魔的な行為をして、ようやく人のことを正面から捉えられるとは……。
馬鹿げた話もあったものだ。当然、馬鹿なのは俺なのだが。

605 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:28:38 ID:1oOHll9i
そんな俺を無視して、エリと武田の会話は展開していく。
「………………」
エリは先ほどの武田の発言をやんわりと否定した。
「? 僕のせいじゃない?」
武田は戸惑ったように顔を上げ、真っ直ぐにエリを見る。
一瞬、二人の視線が絡まる。が、直ぐにエリは視線を落とした。
「僕のせいじゃないとしたら、どうして……?」
エリは少し顔をゆがめ、持っていた携帯の画面を武田に見えるように指し示す。
「見ても、いいの?」
頷くエリ。
武田は恐る恐る携帯の画面を覗く。
そこには簡素なメールが表示されているはずだ。
「これってもしかして……。お兄さんからの、だね」
「………………」
頷くエリ。そして、告げる。
「え? これが最後のメール? ……そう、なんだ」
武田は画面から眼を離し、近くの椅子に腰掛ける。
エリは携帯を一瞬だけ覗くと、静かに折りたたんだ。
そのまま保健室に沈黙がおりる。
「………………」
「そうだね。いつも、水城とお兄さん一緒に居たもんな。寂しくってもしょうがないって」
「(そうだよ、そうそう! いつも一緒に居たからな! 寂しいのは当然だ!)」
………………。
……ああ。俺って本当、ダメな兄貴、だな……。
妹がこんなにも落ち込んでいるっていうのに……。喜んでしまうなんて!!
でも、しょうがない!
だって、俺が死んだばっかりだというのに、『それでも気にせず元気な妹』なんて見たくない!
いや、『元気な妹』はいつだって見たいのだが、それでも見たくない特殊な状況はある!
ソレが今だ!!
「(許せ! エリ! こんな駄目なお兄ちゃんだけれど、それでも俺はエリの味方だぞ!!)」
妙にテンションが上がってきた俺。
しかし、保健室の雰囲気は暗いままだ(当然なことに)。
「………………」
エリは申し訳なさそうに、武田に頭を下げた。
「いや、迷惑なんかじゃない。水城が落ち着くまでここにいるよ」
その発言に驚いたらしいエリは、しかし、武田を安心させるためだろう、微笑んだ。
「………………」
教室にもう帰ってもいいと武田に告げる。
「そういうわけにはいかないよ。……それとも、一人になりたい?」
エリはためらいがちに頷く。
そりゃそうだ。
こんなときは、一人になりたいに決まっている。
「そう、なんだ」
「………………」
再び頭を下げるエリ。
「……なんで、水城が謝るのさ。水城はぜんぜん悪くないだろ?」
「………………」
「………………」
再び、二人は黙り込む。
……ん〜?
おいおい、なんだよ。この青春の一ページみたいな場面は。
っていうか、一人になりたいって言ってんだから、さっさと退場しろよ武田。
………………。
ん? おい武田。なんだ、その目。
その決意に満ち満ちた目は。
武田は大きく深呼吸すると、緊張気味に言った。
「僕じゃ、ダメかな?」
「?」

606 クレイジー兄妹 sage 2007/09/20(木) 18:29:36 ID:1oOHll9i
な、なんだ。何言い出してんだコイツ。
「僕じゃ、お兄さんの代わりにならないかな?」
「……………?」
ま、まさかコイツ……!
「僕が、お兄さんの代わりに、ずっと水城の傍にいたい、ってことなんだけど」
「…………??」
“そういう行為”は俺が事前に全部潰してきたので、エリは“そういう行為”に特にニブイ。
だから、まだ武田が何を言いたいのか良くわかっていない。
言いたい事がうまく伝わっていないことを察した武田は、絞り出すような声で、言う。
「つまり、好きです。俺と付き合ってください」
「!」
や、ややややっぱりかぁ!?
こ、こここ告白しおったぁぁ!!
おいおいおいおいおい! 何考えてんだ、お前!?
肉親の葬式の翌日に告白する馬鹿が何処にいる!? 否、此処にいる!!
っていうか、コレが若さなのか!? 若さというものなのか!? 武田君!?
ホラホラホラ見ろ。見てみるがいい。武田め。
エリ、驚いてるじゃないか。呆気にとられてるじゃないか。
ほら、顔を赤くしてないで相手の顔を見てみろ! 武田!!
お前と同じくらい赤いエリの顔を……、

ん? 赤い顔?

って、ええぇ!?
何赤くなってんのさ! エリ!! エリちゃん!?
俺の混乱をよそに武田は早口で言う。
「へ、返事はいつでもいいから。っていうか待ってる。いつまでも待ってるから。だから、そのなんていうか。
僕、支えになりたいんだ。水城の。だから、なんていうか、その! つまり、じゃ、じゃあね」
そしてそのまま、逃げるように武田は保健室から出て行った。
な、なんだったんだ、全く……。
少し見直したと思ったら、直ぐコレだ。
やはりエリ以外の人間は信用ならんな。
「(な、エリ?)」
俺はエリのいるベッドを見やる。
エリは放心したように、武田の出て行った扉を見つめ続けている。
そして、ポツリと呟いた。
「………………」
……?
ん? どういう意味だ? 『また、会えるかもね、お兄ちゃん』?
? 何を言っているんだ?
意味が解らずエリの顔を見つめる俺。
エリは告白された少女が浮かべるには似つかわしくない、嫣然とした笑みを浮かべていた。

607 230 sage 2007/09/20(木) 18:30:53 ID:1oOHll9i
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

608 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/20(木) 18:33:38 ID:F9vKbN28
おk、いいシスコン兄貴だ
文章も軽快にテンポよく読めました

うん、なにがいいたいかっていうと非常にGJ!!

609 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/20(木) 21:13:43 ID:GdDPhnNT
GJ!重い話のはずなのに軽快なテンポがそれを感じさせないですね。
兄貴が成仏しそうにないwいやわかんないけど

610 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/20(木) 23:47:36 ID:it4WFlk6
gj!
こんな兄貴なら欲しいな。三人くらい。

611 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/21(金) 17:16:54 ID:bWMJBY9v
こんな兄貴が三人もいたら何にも出来ない人間になりそうだ

612 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/22(土) 14:04:47 ID:XZTc/krh
こんな性格の義姉がいたら……うん、いいね

ついでに性格に無口を追加しとけば完璧

613 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/23(日) 05:58:49 ID:FKlus30c
良い意味でシスコンのウザさが出てたなGJ

614 名無しさん@ピンキー age 2007/09/23(日) 07:07:57 ID:dbm6zqBe
シスコン兄・・・だめだこいつ、早くなんとかしないと!

GJ!!!

615 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/23(日) 18:09:09 ID:5eywwf6G
>>614
残念だが、処置なしだ
ほら、バカは死んでも直らない、っていうだろ?

まあなにかっつうとgj!

616 230 sage 2007/09/24(月) 11:57:54 ID:Lcpy1mzV
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、大したエロも御座いません。
真に申し訳御座いません。
それでも構わないと言う方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

617 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 11:59:13 ID:Lcpy1mzV
数週間が瞬く間に過ぎた。
その間、俺としては大層面白くない展開が続いた。
なんというか、エリと武田が付き合いだしたのだ。
なんとまぁ、二人は初々しくも、健全に距離をつめていく。
…………ケッ。
なんだよ、なんだよ。
何が『相思相愛』だっつうの。馬鹿馬鹿しい。
何が『お似合いのカップル』だっつうの。下らない。
……ああ、たしかにお似合いのカップルさ。
エリは前述したようにかわいいし、認めたくないことだが武田の外見も悪くない。
ふん、たしかに釣り合ってはいるさ。
っていうかさぁ。
もう俺、成仏してもいいんじゃね。
エリは、あのメール以降、俺のことで泣き出すようなことはなくなったし、家事だってうまくやってる。
馬鹿な両親共も干渉してこないし、学校での生活も順風満帆とは行かないが、限りなくソレに近い。
周囲との友人関係も良好で、むしろ俺という邪魔者がいない分コミュニケーションは円滑に行われている(俺としては複雑だが)。
それに、憎たらしいことに『お似合いのカレシ』もいるしな。
……でも、俺はまだ納得できていない、のか。
俺が納得したら迎えに来るはずのアイツも来ないしな。
そんなことを考えているうちに、エリは武田を家に招待した。
ふん。……『勉強会』、ねぇ。
エリ、油断しすぎだぞ。
男はみんな狼なんだ。
武田だって間違いない、一匹の狼だ。
それを自ら招き入れるなんて。
……自殺行為も甚だしいわ!! 
くそぉ、武田めぇ……!! 
何かしたらただじゃおかない。呪い殺してやる……!!

俺が呪詛の言葉を武田に投げかけているうちに、二人は家に着き、エリの部屋に到着した。
二人はぎこちなく勉強を開始した。
ホラ見ろ、武田のこの飢えた獣の目を。
エリ! 気づけ! そして、コイツを部屋から追放するのだ!
エリは動かしていた手を止め、武田の顔をうかがい、そして言う。

「………………」

ん? な、何て? エリ?
「『しないんですか?』って何を……?」
武田は戸惑っている。俺も戸惑った。
……エ、エリ? エリちゃん?
な、なななな何を言っているんだ?
おいおいおいおいおい。な、何を赤くなってるんだよ、エリぃ!
確認するように武田が呟く。
「……いいの?」
よくねぇよ!! ふざけんなよ、お前!!
いや、そりゃ、二人が家に来た段階で何もしないという選択肢はないし、若い二人が密室で、
勉強しかしないなんていうのは、むしろその方が不健全かもしれんが……。
っておい、コラ!! 何見つめ合ってんだ!!
あ! 武田! 何近づいてんだ!
エ、エリの肩に手を乗せるな!!
エリも!! 素直に目を閉じるな!!
オイオイオイオイオイオイ!! マズイ! マズイってぇ!!
このままじゃ、このままじゃ、このままじゃぁ!!
くっそぉ〜!! ええい、こうなれば!!
かくなるうえは!!
そして、俺の意識が遠くなる。

618 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 11:59:58 ID:Lcpy1mzV
ふと、唇に暖かく、柔らかい感触。
ん? もしかして……。
俺は覚悟を決めて目を開ける。
目の前には、エリの顔がどアップで映し出されている。
俺は驚き、顔を離す。
………………。
おいおいおいおぉぉい!!
成功しちまってるよ!! 憑依が!! 乗り移っちまってるよ、武田に!!
「………………」
エリは目を開け、もの問いたげに武田を――俺を見つめている。
「いや、いやいやいやいや! 『どうしたんですか』って、そりゃ!!」
っていうか、……あ! しまった!!
俺、妹にキスしちまったんじゃないか!!
義理の兄妹とはいえ、仮初の体とはいえ!!
い、いいいいい妹にキスしちまったよぉ!!
どうしよ、どうしよ、どうしよぉ!?
マジ、マズいって!!
いくら俺がシスコンだからって、いくらなんでもマズすぎる!!
俺は混乱した頭で、ふとエリの顔を覗き見る。
エリは――。
「……え?」
――涙を一筋、零していた。
俺は呆気にとられ、頭が真っ白になる。
どういうことだ?
「……なんで、泣いてるんだよ。エリ?」
自分の体が今、武田であるということも忘れ、口調も変えず尋ねる俺。
「………………」
「……え? 『お兄ちゃんを感じたから』って……。えぇぇぇ!?」
何言ってんだ!? エリは!?
バレた!?
いやいやいや、バレるはずがない! でも、どういうこと!?
感じた、っていうかキ、キスして俺の事思い出した、みたいな?
いやいやいやいやいやいや。
俺、生きている間に、キ、キスとかそういうこと一度でもしたか!?
……いや! してない! 全然覚えがない!
っていうか、そんなことするわけないだろう、お兄ちゃんが!! 誤解されるようなこと言うのやめなさい!!
っていうか、おいエリ!! 何で脱ぎだしてんだよ、お前は!!
ブ、ブブブ、ブラジャーが見えてるよ!
「ふ、服を、どうして、なして脱ぐんかなぁ……? エ、エリ?」
「………………」
「いや、『するんじゃないですか?』って。え、っと……」
いつからそんな、は、はしたない娘になっちゃったんだ……!!
お兄ちゃん……、お兄ちゃん悲しい!!
「………………」
「『私じゃダメですか?』って……。え、えぇぇぇ……?」
そ、そんな目で見つめるな、エリ……!
「………………」
「『私の初めて、もらってください』ですってぇ……?」
!!
か、かわいい……!! かわいすぎる……!!
………………。
…………もう、いいや……。
俺は悩むことを放棄し、エリを抱き寄せた。

619 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:01:04 ID:Lcpy1mzV
目の前に服を全て脱ぎ、ベッドに座ったエリがいる。
俺もすでに服を脱いでおり、全身真っ裸でエリの前で同じく座っている。
……っていうか、武田。すまん。ホント、すまん。もうしばらくお前の体借りるぞ。
「………………」
「いや、なんでもない。じゃ、じゃあ、始めようか」
俺はエリの顔に震える唇を寄せると、優しくキスをした。
……はぁ、最低だな、俺。……ハハ。何か笑えて来た。
そして、とうとう、前人未到のエリの胸に触れる。
柔らかい。
それに、物凄くスベスベしてる。
俺は刺激を与えすぎないように、できるだけ優しく触る。
俺の掌ほどの大きさの乳房は、俺の手の感触に粟立つ。
「……………ん」
ピクリとエリが反応する。俺はそれにビビる。
「わ、悪い。……痛かったりするか?」
エリは首を振った。
「………………」
「『もっと強くしてもいい?』。 わ、わかった」
緊張による汗でべたつく両手を使い、俺はエリの胸を揉む。
……うん、物凄く柔らかい。
俺の掌の動きに合わせ、エリの胸乳は形を柔軟に変える。
「ん……んぅ」
エリが声をかすかに漏らす。
……っていうか、これでいいのだろうか?
俺だって経験がないんだから、エロ本とかの知識しかない。
でも、どこまでも指が埋まっていく胸には、どう対処すればいいんだろう。
なるべく単調にならないように変化をつけて指を動かす。
ん? なんだか先端が硬くなってきたような。
俺は半ば無意識にその先端を摘む。
「! ……んん……!」
再び、エリの体が鋭い反応を示す。
「おい! だ、大丈夫か? エリ?」
「………………」
「だ、大丈夫……? そ、そうか」
なるほど、本当に敏感なんだな。ち、乳首は。
ふぅ〜ん。
でも、ここを攻めない手はない、か?
俺は乳房を弄ぶ指に、先端を苛める動作を加えてみる。
「ふ、……んん! あ、あぅ」
俺の指が突起を弄くるたびにエリは甘い声を漏らす。
まだ柔らかかった乳首は、触り始めると途端に硬さを増した。
俺は調子に乗って乳首ばかりを苛める。
「は、はぅ……!! や、やぁ!」
エリの顔は赤みを増し、手を触れている部分が暖まってくる。
次のステップとして、俺は自然と頭を下げ、右の突起を口に含んだ。
「!! んん……!」
エリの肩が大きく動く。
でも、俺はもういちいちエリの反応に構わず、夢中で乳首を貪った。
「ん……、は、はぅぅ……!」
舌でまさぐり、歯で挟み、口で吸引する。
汗ばんできたエリの胸は少ししょっぱかった。
唾液でエリの右胸はベタベタになり、俺の口の周りも濡れる。
俺は右の乳房を苛め倒すと、今度は左の胸を口に含む。
右と同じ目にあわせながら、口に含んでいないほうも揉み続ける。

そんなことをしているうちに、俺は気づく。
気づいてしまう。
俺の頬が濡れていることを。

俺は、いつのまにか、泣いていた。

620 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:02:56 ID:Lcpy1mzV

乳房から口を離し、腕で顔を隠す。
「………………」
エリが聞いてくる。
『私じゃ興奮しませんか?』と。
エリは俺の頭を抱き寄せる。
俺は、グスグスと泣きながら、エリの胸に顔をうずめる。

私じゃ興奮しませんか、だって?
………………。

……しないよ、興奮。

俺の(正確に言うと俺のじゃないが)ペニスは最初から勃っていない。
勃つはずがない。
俺が今抱いているのは、エリ――妹なんだぞ。
小さいときからずっと守ってきた、大事にしてきた、かけがえのない妹なんだ。
それがどうして、性的対象に見える?
酷い話だ。
本当に酷い話だ。
俺は大声でなき、エリはますます強く俺を抱きしめた。

結局、俺のペニスは勃つことなく、まるで幕切れのように俺の意識は暗くなった。

「………………」
「じゃ、じゃあな。また明日」
俺は玄関から出て行く武田をエリと一緒に見送った。
どうやら、武田にもおぼろげに記憶があるらしい。
でも、何で泣いていたのかなんて、多分永久に分からないままだろう。
そして、今、部屋の中には俺とエリがいるだけだ。
当然エリはもう服を着ており、ベッドに腰掛け、ぼんやりとしている。
まぁ、当然だろうな。あんなことがあったんだ。
意味が分からないだろうなぁ。
なにしろ、彼氏が行為の最中突然泣き出したんだから。
しかも、相手はそのことをあまり覚えてないという。
ま、俺が始めての相手じゃなくてよかったじゃないか。
初めての相手が『憑依した兄』だなんて酷すぎる。
それでも俺はどうにも申し訳なくて、俺は幽霊になって初めてエリに声をかけた。
……かけずにはいられなかった。
[悪かったな、エリ。お前の貞操を乱しかけて。本当にすまなかった]
ふん。
聞こえるわけがない。
ソレでも俺は――。
「………………」
エリが呟いた。

――え?

今、確かに、俺に答えなかったか?
『どうして、私の初めて、もらってくれなかったの? ……お兄ちゃん』と。
[聞こえてる、のか? エリ?]
エリは、俺の目を見て、確かに頷いた。

621 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:05:11 ID:Lcpy1mzV
[いつから、気づいてたんだ……?]
はじめからだよ。お兄ちゃん。
お兄ちゃんが死んで、私のこと見守ってくれだしてから。
だから、だよ?
お兄ちゃんはいなくなってなんかないって解ってたから。
だから、お葬式の後もすぐに立ち直れたんだよ?
[どうして、見えないフリなんか……]
見えてなかったからだよ、最初は。本当に見えたのはつい最近。
でも、いるのはわかった。ずっと傍にいてくれたんだよね。
[……じゃあ、どうして葬式の次の日、俺の最後のメールを見て泣き出したりしたんだ?]
だって、もう、見たり、話したりできないって思ったら……。
いくら見守ってくれてるっていっても、やっぱり寂しいよ。
でも、私、これでもがんばったんだよ。
本当はいつもお兄ちゃんに話しかけたかった。笑いかけたかった。一緒におしゃべりしたかった。
でも、そんなことしたら、他の人には見えてないお兄ちゃんに話しかけたりしたら、
きっと病院に連れて行かれちゃう。閉じ込められちゃう。
お兄ちゃんに心配かけさせちゃう。お兄ちゃんを心配させる嫌な子になっちゃう。
それがいやだったの。
[何故、今になって?]
だって、初めてお兄ちゃんが話しかけてくれたから。
……それに、お兄ちゃんが私のこと、……奪ってくれなかったから。
[………………]
ねぇ、どうして?
どうして、私のこと抱いてくれなかったの?
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして、どうして?
[お前は、俺の妹だ。だから――]
わからない、わからないよ? お兄ちゃん。
だって、お兄ちゃん、途中までしてくれたじゃない。
[ああ、だが、しかし……]
これじゃ、なんのためにこんなことしたのか解らないよ。
[? ……どういうことだ?]
武田君と付き合ったり、部屋に招いたりしたのは、全部、お兄ちゃんのためなんだよ?
[……。まさか]
武田君はいい人だよ。いい人だよね?
でもそれだけ。
お兄ちゃんの代わりには、なれません。
[……武田のこと、利用したのか?]
利用じゃないよ、活用だよ。
それに武田君のほうから告白してきたんだから、お互い協力関係みたいなものじゃない?
それにしても、途中まではうまくいったのにね。
お兄ちゃん、私と武田君が、『そういう関係』になりかけたらきっと我慢できずに、私の前に姿を見せてくれる、私に触れてくれる。
私の事奪ってくれる。……私はそう信じてたのに。
お兄ちゃんのせいで計画が崩れました。お兄ちゃんのせいで壊れました。お兄ちゃんのせいで狂いました。
でも、勘違いしないでね。
そのために、そのためだけに好きでもない人とお付き合いしたんじゃないよ。
武田君のことはスキ。
たぶん、今生きている人達の中では最も大切な人の部類。
でもね、でもねでもね、でもねでもねでもね。
でもね、お兄ちゃんが一番なの。
お兄ちゃん好きなの。お兄ちゃんがいいの。お兄ちゃんじゃなきゃダメなの。
[……エリ?]
お兄ちゃん以外要らないの。お兄ちゃんさえいればいいの。お兄ちゃんだけでいいの。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
だから、もういいの。
これからはお兄ちゃんと二人で生きていくの。
学校も辞める。家にずっといる。お兄ちゃんと一緒に。
他の物なんて、他の人なんて、他の世界なんて、もう要らない。
アハハ。最初からこうすればよかったのかもね。
でも、どうしても私の初めてをもらって欲しかったから。お兄ちゃんに。
だから、策を弄しました。

622 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:06:13 ID:Lcpy1mzV
でもでも、もうそんなことはいい。もっともっと、傍にお兄ちゃんがいればいい。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
どうして気づかなかったんだろう。こんな簡単なことなのにね? 単純すぎて気づかなかったのかな?
お兄ちゃんさえ、いればいい。
ね? だから傍にいてね?
ずっと、ずっと私の事、離さないでね? お兄ちゃん。
[エリ……]
いなくなったりしないよね? 私の事、見捨てないよね?
いい子にするから。いい子になるから。なんでもするから。なんだってするから。
だから。
お兄ちゃん、私のこと見捨てたりしないでね。
いつまでも、いつまでも、いつまでもいつまでもいつまでもいつまでも。
ずっと、ずぅっと私の隣にいてください。

エリの言葉を聞いて俺の意識が遠のく。
これが俺のしてきたことなのか?
俺がエリを守ってきた結果が、コレなのか?
………………。
こんなの、誰に言われなくても不正解じゃないか。
俺は妹を守るという大義名分を掲げ、妹に依存し、妹を依存させていたというのか……?
依存。まさにそれじゃないか。
それで『妹が自立するまで見守る』だと……?
馬鹿だ。俺は本当に大馬鹿だ。
結果的に俺は妹を追い詰め、依存を深くしただけじゃないか。
もしかしたら。
妹は壊れていたのかもしれない。
俺が死ぬ以前から。あるいは俺が死んだから。
……いや。そんなことはない。まだ大丈夫なはずだ。
まだ修正は可能なはずだ。
そう信じるしかない。
………………。
だから。
俺は解決方法がわかってしまった。
依存をなくし、自立させるための、手段。
間違いなく卑怯で、どうしようもなく姑息で、たった一つ、唯一の手段。
それは――エリの依存対象の消失。
……俺の消失。

[よしわかった。お兄ちゃん、傍にいる。ずっとエリの傍にいるぞ]
ホント? 本当に? ずっと、ずっと傍にいてくれるの? 私の傍に?
[ただし、もうエリの目には俺は見えない。エリの耳には俺は聞こえない]
………………。
……え?
[もう、エリは俺のことに気づくことはない]
そんな。そんなそんなそんな。
そんなのは傍にいるって言わないよ?
どうして? そんなことを言うのかな? 言うのかな??
[でも、それでも俺はエリの傍にいる。見えなくても聞こえなくても、俺はエリの隣にいる]
そんなのって、そんなのって、そんなのって――。
[それでも消えるわけじゃない。本当だ]
そんなのって――ずるい。
ずるいずるいずるいずるい。
ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい。
[首を振るな。泣きそうな顔をするな。信じろ、俺を]
ヤダヤダヤダヤダヤダ。
[俺が今までエリにウソを吐いたことがあるか?]
聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない!
そんな言葉なんて聞きたくないよぉ!
……でも。

623 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:07:49 ID:Lcpy1mzV
でも、でもでもでも、お兄ちゃんがウソをついたことなんて一度もない。
一度も。
[俺が傍にいるんならいい子になるんだろ? 何でもするんだろ?]
そんなの、そんなの酷い詭弁だよ。
詐欺だよ。ペテンだよ!
[いいな。俺が見えなくなってもしっかりやるんだぞ]
逃げるんだ。
[………………]
私のこと置いて、自分だけ逃げるんだ。
私のこと重くなったから、面倒見切れなくなったから、逃げるんだ。
そうでしょ? そうなんでしょう?
[………………]
否定してよ! そうじゃない、って言ってよ!!
これからもずっと傍にいるって、約束してよ!!
[……俺はずっと、エリの傍にいる。約束だ]
嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き!!
もういい! もういい! もういいよ!!
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ!!
大ッキライ!!
お兄ちゃんなんて、お兄ちゃんなんていなくなっちゃえ!!
消えてよ!! もう顔も見たくない!!
[それでも、俺はエリの傍にいるよ]
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!
大馬鹿野郎!!
[それじゃあな。元気でやるんだぞ]
消えて消えて消えて!!
なんだよ、なんだよ、なんだよ!
こんなことになるんなら、お兄ちゃんの声なんかにこたえるんじゃなかった!
お兄ちゃんの質問なんかに答えるんじゃなかった!! 本当のことなんていうんじゃなかった!!
失敗だよ! 大失敗だよ!!
あぁあ、もう嫌だ。嫌だよぅ。
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。
スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
離したくない、離れたくない、ずっとずっとずっと!!
お兄ちゃん!!
………………。
………………。
……え?
え、え、え?
本当に、消えちゃった……?
お兄ちゃん、消えちゃった…………?
やめて、やめてよぉ。
冗談、だよね?
消えちゃうなんて、そんなこと、しないよ、ね?
え? え?
わかんない。わけわかんない。
どうしよ、どうしよ、どうしよう。
ゴメンなさい、お兄ちゃん。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ほら、謝ったよ。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。何度でも謝るよ。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
あ、あぁぁ、謝り方が悪いのかな?
ほら、ど、土下座だよ。額も擦り付けるよ。…………ね?
も、申し訳ございません。もうわがまま言いません。キライだなんて永久に口にしません。
なんでもいうことききます。なんだって、なんだって、なんだって。
だから許してください。もうしません、もうしません。

624 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:09:24 ID:Lcpy1mzV
――そんな妹の様子を見せられ、シスコンの俺が何もしないわけがない。
でもできない。
だから、俺はせめて――

――!

あれ? なんか、体が暖かい?
抱きしめ、られてる?
いるの? お兄ちゃん?
見えないし、聞こえないけど、ここに、いるんだね? お兄ちゃん。
私のこと、守ってくれているんだね?
そうなの?
……本当にそうなの?
それとも私、おかしくなっちゃったのかな? 狂っちゃったのかな?
でも、なんだか、判る。
……ああ、そうなんだ。
香り、お兄ちゃんの香りがするんだ。
見えなくても、聞こえなくても判るのは……、暖かく香るからなんだ。
………………。
お兄ちゃん、居るんだね?
ここに、私の傍にいるんだね?
抱きしめてくれてるんだね。
……アハハ。なんだか、笑えてきた。
どうしよう、涙も止まらないや。
そうか、そうなんだ。
本当に、人って嬉しいときも涙が出るんだね。
………………。
お兄ちゃん。
これからも、傍にいてください。

俺は妹の体から腕をそっと離す。
そして、目の前のアンタに話しかけるために立ち上がる。
「アンタ、最初に言ったよな。妹は俺がいなくてもやっていけるって。本当にその通りだ。確かに――」
――俺なんかがいないほうが、妹のためになる。
『よかったんですか?』
「ああ、これがたぶん俺ができる唯一の償いだろう」
逃げるわけじゃない。置いていくわけじゃない。捨てるわけでも、もちろんない。
「荒療治かもしれないが、依存を断ち切るための手段だ」
俺の妹が、俺の自慢の妹が、俺がいなくなる程度のことで壊れるわけがない。
壊れない、壊れるわけがない、壊れさせるわけにはいかない。
「あーあ、これで本当に孤独になっちまったな」
どうなんだろう。
これで本当によかったのだろうか? 
本当は逃げただけじゃないのか? 置いてきただけじゃないのか? 捨てただけじゃないのか?
手に負えなくなったから、怖くなったから、本当の姿を知ってしまったから。
………………。
違う、違うんだ。
コレが唯一の方法のはずなんだ。
「俺が心配しなくても、妹の周りには妹の味方がいっぱい居る。俺なんかに頼らなくても……」
それでも、そんな妹を作り出したのは、兄に依存する妹を作り出したのは間違いなく俺だ。
その責任は取らなくてはならない。
『そんな責任は存在しません。周りの異常な状況からアナタは妹を守ってきただけ』
たしかに妹を守ってきた。
親から親戚からクラスメイトから、周り全ての人間から。守ってきたはずだ。
それでも、よく考えず、妹の心理なんか考えず守ってきたツケは払わなくちゃならないはずだ。
『だったら最後まで、彼女が自立するまで責任もって、見守ってください』
そんなことでいいのか?
もう何もできない俺は、エリのことを見守ることしかできない俺の償いは、それだけでいいのか?
もっと、厳しい罰が必要なんじゃないか?
エリをあんなにしてしまった俺には。

625 クレイジー兄妹 sage 2007/09/24(月) 12:11:18 ID:Lcpy1mzV
『過保護なアナタには、手出しできない自分を歯がゆく思うくらいがちょうどいい。ちょうどいい、厳しい罰』
……確かにソレは歯がゆいかもしれないが。
『信じてください。彼女を。アナタの自慢の妹を』
………………。
信じる? エリを? 俺の妹を?
『できませんか? あなたが犯した行為の代償は、彼女自身が修正できるでしょう。アナタの自慢の妹はこれくらいじゃ、壊れません。
立ち直ります、きっと。今まで、自分を守ってくれていた兄の背中を見ていたのです。
今度は、アナタ無しでも歩いてゆける』
………………。
だが。
『それに、アナタ自身言ったじゃないですか。彼女にはもうたくさんの味方が居る。
彼女だけでは乗り越えられない壁でも、きっと、かの人たちが助けて乗り越えさせてくれる』
それじゃ、俺の責任放棄にならないか?
『まだ言ってるんですか? それに忘れていませんか? アナタが彼女を見守ることを言い出したんですよ?
責任? 責任ですって? アナタは、当の昔に死んだんです。
死んで初めて、依存体質の妹の少し奇矯な性質を見て、ようやっとそれに気づいたアナタが
それをなんとかしようと、責任を感じたり、修正を試みたりする。滑稽じゃないですか?
なんて馬鹿げた話でしょう。なんて粘着質な話でしょう。そして、なんて彼女に失礼な話でしょう。
彼女を馬鹿にしないで下さい。生きている人間をこれ以上馬鹿にしないで下さい。
死んだ人間が生きている、生きていく人間にとやかく言うのはナンセンスですよ?』
………………。
『信じましょう、彼女を。見守りましょう、いつまでも。それが、姿を消すのともう一つの
アナタにできる償いです。責任です。責務です。いいですか?』
俺は納得できないぞ。そんなんじゃ。
『別にアナタの納得など求めていません。それに何らかの大きな罰を受け、
それによって償うという根性だったら、そんなもの捨ててくださいね?
それは、そう例えば、最初から夏休みの宿題をせず、なんらかのペナルティーを負うことでソレを回避しようとする、みたいな卑しい行為ですよ?
そもそも第一、もう死んでしまっているアナタにこれ以上の罰なんて……。何をどうやって行えばいいというんですか?
馬鹿馬鹿しい。』
……地獄送りとか?
『はぁ? いい年して地獄なんて信じてるんですか? 冗談はシスコンだけにしてください』
シスコンは冗談じゃないぞ。本気だぞ。
『知ってますよ。あなたは本当に妹さんのことが“妹として”好きだったんですね』
………………。
『そして、妹さんはそうではなかった。ただ、それだけの話なのかもしれません』
……どうだろうな。
『妹さんはこれから最愛の人を亡くした、否、依存対象を喪失したことによる重荷を背負って生きていかなければなりません。
何年越しの苦行になるのか、見当もつきません。そして、あなたはそれをただ見守ることしかできない。
さっきから言っているとおりあなたにも相当辛い体験になるかもしれません。
でも、それでも信じて下さい。人間というものの――』

626 230 sage 2007/09/24(月) 12:12:24 ID:Lcpy1mzV
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが、
次回で完結です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。

627 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/24(月) 13:14:56 ID:sGeh4hwJ
貴様……!
GJ


妹意外に黒いなwww

628 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/24(月) 20:11:21 ID:p+Lp/xR3
>>626
うん。面白かった。面白かったけどさ、この展開じゃ妹スレの方が相応しいんじゃないか?

629 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/24(月) 22:26:44 ID:/6QclrzQ
GJ!妹怖いよw

無口、妹、ヤンデレ、依存
すげえ、四つのスレまたげるぞ。

630 565 sage 2007/09/24(月) 23:15:13 ID:n82dSBuw
(´・ω・`) やあ。
今回の話には、グロテスクなシーンや暴力的な表現が含まれるんだ。
と言うわけで、それらのシーンが苦手な人はあらかじめ回避する事をおすすめする。
じゃあ、続きを始めようか。

631 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:16:21 ID:n82dSBuw
 持ってきた食べ物を二人で仲良く分け合って――食べた量は圧倒的に彼女の方が多いが――ふと仁は喉の渇きを覚える。
 そう言えば、食べ物は色々持ってきていたが飲み物を用意していなかった。

「ちょっと待っててくれ。そこの自販機で、何か買って来る」

 寄せ合っていた体が離れ、彼女がちょっと不満そうな声を上げる。
 宥めるようにその頭を抱き寄せ、額に優しくキス。

「すぐ戻って来るから。何か、飲みたいものはある?」

 仁の問いに、少女は小さく頭を振った。

「そっか。じゃあ何か適当に買って来るよ」

 そう言って、仁は公園の入り口へと駆け出した。


 真夜中にもかかわらず、煌々と明かりを湛えた自販機に硬貨を投入。
 続けて迷う事なくボタンを押せば、自販機は堅く重い音をたてて、炭酸飲料の缶を吐き出す。

「さて、何にしようかな?」

 彼女には何を買って行くべきか。腕を組み考える。
 やはり女の子だし、甘いミルクティが良いだろうか。
 それともさっぱりと緑茶か。あるいは仁と同じものが良いか。

「うーん。悩むな……」

 口先では困ったように言いながら、しかし仁の表情は緩んでいる。
 どんな飲み物を買って行くか。そんな他愛のない選択すら、とてつもなく楽しい。
 ほんの一週間前まで、自分がこんな風に甘い時間を過ごすなど考えたこともなかった。

 楽しいのは直接一緒にいる時だけではない。
 夜、眠りに着く前は抱き締めた彼女の柔らかさと温かさ、そして楽しかった時間を思い返し、朝は今日は彼女とどんな一日を過ごすのだろうと夢想する。
 普段の生活にも張り合いが出て、学校でクラスメイトと話すことも多くなった。

「ホント、不思議な娘だよな……」

 ただ一緒にいるだけで、こうまで自分を変えて行く。
 だが、変化は決して不快なものではなく、むしろ変わって行くことが心地良い。

「――と、あんまり待たせると怒られるな」

 我に返ると、わずかな逡巡の後、ミルクティを選択。
 転がり出た缶と、長らく持っていたせいで軽く水滴の付着した炭酸飲料の缶を抱え、仁は急ぎ彼女の元へととって返そうとした。

 その時だ。夜気を切り裂く、不快な排気音が響き渡ったのは。

632 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:18:20 ID:n82dSBuw
 それは、このあたりでも有名な不良達だ。
 珍妙な改造を施したビッグスクーターに、だらし無く着崩した服。
 珍走団と呼べるほど規模こそ大きくないものの、やっていることは彼らと大して変わらない。
 万引き、恐喝、暴行、そして強姦。
 被害の報告こそ多いものの、しかし巧みに逃げ回り、現行犯で捕まることはめったにない。

 そう言えば、少し前までこのあたりは彼らの溜まり場だった。
 警察が見回るようになって一時期は姿を消していたが、どうやら戻ってきたらしい。

 音自体はやや遠い。おそらく仁のいる場所からはちょうど反対側だろう。
 が、彼らがもし、真っ直ぐに公園の中心へとやって来れば――彼女が、危ない。
 そのことに気づいた瞬間、仁は可能な限りの全力で、彼女の元へと急ぐ。


「ねえ君。こんなところで何してんのぉ?」

 髪の毛をけばけばしい金色に染めた、前歯の数本欠けた少年が、にやにやと笑いを浮かべながら、少女の顔をのぞき込む。

「あれじゃない? 家出中」

 スクーターのサイドスタンドを立てながら言うのは、同じく金髪の少年。こちらは前歯は揃っているが、代わりに酷いニキビ面だ。
 ニキビ面の言葉に、歯欠けは笑って、

「ひょっとしてここで野宿でもするつもり? だったら俺達が泊まれるところに連れてってやるよ」
「大きなベッドにシャワーもあるしね」

 歯欠けとニキビが言いながら、近寄ってくる。
 もう一台のスクーターに分乗していた少年たちも、少女の逃げ道を塞ぐように並んだ。

「な、いいだろ?」

 少女の腕を掴んで強引に立たせる。それは誘いではなくより強制だ。
 だが、不良達に囲まれてもなお、彼女は声ひとつ上げないし、怯えた様子も見せない。

「なあ。こいつ、ひょっとしてアレか?」

 反応を欠片も見せない彼女に、後から来た少年の一人が、その頭を指さしくるくる回す。

「だったらむしろ好都合じゃん。さ、行こうぜ」

 と、不意に彼女が声を上げた。
 言葉というより異音に近い、名状し難い声。
 本能的にその異質さを感じたのか、思わず不良達が手を放す。
 仁が駆け戻ってきたのはその時だ。

「待たせたな。じゃあ、行こうか」
「――――♪」

 回りを意識しないような自然さで彼女の前に行くと、その手を掴んで歩きだす。
 割合優等生な仁は、喧嘩の経験などほとんど無いし、トラブルに巻き込まれそうな場所にはめったに近寄らない。
 だから、出来る限り刺激しないように、駆け足にならないように速足で。
 が、不良達が呆気に取られていたのはほんの一瞬だった。

「おいおい、どこに行くんだよ?」

 肩を思いっきり掴まれる。さすがに鍛えているのか、掴まれた箇所に痛みが走った。

「いや、まあ……その……」

 視線を合わせないように曖昧に答える。

633 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:18:59 ID:n82dSBuw
「ああ? 聞こえねぇよ! もっとはっきり言えよ!!」

 恫喝するように大声を上げる歯欠けを宥めたのは、意外なことに仲間のニキビ面だった。

「まあまあトシちゃん。ほら、眼鏡君がびびってるよ」

 確かにニキビ面の言うとおり、精一杯の虚勢を張りながらも仁の足は細かく奮えている。
 が、だからといって屈する訳には行かない。――彼女を守らなければならないから。

「いや。悪いね、眼鏡君。こいつ、見ての通り馬鹿でスケベだからさ」
「んだと、だれが馬鹿だっ!?」

 ニキビ面の言葉に歯欠けが顔を真っ赤にして怒鳴る。
 が、ニキビ面は構わず、

「僕らはただ、楽しく仲間で遊びたいだけだからさ。邪魔しないならとっとと帰っていいよ」

 それは願ったり叶ったりだった。元より、こんな奴らに好き好んで関わるつもりはない。
 仁は彼女の手を引いたまま、急いで歩きだそうとして――次の瞬間蹴り飛ばされた。
 力任せに叩き込まれたつま先が脇腹に突き刺さり、思わず仁は肺の中の空気をすべて吐き出し悶絶する。
 倒れた仁の体を踏み付けながらにやにや笑いを浮かべてるのは、彼を蹴り飛ばした張本人。ニキビ面の少年だ。

「わかってないなぁ、眼鏡君。言っただろう? 僕はみんなで楽しく遊びたいって。
――みんなで、この娘とね」
「ひゃははは、そう言うことさ。眼鏡君は帰ってアニメでも見てな!」

 歯欠けや他の少年もゲラゲラと笑う。
 駆け寄ろうとした彼女が少年たちに阻止され、そのまま芝生の方へと引きずられる。

「じゃあね、眼鏡君」

 とどめとばかりにもう一度つま先を叩き込み、ニキビ面も仲間達の元へと歩いて行く。
 痛みと涙に滲む視界に映るのは、少年たちの体越しに見える、芝生に押し倒された彼女の姿。
 ――瞬間、仁の中で何かが切れた。

 自分でもなんと言っているか分からない滅茶苦茶な叫びとともに、ニキビ面の後頭部目がけ、手にした炭酸飲料の缶を投げ付ける。
 後頭部にジャストミートした缶は、圧力が限界に達したのか命中地点で破裂。周囲に内容物を撒き散らす。
 その光景に、少年たちの動きが止まった。

「ぶわはははっははは! マーちゃんマジうける!!」

 歯欠け達が指をさして爆笑するが、ニキビ面の少年は当然のごとく笑わない。
 ただ、奥歯を噛み、仁の方を振り返るとただ一言。

「――ぶっ殺す」

 それからは、一方的なリンチだった。
 元より喧嘩などめったにしない優等生だ。一対四では敵うはずもない。
 正確には、彼らの一人は少女を押さえ付けていたから一対三だが。

634 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:19:51 ID:n82dSBuw
「ワイが浪速の闘拳やー!」

 ボクシング選手の真似をした歯欠けの拳が、後ろから羽交い締めにされた仁の腹にめり込む。
 思わず胃の内容物を吐き戻した仁に、しかし容赦はされない。

「まだオネンネするには早いぜ、眼鏡君」

 ニキビ面に髪の毛を掴まれ、地面へと叩きつけられる。
 もはや、仁の体はサンドバックと言っても過言ではない惨状を示していた。
 砕けた鼻からは血が溢れだし、前歯も数本欠けている。これでは目の前の歯欠けを笑えない。
 腹や足などの目立たない箇所は特に執拗に殴られている。
 あばらにヒビでも入ったのか、息をする度に酷く痛んだ。

 だがそんなリンチにあっても、仁は平気だった。
 少なくとも、彼をリンチしている間は不良達は彼女に手を出している暇はないから。
 あとは、だれかが騒ぎに気づいて警察を呼んでくれれば――

「あー、なんか飽きて来たな。もう終わりにしてあの娘と遊ぼうぜ、マーちゃん」
「そうだな。そろそろ終わりにしておくか。じゃあ最後に……」

 そう言うと、ニキビ面はスクーターの横に括りつけてあった、一本の鉄パイプを引き抜く。
 元の色が分からなくなるほど使い込まれたそれを手にニヤリと笑い、

「じゃあ、そいつ押さえ付けててよトシちゃん。暴れられて手元が狂ったりしたら大変だから。
あ、あとケンちゃんはその娘こっちに連れて来て。せっかくだから特等席で見てもらおう」

 声にならない声で彼女が暴れるが、しかし力が違い過ぎた。
 がっちりと押さえ付けられ、視線を逸らすことも許されず、これから始まる惨劇に顔を向けさせられる。

「マーちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい♪」
「そーれ、一気! 一気!」

 囃し立てる少年たちの声の中、仁の頭目がけニキビ面が全力で鉄パイプを振り下ろす。
 堅質な鉄の固まりは狙いを違う事なく目標へと命中し、鈍い音と共に内容物が周囲へと飛び散る。
 惨状に無理やり顔を向けさせられた少女の白い肌に、飛び散った赤い色は良く映えた。

 そして仁は、己の中で中で決定的な何かが砕ける音を聞きながら、意識を失った……。

635 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:20:47 ID:n82dSBuw
 頬にあたる、冷たい感触に目を覚ます。
 背中に感じる硬い感触は、公園のベンチか。
 が、不思議と頭の下の感触は柔らかく、暖かい。

「あれ、俺は――?」

 状況が理解できず、そう呟いた仁に応えたのは、聞き慣れた少女の声。
 が、微妙に撥音が不明瞭だ。相変わらずの名状し難い声なので区別はしづらいが。

「――――?」

 頬にあてられた白い手。ひんやりとした感触の正体はこれか。
 そして、頭の後ろの柔らかな感触は、彼女の膝。
 どうやら、ベンチの上で彼女に膝枕をしてもらいながら介抱されていたらしい。
 心配そうに仁の顔を覗き込む彼女は、しかし何故か口一杯に何かを頬張っている。
 その姿がまるで栗鼠のように愛らしく、思わず仁は吹き出した。

「――――!」
「ああ、悪い悪い。ごめんな、心配かけて」

 ――何よ、心配してあげたのに!
 少女の不満げな声に、仁は笑いながらも応えるが、笑った瞬間、頭の奥がズキリと痛んだ。
 手を当ててみれば、そこには大きな瘤。

「うー、痛ぇ……」

 思わず呻いた仁だが、その瞬間気を失う直前までの記憶がフラッシュバックする。

「――――! そうだ、あいつらは!?」

 身を起こし、周囲を見回す。
 だが、あの不良達の姿はどこにも見えない。

「――――?」

 相変わらず口をもぐもぐさせたまま、彼女が首をかしげた。

「なあ、あいつらはどこに行ったんだ? いやそれより、君は平気だったのか――?」
「――――」

 一抹の恐れを抱きながら仁が尋ねる。
 が、少女は柔らかな笑みを浮かべ、心配そうな仁の頬にそっと残った左手を伸ばした。
 ――大丈夫。貴方が護ってくれたから。

 彼女の姿に視線をやれば、確かに服の所々は皺になっているものの、破れられたりしたような跡はなく、そしてわずかに覗く肌にも傷一つなかった。

「そっか、無事だったんだ……。良かった――って、痛っ!?」

 胸を撫で下ろした瞬間、再び頭に鈍痛が走る。
 そんな仁の肩に手をやると、少女は再び彼の己の膝へと導いた。

「あ……うん。ありがとう」

 頭にあたる柔らかく暖かな感触にどぎまぎしながら礼を言う。
 そのまま上を見上げれば、小ぶりではあるが柔らかそうな彼女の胸が視界に入り、仁は慌てて横を向いた。
 その時だ。地面に残された跡と、散らばるモノに気づいたのは。

636 『彼女』の呼び声 第四話 sage 2007/09/24(月) 23:21:38 ID:n82dSBuw
 それは、急発進させようとしたタイヤの跡と、派手に転んだ痕跡。それに砕けたスクーターのミラーだ。
 詳しい事情は分からない。が、類推することはできる。
 恐らく、警察か地域の住人が騒ぎを聞き付けたのだろう。
 そして、人の気配に気づいた不良達は、慌てて仁達を置いて去って行った、と行ったところか。
 そう結論付ようとして、しかし仁の中の何かが否と言った。

「――あれ?」

 何か決定的な記憶の欠落がある気がする。
 思い出せ。気を失う直前、自分はどんな状態だった?
 それに、持ってきた食べ物はすべて食べきってしまったはずだ。
 なら、彼女が今口にしているのは一体何だ?

 そして気を失う直前、彼は何を耳にし、暗く沈む視界の中に、一体何を見た?

「……っ!?」

 頭が痛む。視界がぶれ、気分が酷く悪い。だが――

「――――」

 ――心配しなくて良いよ。怖いことはもう、何もないから。
 もうすっかり聞きなれた彼女の声がゆっくりと仁の中に染み渡っていく。
 仁は手を伸ばし、まるで母親にすがる幼子のように、彼女の片方だけの手をしっかりと握り締めた。
 そして、彼女に髪を優しく撫でられる度、彼の中から違和感と焦燥感が消えて行く。

「――――」

 ――目を閉じて、次に目を開ければ、全ては元通りだから。

「うん……そうだな。何だか今日は……すごく疲れた……」

 再び、仁の視界がゆっくりと暗く沈んで行く。
 だが今度のそれは酷く優しく、穏やかなものだった。
 だから仁は抵抗する事なく、その眠りに身を委ねる。

「――――」

 ――だから、今は……おやすみなさい。


 次に目を覚ますと、仁は公園のベンチで眠っていた。
 腕時計の示す時間は日付の変わるころ。周囲のどこを見回しても、彼女の姿はない。
 無人の公園で、仁は一人、途方に暮れて天を見上げる。
 たった一人で見る月は、彼女と一緒だった時と比べ、酷く冷たく、不気味に見えた。

637 『彼女』の呼び声 第四話 後書き sage 2007/09/24(月) 23:26:19 ID:n82dSBuw
そんな訳で第四話でした。エロも萌えも無くてほんとごめん。
次はまた萌え萌えな展開に戻る……予定。
では、本日はこの辺で。

638 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/24(月) 23:37:59 ID:sGeh4hwJ
こ、これは…………
や、やべえ、彼女の正体と続編が気になってしかたがねえ……
そして凌辱が始まらなくて安心
しかし、あの不良共はどこへ……ま、まさか……


最後にGJ!!せんせー!今夜は続きが気になって眠れなさそうです!!

639 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/24(月) 23:41:03 ID:4yDSdY8n
GJ!
リアルタイムで遭遇してドキドキしたよ
弱いながらも彼女のために命張る彼氏に感動した!
しかし……空白の時間になにがあったか気になって夜しか眠れないぜ

640 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/25(火) 23:04:08 ID:OVJVuHZ8
なんというGJの連打だ
>>626

>>637
も素敵だっ!

641 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/25(火) 23:31:47 ID:9avS9P88
>637
く、、、喰った?!

なにを喰ったかは知らないけどな!w


てなわけで、GJ
続き期待

642 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/26(水) 08:52:03 ID:uRWNf2BD
呼び声とか名状し難き〜とかSAN値が減りそうでGJ。
これで冒涜的な〜とか出たらSAN値が0になるとともにアリスに萌え狂う

643 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/26(水) 12:21:37 ID:RmEG0RyN
GJ!
しかし、最後は「窓に!窓に!」とか言いながらバッドエンドになりそうな雰囲気だなw

644 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/26(水) 16:32:37 ID:Fz3wX352
>>626
>>639

どっちもGJ!! 超GJ!!
しかしどちらも不幸せな終わりを迎えそうで気になるわー
両方とも、幸せになってほしいカップルなんだよなぁ。

いや、読者の意見なんかで作者の決めたラストは変えてほしくは無いけどね。
ドキドキして終わりを待つかー。

645 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/26(水) 16:36:55 ID:Fz3wX352
>>644
スマン、637の間違い

646 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/27(木) 00:26:45 ID:jaW35+X8
ホラー萌えというかなんというか……
ああもうぼかぁ新境地に目覚めてしまいそうですよ!?

647 230 sage 2007/09/27(木) 16:42:04 ID:62G2Gjnw
これより、投下させていただきます。
今回はエロは微塵も御座いません。
真に申し訳御座いません。
それでも構わないと言う方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

648 クレイジー兄妹 sage 2007/09/27(木) 16:43:21 ID:62G2Gjnw
俺が死んで数年が経過した。
俺の事を感じることがなくなったエリ。
そんなエリを支えてくれた武田。
そして、二人を見守り続けることしかできなくなった俺。
………………。
俺の事を本当の意味で喪失してしまったエリのこの数年は……。
酷い、本当に酷い数年だった。
“アイツ”は地獄を否定したが、その数年の二人は間違いなく地獄と形容しても差し支えは無いはずだ。
それほど酷かった。
地べたを這い蹲り、砂を噛み、泥水を啜るような日々が過ぎ、経過していった。
………………。
それでもエリは立ち上がった。
武田は、周りの人間たちは、そんなエリを文字通り支えてくれた。
その時、俺は確かに見た。
人間というもののしぶとさを、図太さを、強かさを、……素晴らしさを。
そして、知った。
本当に俺は必要なくなった、といういことを。
だから、決めたんだ。
あの二人に来るべきときが来たときに。
――決断したんだ。

コンコン。
儀礼的にノックをする。
本当はもう必要ないことは知っているが、入るたびにソレをするのを忘れない。
「は……いる、よ。……ぉにぃ、……ちゃ、ん………」
一声かけるのもその一連の儀式の一つだ。
私は、もう使われなくなって久しい兄の部屋に入り、彼を招き入れる。
彼は始め躊躇していたが、私の顔を見て決心したのか、ようやく足を踏み入れた。
「キレイだね」
意外そうな彼の声。
キレイなのは当たり前。
私が部屋の中を定期的に掃除しているので生前より清潔なくらいだ(というのは言い過ぎだろうか)。
私は部屋の中心で大きく深呼吸する。
あの時以来、感じることのなくなった兄の香りを、気配を、全身で感じたような気がした。
私たちは二人して、兄の机の前に横に並んで立つ。
彼の顔をうかがう。
(本当にするの?)
彼の顔には、そうはっきり書いてあるのを感じる。
しかし、コレは必要なこと。
そして、とっても重要なことなのだ。
私は彼に頷き、彼も迷いを振り切った顔をして私に頷き返した。
もう一度深呼吸をして、兄の机の正面に向き直る。
そして、少し目を閉じた後、私は口火を切るように口を開いた。
「ぉにぃ、……ちゃぁ、ん………。きょ、きょ、うは……ほぅ、こっくが……ぁる……の」
………………。
もちろん、返事はない。
構わず私は続けた。
「……わぁた、し。……こ、のひぃ、と…………と、け、こん……しまぅ」
私は彼の顔を見上げる。彼も私のほうを見ている。
そして、決然とした表情で彼は、さっきの私と同じように前を向いた。
「……お久しぶりです、お兄さん。武田です。武田信輝です」
私は彼が真剣に名乗っただけで泣きそうになってくる。
ありがとう。
こんな馬鹿げた、異常なことに付き合ってくれて。
ありがとう。
「僕、大学卒業したら、就職することになってます。もう、内定ももらってます。僕の両親と、
エリさんの両親もこの結婚に賛成してくれました。失礼ながら最後になってしまいましたが、ご報告にあがりました。
……スイマセン。敬語とか上手にできなくて」
そんなこと、ない。
確かに、上手ではないかもしれないけれど、伝わってる。

649 クレイジー兄妹 sage 2007/09/27(木) 16:45:34 ID:62G2Gjnw
伝わってるはずだよ、信輝くん。
「でも、お兄さんには正直、複雑な感情しかもてません。お兄さんが彼女のこと、
……エリさんのこと、昔から守っていたのは知ってます。でも、そのせいでエリさんは
お兄さんが死んで、相当、苦しみました。何年も何年も。お兄さんに、……依存してたから」
………………。
「それに、そんな理想的な偶像になってしまったお兄さんに張り合わなくちゃならなかった僕も、苦労しましたし、苦しみました。
……すみません。生意気なこと言って。……でも、事実です。恨み言の一つぐらい言わせてくだ――」

[ふん。図に乗るなよ。武田]

「………………、――え?」
[とはいえ、その気持ち、分からなくなくなくも、なくなくない]
「僕、え、………………えぇぇ、ど、な、何……?」



彼の様子がおかしい。
彼の顔を見上げると、彼は目を見開き、顔を青くしたり真っ赤にしたり忙しい。
まるで、そう。

幽霊にでもあったように。

「……ど、ぅし、たの……?」
しかし、彼は固まったまま答えない。
[やはり、武田、お前にしか聞こえていないようだな]
「………………ひ、ひぃぃぃ」
彼は気の抜けるような声を出した後、その場に跪いてしまった。
「のぉぶ、て、るくん。……らい、じょーぶぅ……!?」
[おいおい、コレくらいのことで気を失うとは、本当にコイツで大丈夫なのか? ま、都合はいいが……]
「のぉぶ、てるくぅう……! のぶ、てぃ、るく、ん……!?」
私は白目を向いている彼の肩を揺する。
それが功を奏したのか、彼の黒目が戻ってくる。
「ぁ、だぃ、じょー……ぶ?」
彼はいきなり立ち上がると、大きく深呼吸した。
そして、そのまま体を軽く動かす。
「のおぶ……てぇる………くん?」
その時。
気づいた。
彼の体から、あの時以来、感じることのなかった香りが漂っていることを。
この部屋に、かつて充満していた懐かしい、あの香り。
姿勢を正した彼は、私を立ち上がらせると、私の頭を豪快に撫でた。
「短い髪も、よく似合ってるぞ、エリ」
それは幼い頃、あの人がよくしてくれた行為。
信じられないが、でも、直感が伝えてくる。
私は、震える声で告げた。
「………お、お兄ぃ……ちゃぁ、ん?」
彼は、その人は、思い切り破顔した。
「久しぶりだな。エリ」
間違いない……! この人は、この人は……!
私の目から涙が溢れてくる。
でも、私は泣かない。
目の前の人に泣きついたりもしない。
だって、そんなことをしたら、せっかく出てきてくれたのに――
「ひさ、ひさしぶぅい、だぁ……ね」
――安心させられないじゃないか。
その人は笑顔のまま言う。
「結婚の報告か。わざわざ、どうもな」
「い、いちぉう、ね」
本当は一番に報告したかった。
そして、成長した自分の姿を知って欲しかった。

650 クレイジー兄妹 sage 2007/09/27(木) 16:48:45 ID:62G2Gjnw
「でも、必要なかったかもな。俺はお前の傍にずっといたから。お前らのこと、ずっと見てたから」
「……スゥ、トーカー?」
かの人は、私の軽口に軽く吹き出す。
「おいおい。見えなくても聞こえなくても、ずっとお前の傍にいるって、約束しただろ?」
「ふ、ふふ。わぁ、かぁぁて、る」
見えなくても聞こえなくても、ソコにいてくれていると信じるだけで、安心できた。
でも――。
「……でも、もう俺は必要ないよな?」

――今度こそ本当にお別れしなきゃ。

「……ぅん」
判ってる。解ってる。わかってる、ハズ、なんだ。
かの人は、おもむろに天井を見上げる。
「それにしても、お前には迷惑かけたなぁ。この数年、ものすごかったものな。
っていうか、結果論的には武田に迷惑かけっぱなしなような……。お前のほうから謝っといてくれよ。
俺が悪かった、って言ってたって」
「……う、ん」
違う。
私は迷惑なんてかけられてない。
信輝くんには迷惑だったかもしれないけれど、それでも、私は迷惑なんてかけられていない。
私のほうこそ、お兄ちゃんに守ってもらってばかりで。
お兄ちゃんが生きている間中、死んでからも。
こんな私のことなんかを。
「さて、本当はもっと色々話したかったんだけど、もう時間みたいだ」
「……行ぃく、の?」
イヤだ。
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ。
本当は泣きつきたい。
あの時のように駄々をこねて、あの時のように引き止めたい。
でも、もう、そんなことはできない。
……お兄ちゃんのこと、休ませてあげないと。
「握手しようぜ。我が妹よ」
「ぁうく、しゅ?」
かの人は大きく頷いた。
「そう。別れの記念だ。……いいだろ?」
別れ、という言葉に、私の胸がビクリと反応する。
でも、そんなことは表には出さない。
「……へぇん、なぁ……の。でっもぉ、ぃいよ……」
かの人は右手をズボンに擦りつけ、手の汗を拭く。
私もソレに習い、スカートで簡単に手を拭った。
そして、どちらともなく手を差し出し、握手した。
「じゃあな。エリ。幸せになるんだぞ」
「ぅん。バ、イ……バァイ。お、にぃぃ、ちゃあ、ん」
かの人は私の手を握ったまま、全身の力を失ったように床に倒れこんだ。
私は両手でかの人の手を握って、しゃがみ込む。
たぶん、もうじき彼が目を覚ますだろう。
まだ、かの人がその辺にいるかもしれない。
でも私は我慢ができなかった。
私は力なく倒れた、かの人の体に抱きつくと、力いっぱい泣いた。
別れの意味を初めて理解した子供のように。
泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
涙が溢れて止まらない。
わんわん泣く。
そして、泣きながら思う。
かの人に対する感謝と、謝辞と、別れを。

お兄ちゃん。
私、しあわせになります。
だから。そして、おやすみなさい。

651 230 sage 2007/09/27(木) 16:56:39 ID:62G2Gjnw
以上です。

稚拙なSSにここまで付き合ってくださった方々。
駄文の垂れ流しを許容してくださった方々。
あまつさえ感想まで書き込んでくださった方々。

皆様のおかげで何とか完結させることができました。

此処までのお付き合い、本当に有難う御座いました。




……しかし、今回の作品で自分の力不足を痛感いたしました。
ほかのSS書きの皆様に負けぬよう、頑張っていこうと思います。

では、また、いずれ此処か、何処かでお会いいたしましょう。
その時まで御機嫌よう。

652 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/27(木) 16:59:29 ID:zwVxTOm5
一番槍GJ
期待してるのでまたいつか投下して下さい

653 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/27(木) 17:53:15 ID:9N9h6amt
GJGJ!
次も期待してるぜー

654 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/27(木) 17:56:08 ID:xj94x19v
GJ〜!

いいねえいいねえ、ちょっと前が滲みましたね

また書きにきてください

655 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/27(木) 22:37:06 ID:5aw8wMCg
乙。
題名とは裏腹に、かなり健全な作品でしたなあ

656 名無しさん@ピンキー age 2007/09/28(金) 04:06:35 ID:o1+Fww1B
保守

657 名無しさん@ピンキー 2007/09/28(金) 18:19:13 ID:Mto4QkYd
>>651
ガチで軽く涙が出ました・・・・
Gj。そして乙。

しかし次の文。

「妹は脳の言語野に後天的な障害がある。
そのせいで妹は、極めて端的なことを、極めてゆっくりとしか話せない。 」

だから「……ど、ぅし、たの……?」
になるんだが、依存が発動した時は饒舌になったなww

書きもしない俺に文句を言われるのも癪だろうから
これ以上は言わんよw

しかしGJ


658 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/28(金) 19:49:24 ID:YfPn//pl
出会い系で逢えないのって理由がある。

http://550606.net/

659 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/28(金) 21:42:24 ID:NxkyVnyT
やつはスルーで削除待ちしないと

それはそうと>>651GJ!!
早く新さ(ry



そういえば、かおるさとー氏とかじうご氏とかどうしてるんだろ

660 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/29(土) 00:32:21 ID:+3U0Ewbm
>>651GJ!
タイトルや途中の流れからヤンデレかと思ったけどすごく綺麗で感動的な話でした。
できればもっと長く続いてほしかったくらい……
とにかくGJ!

ところで彼女の呼び声なんだけど次話で仁の日常を書こうと思ったら、アリスの出番が皆無になりそうなんだ
さすがにこれはまずいかね?(´・ω・`)

661 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/29(土) 00:43:49 ID:VrxH1mQV
>>660

どこに問題があるんだ!!
我々はただ提供された作品を読むのみ……!

662 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/29(土) 05:21:44 ID:M+UyQWV3
>>660
いちおうスレタイを意識しておいては欲しい、とだけは言っておきたい。

663 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/29(土) 10:23:10 ID:mhqUey4a
ジャンプのバトル漫画が全話戦っているわけじゃなし、
問題はないですよね。
ただ、アクションシーン無しに10話も20話も続くと、それは読者に
オカシク思われても仕方が無いわけで。

ってとこで、作品の方向性さえ見失なわなければいいんじゃないでしょうか。


664 名無しさん@ピンキー sage 2007/09/29(土) 15:55:36 ID:u2IxKkEI
物語が最終的に無口萌えできれば構わないかと

665 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:10:12 ID:4EGvICgj
お久しぶりです。かおるさとーです。
また二ヶ月も開いてしまいました。くやしいっ、でも慣れきっちゃう……最悪ですね。
以下に投下します。
今回縁シリーズ最終話のはずでしたが、スレの残り容量が足りなさそうなので別のやつを。
小ネタのようなものなのでエロはなしです。すみません。

666 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:11:07 ID:4EGvICgj
『幼馴染みとエプロンと』



 彼女は小さくて、無口で、愛想も何もないけれど、
 制服の上からエプロンを着けたときだけ、ぼくだけの無敵の存在になる。


「ねえ橋本」
 昼休み、急に声をかけられてぼくは席に着いたまま振り返った。
「なに?」
 見るとすぐ後ろに同じクラスの女子が立っていた。出席番号2番、今口翔子(いまぐちしょうこ)。
「ちょっといいかな」
「?」
「あんたさ、甘利(あまり)と仲いいよね」
 急な問いかけだが、ぼくは揺れない。何度か訊かれ続けたことがあるので、もう慣れきっていた。
「まあ、幼馴染みだし」
「……付き合ってんの?」
「……随分ストレートだな」
 またこの質問だ。そして答えはいつも同じ。
「違う。そんな事実はない」
「ホントに?」
「うん。で、なぜそんなことを?」
 聞き返すと、今口はあははとごまかし笑いを浮かべた。
「いや、甘利が来てるから」
 言われて教室の入り口を見ると、見知った顔がぼんやりと佇んでいた。
 ぼくは立ち上がり、今口に礼を言う。
「ああ、ありがとう」
「いや、別に礼はいらないけど……」
 なぜか口ごもる今口を尻目に、入り口に向かう。
 甘利紗枝(さえ)はぼくの顔を見るや、手に持っていた何かを目の前に突き出してきた。
「……紗枝?」
「……」
 突き出されたものは、弁当箱。
「持ってきてくれたのか?」
 こくこくと頷く紗枝。それからちょいちょい、と天井を指差した。
「屋上か。わかった、先に行っててくれ。飲み物買ってくから」
 素直に頷くと、紗枝は足取りも軽く廊下を駆けていった。
 それを見送ってぼくも準備をする。鞄から財布と携帯電話を取り出して、
「やっぱり付き合ってるようにしか見えないけど」
 不意に横から言われて、つい苦笑した。しつこい。
「ホントに違うんだけどなー……」
 小さく呟いてみる。聞こえたのか、今口が軽く吹き出した。
「ごめんね、変なこと言って。じゃ、甘利によろしく」
「ああ、伝えとく」
 持ち物をポケットに収め、ぼくは教室を飛び出した。


 甘利紗枝は近所に住む幼馴染みだ。
 最初の出会いは四歳。公園の砂場でとても上手いゾウの絵を描いていた。
 その日からぼくらはいっしょに遊ぶようになった。
 無口な紗枝を引っ張るのはぼくの役目で、いろんなところを駆け回った。公園で、街中で、空き地で、家の中で、たくさんの日々を過ごした。
 それは幼稚園、小学校、中学校と同じところに通い、同じ高校になった今でも、基本的には変わらない。
 小さい頃のように駆け回ることはできないけれど、同じ時を過ごすことはできる。
 ずっと同じ道を歩んできた、大切な友達。
 それが甘利紗枝だった。

667 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:13:38 ID:4EGvICgj
 屋上で差し出された紗枝の手作り弁当を見て、ぼくはたまらず唸った。
「クリームコロッケ六個入りは反則だ。わざわざぼくの好物を入れてくれる辺り、さすが幼馴染み!」
「……」
 紗枝はおかず箱に箸を伸ばすや、中身を半分に仕切り始めた。
「あ、やっぱり半分こなんだ」
 頷く紗枝。
「うぅ、ぬか喜びはダメージ三割増しなんだぞ」
「……」
 紗枝は首を傾げると、また箸を伸ばした。自分の側からぼくの側に、クリームコロッケを一個移す。
「え? くれるの?」
 首が縦に振られた。
 感謝感激雨あられですよ紗枝さん。
「じゃあ卵焼きと交換ってことで」
 いただきます、と手を合わせ、ぼくらは弁当を食べ始めた。
「んじゃこれ、卵焼き」
「……」
 紗枝は無表情だ。ぼくは気にしない。これが紗枝の常態だからだ。
 代わりにちょっとからかってみる。
「昔みたいにあーんとかしてあげようか?」
 ぼくは卵焼きをつまみ上げると、紗枝の前にゆっくりと持っていく。
「はい、あー……」
 瞬間、紗枝の左手が稲妻のように閃いた。
「うわっ」
 同時にぼくの右肘に軽いしびれが走り、思わず卵焼きを投げ出した。
 紗枝はそれを右手の箸で正確にキャッチし、自分の口の中に放り込む。
「……」
「……」
 もぐもぐもぐもぐ。
 凄まじい早技の後にもかかわらず、紗枝の表情は変わらなかった。
「ごめんなさい、はしたない真似をしました」
 微かに怒っているのを見て取り、ぼくは素直に謝った。
「……」
 わかればよろしいとばかりに肩をすくめる紗枝。
 悪ふざけが過ぎたようだ。ぼくも食事に戻る。せっかくのクリームコロッケなのだ。おいしくいただこう。
 口に入れた瞬間、甘く柔らかい感触にぼくはとろけそうになる。
「うん、うまい」
 大げさな感想など必要ない。この料理を讃えるのに多くの言葉はいらない。
「……」
 紗枝は無言で差し入れたペットボトルのお茶を飲む。
 そのとき、横合いから声がかけられた。
「紗枝せんぱーい」
 複数の声が重なるように響く。一つ下の学年色のスリッパを履いた女子が二人こちらに寄ってきた。
 先頭の娘は顔見知りだった。紗枝と同じ道場に通っていた、折本糸乃(おりもといとの)という下級生だ。
 ぼくは正直うんざりした。この折本という少女は、屈託なく紗枝やぼくに接してくれるいい子なのだが、一つだけ問題があった。
「あっ、すっごく美味しそう。先輩の手作り?」
 紗枝はこくりと頷く。まずい、ロックオンされた。
「橋本先輩もいっしょですか。また紗枝先輩の手料理食べてるなんて、彼氏だからってずるいー!」
「彼氏違うってば。そんなこと言ってまた横取りに来たんだろ」
「うっ、まるでこちらをハイエナのように言う! 私そんなに意地汚くない」
「ハイエナはサバンナの食物連鎖に欠かせない生き物なんだよ」
「え? えっと……それって誉めてる?」
 すごい思考回路だなおい。
「……ハイエナ以下ってことじゃないかしら?」
 後ろの娘が控え目に補足をした。おとなしそうな娘だけど、なかなか聡明だ。
「うぐ、橋本先輩なんてキライだーっ! 紗枝先輩、一刻も早く別れて下さいこんな人!」
「ってどさくさにまぎれてコロッケ取るな! 返せ!」
 端から見たら醜い争いだったかもしれない。ぼくと折本はぎゃあぎゃあと言い合う。

668 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:16:47 ID:4EGvICgj
 そこで頭をはたかれた。
「いてっ」
「いたっ」
 紗枝が左手でぼくらの頭を一閃したのだ。
 じろりと睨まれてぼくらは低頭した。
「ごめん、紗枝」
「ごめんなさい紗枝先輩」
 後ろの娘がくすくす笑っている。折本はそれに頬を膨らませたが、やがておとなしく腰を下ろした。よし、コロッケは死守した。
 と思ったのも束の間、紗枝が弁当箱を折本の方に押しやった。
「え、もらっていいんですか?」
 頷く幼馴染み。あれ?
「やたーっ! さすが紗枝先輩、どっかの彼氏とは器が違う!」
「黙れ」
 紗枝、人が良すぎるにも程があるぞ。
 後ろの娘はにこにこと楽しそうだ。
「おもしろいですね、先輩方って」
「いや、嬉しくない……。ところで君は? 折本の友達?」
 女生徒は柔らかく笑うと、ぺこりと頭を下げた。
「後羽由芽(あとばゆめ)と言います。糸乃とは同じクラスなんです」
「いつもこれに付き合ってるのか。大変だな」
「これとか言うなー!」
 うるさい、黙って食え。
 そこで紗枝が操り人形のように小首を傾げた。
「? なんでしょうか、甘利先輩」
「……」
 左手で弁当をつい、と勧める。
「え? でも私は……」
「いっしょに食べようよ、後羽さん」
 後押しをしてやると、紗枝がこちらに目を向けてきた。ぼくはそ知らぬふりで続ける。
「みんなで食べた方が楽しい。紗枝も遠慮するなだって」
「そうそう、せっかくの先輩の申し出、受けなきゃ損だよ」
「お前はもっと遠慮しろ」
「橋本先輩に言われたくない」
「……」
 後羽さんは少し逡巡したようだったが、やがて小さく微笑した。
「……それじゃ、私もお呼ばれしますね」
 瞬間、紗枝の顔に微かな笑みが生まれた。
 それを見て、ぼくは胸にじわりと嬉しさが広がるのを自覚した。


 放課後。
 夕焼けに覆われたアスファルトの上をぼくと紗枝は歩いていた。
「え、うちに来るの?」
 頷く幼馴染みにぼくは戸惑った。それは、ちょっと、
「……」
「いや、変なことなんて考えてないけどさ」
 紗枝は玲瓏院流という古武術の有段者である。襲ったりしたら白打と蔓技でボコボコにされる。そもそも彼女に対してそんなことをする気はない。
 紗枝は右の親指をぐっと立てて見せた。
「なら問題ないって……まあいいけど」
「……」
 夕日の下、紗枝は無表情な小顔を微かに緩ませた。
 その微笑は幼年の頃を思い起こさせるような懐かしい顔だった。
 普段から無口で、学校ではほとんど無表情で、紗枝は本当に何を考えているのかよくわからない女の子だ。
 そのくせ他人の世話をよく焼き、誰に対しても真摯に接するので、周りからはとてもよく慕われている。
 そんな紗枝が、かつてはいつもぼくの後ろに隠れていたなんて、誰が想像できるだろう。
 無口で引っ込み思案な性格だったため、なかなか友達ができなかった昔。それを助け、フォローするのはぼくの役目だった。
 そんなぼくにたまに見せてくれた表情が、今目の前の微笑だった。
 無表情な彼女が見せる精一杯の笑顔。とても大好きな顔だ。
「シチューが食べたいな。じゃがいものたくさん入った」
 ぼくの言葉に紗枝は微笑んだまま頷いた。

669 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:20:16 ID:4EGvICgj
 家に着くと、紗枝は鞄からエプロンを取り出した。
 紗枝がぼくの家で着用する、そっけない白のエプロン。
 ぼくはそれを見た瞬間、心臓が高鳴って息が詰まりそうになった。
 それは甘利紗枝が甘利紗枝でなくなる変身スーツなのだ。
 そして変身した彼女は、ぼくだけの無敵の存在になる。
 藍色の制服の上から、紗枝がエプロンを着けた。ワンピースであるために、なんだかメイドみたいな格好だ。足りないのはカチューシャだけ。
 瞬間、紗枝の目が夢から覚めたみたいに大きく開かれた。
 そしてぼくに相対するや、ぺこりと頭を下げた。
「お久しぶりです、風見(かざみ)さま」
 いつもはまず聞かない声が涼やかに放たれた。
「久しぶり。冴恵(さえ)」
『変身』した彼女はにこやかに笑う。紗枝にはありえない表情。
 と、
「えいっ」
 いきなり首に抱きつかれた。
「うわっ!」
 小さな体をなんとか支える。柔らかい胸の感触が心臓に伝わる。
「ちょ、ちょっと」
「寂しかったです、ずっと会えなくて」
 頭を肩に乗せて頬を寄せてくる冴恵。穏やかな匂いがぼくを惑わせる。
「わかったから、ちょっと離れてくれ」
「くっつくのイヤですか?」
「そうじゃないけど、帰ってきたばかりで着替えてないし、鞄も置きっぱなしだからさ、ちょっと待ってて」
「わかりました。じゃあ私、下で待ってますね」
 ぼくは冴恵をリビングで待機させると、二階の自室へと戻った。
 着替えながら、下で待っている彼女のことを思う。
 冴恵はあの白いエプロンに憑いている精霊だ。……たぶん。
 確証が得られないので明言は避けるが、本人に言わせるとそういうことらしい。
 出会ったのは一年以上前。フリマで見かけたエプロンをたまたま購入して、それを見た紗枝がひどく気に入ったのでプレゼントしたのだ。
 早速身に付けた紗枝は一瞬で様子が変わり、あの『冴恵』が現れたのだった。
 急にご主人様呼ばわりされた時は紗枝がふざけているのかと思ったが、開く口から次々と放たれる明るい言葉に、ぼくはそれが紗枝じゃないことを確信した。
 事情を聞いてみると、冴恵は自分がいつ生まれたのかわからないらしい。精霊というのもなんとなくな自己感触でしかなく、怪しいものだった。
 ただ彼女は、特定の誰かのために尽くすことを使命のように思っているらしく、ぼくのために尽くしたいと言ってきた。
 お願いします、どうか見捨てないで下さい、必ずあなたのお役に立って見せますから。
 冴恵が涙を流しながら訴えるのを見てぼくは怯んだ。幼馴染みの姿で幼馴染みにありえないことをされると不気味というか、凄まじい違和感を覚えた。
 それでも少し気の毒に思ったので、ぼくは彼女の申し出を受けた。
 思えば安請け合いしたものである。ある問題をすっかり失念していた。
 冴恵はエプロンを誰かに着てもらわないと現出できないのだ。
 要は自由にできるボディがいるのだ。誰かの体を借りなければ彼女は何もできないのである。
 タンスの中に押し込んでおけば実質封印できるので、彼女から逃れるにはそれはむしろ好都合な点だった。
 しかしタイミング悪いことに幼馴染みがそれを気に入ってしまい、プレゼントして以来度々着用するのである。
 その度に冴恵は紗枝の体を使い、ぼくに仕えるようになった。
 プレゼントしたエプロンを今更取り上げるわけにもいかず、結局そのままにしてある。
 悪事を働くわけでもなく、むしろパーフェクトなまでに身の周りの世話をしてくれるので、有用なことこの上ないのだが、やはり幼馴染みの姿形に違和感ありありである。
 まるで幼馴染みがぼくだけの専属メイドになったかのようで、たまらなく邪な心が時折沸いて出てしまいそうだった。
「そりゃ嫌じゃないけどさ……」
 知らず一人ごちる。
「ありがとうございます」
 背後から急に返されてぼくは振り返る。
「お茶をお持ちしました、風見さま」
「ノックぐらいしてくれ……」
「したんですけどお気付きになられなかったようで」
「……」
 ぼくは首を振って、ごまかすようにベッドに倒れ込んだ。自分の子どもっぽい行動が少しだけ恥ずかしかった。

670 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:22:28 ID:4EGvICgj
 程よい温度の紅茶を飲みながら、ぼくは目の前のメイドを眺める。
 にこにこと笑顔を浮かべながら正座する冴恵。なんだかぼくの側にいられるだけで幸せといった様子だ。
「風見さま」
「何?」
「今日は何時までよろしいのですか?」
「親が帰ってくるのが十一時くらいだから、まあその前までかな」
「ならあと四時間はありますね」
 嬉しげに笑う冴恵。
「夕食はシチューとポテトサラダを作りますね。お風呂はさっき準備しましたので、あと二十分もすれば入れますよ」
「ありがとう。でも大丈夫? 久しぶりで結構疲れたりしない?」
「優しいですね、風見さまは。でも大丈夫です。私、あなたのためなら疲れませんから」
「……」
 顔が熱くなる。面と向かってそんなことを言われると、なんというか、
「照れました?」
「……からかわないでくれ」
「本気でもありますよ?」
「……」
 嘘はないようだった。
「……あのさ、どうしてそこまでぼくのために」
「ご主人様だからです」
 即答だった。
 それからふと砕けた声音に変わり、
「……でも、今は少し違うかもしれません。風見さまだからこそ私は頑張ろうという気になるんだと思います」
「……どういうこと?」
 冴恵は自分の耳を恥ずかしげに撫でた。
「これまでほとんどのご主人様は、私に優しい言葉なんてかけてくれませんでした。でも風見さまは私を対等に見て下さっているように思って、すごく嬉しかったんです」
 あんまり昔のことはよく憶えていないんですけどね、とごまかし笑いをする。
「だから私、風見さまのために一生懸命頑張ります。お望みでしたら、夜伽の方もお世話させていただきますよ」
 ぼくは思わぬ言葉に紅茶を噴き出しそうになった。なんとかこらえようとして喉の奥に引っ掛け、激しく咳き込んだ。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「だ……だい、じょうぶ」
 ごほっ、ごほっ、と何度か咳き込み、時間をかけて持ち直した。
「急に変なこと言わないでくれ。夜伽って」
「そんなに変なことですか?」
「いや、その、」
 冴恵の顔が真剣な色を帯びていく。
「風見さまは私の申し出に応えてくれました。私が思い出せない名前を代わりに考えてつけてくれました。あなたに尽くすことが私は好きなんです。尽くせることが嬉しいんです」
「……」
「あなたが私の体を求めるなら、私はいつでも、いくらでも差し出します」
 冴恵の目には混じりっけのない純粋な想いがこもっていた。
 小さいながらも健康的に発達した体のラインが服の上から窺える。
 ぼくは小さくため息をついた。
「駄目だよ。絶対に駄目」
「なぜですか?」
「その体は紗枝の、ぼくの大切な幼馴染みのものだ。それを傷付けることはできないよ」
「――」
 はっとなった冴恵に、ぼくは微笑みかけた。
「君が実体を持っていたらまた別だけど、その体でいる以上は、その点は譲れない」
 大切な幼馴染みを欲望だけで傷付けるなんて、ぼくにはできなかった。中身や外身の問題でなく、ぼく自身の想いの問題だ。
「……」
 冴恵はしばらく何も言わなかったが、やがてにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「紗枝さんを大事に思っているのですね」
「うん」
「やっぱり風見さまは私にとって最高のご主人様です。すばらしいです」
 別にすばらしくはないが、冴恵は納得したようだった。うんうん頷いて勝手に自己完結してしまっている。

671 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:30:33 ID:4EGvICgj
「あ、でも、一つだけわがまま言っていいかな」
「? なんですか?」
「シチューはじゃがいも多めでお願い」
 冴恵はきょとんとして固まった。
 だがそれも一瞬で、理解が及ぶやすぐに花のような笑顔を咲かせた。
「――はいっ」
 幼馴染みの小顔がより一層輝くようだった。


 翌日。
「おはよう、紗枝」
 玄関を出てすぐ向かいの家から出てきた幼馴染みに、ぼくはいつもどおり挨拶をした。
 紗枝もすぐにこちらに気付き、ほっそりした右手をひらひらと振って返してきた。
 もちろんその体にはエプロンなんか着けてなくて、
「少し寒いかな。風邪とかひいてない?」
 ふるふると首を振る彼女は、昨日とはちがって無口なままで、
「……」
「え、今日もお弁当作ってきた? じゃあまたいっしょに食べよう」
 世話を焼く辺りはあまり昨日と変わってなくて、
 それだけを見ればあのメイドさんはやっぱり演技なのではないかと疑ってしまう。
 それでも構わないと思う。エプロンを着ければ彼女は現れ、それ以外はいつもの幼馴染みでいてくれる。問題はない。
 エプロンを着けてる時だけ、学校で頼りにされている優等生じゃなく、ぼくだけの無敵のメイドになってくれる。誰も知らない秘密だ。
「多めに作ってきたの? ああ、折本たちの分か。後羽さんのだけでよかったと思うけど」
「……」
「いや、あいつは単に食い意地張ってるだけだ。断じてクリームコロッケは譲れん!」
「……」
「子どもっぽくてごめんなさい。あー、でも後羽さんにならコロッケ取られてもいいかなー」
「……」
「い、いや、別に気があるわけじゃないって。ようやくかわいい後輩に恵まれた感が強くてね。うん、妹に欲しい」
「…………」
「じ、冗談だよ。そんなに怒るなって」
 いつもと変わらないやり取りをしながら、ぼくらは登校する。
 朝日が冷たい空気を吹き飛ばすように上がっていく。白い息も、小鳥のさえずりも、毎朝と同じ光景だ。
 小さな秘密を抱えて、また今日も、一日が始まる。

672 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY sage 2007/10/01(月) 10:45:14 ID:4EGvICgj
「投下終了だよ桃香ちゃんっ」
「人の名前で勝手に遊ぶな……」

というわけで投下終了です。まあ上のアニメも終了しましたが。

無口にエプロンにメイドに幼馴染み。いろいろ趣味をぶちこんでみたらこうなりました。
これを使ってもっと書いてみたいですね。
縁シリーズは容量の問題で次スレに回します。どなたか立てて下さいー。

>>659
縁シリーズずっと書いてます。伏線回収が大変です。
ちなみに今回のやつは三日で書きました。

673 名無しさん@ピンキー sage 2007/10/01(月) 14:44:54 ID:/aR7sTR+
かおるさとー氏乙華麗
いやぁ、久々に平日休暇をとればいきなり新作を読めるとは
縁シリーズに続く新シリーズ化にも期待。

674 673 sage 2007/10/01(月) 17:50:43 ID:/aR7sTR+
次スレ建てました

無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191228499/

わかりやすく、スレタイはこのスレを踏襲しておりますのでヨロシク。

675 名無しさん@ピンキー sage 2007/10/01(月) 17:52:09 ID:1tg3K4yY
かおるさとー氏GJ!!
ええいなんという期待感高まる面白い作品!!

そしてたしかに大変そうですね……縁シリーズ伏線回収


さてと、ちょっと探してくる
あのエプロン

676 coobard ◆69/69YEfXI sage 2007/10/02(火) 02:25:43 ID:j6s1yNec
一ヶ月ごとに来ています、coobardです。
無口なミュウマ、最終話です。
エロは前半のみです。
よろしければお読み下さい。

677 1/10 sage 2007/10/02(火) 02:26:16 ID:j6s1yNec
 夕日。
 なぜかその日は、夕日の色が赤過ぎて嫌な感じがした。

 放課後、ぼくとミュウマはいつものように待ち合わせて、一緒に帰っていた。
 途中にある人気の少ない公園の中を、やっぱりいつものように何度かぐるぐると回る。
 帰ってしまうのが惜しい気がするからだ。
 また明日逢える。そう解ってはいても、今、逢っていることのほうがずっと大切に思える。
 彼女の温もり。柔らかさ。きれいな瞳。
 それを手離したくない。そばにいたいと思う。
 唐突なエッチから始まったぼくらの恋愛だけど、このごろやっと気持ちが追いついてきた気がする。

 彼女は最初からぼくのことを好きだったんだろうけど、ぼくはというと正直な話、エッチに流されててよく解らなかった。
 本当に好きなのか、それともただ可愛い女の子とエッチできるのが嬉しいだけなのか。
 彼女にしてみれば、好きな人にこんな風に思われていたなんて最悪かもしれない。

 でも、今は違う。
 胸を張って、彼女を好きだと言える。

 ただ……ぼくはぼくの中にいる、彼女が本当に好きだった“向こうの世界の王子”に嫉妬している。
 強く逞しく男らしい、ぼくとは全然違う見知らぬぼく。

 誰もいないベンチのそばで座るでもなく、ただ、ぼくは軽く溜息を吐いた。
 ぼくと腕を組んでいるミュウマが見上げて、小首をかしげた。
「……ナオ?」
 彼女の言葉は少ないけれど、その静かで優しい響きはぼくにとって魅力的だ。
 ぼくは頭を振って、答えた。
「なんでもないよ」
 ぼくの目をじっと覗き込む。
 ふいに手を伸ばして、ぼくの頭を撫でた。
 顔をほんのり赤く染めて、微笑む。
 急に涙が込み上げてきた。
「ミュウマ!」
「ひゃん?!」
 ぼくは思い切り彼女を抱きしめた。

678 2/10 sage 2007/10/02(火) 02:27:17 ID:j6s1yNec
 風に揺れる木の葉の音も街の音も消えて、お互いの鼓動だけが聞こえる。
 ほどよい重みを持った、しなやかで柔らかな温かさ。
 好きだ。好きなんだ。
 この気持ちに前世とか異世界とか関係ない。

「ナ、オ……くる、し……」
「あ、ご、ごめん」
 力を緩める。
 少し離れて、彼女の顔を見つめた。
 真っ直ぐだけど、潤んだ目でぼくを見返す。
 彼女は頬を一層赤くして、そっと目を閉じた。
 彼女の唇に、ぼくの唇を重ね合わせた。

 魔法の時間。
 ぼくは彼女を木が覆い茂って一歩先に暗くなっている林の中に、手を繋いで連れて行く。
 彼女も黙ってついてきた。
 しっとりと足元の葉が濡れている。

 奥にあった、やや太めの幹に優しくミュウマの背をもたれさせる。
 顔が近い。お互いの息が掛かる。
 ゆっくりと距離を縮め、またキス。
 今度は深い。
「ん……ちゅ、ちゅぷ……んん」
 その体勢のまま、制服の上から胸を触る。
 薄い小学生が着けるようなブラの奥に、乳首だけがぷっくりと硬くなっていた。
 それを手のひらで転がす。
「ん! んふぅ! あ」
 ビクビクと身体が反応した。
「ん、んん……るぁ……」
 彼女がぼくをぎゅっと抱きしめた。
 ぼくは彼女の唇を執拗に求める。
「ん! んふ、ちゅぱっ、ぷふっ……」
 ぼくは制服の中に手を滑り込ませる。
 じかにその先端のしこりに触れた。
「ひんぅ!」

679 3/10 sage 2007/10/02(火) 02:28:03 ID:j6s1yNec
 ぼくは彼女からちょっと離れた。
 顔を見ると全体が赤く、口は半開きで目の焦点が合っていない。
 声は無く、吐息と喘ぎだけが漏れる。
「あ、はぁっ! はぁはぁ、ああっ、あっ……」
 ぼくは彼女の下半身へ手を伸ばした。
 制服の短いスカートをまくり、もう直接、綿のパンツの中に手のひらを入れた。
 滑らかなお腹の下に少ない陰毛を感じた。
 そしてその先には、熱くとろけて淫水が溢れている秘裂があった。
「うわ、すごいよ……べちゃべちゃだ……」
 指の先だけではなく、手のひら、手の甲、全てが濡れてしまう。
 ミュウマは喉の奥から喘ぎを上げた。
「あああっ! あひゅう、うう、はっあっ!」
 彼女の腰がうねうねと、指を求めるように蠢く。
「ホント、ミュウマはエッチな子だなぁ……」
 この言葉に彼女は弱い。
 それを聞いた途端、何かに憑かれたように、すでに大きくなっているぼくのモノを掴んできた。
 かすれた声で、淫蕩なセリフを吐く。
「……あ、あたし、スケベでぇ、え、えっちなの、お、だから、は、はやくコレほし、いの……」
 彼女はしばらく、ぼくのモノをしごく。
「はぁ、はぁ……か、たいよ、すっ、ごい……」
 彼女はズボンのジッパーを素早く下ろすとトランクスの前を広げ、ソレを取り出した。
「……濡れて、あ、熱い、よ……ナオ……」
 柔らかに握って、リズミカルに擦る。
 気持いい。
「う、うう……ミュウマにもしてあげる」
 ぼくは彼女の秘部に人差し指と中指を同時に二本、挿れた。
 つるりと奥に達した。
「んぁぁぁっ! あ、あっあっあああ……」
 ガクガクと身体全体が小刻みに震えたかと思うと急にがっくりとぼくにしなだれかかってくる。
「……あ、足、ちから、はぁ入ら、な……」

680 4/10 sage 2007/10/02(火) 02:29:18 ID:j6s1yNec
「ちょっとイッちゃった?」
「う、ん……ちょっと……イッちゃっ……た」
 大きく肩で息をするミュウマ。
 ぼくは、彼女の股間から手を抜くと、両手でパンツを引き下ろした。
「ん……す、すーすーす、る……」
 ぼくは彼女を抱きかかえるようにして、股間のモノをそこに挟んだ。
「うあっ! ナオ、ナオの、硬いので、めくれちゃうぅ!」
 一気に彼女の愛液が溢れ出した。
 彼女がぼくの胸に抱きついて、懇願した。
「いやっ、いや、擦るの、いやあ! 入れて入れて、い、入れてぇ!」
 ぼくは彼女から離れると、指示した。
「さ、向こう側の木に手をついて」
「ん……こう、か、な」
 彼女は言われるまま、背後からセックスをする体勢になった。
 まくれ上がったスカートの下に、未発達ながらも丸みを帯びた白いお尻が見える。
「じゃあ、するよ」
 ぼくはもう破裂寸前のモノを、そこにあてがった。
 だが、まだ挿入せず、ぐにぐにと擦る。
「ナ、ナオぉ……じ、らさな、いで……」
 ぼくは頷いた。
「じゃあ今日もおねだりしてよ。ちゃんとぼくのほうを見ながらね」
 彼女は体中がピンクに染まった。
 彼女は息を飲むと、ゆっくり言った。
「……な、ナオのぉお、おチン……ポぉ、あたし、のぉおま●こに挿れて、くらさい……」
 ぼくはニッコリ微笑んだ。
「よく言えまし……たっ!」
 ズン、と一気に挿入する。
 中が熱く滑って、ぎっちりと奥まで埋まる。
 彼女の背中がぐっと反った。
「ふゅあぁぁぁっ!」
 ぼくはそれを見ながら、腰を律動させた。
 ぱんぱん、とミュウマの尻肉と、ぼくの太ももが当たる。
 その間からは、ぐちゅぐちゅといやらしい体液の音が漏れ響く。
「あっあっ、あーっあっ! ナオぅ、す、すご、いっあああ、るぁっ、うふぁ!」
 彼女の中の締め付けが、きゅきゅっと強まる。
「う、あ、み、ミュウマの中、も、すごいよっ! あ、はぁはぁはぁっ……」
 ぼくは彼女の腰骨のほうを持って、さらに奥深く突いた。

 彼女は体中がピンクに染まった。
 彼女は息を飲むと、ゆっくり言った。
「……な、ナオのぉお、おチン……ポぉ、あたし、のぉおま●こに挿れて、くらさい……」
 ぼくはニッコリ微笑んだ。
「よく言えまし……たっ!」
 ズン、と一気に挿入する。
 中が熱く滑って、ぎっちりと奥まで埋まる。
 彼女の背中がぐっと反った。
「ふゅあぁぁぁっ!」
 ぼくはそれを見ながら、腰を律動させた。
 ぱんぱん、とミュウマの尻肉と、ぼくの太ももが当たる。
 その間からは、ぐちゅぐちゅといやらしい体液の音が漏れ響く。
「あっあっ、あーっあっ! ナオぅ、す、すご、いっあああ、るぁっ、うふぁ!」
 彼女の中の締め付けが、きゅきゅっと強まる。
「う、あ、み、ミュウマの中、も、すごいよっ! あ、はぁはぁはぁっ……」
 ぼくは彼女の腰骨のほうを持って、さらに奥深く突いた。